セカイの狭間から友人たちを見守ろうと思う   作:日彗

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休日に書いたストックがどんどん減っていく…。ストックがあるからと言って毎日投稿するのはよくないのかもしれない。とかいいつつ今日も投稿します。


13話 妹の心兄知らず、されどペガサスは考えないものとする

 

 今日もまたいつも通りの日常が過ぎていく。なぜに昼はこんなにも長いのか。夜はあっという間なくせに。もっと寝かせろ寝かせてください。

 

「聞いたぞ春樹。泣きながら女子高生の頭を押さえつけていたと」

 

 何を言っているんだこのペガサス。俺がそんなヤバい奴な訳ないだろう。

 

「間違いなく俺じゃないな。誰だそんな頭の悪い噂を流したのは」

 

「むっそうか、オレは咲希から聞いたのだが……」

 

 ……俺かもしれない。

 いやいやそんな馬鹿な頭を押さえつける? 俺が? 泣きながら? 俺が? ……心当たりがあるな。

 なんとかこの話題をそらさねば。

 

「そういえば今度のショー、冬弥くんと一緒に観に行くことになったから。期待してるぜ司」

 

「おお! そうかそうか冬弥も見に来てくれるか! 咲希はその日バイトで来れないと言っていたがお前たちが来てくれるのならより一層盛り上げねばな!」

 

 計画通り(ニヤリ)

 

「それで日曜の夕方に冬弥くんの方もイベントがあるらしくてさ。司も一緒に見に行くか?」

 

「日曜日か? むむ、少しばかり遅れるかもしれんが必ず行こう。冬弥の晴れ姿を見てやらんとな!」

 

 別に初めてのイベントってわけじゃないけどな。

 

 

 

 

 放課後になると司はすぐさま教室を出ていった。少しくらい会話しようぜぇ。俺よりもショーの方が大事なのかぁ。あ、類もいる。おーい……無視された、聞こえなかったのだろうか。

 

「寂しいな寂しいな。誰かいい感じにちょっかいかけられる相手いないかな」

 

 いないな。話をする相手はクラス内にもいるがちょっかいをかけられる相手となると……司だけだな。この学校はもう少し変人率を上げるべきだ。

 仕方がない一人寂しく帰ろう。帰ったらセカイの狭間に行ってレンと遊ぼう。主にジェンガで。

 

 俺は靴を履き替え校門を出……る前に自販機で野菜ジュースを買っていく。無性に飲みたい気分だったのだ。

 

「野菜の甘みと酸味が口の中に広がって……美味い!」

 

 人類の発明品の中でもトップクラスに位置するなコレは。

 今度司たちにも差し入れに持っていこう。野菜には栄養がいっぱいなのだ!(善意)

 

 半分ほど飲んで学校を出る。残りは少しずつ飲むのさ。え? 飲みながら歩くのは行儀が悪い? 大丈夫! 飲むときはちゃんと止まるから!(そういう事じゃない)

 

「お、あそこにいるのは……」

 

 間違いない、まふゆだ。今日は部活がなかったのだろうか。

 さて、どうやって声をかけよう。

 

 1.普通に声をかける

 つまらん、却下。

 

 2.今手に持っている野菜ジュースを首筋に当てる

 ……もしそれで野菜ジュースが犠牲になってみろ、俺は泣くぞ。

 

 3.後ろから目を手で覆い隠して「だーれだ」と言う。

 ……正直バカップルみたいで好かんが他に浮かばないし、飲み物を持っているせいで片手だがこれでいこう。

 

 そろり、そろり。

 

「だーれ、だ!?」

「……何してるの?」

 

 目を隠す前に手を掴まれた。馬鹿なっ、気配は隠していたはずなのに!

 

「い、いやだなこれはアレだよほら兄妹のスキンシップ? みたいな、アハハハ……」

 

 まふゆは感情を感じさせない瞳でこちらを見てくる。ごめんて、もうしないので許してください。

 

 すると俺の祈りが届いたのか解放された。ふぅ怖かった。

 

「春樹はいつも一人で帰ってるの?」

 

 え、なに突然。もしかして俺ボッチだと思われてる? 心外なんですけど。心外なんですけど!

 

「おいおいおいおいマイシスター。お前は実の兄の事を友達のいないハブられボッチ野郎だと思っているのか? そんなはずがないだろう。今日はアレだ、たまたま、そうたまたま偶然みんな用事があったんだ! ドューユーアンダースタン!?」

 

 必死になんてなっていない、俺は全っ然必死じゃない!

 肩で息をする俺を見つめる妹。

 

「……そう、よかったね」

 

 ソウヨカッタネ? ドウイウイミ? よかったね……何が!? 何がいいの!? 俺がボッチな事がいいの!? なんで!?

 

「そういえば春樹知ってる?」

 

「今!? 俺ちょっと混乱してるんですけど!?」

 

「……うるさい」

 

 うるさい!? ……いや、落ち着け俺。とりあえず考えることをやめよう。理解できないことを理解できないままにして何が悪い。この世にあるほとんどの問題は逃げることで解決できるって誰かが言ってた。

 

「それで何の話だ?」

 

「……クラスの子が話してたんだけど、昨日宮女の制服を着た子が二人、神山高校の制服を着た人に頭を押さえつけられてたのを目撃されたんだって。春樹何か知って──」

 

「知らんな。なにそれ滅茶苦茶ヤバい奴じゃねぇか。まふゆも気を付けろよ」

 

 

 

 

 無理矢理会話を終わらせてから俺たちは無言で歩き続けていた。

 何だろう、この空気。どうしてこんなにギスギスしてるんだ?

 

 キ、キツイ。何か会話を……。

 

「そ、そういえばまふゆは『ニーゴ』って音楽サークル知ってるか?」

 

「……え?」

 

 なんでだあああ! なんでその話題を選んだあああ! 他にも何かあっただろ俺の馬鹿ああああ!

 

 失敗した! まふゆにこの話はするつもりなかったのに! ……いや、逆に良い機会なのか?

 ……少々不安だが、一石投じてみるか。

 

「友達に紹介されてさ。正式名称が『25時、ナイトコードで。』っていうらしいんだけど、中々良い曲が多いんだよ」

 

「……そうなんだ」

 

 微かだが揺らいだ。……予想以上に反応したな、てっきりこの話題には慣れているものかと。『ニーゴ』有名だし。

 

「まふゆは聞いた事あるか?『ニーゴ』の曲オススメだぞ」

 

「……クラスの子が話してたのを聞いた事ある、かな」

 

 ふ〜ん、クラスの子が。

 

「じゃあ曲は聴いた事はないのか。なら機会があれば一度聴いてみるといい」

 

「うん……そうする」

 

 さて、ここで止めておくか、それとももう一歩踏み込むか。

 ええい男は度胸!

 

「音楽の話してたら思い出したんだけどさ最近活動を始めたOWN(オウン)っていうクリエイター知ってるか?」

 

「……知らない」

 

「………」

 

 動揺したな、無理もない。『ニーゴ』と違ってOWN(オウン)はまだ名前を出して日が浅い。何せここ数日の話だ。それがいきなり話題に出れば驚きもするだろう。

 

「このOWN(オウン)の曲は既に5万回再生を超えている。信じられるか?まだ投稿されて数日しかたってないのに、だ。この調子でいけば2週間もしたら20万は優に超えるだろうな」

「そうなんだ、凄いね」

 

 まったくだ。末恐ろしい程の才能である。

 

「まふゆも聞くか? 心に突き刺さる様な鋭さのある曲だぞ。まふゆの感想も聞きたいし」

 

 俺はスマホを操作してOWN(オウン)の曲を流す。

 

『♪ーーー! ♪ーーーーー!』

 

 ……ああ、やっぱり。

 

 曲が、終わる。

 

「どうだった? 感想を聞かせてくれよ」

 

「うん……すごかった。なんだか迫力があって、引き込まれるみたい」

 

 迫力ねぇ。まあ確かに迫力はあったな。

 

「俺は迷子の子供が必死に叫んでいる様な印象だった」

 

「……え?」

 

「まふゆも知っているんじゃないか? 歌は想いから生まれる。だからこそどんな歌にもその作り手の想いが宿るもんだ。この曲からは『助けて』『どこにいるの?』……いやまだ語弊があるな」

 

 何か適切な言葉は……ああ。

 

「『誰かわたしを見つけて』だ」

 

「──っ!」

 

 それは、核心を突かれたことによる動揺。表情に変化こそないが観察していればわかる。

 

「……俺が思うに『ニーゴ』の作詞担当者とこのOWN(オウン)は同一人物だろうな。何度も聴き返していると所々に癖を見つけた」

 

 大嘘である。素人の俺が癖なんかわかる訳ない。

 ……どうしよう。まふゆは自分の事に関しては鈍いが他人には敏感だ。だからこそ今まで相手の欲しがっている言葉と態度を取れてきた、『優等生』朝比奈まふゆの必須スキル。

 

 だからこそ、俺が気付いている事に感づいている可能性がある。ここらで止めておくか。

 

「………」

 

 まふゆが『ニーゴ』の活動をしながらOWN(オウン)としても活動し始めた事はミクから聞いていた。昼は学校、夜は音楽活動それも二重ってホントいつ寝てるんだ、夜更かしはお肌に悪いぞ……。

 

 よし他の話題に移そう。何かあるかな。

 

「あ、そういえば昨日星乃さんと話したよ。委員会が同じなんだって?」

 

「……星乃、さん?」

 

 ズイッとまふゆが踏み込んでくる。あれさっきまでと反応違くない?

 

「春樹、星乃さんとどういう関係なの」

 

「友達の妹の幼馴染」

 

 な、なんだその疑う様な目は。本当だぞ、友達()(咲希)幼馴染(一歌)だ。

 

「……そう」

 

 そしてまふゆは離れていった。え?何だったの今の。『ニーゴ』やOWN(オウン)の時より反応してたんだけど……。

 

 ああ友よ、妹の考えがわからない……。

 

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