セカイの狭間から友人たちを見守ろうと思う   作:日彗

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4話 天翔けるペガサスと書き天…!(ry

 

 今朝はいつも以上につかれた。

 結局あの後、まふゆが洗面所を出るのを待って顔を洗った。あんな気障なセリフを吐いた直後に素面で戻れるほど俺の精神は頑強にできていない。

 その後、準備を済ませた俺たちは共に登校。(途中まで道が一緒なのである)道中とても気まずかったが、やっと我らが神山高校へと到着したのだ。

 

「けど暇だ…」

 

 部活の朝練があるまふゆに合わせて登校してきたわけだから、朝礼まで結構時間がある。

 誰かいないものだろうか。誰もいないのであれば今ここで大声で歌ってやろうか。

 なにがいいかな、と考えているうちに教室につく。

 

 『2-A』

 

 此処こそが我らが学を学ぶ聖域。そして中には恐らく()がいる。常に妹の見本となる兄であろうとするあいつは、いつも朝が早いのだ。

 

 ガラッ、と勢いよくドアを開ける。

 

「ピーマン!」

 

 叫ぶ俺に、ビクッと体を強張らす彼。

 

「ピーマン! ピーマン!! ピーマン!!!」

「朝からやかましいぞ! それとピーマンを連呼するんじゃない!!」

 

 アッハッハッハ! アッハッハッハッハッハ! 滅茶苦茶楽しい。

 

「グッドモーニング、司。いい朝だね」

「……なぜわざわざ『いい朝』という意味の言葉を二つ使った?」

 

 意味なんてないさ! 意味なんて嫌いだもの!

 

 ふぅ、と一息つく。笑いすぎてポンポンが痛い。

 

「なあ司。アレしてくれよ。司お得意の名乗り口上」

 

「今か!? だがファンの期待に応えてこそ真のスター!いいだろう」

 

 椅子に座っていた司が立上り代わりに俺が座る。あーどっこしょ

 

「……お前は時々年寄り臭くなるな」

 

「はい! どうぞ!」

 

 話を聞け、という声が聞こえる。聞こえないわけではない。聞いたうえでのスルーなのだ。

 そもそも俺は司の言葉を聞き逃すようなヘマはしない。

 

「あーコホン! 天翔けるペガサスと書き天ーー!」

 

「そんな未来のスターたる天馬司に聞いてほしい話がある」

 

「ーー馬! …って、お前が名乗れと言ったんだろうが!聞いてほしいのならまずお前が聞け!」

 

 荒ぶる司。真面目風な顔をする俺。ヤベェ超楽しい。

 

「まあまあ落ち着け、どうどう。……天馬だけに?」

 

「やかましい!!」

 

 司は一つ大きなため息をつくと近くの椅子を持ってきて俺の前に座る。

 

「それで話とはなんだ」

 

「……そんなお前が大好きだぜ」

 

 あれだけ弄られておきながらこの余裕。というより器のでかさが半端ない。

 どうかいつまでも、そのままの君でいてくれ。

 

「……司はさ、俺が助けてくれって言ったら助けてくれるか?」

 

 ああ、本当に俺は卑怯者だ。司が何て言うか分かっているくせに。自分を安心させたいが為に司を巻き込もうとしている。

 

「いや悪い、やっぱり何でもないんだ。ああ、そういえば妹様は元気か? 確かそろそろ復学するんだろ?」

 

 司を巻き込むのは駄目だ。

 ただでさえコレから忙しくなるのに、そこに俺たちの問題まで抱え込ませる訳にはいかない。(セカイの事は勿論、司は明日オーディションがあるらしい)

 

 まふゆには『一人で抱え込むな』何て言ったくせに自分はコレだ。

 ほとほと自分に呆れる。

 

「当然だ!」

 

「……うん?」

 

 気が付いたら司の顔がすぐ目の前にあった。近い近い。ディスタンス!ソーシャルディスタンス!

 

「お前が何を考え、何に苦しんでいるのかは知らん。話そうとしない以上無理に聞く事もせん! だがな春樹。オレはスターになる男だ!」

 

 立上り、胸を強く叩く親友。

 

 な、何を言っているんだコイツは……。

 何故その流れからスターが出てくる。というか妹様の話はスルーですか。

 

「いいか春樹、スターはショーにおいて最も注目を浴びる存在だ。それは観客の笑顔の殆どが集中する事を意味する。つまり! いずれ真のスターになるオレの周りには常に笑顔が溢れていなければならない!」

 

 わからない……司が何を言っているのかわからない。スターだから笑顔が溢れるのか、笑顔が溢れるからスターなのか。

 マズイぞ。スターを連呼するからゲシュタルト崩壊してきた。

 

「スターて何だっけ……」

 

「春樹、オレはお前の事をかけがえのない友だと思っている」

 

 おおっと、話を聞かない。さっきの意趣返しか?

 

「オレは友人に対して隠し事はしない。たがそれはオレの価値観であり、エゴだ。それをお前に強制させたりはせん」

 

 ……ああ、これは駄目だ。司に頼りたくなっている、縋りたくなっている。暗くなっていた俺には、彼の光は眩しすぎる。

 

「………」

 

 かつて、まふゆを救う為思い付く限りあらゆる方法を模索し実行してきた。だがまだ試していない事が二つある。

 

 一つ目は両親に今のまふゆの状態を全てバラす事。

 演技の上手いまふゆの『仮面』を剥がすのは苦労しそうだが恐らく出来なくは無い。問題は両親が全てを知る事で事態がどう転ぶか予想がつかない事だ。

 両親が受け入れ反省し、まふゆとの関係が良好になっていくのであれば良いがそんな物語の様な都合のいい展開はないだろう。

 今まで隠し続けてきたものがバレてしまったというショックで、まふゆの状態が悪化して壊れてしまう危険性すらある。

 

 故にこの案はボツにした。不安要素が大きすぎる。

 

 二つ目は、天馬司を巻き込む事。

 正直なところ、俺の中ではこれが一番可能性がある。

 

 まふゆを救うことが出来ず、己の無力さに失望していた俺を救ってくれた親友(一等星)

 多分、いや間違いなく司ならばまふゆも救うことができるだろう。

 時間はかかるかもしれない。一筋縄ではいかないかもしれない。

 それでも知ってしまった以上、天馬司という男は自ら関わろうとする事を辞めない。辞められない。

 

 それはまるで、呪いのように。

 

「ありがとう司。でも本当に大丈夫だからさ。困った事があったら、ちゃんと頼るから」

 

 俺は(まふゆ)親友()を天秤にかけ、親友()を優先してしまった。

 

 兄として妹を救うためなら手段を選んでいる場合じゃない事は分かっている。

 

 だから、これは完全に俺のエゴだ。司には自分の夢を追いかけてほしい。仮に司以外の人間であれば問答無用で巻き込んでやるのに。

 

 ……最低最悪だ。こんなだからまふゆを救えない。

 

 司は無言でこちらを見ている。やめたまえ、その視線は俺に効く。………ヤメロォ!

 

「……ハア、わかった。ならば話は終わりか?」

 

「そうだな。そろそろほかの生徒も登校してくるだろうし」

 

 ふぅ、なんとか乗り切った。自分から話し出したのになぜこんな事に。

 余計に疲れた気がする。

 

 俺は机の上に覆い被さるようのしかかる。この体勢楽チン~。

 

「なあ司ぁ。俺を元気づける名言を編み出してくれぇ」

 

「……お前の無茶ぶりは今に始まったことではないが……フッ、いいだろう」

 

 おや、意外と乗り気。さては前々から考えていたな?

 

「光に向かって一歩でも進もうとしている限り、人間の魂が真に敗北することなど、断じてない!」

 

 バッ! と顔を上げ、司を見る。

 憎たらしいほどのどや顔だった。

 

「おま、お前ぇ!! やっと血〇戦線見たのか! あれだけ勧めても見ようとしなかったくせに!」

 

「フハハハハ! 実は結構前に見たのだが驚かそうと思い内緒にしていたのだ!」

 

 こ、この野郎! 友達に隠し事はしないって言葉は嘘だったのか! 見損なったぞこの外道!(ブーメラン)

 

 まだ俺たちしかいない教室に司の高笑いが響き渡る。恐らく外まで聞こえていることだろう。

 

 ……少しだけ気が楽になったことは内緒だ。

 

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