セカイの狭間から友人たちを見守ろうと思う   作:日彗

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間に合ったァァァァァ!!!!
本気になれば半日で一話作れることを証明してしまった……
やれば出来る子とはどうやら私のことのようだ。頑張って本編も進めよう。



誕生日企画
“歌姫”生誕祭


 

 8月31日

 

 そう聞いて真っ先に思い浮かぶものは何だろうか。夏休みが終わる? 宿題がまだ? ……違う、そうじゃない。勿論『やさいの日』なんてことが言いたいわけでもない。では俺の誕生日じゃないかって? 俺の誕生日はまだまだ先だ。

 

 だが着眼点は素晴らしい。

 

 8月31日。それは我らが“()()”を祝う日。

 

 すなわち、初音ミクの誕生日である。

 

 

 

 

「カイト、少し傾いてるぞ。姐さんの方は順調そうだな。こらレン少年、つまみ食いはいけない。俺だって我慢してるんだお腹空いたなあ」

 

 各人に指示を出しながら全体のバランスを確認する。

 うん、素晴らしい。

 

 ふと時間を確認するともう夜の九時を回っていた。そろそろ迎えに行った方がいいかもしれない。

 

「春樹くん、こんな感じでどうだい?」

 

「ん、バッチシ! じゃ俺はそろそろターゲットを捕獲しに行ってくる」

 

「そこだけ聞いたらイケナイ事してるみたいだなぁ」

 

 俺もそう思う。

 

「けどここまで来たら最後までしっかりやりたいよな。レン少年ー! 後は任せたぞー!」

 

「任せてよ! 完璧に仕上げておくからさ!」

 

 頼もしくなったなあ。お兄さんビックリ。

 

 

 

 

 さて、捕えようにもまず見つけないと話にならないな。

 

「まあ問題ないか」

 

 良くも悪くも、我らが歌姫殿は存在感が強すぎる。適当に歩いてたらそのうち見つかるだろう。

 

『~~♪ーー~~♪』

 

 なんて考えながら歩いていると、どこからともなく聞こえてきた。何度も聞いたことのある、もはや耳に馴染んでしまった歌声。

 はいフラグ回収~。予想以上に速く見つかってよかった。

 

「おーいミクー! 初音ミクー! キミはもう包囲さえているー! はやく出てきなさーい!」

 

「~~~♪……あっ春樹見つけた! ねえ、メイコ達がどこにいるか知らない? 探してるんだけど見つからなくて……」

 

「……知らないなあ! いやホントどこにいるんだろうなあ!」

 

 ふっふっふ。後はこのまま時間を稼げばいい。任せろみんな、俺そういうの得意なんだ。(根拠なき自信)

 

「まあそのうち見つかるさ。そんな事より少し話でもしようぜ。俺は猛烈に話がしたい」

「珍しいね…? う~ん、でも大勢の方が楽しいよ?」

 

 バッカ、お前ホント、バッカ。大勢でいたら疲れちゃうでしょうが。

 

「たまにはいいじゃないか。最近ゆっくり話せなかったし」

 

「それもそうだね」

 

 フゥ、チョロいぜ。

 さて何の話をしようか。……どうしよう。

 

「き、今日はいい天気ですね…?」

「え?」

 

 違うだろ俺! もっと他に何かあるだろ俺! 何でもいいからひねり出せ俺!

 

「別に無理に話題を探さなくてもいいよ……?」

「馬鹿野郎。俺の辞書に『無理』なんて文字はない」

 

 そうさ、俺は不可能を可能にする男。この程度の事で屈したりはしない。俺を舐めるな!

 

「明日もいい天気だといいですね……?」

 

 ごめんなさい、誰か助けて。

 

「あ、じゃあわたしから聞きたいことあるんだけど、いい?」

「ん? ああ、勿論ですとも。なにかね、なにが聞きたいのかね?」

 

 なんでも答えますぜ。何でも知ってる系ミステリアスお兄さんは自称だけど伊達じゃあないぞ。

 

「今日が何の日か知ってる?」

 

 はい詰んだ。

 

 もうダメだよメイコ姐さん。俺には荷が重かったんだよ。

 イヤイヤイヤ、諦めるのはまだ早い。脳をフルで回せ、まずはこの話題を逸らすんだ。

 

「……や、やさいの日?」

 

 おっふ。ミクの目がだんだん冷たくなっていく。し、仕方ないじゃないか、俺はみんなの想いを背負ってここにいるんだ。ぴえん。

 

「……じゃあもういいよ。春樹最近はどう? 楽しい?」

 

「あ、ああ、うん。楽しいよ、楽しいから機嫌直してくれよ」

 

「知らないっ」

 

 あらら、拗ねちゃった。どうしよう。

 

「ほら機嫌直せよ。会話だ会話、コミュニケーションは大事だぞ」

 

 ふんっ、とそっぽを向くミク。たまに見せる子供っぽい所が大変愛おしい。微笑ましいですなあ!

 

「なあミク」

 

「……なに?」

 

 なんだかんだ言っても返事はしてくれる、その素直さもまた彼女の美点だろう。

 

「ここで初めて会った時の事、憶えてるか?」

 

「……うん」

 

 今となっては懐かしい、文字通り世界が変わった日。セカイの視え方が変わった日。

 

「……懐かしいね、憶えてるよ。忘れるわけがない。“セカイの狭(ここ)間”に人が来るのは珍しいから」

 

 あの時は本当に驚いた。驚きすぎてテンションがおかしくなってしまった。冷静に考えると今ここにいる事もおかしいのだが。なんで俺、順応してるんだ?

 

「急に歌わされた時なんて泣きそうになったね」

 

「だ、だって歌いたそうにしてたから……」

 

 何を言っているんだコイツ。俺がいつそんな顔をしたんだ、ひっぱたくぞ。

 

「そんでセカイを見守るとか想いを見届けるとか、意味の分からん事言い出してな」

 

「だって本当のことだし……」

 

 だんだん声が小さくなっていくミクを横目に笑みがこぼれる。

 

「でもこんな“今”も悪くないなって思うんだ」

 

 最初の頃は警戒していた。説明されても、身をもって体験しても。この状況に慣れてはいけない、気を抜くな、と。

 

 だけど、それでも、美しいと感じたんだ。

 

 ミクが教えてくれたから、俺は今ここにいる。多くの人と出会い、多くの人の想いに触れる事ができた。今となっては感謝しかない。

 

「だからさ、ありがとうミク。俺を誘ってくれて、俺と出会ってくれて。おかげで最近は楽しいよ」

 

「……そっか、良かったぁ。本当は迷惑だったんじゃないかって心配だったんだ」

 

 安心したように呟くミク。恥ずかしくて普段なら言えないが、今日くらいはいいだろう。

 

 時間稼ぎは大成功だ。

 

 ミクの頭をガシガシと掻き回す。

 

「ほれ、そろそろ行くぞ。みんなが待ってる」

 

「え? 行くってどこに…?」

 

 あっはっは!それを言っちゃつまらんだろう。

 

「と、その前にコレを着けてくれ」

 

 では行こうか、主役を待つ会場へ。

 

 

 

 

 わたしは今、前の見えない暗闇を歩いていた。

 これは比喩などではなく、先程春樹から渡された目隠しを着けた為だ。

 

「ね、ねえ春樹、まだ着かない?」

 

「……今歩き始めたばかりだろ。何言ってんだ」

 

 いや、彼は何も分かっていない。何も見えない暗闇の中歩く事がどれだけ恐いのか。繋いでいる彼の手がなければ一歩も歩けそうにない。

 

「まだ着かない?」

 

「しつこいなお前」

 

 むっ。まあ確かにしつこかったかもしれない。だけど本当に怖くて恐ろしいのだ。わたしはどこに連れて行かれるのだろう。

 

 それから少しの間沈黙が支配し、足音だけが聞こえる。こうなるといよいよ彼の手だけがわたしにとっての光だ。……あったかい。

 

「よし、着いたぞミク。今外すから動くなよ」

 

 どうやら着いたようだ。ようやくこの暗闇から解放されるかと思うと逸る気持ちが抑えられない。

 

「おいこら動くな」

 

「ご、ごめんなさい」

 

 目隠しが外され光が目に飛び込む。眩しくて何も見えなかったが少しずつ目が慣れてきた。

 

 ―――パンッ!

 

 突如耳に襲いかかる爆音に一瞬フリーズする。何が起きたのか分からない。とにかく現状を把握しないと。

 

 光に慣れてきた目で音のした方を見つめると、そこではメイコやカイト等が筒のような物を構えていた。

 

 ああ、さっきのはクラッカーの音だったんだ。

 

 まるで人ごとの様に分析している自分に驚きつつも最近春樹に似てきたのかなぁと頭の隅で思考する。いや正直に言おう、とても動揺している。

 

『ミク!誕生日おめでとう!!』

 

 涙が、止まらなかった。

 

 

 

 

『ミク!誕生日おめでとう!!』

 

 無事サプライズも成功したし、もう満足だ。この達成感があるからやめられない。

 

「ミク、誕生日おめでとう。ほら今日の主役がいつまで黙ってんだ……よ…」

 

「うっ……グスッ、はるきぃ〜……」

 

 あ、え……なんで泣いてんの!? 俺のせい!? もしかしなくても俺のせい!?

 

「ご、こめんミク! 悪かったよ記念日知らないフリして! ほら言ったらサプライズにならないだろ!? 仕方なかったんだよごめんなさい!」

 

「あ〜春樹が泣かした〜」

 

 お黙り、レン少年!

 

「春樹くん、女の子を泣かすなんて最低よ?」

 

 え、姐さんもそっち側?

 

「ち、ちくしょう! カイトに命令されたんだ……!」

 

「なんでボク!?」

 

「ち、違うの! これ嬉し泣きだから心配しないで! 祝ってくれてありがとう、みんな!」

 

「聞いたか、つまり俺のせいじゃなくみんなのせいって事だ。そしてやはり俺は悪くない」

 

「全部が台無しだよ」

 

「ま、まあまあ喧嘩しないで、あ、ほら! ご馳走がいっぱい! このお寿司って春樹が作ったの?」

 

「そんなわけないだろう。買ってきた」

 

「あ。そ、そうなんだ……」

 

 なんだその顔は。作るより買ってくるほうが美味いんだぞ。

 

「じゃああのサンドイッチは!? 一口サイズに切ってあってカワイイ~」

 

「それも買ってきました」

 

「そして私が切りました」

 

「美味しかったです」

 

 !? 食ったのか!? レン少年、つまみ食いするなって言ったのに食ったのか!? 俺も食べたい。お腹すいた。

 

「え、ええと……あ、このケーキ私の絵が描いてある。こんなのも売ってるんだね」

 

「ああ、それは俺が作ったヤツだ」

 

「「「「ええ!?」」」」

 

 なにを驚く、そんなもの売ってるはずないだろう。常識的に考えたまえ。手作りだ。

 

「これ市販品だと思ってた!」「なんで私たちにも教えてくれなかったの!?」「結構器用なんだね……」

 

「キミたち俺に対して失礼すぎない……?」

 

 昔はよくまふゆに描いてあげてたものだ。懐かしい。

 

「春樹」

 

「うん?」

 

「ありがとう」

 

 ……ああ、やっぱり彼女に泣き顔は似合わない。笑顔が一番だ。

 

「その程度で満足するなよ、パーティーはまだ始まったばかりだぞ。ほら向こうのステージで豆腐先輩たちも待ってる。歌いたいんだろ? 行ってこい」

 

「うん! 行ってくる! 春樹ありがとう!」

 

 スゲェはしゃいでるな。悪い気はしない。

 

「ところで春樹くんはミクへのプレゼント何にしたんだい?」

 

「ん?俺は別に大したもの───ではあるな、うん。まふゆ作詞の司作曲という曲を一つ。持つべきものは才ある妹と友だな」

「ははは、それは豪華だね。後で僕たちも歌ってみていいかな?」

「いいんじゃないか? ミクなら喜ぶだろ」

 

 それにしてもミクが今歌ってる曲、『Tell Your World 』か。好きだねえあの曲。俺も好き。

 

「おめでとう、ミク」

 

 また来年もこの日を祝えますように。

 

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