セカイの狭間から友人たちを見守ろうと思う   作:日彗

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読んでくださった皆様ありがとうございます。日彗です。
なんとか2話目の投稿となります。
…ところで皆様は「ナイツ・オブ・ホワイトガチャ」は引きましたか?
私も司くんと瑞希ちゃん狙いで引いたのですが、まあすり抜けるすり抜ける。
確定演出からのすり抜けは心が、欠けそうになる…


2話 朝比奈まふゆの事情

 

 窓から差し込む朝日を忌々しげ睨みつける男が、俺の部屋にいた。

 まあもちろん、俺のことなんだが。

 

 仕方がない。昨夜はほとんど寝ていないんだ。昨日の俺は少しおかしかった気がする。

 やれセカイがどうの歌がどうの。どうしてあそこまでテンションが高かったのか自分でもよく分からない。今になって思えば昨日のアレは全て俺の妄想、幻覚なのではないかとさえ思う。だが……。

 

 自分のスマホに視線を落とす。そこにはダウンロードした覚えのない、見たことも聞いたことも無い曲が入っていた。

 

『untitled』

 

 やはり、夢ではないらしい。

 『untitled』。ミク曰くメロディも歌詞もない、現実の世界とセカイを繋ぐ鍵のような役割を持つ楽曲……らしい。正直コレについても考えることは多そうだが、ひとまず保留にしよう。なぜなら既に朝だ。朝食だ。学校だ。

 

 俺はベッドから起き上がり朝食を食べにキッチンへ向かう。

 

 ……この匂い。今日はどうやらトーストとスクランブルエッグのようだ。

 そう、俺レベルになると匂いだけで料理を当てることなぞ容易い容易い。アッハッハ!

 

「おはよう、春樹。目の下にクマができてるよ?また徹夜でもしたの?」

 

 キッチンに足を踏み入れた瞬間、声を掛けられる。

 既に中には父さんと母さん、そして双子の妹のまふゆがいた。

 そして今話しかけてきたのがまふゆだ。

 

 ……焦るな、落ち着け、いつも通りに返事を。

 

「ああ、おはようまふゆ。いやぁ聞いてくれよ! 昨夜は友人からのメッセージが途絶えなくてさ。ほとんど寝れてないんだよ。おお! 今日の朝食はトーストとスクランブルエッグか! いいね、美味しいかい?」

 

 喋りながら空いている椅子に座る。

 違和感はなかっただろうか。ちゃんといつも通りの俺に見えるだろうか、などと考えるがどうやら大丈夫そうだ。

 ありがとう司! お前と一緒にショーの練習を(数回)したおかげだ! 今度お礼に生姜焼きを作ってやろう。ピーマンも添えて。

 未来のスターたるもの、ピーマンくらい克服せねば。それにピーマンは栄養満点なんだぞう!(善意)

 

「……うん! 美味しいよ、お母さんの作る料理はなんでも!」

 

 まふゆから帰ったきた返事。嬉しそうに頬を緩める母。それらを微笑ましげに見つめる父。

 俺はまふゆの目を見つめる。『目は口ほどに物を言う』という言葉があるように彼女の目を通して心の奥底、を覗くように。

 

「……ああ、そうか。それは良かった」

 

 これも司との演技指導の賜物なのだろうか。心にもない事が口から出ていく。

 まふゆは笑っていなかった。顔は確かに笑っている。けれど目は、心は決して笑っていない。揺れ動いてすらいない。それを両親は気付いていない。……いや、気付かないのも無理はないのかもしれない。俺だって気付いたのは中学3年の夏頃だったのだから。

 

 トーストを一口、齧る。

 

 サクッとした食感、口の中で広がるバターの風味。

 だけど、美味しいと感じないのは何故だろう。

 別に、味を感じない訳ではない。ただ美味しいと思えないのはこの空間の所為だろうか。

 

 朝比奈まふゆは、味覚を感じられない。

 味覚だけではない、本人の話だと周りが綺麗だとか可愛いだとかいうものを見ても何も感じられないらしい。さらには自分自身がわからない、と。

 コレらは先天性のものでは決してない。全ては後天性のもの。『朝比奈家』という環境、否『朝比奈まふゆ』を取り巻く環境が原因の心因的なもの……だと推測している。

 

 昔から優秀だったまふゆは両親から、そして学校の同級生や先生から大いに期待されていた。朝比奈まふゆは『優等生』だから、と。いつしかまふゆは『優等生』を演じるようになった。演じ続けるように、なった。

 だからこそ、今のまふゆを見ていると自分が情けなくなる。俺は何をしていた?俺は兄として妹を、まふゆを守らなければいけなかったはずだ。

 ……それに、こうなった原因は俺にもある。

 

 はぁ、とため息をこぼす。

 そんな俺を見てまふゆが話しかけてきた。

 

「春樹、体調でも悪いの? 早く食べないと学校に遅れるよ?」

 

「あ、ああ、うん大丈夫だよ」

 

 残りを一気に平らげる。おっと、結構キツい。

 

「ご馳走様! じゃ俺は顔洗ってくるわ。まふゆこそ今日も部活の朝練があるんだろ?遅れないよう急げよ」

 

 俺は立ち上がり流し台に皿を置いて部屋を出ていく。

 ここまでで一度も俺は、両親とは目が合っていない。

 

 

 

 

 洗面台の前に立ち、鏡に映る自分を見る。

 ……確かに酷いクマだ。恐らく寝不足だけではないだろう。

 昨夜はいろいろありすぎた。

 昨夜、セカイの狭間でミクに元の世界への戻り方を聞いた後、『せっかくだからどんな世界が生まれたのかもっとよく見てみようよ』と言われ渋々付き合った。これから見守ることになるセカイ達だ。知っておいて損はないだろうと考えたのだ。

 

 ……結論から言うとちょっとだけ後悔した。

 

 想いから生まれるセカイが全てああなのか、それともセカイの狭間にいたからなのか詳しくはわからない。

 俺がセカイを覗いた瞬間、大量の情報が、想いが頭の中に激流のように流れ込んできた。

 

 それはセカイを構成する想い。そして想いの持ち主たちの記憶。

 

 まるで、頭の中をかき混ぜられているかのように錯覚するほどだ。次からは心の準備をさせてほしい。

 だが、それだけならまだいい。いや、よくはないがそれどころじゃない。

 

 先ほども言ったように流れ込んできたのは『想い』、そして『記憶』だ。

 どのセカイが『誰の』想いでできているのか。……正直、知らない人ばかりだったが中にはよく知っている者もいた。

 

 ワンダーランドのようなセカイは俺の親友、天馬司の。

 

 そして、例の誰もいないセカイは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──朝比奈、まふゆのものだった。

 

 




次回 朝比奈まふゆの事情②(仮)お楽しみに
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