はやくストーリーを進めたいのに頭の中がこんがらがる…『こんがらがる』って辞書にも載っている正しい日本語だそうですよ。(ずっと方言だと思っていた)
「さてと、皆食べ終わったみたいだし報告を始めようか」
全員が食べ終えたのを見計らい話出す。満足していただけたようで何よりだ。
「ミク、まふゆのほうはどうだ。何か問題は?」
「今のところ何も変わりはないよ。いつも通り過ごして今はセカイに……」
ふむ……俺が言えた義理じゃないがよくこんな早くセカイに順応できるなぁ、さすがまふゆ。
「それでどのくらい持ちそうだ?」
ここが本題だ。
「………。持って多分二週間、て所だと思う」
「に、二週間……」
短い。余りにも短い。俺の命は二週間ほどの価値しかないというのか。
この二週間という数字はまふゆがいつも通り『優等生の朝比奈まふゆ』を演じられる期間を指す。つまりそれを超えてしまえばまふゆがボロを出してしまう可能性が急激に上がる。今まで問題なく出来ていたことが出来なくなればまふゆの症状は悪化、最悪行くところまで行ってしまいかねない。
……今まで多くの世界を見て、多くの想いに触れてきたミクの出した答えだ。疑ったりはしない。
「にしても短いなぁ、結構勇気を出したんだけどなぁ」
俺はまふゆに『呪い』をかけた。それはまふゆを生かすための呪いであり、同時に俺自身を殺す呪い。
まふゆに伝えた言葉に嘘はない。これ以降、まふゆがもう一度消えたいと言えば、大人しくこの命を差し出す覚悟がある。無論、俺だって進んで死にたいわけじゃない。死ぬ経験なんて一度で十分だし、死んでしまえばあいつらのこれからを見守ることができなくなってしまう。
「で、でも春樹の言葉でまふゆちゃんの心は確かに動いてたから! わたしは無意味なんかじゃないと思うよ!」
慰めてくれてありがとう、お前いいヤツだなぁ。
「だけど急ぐ必要はある。カイト、まふゆの所属しているサークル、『ニーゴ』のほかのメンバーの居場所ってわかるか?」
「うーんさすがに難しいかな。このセカイの狭間からは『セカイ』と『世界』の両方を観測できるけど名前も顔もわからない個人を特定するのは……うん、時間がかかりすぎる」
それもそうだ。この場所もさすがにそこまで都合よくはないか。
「あ、でも可能性として『誰もいないセカイ』にいるミクが『Untitled』の入ったまふゆちゃんの機器を通して助けを呼ぶことはできるかもしれない」
前言撤回。メチャクチャ都合がいいじゃないか!
「ミク早速頼む!」
「ええ!? わたしには無理だよ~!」
「そうだよ春樹。オレたちに出来るのは『観測』だけで『干渉』はできないんだからさ」
うぐっ、そうだった……。
「そ、そこをなんとか、ほら同一人物なんだしテレパシー的な感じでチョチョイッと……無理?」
「「無理!」」
無理かぁ、そうかぁ。いけると思ったんだが。
「ハハハ、だけど一応可能性の話として頭にとどめておいてほしい。もしものことを考えて、ね」
「……そうだな。よしっ切り替えよう! 次、他の世界の状況報告に移ろう」
誰からにしようかな。
「ミクはずっとまふゆのことを見てたから他の世界はオレとカイトが担当したよ!」
ん? マジで?
「ミク、監視してほしいとは言ったけど別にずっと見てなくてもいいぞ? ちゃんと休憩は挟んだのか?」
「うん大丈夫だよ。休憩もちゃんととってるし、それにわたしもまふゆちゃんの事が気になるから」
むむむ……はあ、頼んだのは俺だし強くは言えないなぁ。
「わかった。けど無理はするなよ。まあミクなら大丈夫だとは思うけど」
「ふふ、春樹まるでお兄さんみたいだね」
こう見えて実はお兄さんなんですよ。
「よーし。じゃあカイト、レン少年報告よろしく」
「うん。そうだねまずは―――」
カイトとレンの報告をまとめるとこうだ。
・『教室のセカイ』を生み出した四人がUntitledを再生しセカイに接触。内二名、星乃一歌・天馬咲希は一緒にバンドをすることに。他二名、望月穂波・日野森志歩とは関係の修復はできず。
・『ステージのセカイ』を生み出した四人もまたセカイに接触。セカイにて初音ミク・鏡音リンのライブを見るもそれぞれ思う所があったようで帰宅。唯一、花里みのりはセカイを受け入れている模様。
・『ストリートのセカイ』を生み出した四人の内小豆沢こはね・白石杏はコンビを結成。その後セカイに接触。残る二人東雲彰人・青柳冬弥は未だセカイとの接触なし。
……ふむ、どこも順調とは言い難いな。いや最初はこんなものなのだろうか。
けれど妹様が元気そうで爺やは大変嬉しゅうございます。
「最後に司くんだけど……ああ、ちょうどいい見てごらん」
カイトに言われるがままをそちらを見てみる。
「うん? 類くん達もセカイにいるのか?」
なぁぜにぃ?いや別に良いんだけどさ。
「……前から思ってたけど『Untitled』を持ってない、想いの持ち主じゃなくてもセカイに入る事はできるんだな」
「いやいや、普通は無理だよ。なにせセカイは『想いの持ち主』が本当の想いを見つける為の場所だからね」
……え? でも、え?
「ならどうして類くん達もセカイに入れたんだ? あそこは司の想いだけで造られているはずだろう」
その疑問に答えてくれたのはレンだった。
「簡単だよ、彼らがセカイに入ることが出来た理由はセカイが彼らを受け入れたからだ」
「セカイが受け入れた?」
「そう! 今まで多くのセカイを見てきたけど今回みたいに『想いの持ち主』以外の人もセカイと関りを持つことはあったんだ。基本的には大きく分けて2パターンだね」
レン曰く『想いの持ち主が無意識に他者の介入を受け入れた場合』と『セカイにいるバーチャル・シンガー(ミクやカイトたち)が本当の想いに気付いてもらうために必要だと判断して招き入れる場合』があり、その中でもとりわけ前者のほうが割合は高いそうだ。
……これは使えるかもしれない。
「つまりまふゆの持つ『Untitled』を使えば俺もまふゆのセカイに行くことは可能だと?」
「あくまで可能性だけどね。拒絶されれば入ることはできなくなるから。まあ、えむちゃんのように『Untitled』が登録される場合もあるけどそれにはセカイの僕達の協力が必要になる」
……これは最終手段だな、まふゆに拒絶されるとは思いたくはないが。
「………」
それにしても、気になるなぁ。アレ。
俺はもう一度『ワンダーランドのセカイ』を見る。そこには司と類と鳳えむ嬢、そしてもう一人いる彼女が類の推薦したいというメンバーなのだろうが……。
「なんだろうな、アレ」
「あ! オレもずっと気になってたんだよあの
格好いいかどうかは置いといて、あの少女と似た外見のロボットも類が作成したのだろうか。何でもありだな。
「いやぁ凄い技術力だね、彼」
「たしかドローンも作ってたんだよね。えっと、名前は確か……類くんだよね?」
どうやら口に出さなかっただけで皆あのロボットに興味津々だったようだ。気持ちはわかる、スゲーわかる。
「あんなロボットまで受け入れるなんて、器がでかいとかそんな次元じゃないだろ」
未来のスターの器はどうやら俺の予想をはるかに上回っていたようだ。
あれショーで使うのかな。どんなショーになるのかまったく想像できない。
それはそれとして、
「あのセカイのミクは何度見ても面白いな」
うちのミクもやってくれないだろうか。ミクダヨーって。