シリアスがあるから日常は輝き、日常があるからシリアスはより際立つ。難しぃ!
休日が、開けた。
何という事だ、何故休みの日に限ってこんなにも時間は速く過ぎていく?何かの陰謀に違いない。
この二日間は特に何事もなく過ぎた。しいて言えば司がセカイに接触したことぐらいだろう。バイトにも無事受かったようで何よりだ。
まふゆにも特に変化は見られない。
だがミクとカイトには念のためまふゆの監視を頼んである。もし、まふゆに何かあったらすぐに知れるように。
……俺は多分、世界一バーチャル・シンガーを有効活用しているのでは?
「いや、ないな。流石に失礼だ」
けれどそれはそれ。使えるものはドンドン使っていくのが朝比奈春樹という男なのである。
とりあえず朝食にしよう。今日はパンの気分だ。
ドアを開けて廊下に出る。
「あ、おはようまふゆ。今から朝食か?」
「……うん。おはよう」
そう呟いてまふゆはキッチンに向かおうとする。ちょいちょいちょい。
「まあまあ一緒に行こうぜ。どうせ行先は一緒なんだ」
「すぐそこなのに一緒に行く意味あるの?」
ないです。ぶっちゃけないです。だけど俺は負けない。
「いいじゃないか、妹よ。意味のないことを精一杯楽しむことを、人は人生と呼ぶんだぜ」
お、今いい事を言った気がする。今度司に教えてやろう。
「……じゃあ楽しむことのできない私の人生は終わってるも同然なんだね」
むむ……流石はまふゆ。その返しは予想していなかった。
だがしかし俺はまだ負けていない!
「いいかまふゆ。かの喜劇王はこう言った『人生は、恐がりさえしなければ素晴らしいものになる。人生に必要なものは、勇気と想像力。それとほんの少しのお金だ』と。つまり彼は『人生は自分の気持ちの持ちようと行動力で変えていける』ということを俺たちに教えてくれたのだ」
「チャップリンは演じる役とは違って悲劇的な人生を送ったらしいけどね」
なんてことを言うんだこの子は。せっかく名前を伏せたのに。チャップリンはすごいんだぞ! あ、俺も言っちゃった……。
「な、ならこれはどうだ? 『全てのルールに従って生きていたら、私はどこにも行けやしないわ』なかなかどうして心に響く……」
かの大女優、マリリン・モンロー氏のお言葉である。
「……だから従い続ける私はどこにも行けないんだね」
それを最後にまふゆは去っていった。
……ウチの妹が手強すぎる。お兄ちゃんの心は硝子でできてるんだぞ? グスン。
◇
無言で朝食を食べる。今日はまさかのご飯物だった……。いや用意してもらえているだけまだマシなのかもしれない。会話はほとんどなく、顔を合わせるのも食事の時だけ。……うん、用意してくれるだけマシだわ。
隣ではまふゆと母さんが楽し気に話をしている。本当に楽しそうに見えるのだからまふゆの演技力も中々のものだ。
そんな才能を持ってしまったばっかりにこの現状に至っているわけだが。
さて、食べ終わったことだしさっさと学校の準備を──
「春樹」
─── 名前を、呼ばれた
まふゆではない。もっと野太い、男性の声。つまり、
「なに? 父さん」
父である。
驚いた。まさか話しかけてくるとは。
視線だけ動かして隣を見る。母さんは目を見開き父さんを見つめている。まふゆは……それどういう感情の目?
だが全員の注目がこちらに向いていることに変わりはない。箸止まってるし。
「……最近、勉強はしているのかい?」
「ああ、ちゃんとしてるよ。とは言ってもまふゆほどじゃないけどね」
そんな話をするために態々?それともほかに何か理由が?
「……ならいいんだ。呼び止めて悪かったね」
「………」
どうやら本当に話は終わりのようだ。いささか気になるが、仕方ない。
俺は踵を返して流し台の方へ行く。
……父の中で何か変化でもあったのだろうか。
いや、ないな。父さん鈍いし。
◇
準備を済ませ家を出る。結局あれ以降話しかけられることはなかった。
「……よかったの?」
「ん、なにが?」
「さっき、もしかしたら仲直りできたんじゃない?」
ああ、なんだそのことか。
俺はフンと鼻を鳴らした。
「心配してくれるのはうれしいけど、まふゆは気にしなくていいよ。父さんもいい加減馬鹿らしくなったんだろ」
現に俺もそうなのだから。
別に俺は両親を嫌っているわけではない。むしろ育ててもらっていることに感謝している。
ただ気まずいのだ。俺も、両親も。
きっかけはとても些細な事だったがそれでも一度できてしまった溝は簡単には埋まらない。
埋めるには、どちらかが歩み寄るしかないことも理解している。
「それよりもお前は自分の心配をしなさい。宮女はそろそろテストだろ? 俺たちもだけど」
「……うん。そうだね」
しまった。せっかくまふゆから話しかけてきたのにここで終わらせるのはマズイ。
それにしても……。
「まふゆ、何か困りごとでもあるのか?」
「……え? なんで?」
なんでといわれると……兄としての直感?
「悩みがあるなら聞くぞ。ホレホレ言うてみ? お兄さんが相談に乗って進ぜよう」
「………」
やばい、無言になった。司ぁ! こう言ったら妹は相談してくれるって言ったじゃないか司ぁ! ※言ってません
うぅ、無言が一番辛い…。
「私は、私がわからない…」
………。
「どこを探しても、どれだけ探しても見つからない。これ以上探しても見つからなかったら私は、もう……ねぇ春樹」
まふゆの瞳に俺が映り込む。暗い、感情を感じられないその目の中に、かすかだが
「私は……どこにいるの?」
まふゆは俺に救いを求めてくれているのだろうか。
──俺ではまふゆは救えない。
俺はまふゆに、なにをしてやれる?
──無力な俺には何もできない。
……それでも頼ってくれたのならば、手をのばしたい。
「まふゆ」
名前を呼び抱きしめる。君は確かにここにいるよと伝えるために。君は一人じゃないと伝えるために。
「まふゆは俺に素を見せてくれるようになったけど、相談してくれることは滅多になかったからなぁ。以前にも言ったかもしれないけど、相談してもらえると結構嬉しいものなんだ」
俺の言葉は届くだろうか。届かないかもしれない。それでも、せめて
「まふゆ、もし消えてしまいたいって思ったら俺に言え。その時は一緒に消えてやる。妹一人救えない無能な兄で悪いがそれでも、最後くらい一緒にいてやるさ」
必ずまふゆを救ってくれる人は現れる。今俺がすべきことはそれまで
「……俺は本当の意味で、お前の想いを理解することも共感することもできない。今まふゆが感じている不安を和らげることさえできるかどうか。けどさ、俺はまふゆが生まれてきてくれて、元気に生きていてくれるだけで嬉しいんだ」
まふゆの想いは知っている。セカイの狭間から視た。だけど知っているだけだ、理解しているわけじゃない。まふゆの感じている不安を理解できるのはまふゆ本人と、それに似た境遇の者だけだろう。
「望んでいる『答え』をあげられなくてごめん。見つけてあげられなくて、ごめん。だけどまふゆが自分を見つけられる日は必ず来る。だからもし、見つけられずに諦めたくなったら、その時は俺ごと消えればいい」
まふゆを離す。少し髪が乱れてしまったな。
「俺の生殺与奪の権利はそれまでまふゆに預けるよ。俺を生かすも殺すもお前次第だ。頼むから使いどころを間違えるなよ?」
髪を整えながら言葉を投げかける。
ごめん冨岡さん。生殺与奪の権、他人に握らせちゃった……。
「……なんで、そこまでするの?」
なんで!? なんでって……なんで!?
「考えたことなかったな。大切な人には幸せであってほしいと願うのは当然だろうし。……強いて言えば、辛そうなまふゆを見てると俺まで辛くなるから、かな」
まふゆは此方を見つめている。なんだその眼は。説明しろと?
「俺はさ、幸せそうな人を見るのが好きなんだ。幸せそうな人を見ているとなんだか自分まで嬉しくなる。だから俺はまふゆにも幸せであってほしいと思うし、まふゆが辛そうだったら俺も辛い」
「……損な生き方だね」
「そうか? そうだな。そうかもなぁ!」
……ああ、久しぶりに見た。わずかではあるがまふゆの、本当の笑顔。瞬きほどの瞬間だったけど……。
まあ今はこれで満足しよう。人類にとっては小さな一歩でも俺にとっては大きな一歩だ。
「ほら宮女は向こうの道だろ。神高はこっちだしまたな。がんばれよ」
「うん。……また」
まふゆと別れ神高へと続く道を歩く。奇跡的に周りに誰もいなくて本当に良かった。見られていたらぼく死んじゃう。
それにしても何か重大なことを忘れている気がする。生殺与奪? いやそれも結構というかかなり大変だがそれ以上の何か……。
「ああ! ミク達に監視させてるの忘れてた!」
え、なにつまりさっきの全部見られてたの? ヤバイヤバイハズイハズイシヌシヌ。
「うわぁぁぁ!! 恥ずかしいぃぃぃ!!」
青空広がる爽やかな朝に、一人の男の叫びが轟いた。
オリ主のプロセカキャラへの印象
【MORE MORE JUMP!編】
花里みのり:『ステージのセカイ』を生み出した『想いの持ち主』の一人。遥の言葉に救われアイドルを目指すようになったという経緯に共感し、ひそかに応援している。
桐谷遥:『ステージのセカイ』を生み出した『想いの持ち主』の一人。アイドルにまったく興味がない春樹でも知っている超・有名人。
桃井愛莉:『ステージのセカイ』を生み出した『想いの持ち主』の一人。バラエティー番組で見たことある。愛莉のアイドルへの想いを知り、少し申し訳なく思っている(アイドルだと知らなかった為)
日野森雫:『ステージのセカイ』を生み出した『想いの持ち主』の一人。アイドルにまったく興味がない春樹でも知っている超・有名人。まふゆと同じ部活ってマ? 司の知り合いってマ?
宮益坂女子学園の有名人率の高さに若干引いている春樹であった。(鳳財閥ご令嬢の存在をまだ知らない)