もう、なんかそれっぽい事を書いておけばいいですかね。
今日は水曜それも既に放課後である。
結局『ニーゴ』メンバーを見つけるいいアイデアが浮かぶことなく終わった作戦会議。やはり別の方法を模索した方が良いのだろうか。
「ではな春樹! オレは先に行かせてもらうぞ!」
「ん……ああ、練習頑張れよ~」
司とはショーの練習の為一緒に帰宅できなくなってしまった。べ、別にさみしくなんてないんだからねっ、オエェ。
まあ司たちも頑張っていることだしショーを楽しみにしよう。カメラの充電をしなくては! オペラグラスも磨いておこう!
「さてと、俺も行こうかな」
今日は他のセカイの『想いの持ち主』たちと接触してみようと思う。とは言ってもほとんど宮女の人間なので会える人は限られてくるのだが。
◇
「というわけで、やってきましたビビッドストリート!」
ビビッドストリートは小豆沢こはね・白石杏・東雲彰人・青柳冬弥の四名が主に活動する場所。だがこの四人はまだバラバラで活動しているから今ここにはいないかもしれない。
『♪ーーーーーー!』
「……ん、歌?」
まだ入ったばかりだぞ、それともストリートってこれが普通なのか?
「とりあえず行ってみるか」
歌の聞こえてくる方へ足を向ける。初めて来たけど『記憶』があるおかげで迷うことはない……と思う!
「お、あそこか」
凄い人の量だ。有名な人が歌っているのだろうか。
……あ。
「ビンゴ、俺の運も馬鹿にできた物じゃないな」
歌っていたのは白石嬢と小豆沢嬢だった。こうも簡単に探し人が見つかるとはいい意味で予想外。
「……朝比奈先輩? こんな所で何をしているんですか?」
おや?
「冬弥くんじゃないか。奇遇だねこんなところで会うなんて」
うおおおおおおおお! 俺スゲーーー! あと一人でコンプじゃねぇか!
今なら宝くじも当選する気がする。後で買ってこよう。
「珍しいですね、朝比奈先輩がビビッドストリートに来るなんて」
「ちょっと綺麗な歌声が聞こえたものだからフラッと。冬弥くんは相棒くんとは一緒じゃないんだね」
「……確かに彰人は相棒ですがいつも一緒にいるわけじゃありませんよ」
うっそだぁ~! 君を見かけるときは必ず横に東雲後輩もいたぞ。
「まあいいや。それで冬弥くんはあそこで歌っている彼女達とは知り合いなのかい?」
「ええ、……眼鏡をかけている方は先日会ったばかりですがもう一人は神高の生徒ですよ」
うん知ってる。全部わかってて聞いたのさ。
……もう少し踏み込むか。
「知り合いなら一緒に歌ったりしないのか? 君達四人が組めば……なんだっけあの伝説のイベントとか言われてるアレも越えられると思うけど」
「……『RAD WEEKEND』ですね。まさか朝比奈先輩があのイベントを知っているとは思いませんでした」
「君達より一年長く生きてるからね、その分知っていることも増えるものさ。なにか聞きたいことがあったら聞いてごらん? お兄さんは何でも知っているぞ~」
すると冬弥は黙ってしまった。なぜだ、なぜ黙る。頼む会話を続けさせてくれ。
「そ、そういえば君達もイベントに参加したりするんだろ?次のイベントはいつだい? ぜひ君たちの歌も聞いてみたいな!」
「……次に参加する予定のイベントは次の日曜の夕方です。俺は彰人と参加しますがあそこで歌っている二人も参加するので一度来てみてはいかがですか」
日曜日の夕方……うん予定は空いてるな。
「わかった、じゃあ楽しみにしてるよ。一応聞くけど司にも声をかけていいかな」
司の名前をだした途端に目の色が変わった。
「司先輩も来るんですか。ならいつも以上に盛り上げないといけませんね」
ハハハ、司の名前を出しただけでとても嬉しそうだ。
初めて会ったときの印象は『まふゆに似てる』だったが、こうして話しているとあまり似てないな。
「ああ、司といえばあいつフェニランでバイトを始めたんだよ、ショーキャストの。しかも座長。ワンダーステージの『ワンダーランズ×ショウタイム』っていう劇団なんだけどさ、今度の土曜日の昼頃にショーをするらしいから一緒にどうだい?」
「司先輩のショー!ぜひ行きたいです!」
誘っておいてなんだがイベント前日に練習しなくてもいいのだろうか。
だが、やはり素晴らしい。司の輝きを知る数少ない心の友よ。
「チケットは用意しなくてもいいよ、俺が持ってるから」
布教用に数枚購入しておいてよかった!
「朝比奈先輩は司先輩と一緒にショーはしないんですか? 仲がいいのでてっきり朝比奈先輩も一緒だと……」
う、うーん。イヤな所を突いてきたなぁ。
「誘われはしたんだけど断ったよ」
「……それは、スターになるという夢を本気で追いかけている司先輩ほど真剣になれないから、ですか?」
いえ全然違います。違うけど、やはりそう来たか。
彼が何に迷い思い詰めているのかは知っている。父親の事、本気で伝説を越えようとしている相棒ほど真剣になれているのかという自身への疑問。
さてさてさ~て、どうするか。
「それが全く無いとは言わないけど理由はまた別かな。この話は司たちにもしたんだが俺は天馬司の『ファン』としてあいつを支えたい。それが俺自身に定めた『在り方』だからだ」
俺は冬弥と目線を合わす。背、高いな。
「俺は『ファン』として司を支え、その行く先を見届ける覚悟がある。だから断った。…今の質問で大体察したよ。冬弥くん、君は東雲くんの相棒として自分はふさわしくないと考えているんじゃないのか?自分は彼のように本気で向き合えていないのでは、って」
冬弥は気まずそうに目をそらす。沈黙は是なり、だ。
「もしそう考えているのならそれは違うと言わざるを得ない。君が何に悩んだとしても、東雲彰人にとって青柳冬弥は必要不可欠で唯一無二の相棒だ。それは第三者の俺から見ても明らかなほどに」
けれども自分がふさわしくないと考えてしまうのは理解できる。できるがそれとこれとは話は別だ。
「一度ゆっくりと話してみると良い。仲のいい君たちがバラバラになるのを見るのは、寂しいからさ」
「……はい」
さて、彼女たちの歌ももうすぐ終わるころだろう。
「少しばかり暗い話になってしまったけど今は彼女たちの歌を聞こうか」
前言を撤回しよう。彼はまふゆとよく似ている。けれどまふゆと決定的に違う点は『救ってくれる人』がいたかいなかったか。司は冬弥を救い、俺はまふゆを救えなかった。なんで司が幼馴染じゃないんだチクショウ。絶対楽しいだろ楽しいに決まっている。
歌い終えた白石嬢と小豆沢嬢は楽しそうに談笑している。
「………半端な覚悟、か」
ん……独り言か。なら反応しなくてもいいだろう。
「悩みが多いのはみんな同じだなぁ」
とりあえず早くセカイに行け。まだセカイに行ってない『想いの持ち主』お前たちだけだぞ。スタート地点にすら立っていないとはこれ如何に。
司くんは「ショーは次の連休の初日」と言ってたので土曜日でいいですよね。イベントを日曜日にした理由?そうしないと冬弥くんのスケジュールがさすがにタイトすぎるかなぁ、と。