「ねえ、朝比奈センパイ」
「なにかな、暁山後輩」
昼休み、神山高校の屋上で校庭を見下ろす人影が二つ。そうです僕です、みんな大好き春樹くんです。
「先輩はカゲプロって知ってる?」
「知らない」
「え〜本当に〜?」
「知らない知らない」
「ようこそ、我が?」
「胎内へ」
「最善策は?」
「その目を見開いた」
「先輩、カゲプロって知ってる?」
「知らん知らん。カゲプロ?何それ知らんて」
「いや隠す気なしじゃん」
やかましいわ。そもそも何でこんな話をしてるんだ俺たち。
「ああそうですよ知ってますよ!この俺が知らないと思ってか!ああん!?」
「うわぁ逆ギレだ〜最低だよ〜」
「そうだ!俺は最低なんだ!うわああああん!」
「え、えぇ……」
もの凄いドン引かれているが関係ない。どうせ俺は最低のクズ野郎なんだぁ……。
「ど、どうしたのさセンパイ……?ボクで良ければ相談に乗るよ?」
「うぅ……グスン。野菜ジュース飲みたい」
「ないよ」
おのれ。神高生たるもの常に野菜ジュース持ち歩かんかい。
だが俺が落ち込んでいるのも事実。話してどうにかなるとも思えんが、まあいいか。
「実は今朝、司から聞いたんだが……」
「うんうん」
「司の妹が今、熱を出して寝込んでいるらしい」
「……うん?」
「これは非常事態だ。本当なら今すぐ見舞いに行きたいんだが、司に止められた。行くなら放課後にしろだとさ」
「………」
クッ、妹様が苦しんでいるというのになぜ俺は学校にいるんだ!?こうなったら類くんに頼んで学校を爆破するしか……。
「……え?それで落ち込んでたの?」
「おまっ、世紀の大事件だぞ!」
これがどれだけ大変なことかわかってないようだな貴様ぁ!
「……そういえば俺たち
「何って、楽しい雑談だね」
うん、楽しいかどうかは置いといてね。
「そうじゃなくてさ。キミ、なんでここに居んの?」
「いやいや、それはボクの
にゃんですと?
「だってここに来たの、ボクの方が先だったし」
そうだっけ。……そうだったかも。
「そういえばずっと聞きたかったんだけど、初めて会った時に杏のこと“杏嬢”って言ってたじゃん。嬢ってなに?なんで嬢?」
「えっ、そ、それは勢いと言いますかその……はい」
心の中でいつもそう呼んでたのでつい……ね?
「あとボクと杏が仲良いってことも知ってたよね?杏に聞いたら先輩とまともに話した事ないって言ってたよ。おかしいよねえ、この間初めて会ったにしては知ってるはずのない事まで知ってるし。……ねえ、センパイ。なんで、そんなことまで知ってたの?」
………。
「そんな事より司の妹の件だよ、どうするよおい」
「センパイって自分に都合が悪くなると話を逸らそうとするよねえ」
ハハハ、そんな事ないって、ハハハ。アーッハッハッハ!
「……はあ、そう言えば駅前に新しくアップルパイの専門店ができたらしいよ。SNSでも評判良いみたい」
「ほう。……それで?」
「それだけだよ?」
「……お見舞いの品がアップルパイってどうなんだ?」
「いいんじゃない?見た目も可愛いし、美味しいし。貰って喜ばない子はいないよ!たぶん!きっと!」
「イマイチ信用できないけど、まあいいか。放課後行ってみるよ。情報、感謝するぜ後輩」
「お礼はアップルパイでいいよセンパイ」
最初から目的はソレだったんじゃないだろうな……いや、いいけども。
「オーケーオーケー了解した。アップルパイの一つや二つや百や千、いくらでも持ってきてやらぁ!」
「そんなに食べたら太っちゃうよ〜」
アハハ、“太る"で済んだらバケモノだよ〜普通は死んじゃうよ〜ヤバイよこの子〜。
「それじゃ放課後行ってみるわ。……ああそうだ、キミってアイドル好きか?日野森雫とか桃井愛莉とか」
「え?まあアイドルの衣装ってカワイイし、うん好きか嫌いかの二択だったら好きだよ」
でもその2人って辞めたんじゃなかったっけ……、と疑問顔を浮かべる我が後輩。
へっへっへ、それなら爆弾を投下しよう。
「その二人、またアイドル活動を再開するらしいぞ。この情報は俺たちしか知らない。なぜそんな事を知ってるかって?それは俺が“なんでも知ってる系ミステリアスお兄さん”だからさ!」
それではサヨナラだ!Bye!また会おう!
「え、ちょっと!持ってよセンパイ!」
待ちません!言いたい事は全部言ったのでもう行きます!どうか探さないでください!ごめんなさい!
◇
「……さて、ここが例の“アップルパイ専門店”とやらか」
なるほど。話に聞いた通り評判は良いらしい。だってお客さんの量がえげつない。人がゴミのようだ。
「そして俺たちもこれから、ゴミになりに行くのであった」
「……待て。ちょっっっっと、待て。急に連れて来られたと思ったら、なんだここは!?」
なんだ、まったくやかましい奴よのう。
「見てわからんのか、司。ここはSNSで評判のアップルパイ専門店だ。知らないなんて遅れてるなあ」
「そんな事は見ればわかる!何故オレが連れて来られたのかと聞いているのだ!」
「愚問!それこそ愚問だぞ友よ!俺たちがここに来た理由は唯一つ!即ち妹様への見舞いの品の選定である!まあ、安心したまえマイフレンド。類くんから許可は得ている。1時間程度なら問題ないってさ」
「オレは許可してないんだが!?まったく類のヤツめ……だが咲希の為だと言われれば断る訳にもいかんな」
フッ、チョロい奴だぜ。やはり外堀から埋める作戦が一番有効だな。
「なら行くか。あの“ゴミ”のなかに!」
「
……どうしよう。なんかもう、メッチャ帰りたい。
いや入る前から薄々気付いてはいたが、女性客しかいないじゃないか。男は俺達しかいないの?……ヤバい心細くなってきた。
「いいか司俺から離れるなよ離れたら即その場で泣き叫んでやるからなこれはフリじゃないぞわかってるのかちゃんと聞いてるかおいこら司ぁ!」
「お前がここを選んだんだろう!怖気づくくらいなら最初から来るな!……おい離れろ、鬱陶しいぞ」
鬱陶しい……だと。この野郎言っちゃならねえ事を言いやがったな。だがまあ、今日のところは見逃してやる。運が良かったなペガサス王子。
ああ、これならまふゆを連れてくればよかった。そうだよまふゆがいたじゃないか。失敗した。女子の意見のほうが参考になるに決まってる。
「よし覚悟ができたぜ。女性客に『痴漢!』と叫ばれた瞬間に全力で土下座をする覚悟が」
「何の覚悟だ。いらんだろうそんなもの」
わかってないな。手が少し触れただけで痴漢扱いされるこのご時世だぞ。正しく対処しなければ
プライド?ハンッ!そんなものはない。俺は俺を守る為なら土下座だろうとできる男だぜ。プライドなんて鼻をかんだ後のちり紙ほどの価値もないわ。
「おっ!おい司あれ見てみろよ。薔薇の形したアップルパイだってよ。女性受けしそうだな。1個はこれにしよう」
「1個は?いくつ買う気なんだお前は……」
いくつ買おう。……妹様には2いや3……ええい、出血大サービスだ!5個にしよう!。付き添ってくれた礼に司にも1個。後は暁山後輩にも1個でいいか。そうだ、セカイの狭間にいるミク達にも買っていこう。当然俺の分も買うとして……。
「合計で12個だな。よし後11個選ぶぞ
「それはいいが、いい加減離れろ」
む、しかたない。いったん離れてやろう。……痴漢扱いされたら司を盾にして逃げようかな。
「にしてもさすがはアップルパイ専門店。アップルパイだけなのにメッチャ種類あるな。どれも美味そ───」
─── ドンッ
「キャッ!」
突然肩に伝わる衝撃。耳へと届いた女性の悲鳴。頭の中が真っ白になった俺は光の速度で行動へと移った。
「ご、ごめんなさい!大丈夫で……す、か…?」
「春樹早まるな!本当に土下座しようとするんじゃない!」
「は、離してくれ!早く謝らないと(社会的に)死んでしまう!」
謝らなきゃ死ぬ。謝らなきゃ死ぬ!謝らなきゃ死ぬ!!うわあああああ!!
「つ、司……さん?」
「おい春樹!いい加減に……ん?おお!誰かと思えば穂波ではないか!久しいな、元気そうで何よりだ!!」
「え、うるさっ。ん、誰?誰だって?」
ホナミ?だれだれ、まさか彼女っすか先輩。まっさかね~。
「おいおい知り合いか友よ。俺にも紹介───おっふ……」
ぶつかった直後に頭を下げたから顔を見ていなかったが、こんな偶然があるものなのか。
眼前にいるのは髪を横で一房にまとめた年齢の割に大人びた印象をもたせる少女。
妹様の幼馴染であり『教室のセカイ』を生み出した“想いの持ち主”。
宮益坂女子学園一年B組 望月穂波がそこにいた。
◇
「驚いたぞ。まさかこんなところで会うとは。いやそういえば穂波は昔からアップルパイには目がなかったな」
「は、はい。この店にも開店初日から来てます……」
「はっはっは!本当に変わらないな!……どうした春樹、さっきから一言も喋ってないぞ」
どうしたじゃねえよ。話に入れるほど親しくないんだよこのバカ。コミュ力お化け。
だがそろそろ俺も会話に入りたい。仲間外れは寂しい。
現在、俺たちは買い物を済ませ店の外にあったテラス席にいる。いやあオシャレな店はやっぱり違いますなあ。心なしかコーヒーも美味く感じる。本当に美味いのかもしれないけど。
「えーと、先ほどはぶつかってしまってすみません。俺は朝比奈春樹っていいます。司とは中学からの友人でして……その、決してわざとではないので警察を呼ぶとかはやめていただけると嬉しいなぁ、と……」
「まだそんなことを言っているのかお前は……。穂波はそんなことはしないから安心しろ。考えすぎだまったく」
「バカ!おまっ、この……バカッ!」
考えすぎなわけがあるか!俺たち男がどれほど無力かわかっているのか!?女性が“是”といえば“是”となり“黒”といえば“黒”になるんだぞ!お前もいつかわかる日が来る。世界は不平等に平等なのだ。
「わたしは望月穂波といいます。えっと、わたしも不注意でしたし気にしないでください。それよりおケガはありませんか?絆創膏くらいしか持ってませんけど……」
「いやもうほんとお気になさらず!それどころかアップルパイ選びのアドバイスまで貰ってすみません!」
「い、いえいえ!わたしも選ぶの楽しかったので気にしないでください!」
「いつまで続くんだ。気にしなくていいと言っているのだから気にするな」
気にするわボケェ!こちとら人生がかかっとんねん!この先の人生、性犯罪者の汚名を背負って生きていくなんて俺は嫌だ!
「そんなことより。知っているだろうが妹の咲希が復学したのだ。穂波、余計なお世話かもしれんが昔のように妹と仲良くしてあげてほしい」
「ッ………は、はい」
「………おっふ」
どうしよう。いや司は何も知らないから仕方ないけどこの子にそれを言うかぁ。でもさすがは
確か先日、妹様と一歌譲が日野森志歩との仲直りに成功したらしいのだが、それはいい。あの二人なら何も心配はいらないと思っていた。毎日セカイで練習してたみたいだし。
だが最後に立ちはだかる壁はその比ではないだろう。目の前に座る少女、望月穂波の過去のトラウマとその性格を考えると一筋縄ではいかない様な気がする。
想いは皆同じ。その気持ちを伝えたい、けれど伝えられずに起きた“心のすれ違い”。
デリケートすぎて俺の出る幕はないなこれ。
そもそも本来部外者である俺がでしゃばっていいものではない。後は妹様たちに任せて見守ることに徹したほうがよさそうだ。
「まあまあ司、話すのもいいけど俺たちもいい加減にこのパイを食おうぜ。せっかくコーヒーも頼んだのに冷めちまう」
「む、それもそうだな。穂波に薦められて選んだが確かに美味そうだ。是非とも温かいコーヒーと合わせて食べたい」
「そ、そうなんです!このお店のアップルパイは冷めても美味しいんですが温かいままで食べたほうが嚙んだ時に口の中でフワッ!っと甘さが広がって言葉にならないほど美味しいんです!ぜひ冷める前に食べてください!」
「お、おう……。冷めるって俺たちコーヒーの話だったけどアップルパイもなのね。そういえばこれって丁度できたてだったな。いただきます」
「ああ、いただきます」
俺たちはそろってアップルパイを手でつかみ、口へと運ぶ。行儀が悪いとかいうなかれ。フォークがないんだ。
───サクッ
「……ッ!」
サクッとした生地に口いっぱいに広がる芳醇な香り、だが決して甘すぎることのない絶妙なラインだ。中に入っているのはリンゴだけかと思えばなんとカスタードクリームまで入っている。これがリンゴの酸味との相性がいい。決してくどくはなく、それどころか更に食欲を刺激される。……野菜ジュースが欲しくなってきた。
「ないからな」
「まだなにも言ってないんですが……」
「言わずとも顔に書いてある」
俺はそんなにわかりやすいのだろうか。おかしい、俺はミステリアス系(自称)のハズなのに。
「ふふっ、気に入っていただけたみたいでよかったです」
「ハッハッハッ。それを言うなら望月さんこそ───いや、本当によく食べるな」
最初はトレーに山のように積み重なっていた筈のアップルパイたちが既に半分もなくなっている。俺たちが一つを完食している間にいくつ食べたのか。望月穂波、恐ろしい娘。
「穂波は昔からアップルパイが大好物だったからな。そういえば手作りのアップルパイを持ってきて咲希たちと楽しそうに食べていたこともあった。あの頃は子供ながらに、将来は良いお嫁さんになるだろうと確信したものだ」
「気を付けろよ、司。今の発言はセクハラ一歩手前だぞ。お前が捕まったらインタビューで『彼はいつかやらかすと思ってました』って言うからな」
「万が一にもあり得んが、その時はお前も道連れにしてやる。覚悟しておけ」
仮にもスターになろうって男の言葉とは思えないセリフを吐くじゃないか。
と、そこで初めて周りからクスクスと笑い声がすることに気が付いた。よく見れば穂波嬢もクスクスと笑っている。おい司、お前笑われてるぞ。プークスクス。
「ふ、ふふっ。す、すみません。とても仲がいいんですね。すこし羨ましい……」
「?何を言っているんだ穂波。オレはお前たちほど仲の良かった者など他に知らんぞ。昔は咲希、一歌、志歩、穂波の四人でいつも遊んでいただろう?」
「そ、そう、ですよね!変なこと言ってすみません。気にしないでくださいっ」
おいおいおいおい、また変な空気になっちまったじゃないか。
「(お、おい司。お前もう余計なこと言うな。この空気どうしてくれるんだよバカ野郎)」
「(……なぜ態々小声で―――オレがいつ余計なことなど言った?いや、そんなことより穂波の様子に違和感がある。すこし探るぞ)」
「(え?……あっおい!)」
「穂波。つかぬ事を聞くようで悪いが、咲希たちとうまくいっていないのか?」
「―――えっ」
ええええええ!?!!?!お、おまっお前ぇ!!探るって言ったじゃないか!どこの世界に直球で聞くことを“探る”っていう奴がいるんだこのお馬鹿!
「も、望月さん!このバカの言うことは無視してくれていいから―――」
「―――春樹、すこし黙っていてくれ」
ぐぅ……いやでもコイツ一人に喋らせると不安で俺の胃がもたない。はわわわわ、どうしよう、はわわわわ。
「すまない、不躾なことを言っている自覚はある。オレは見当違いなことを言っているのかもしれん。だがもしも仮にオレの考えが合っているのであれば、オレに何かできることはないか?咲希だけじゃない。オレはお前達の事も妹の様に思っている」
司の気持ちは、痛いほどわかる。わかってしまうのだ。大切な妹と同じく妹の様に想っている幼馴染たち。その彼女たちが苦しんでいると知ってしまった以上ジッとしていられるわけがない。……俺もそうだった。
けれどもこの件に関しては俺たちは介入しないほうがいい、と思う。彼女たちの問題は複雑で、繊細だ。それを抜きに考えても時間が空きすぎていた。どれだけ仲が良くても、さすがに離れていた期間が長すぎたのだ。
恐らく司も心のどこかで感づいている。それでもなお、見ているだけというのができないのが天馬司だ。
――― 誰もかれもが司の様に振る舞える訳ではないというのに。
幼馴染を護るために自分から遠ざけた者。自分を守るためそして幼馴染を巻き込まないために距離を置いた者。もしも、彼女たちが『自分の本当にしたいこと』を自覚していれば違った形になったのかもしれないが、それを齢十五の少女たちに求めることのほうがおかしい。
「望月さん。本当にコイツの言ってることは気にしなくていいから―――」
「―――わ、」
「……うん?」
穂波譲が俯きがちに口を開いた。
「っ……わたしは本当に大丈夫です、のでっ!……っす、すみません!わたし、これで失礼します!」
ドンッと勢いよく立ち上がる。だがその行動に驚くことはなかった。頭の中が真っ白になっていたのだ。
――― 彼女の瞳から、頬を伝って流れる雫が見えたから。
「待っ、穂波!」
「司、行くな」
走って行く彼女を追おうとする司の腕をつかみ、制止する。
「手を放せ!穂波を追わなければならん!」
「踏み込みすぎだ。この件に対しては本来、お前も俺も首を突っ込む権利はないんだ」
「この件?やはり何か知っているのか!」
知ってる。けれど言わない。
「落ち着けよ。今お前がすべき事はなんだ?彼女を追いかけることか?違うだろ。本当に彼女たちの事を考えているのなら、お前は何もすべきじゃない。今のお前にできるのは妹様が折れない様に、挫けない様に寄り添い続けることだ。彼女たちを知っているお前だからこそ、彼女たちの理解者たりえるということを自覚しろ。それは司にしか出来ない事だ。違うか?」
「……オレは、咲希たちの為に何もしてやれないのか?」
それは違う、と言いたかったがすんでのところで堪える。彼は決して無力なんかではない。何もしてあげられないなんてことはないのだ。ただ彼女たちの問題に、部外者である俺たちが踏み込めるのはここまでというだけで。
「ならすべてが解決したらステージに招待してショーでも見せてあげればいいさ。きっと喜ぶよ」
「そう、だな。……うむ!そうと決まれば早速練習に行ってくる!またな、春樹!」
「おお~……お?え?もう行くの?」
「思い立ったが吉日だ!ではな!」
そして司は去っていく。相変わらずせわしない奴だ。だがあの切り替えの早さは俺も見習わなければな。
一人、取り残されたテラス席。
「……俺もそろそろ行くかねぇ」
温かったコーヒーは既に冷めきっていた。