決してエタる気はないのでそこだけは信じてください!
ただちょっと、ナルトとかスケットダンスとかその他の漫画を読み返していたら時間が経っていまして……ちくしょう!
イベントも終わりを迎え、司たちとも解散し各々帰宅していった。
かくいう俺も既に家の前である。
両親に気付かれないようソロリ、ソロリ…。
「おかえり春樹」
ファッ!?
自室の前までたどり着いた所をまふゆに見つかってしまった。
君はなんでいつも俺の気配に気付くの?なんで俺は君の気配に気付けないの?今日だけで二度目だよ?そろそろ心臓が止まっちゃう……。
「……疲れてるね」
「ただいままふゆ、疲れてます……」
まふゆの笑顔を見たら疲れが吹き飛ぶかもな~。……嘘です調子に乗りましたごめんなさい許して。
「まふゆも明日から学校だろ。早く寝ないとお肌が荒れるぞ。なんなら読み聞かせしてやろうか?」
とはいっても俺の知ってる話なんてそんなにないけど。そうだアレにしよう。終わらない夏をの乗り越えるため戦う少年少女の話。第一話、人造エネミー……。
「私はまだやる事があるから」
「あ……そう、なんだ」
チィ!この期に布教してやろうと思ったのに!俺よりも勉強の方が大事なのか!?……大事かもしれない。
「無理はするなよ、辛くなったらすぐに言え。報告!連絡!相談!はいここテストに出ます」
だからお勉強よりもこっちを優先してくれるとお兄ちゃん嬉しいなぁ~なんて、……ハ、ハハ。
人を見る目じゃない。これは絶対に人に向けていい目じゃない。なぜだ妹よ、なぜそんな目で兄を見る!
「じ、じゃあ俺はもう休むことにするよ。まふゆも早めに寝ろよ」
「……うん、おやすみ」
「ああ、おやすみ」
休むとは言ったけど寝るとは言ってない。俺にもまだやる事があるのだ。……面倒くさいけど。
◇
部屋の中に入って荷物を置き、スマホを操作して『Untitled』を再生させる。
途端にあふれ出す光。だが俺も学習しているのだ。その証拠に現在俺はサングラスを装着している。毎度毎度この光で地味に苦しんでいたからな、サングラス様々だ。
「おーい、誰かいないのかー?」
今回このセカイの狭間に来たのはミクに呼ばれたからだ。呼ばれた理由は知らない。帰宅中にいきなりスマホから飛び出してきたミクは「急いでセカイの狭間に来て!」とだけ言って消えた。急すぎて驚く暇さえなかった。
「春樹くん!こっちだよ!」
カイト発見。ならそこにみんなもいるのだろう。
「ミクに呼び出されたんだが何かあったのか?」
「うん、実はね……」
ふむふむ、なるほどなるほど……。……マジ?
「え?今?早すぎない?さっき別れたばかりだぞ」
「でも恐らく今夜決着がつくよ。今までの経験上ね」
なんて説得力だ。こうしちゃおれん!急がねば!
「ミク!レン!そこどけ俺にも見せろ!」
「わっ!春樹来てたの!?ナイスタイミング!」
「春樹いらっしゃい、解説はいる?」
「いらん。既にカイトから聞いた。……司の『想い』から歌が生まれそうっていうのは本当なんだな?」
「本当だよ。司くんは『本当の想い』を見つけてるから、あとはこのショー次第だね」
ショー?……あホントだ、なんであいつらセカイでショーをしてるんだ?
やっぱりミクに解説頼んだ方がよかったかな……。
『錬金術師は人前で歌えない歌姫の為に、代わりに歌声を届けてくれる人形を作りました。そしてショーのために、雷の光、風吹く舞台、大きなドラゴンのカラクリまで用意してくれたのです!けれどショーの途中で人形が壊れてしまい、ショーは大失敗!』
『ああ、こんな酷い失敗をするなんて!みんなお前達のせいだ!』
ふむ?錬金術師、歌えない歌姫、カラクリ、人形が壊れてショーが失敗。……ああなるほど、先日のショーが題材になっているのか。失敗を失敗で終わらせないとはさすが。
大方の状況は理解した。ショーを通して類に『本当の想い』を伝えようとしているのだろう。司らしいというか何というか……。
『ひとりぼっちになった座長は、突然とても寂しくなってしまいました。ショーを作っている時は、あんなにも楽しかったのに……するとそこに、かわいい妖精がやってきました』
「……ンッフフ」
「春樹?どうかしたの……?」
『キミは、どうしてショーをやるの?本当は、みんなのニコニコした顔が見たかったんじゃないのかな』
「~~ッ!クッククク、ヒーハハハハ!」
「春樹!?本当に大丈夫なの!?」
いやだってアレはずるいだろ。あのお方を出すのは卑怯だ、なんであんな着ぐるみがセカイにあるんだよ。中の人はいないって人じゃなくてバーチャル・シンガーって事だったのか。……あの状態でミクダヨーとか言われたら腹筋が崩壊してしまう、というか崩壊した。
「アーハハハハハ!!お腹が痛い、お腹が痛いヨー!ヒー!助けてぇ!」
「ちょ、ちょっと春樹しっかり!カイト!カイトォ!春樹が!」
周りでミク達が騒いでいるのが聞こえるが今はそれどころではない。ってミク、俺の視界に入るな思いだ……ファーッ!アッハハハハ!
「えっと……何があったんだい?」
「カイト!ミクの着ぐるみを見てからずっとこの調子なんだ!」
「え?着ぐるみ?状況がよくわからないんだけど……大丈夫かい?」
クックック、あー笑いすぎて疲れた。あの着ぐるみをショーで使うのは反則だって。まだ腹が痛ぇ。
「は、春樹くん落ち着いて。ほら見てごらんショーもいよいよ大詰めみたいだよ」
着ぐるみが、着ぐるみがぁ……え?
『オレの夢はスターになることだ。でもそれは、みんなに笑顔をあげるスターだ!観客が笑顔になって、仲間も笑顔になれる。そんな最高のショーをやるのが、オレにとってのスターだ!』
お、おう。なんか話が進んでる……なんで?さっきの着ぐるみは?あれ?
「レン少年、ミクの着ぐるみはどこにいったんだ?さっきまでショーに出てたよな」
「もー!春樹ちゃんと見守る気あるの!?ないの!?」
「えっ、あ、あります、ごめんなさい……」
怒られた、というより叱られた。
でもさ、あの着ぐるみを出されたら誰だって驚くと思うよ?
『信じて欲しい!今度こそ、みんなをショーで笑顔にする!……だからもう一度、オレとショーをやってくれないか?』
◇
……ショーの展開はここまで、だがまだ終わりじゃない。
先ほどまで錬金術師を演じていたカイトと類が話している。
「……さて、錬金術師はどうすると思う?」
「え?その役は、あなたの役じゃ……」
「いいや。僕はここまでの代役だよ。それにここから先の展開はまだ決まってないんだ」
「…………」
この騒がしいセカイに一瞬だけ沈黙が流れ、オレと類の目が合う。
……なにがあっても、目を逸らすことだけはしない。
「ショーでなら、気持ちが伝わるとでも思ったのかい?」
類からの問いは予想通り冷ややかな声だった。
「ああそうだ。オレはいつだって、ショーからたくさんのものを受け取った。感動も、興奮も……『スターになってみんなを笑顔にする』という夢も!だから、オレの本当の想いを伝えるならショーしかないと思ったんだ!」
「…………」
類は沈黙を続けている。話の続きを促しているのだろう。
「……正直、オレはお前にかけられる言葉なんて持ち合わせてはいない。お前が拒絶するのなら、諦めた方が良いのではという考えが何度もよぎった。だがオレに救われたと、天馬司はスターになれると信じてくれている
類の目を見つめる。想いのすべてが伝わることを祈りながら。
「類!神代類!オレがみんなを笑顔にするショーを実現するためにはお前の力が必要だ!オレだけじゃない、えむも寧々も他の演出家ではなく
未だ観客席にいる類へステージの上から手を差し出す。
「だから、もう一度オレたちに力を貸してくれ。もう一度、オレと一緒にショーをしよう」
オレの想いはすべて伝えた。……これでダメなら諦めもつく。
「………。…フフ。観客も仲間も笑顔になる、最高のショー、か。悪くないね。でも、まだまだだ。勢いだけじゃ、人の心は動かせない」
「………ッ」
背中越しに、えむたちの動揺が伝わってくる。やれることは、やったつもりだ。
「さて───それじゃあ、どんな演出をつけようか、司くん」
え……?
「それって……」
「も、もしかして……!?」
えむと寧々の喜ぶ声が聞こえる。は、ははは……
「類……!」
「おやおや、間違えないでくれたまえ。僕は類じゃない、錬金術師さ」
フ、フハハハハハ!こんなにも気分が高揚したのは久しぶりだ!忘れていた想いを思い出し、なにより同じ目的を持つ仲間ができた!
「よし!戻ってもう一度ショーを……ん?」
懐にしまっていたスマホが熱を帯び始めた。なんだこれは。
「『Untitled』が、光ってる……?」
これは、一体……。
「司くんの想いが歌になろうとしてるんだよ。歌は、人の強い想いでできているんだ。だから本当の想いを見つけられると、歌が生まれるんだよ」
「うんっ♪これは司くんの中にある、『ショーでみんなを笑顔にしたい』っていう想いの歌だよっ!よーし、一緒に歌っちゃお〜っ!」
「いや、歌うって……どうやって歌えばいいんだ?」
「この歌は、最初から司くんの中にあった想いできているんだ。だから、思うままに歌えばいいんだよ」
……オレの中の、想いでできた歌。『ショーでみんなを笑顔にしたい』という想いの歌。少し前ならばこんな話信じはしなかったが、今は違う。ミクとカイトの言葉が胸にストンと落ちる。不思議だが不快ではない、けれど。
「これはオレひとりじゃできなかった歌だ。いや、あいつらの歌でもある。だから……あいつらとも、一緒に歌っていいか?」
「あたし達も歌っていいの?わーい!とっても楽しそう!」
「うん……私も、歌いたい」
「司くんの想いの歌か。それはとても興味深いねえ」
オレはひとりじゃない、こんなにも仲間に恵まれている。あぁ、それがこんなにも嬉しいことだとは知らなかった。
「よし、歌うぞっ!!」
……いい曲ができたらあの馬鹿に聞かせるのも良いかもしれんな。
◇
「いい曲だったな……」
なるほど、これが想いから生まれる、という事か。正直『想いの持ち主』が
だがまさかあんな風に歌が生まれるとは思わなかったなぁ。
セカイに曲が流れ始めて司たち『ワンダーランズ×ショウタイム』とセカイのミクが踊りながら歌い、そして最後には『Untitled』の曲名が『セカイはまだ始まってすらいない』に変化した。……いやいやいやいや、え?なん……え?
「ちょっと待ってちょっと待って、え?歌ってあんな感じで生まれるの?『Un
どういうことだ初音ェ!
「あれ、言ってなかった?本当の想いを見つけると『Untitled』は歌に変わるんだよ」
「初耳なんだけど!セカイと現実世界を行き来できる鍵のようなものとしか聞いてないんだけど!」
じゃあ何スか、俺のスマホに入ってる『Untitled』もそのうち変わるんスか。なにそれ怖っ。それなら別に『Untitled』のままでも俺はいいかな……。
「じゃあ逆に、キミはどういう風に歌が生まれると思ったんだい?僕はそっちに興味があるなぁ」
どういう風にって……。
「なんかこう『インスピレーションが湧いてきたアアアアアア!!』とか言って紙とペンで歌詞とかを、その……ズババッ!とやるのかなぁって」
「ええぇ……」
なぜかみんな引いているけど俺は悪くないと思う。誰があんな摩訶不思議な方法で歌が生まれると思うよ。そんな簡単に曲を作れるわけないだろがあ!(逆切れ)
「もう他に話してない事とかないだろうな。後になって言い忘れてたなんて言ってみろ、ミックミクの刑に処してやる」
みんなは知っているのに俺だけ知らないとか、仲間外れにされてるみたいで悲しくなっちゃうだろうが!
「さすがにもう伝えてないことはないよ。ね?ミク、レン」
「うん、もう伝えたいことは全部伝えたよ」
「そうそう、元々話さないといけない事なんて少ないしね」
ホントかなあ。……まあ3人が言うならそうなのだろ───っ!
「っ!ーーーぁっ……っ!」
「春樹?春樹!?……あ」
「春樹くん!大丈……あ」
「あちゃ~」
急に俺を襲う不快感。身に覚えがある感覚。これは、想いだ。神代類、草薙寧々、鳳えむの想いと記憶。それが濁流の様に頭に流れ込んできている。この脳を直接かき混ぜられるような不快感は忘れもしない、初めてセカイを覗いた時と同じものだ。……せめて心の準備をさせて。他人の人生を追体験するようなもんなんだぞ、コレ。
「……ごめんなさい。珍しい事だからわたし達も忘れていたんだけど」
いまだに不快感が俺を襲い続けているが何とかミクの話に耳を傾ける。
どうやら稀にセカイを構成する『想い』に別の人の想いが混ざることがあるらしい。
条件は①セカイを生み出した『想いの持ち主』とセカイが受け入れること②セカイを構成する想いと同じ想いを持っていること。
つまり、3人は司と同じ『ショーでみんなを笑顔にしたい』という想いを持っており尚且つ司は彼らという存在が自分と深く関わることを受け入れた、ということなのだろうか。
「それでもあのセカイが司くんのセカイである事に変わりはないよ。司くん
……不快感が少し引いてきた、気がする!勘違いかもしれないけど我慢だ。俺には今、やらねばならないことがある。
「まだ話していないことがあったなぁ?もうないって言ったばかりなのになぁ?……全員そこへ直れ。刑を執行する」
「総員、退避ィー!!」
カイトの一声と同時に3人が別々の方向へ走り出す。その様はまるで訓練された軍人のようであり、または肉食獣から逃げる草食動物のようにも見える。
だがそんなことはどうでもいい。俺の頭の中からは既に、司の痛くて恥ずかしいセリフも、歌の生まれ方も飛んでいる。あるのはただ、どんな罰を与えようかという事だけ。
先ほどまで俺を蝕んでいた不快感はもうない。
「待てコラ泣かす」
地の底まで追いかけてやらぁ!
自分の勝手な解釈について
『誰もいないセカイ』に様々な変化が起きた時、メイコはまふゆがみんなから影響を受けたからと考察していましたが私はもう一歩踏み込んで『セカイを構成する想いに絵名ちゃんたちの想いも混ざったのではないか』と考えました。
けれどレオニやモモジャンのように最初から4人の想いで構成されているわけでもないのでやはりまふゆの想いが大本を占めているのかな、と。
多少ムリヤリ感は否めませんがこれなら色々と辻褄を合わせられるしこの路線でいくことにしました。