セカイの狭間から友人たちを見守ろうと思う   作:日彗

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5話 彼の噂が真実である事を俺はまだ知らない

 

 午前の授業が終わり、昼休憩に入った。

 俺は静かに立ち上がり廊下へ向かう。

 ……実は先程から膀胱が悲鳴を上げている。

 

 はやく、速くイかねば!

 

「春樹、昼食だぞ! どこに行く! 外で食べるのか?」

 

 肩を掴まれた。

 お、おのれ天馬、司ぁ! いま俺に刺激を与えるな! 殺す気か!?(社会的に)

 

「いいか司よく聞け。いや聞いてください。慎重にそして速やかにその手を離せ。死ぬぞ(俺が)」

 

「し、死ぬ!? ……お前は何を言っているんだ?」

 

 お前こそ何を言っているんだ。俺はその手を離せと言ったぞ。離せぇ。離してくれぇ。限界がすぐそこまで来てるんだぁ。

 

「頼む司。俺は今、爆弾そのものだ。……生きて戻る事ができたらその時は一緒に昼食にしよう」

 

「あ、ああ分かった。……ではオレは教室で待っているからな」

 

 どうやら察してもらえたようだ。すまない司。今度飲み物を奢るからそれで許して下さい。

 

 俺は天国(トイレ)に向けて一歩、歩みだす。

 今の俺は歴戦の戦士の如き雰囲気を醸し出している事だろう。

 

 ……後ろから呆れを含んだ視線を感じるが考えないことにする。

 

 

◇

 

 

 俺は今、全身全霊でこの世界に存在している! 生きてるって素晴らしい!

 

 無事に生還した俺は手を洗い、天国(トイレ)から出ていく。

 

「教室に戻る前に飲み物買っていこ」

 

 ここから一番近い自販機となると、購買の所か。

 ついでにパンでも買っていくかな……ん?

 

「………」

 

 ニヤつきながら購買を眺めている長身の男がそこにいた。えぇ怖……。

 いや、違うな。購買を眺めているんじゃなくパン争奪戦を繰り広げている生徒たちを見ているのか。うわぁ。

 

 見なかった事にして飲み物を買おう。司はコーヒーでいいとして俺は……お、野菜ジュースがある。美味しいよねコレ。一日に三回は飲む。

 

「ん? 僕に何か用かな?」

 

 ヒェッ話しかけてきた。司ぁ! 助けて司ぁ! 助けてくれるって言ったじゃないか!

 

「え、えっと二年B組に転入してきた神代君、だよね。こんなところで何してるのかな。もしかしてパンが欲しいのか?」

 

 フフフと笑う彼。最近転校してきたという神代何某。駄目だ苗字しか思い出せない。だが噂は色々と聞く。

 

 曰く、名門学校からわざわざ転校してきた

 曰く、授業中休み時間問わず何かを弄り笑っている

 曰く、ロボットやドローンを操り、道端でショーをしている

 

 うーん、最後のはデマだろうな。そんな高校生がいたら怖すぎる。

 

「いいや、ちょっと観察中と言ったところだね」

 

 か、観察中ですか……。それはその、何を?

 怖くて聞けない。聞きたくない。ヒェェ。

 

「ほら、自らの生存の為にパンを奪い合う人々。……カタストロフィ、いわゆる世界の破滅を描く際の参考になるかと思ってね。生々しい人間の様子を観察できて面白いんだ」

 

 ……ほう?

 

「なるほど。そう言われると確かに」

 

 先程までとは見え方が180度変わった気がする。何だか愉悦感が……。

 フッ、醜く奪い合うがいい愚かな下等生物共よ。クックック。

 

「……まさか理解を得るとは思わなかったな」

 

 ククク、惨めな人間種共……ん?

 

「別に理解した訳じゃないさ。ただ、考え方は人それぞれだなって思っただけだよ」

 

「それが意外だったわけなんだけどねぇ……」

 

 フム、とこちらを見つめる神代何某。な、なんスか。観察するなら購買の方を見てください。

 

「どうやらキミも僕に劣らず変人の様だね。そういえば自己紹介がまだだった。知っているかもしれないけど二年B組の神代類(かみしろ るい)です。よろしく」

 

「ああ、これはご丁寧に。二年A組の朝比奈春樹です。こちらこそどうぞよろしく」

 

 そして俺は変人ではない。失敬な。

 

「じゃあ用も済んだし俺は戻るよ。また機会があったら話そう」

 

 流石にパンを買う気がなくなった。今日は弁当だけで済ませよう。

 

「ああ、ではまたね朝比奈くん」

 

「春樹でいいよ。次はもう少しゆっくりと話そう類くん」

 

 冷たかったはずの飲み物が少し温くなっている。速く戻って昼食にしなくては。

 

「……それにしても」

 

 彼は司と気が合いそうだな、とふと思った。

 

 

◇

 

 

「ヘイ司! ヘイヘイヘーイ! これをあげよう」

 

「急に落ち着くな。情緒が不安定すぎるぞ」

 

 う〜ん司に言われてしまうとは。俺は既に末期なのかもしれない。

 先程買ったコーヒーを司に渡す。財布を取り出そうとする彼を無言で制止する。

 

「金はいらん、とっておけ」

 

「む……そうか? 悪いな、感謝する」

 

 いいってことさ友よ。未来のスターへの投資と思えば110円くらい安い安い。

 

「帰るのが遅いと思っていたら、飲み物を買いに行っていたのか」

 

「まあな。それと新しい友人と少し話をしていた」

 

 「新しい友人?」と首を傾げる司に「今度紹介するよ」と告げる。

 

「さあ飯にしよう。時間は有限だぞ」

 

 時計を見てみると休み時間が残り少ない。

 俺は鞄の中から弁当を取り出す。

 さあ、ランチタイムの始まりだ。

 

 

◇

 

 

 午後の授業も特に変わりなく過ぎ、放課後になった。

 既に司は明日のオーディションに備えて帰っていった。

 

 今日はバイトもなく、部活にも所属していない俺は学校に残っていても暇なので早々に帰宅する事にする。

 

「今日は何だか、濃い一日だったなぁ」

 

 寝不足の俺にはダメージがデカい。

 でも仕方ないじゃないか。司を前にするとテンションが最高にハイになる。

 

「ただいまぁ〜」

 

 ……よし。誰もいない様だ。

 

 まふゆは部活、父さんは仕事、母さんは買い物だろうか。

 家に一人、なんて素晴らしい。それも明日は休日。フフフ、休日前の学生は無敵なのだ。

 

 とりあえず私室に戻る前に飲み物を用意しよう。炭酸だ、俺は今炭酸が飲みたいぞぉ。

 だが我が家に炭酸が、否ジュースの類が無いことなど当然承知している。仕方がない、買ってこなかった自分が悪いと反省してコーヒーで我慢しよう。

 

「こんにちは、春樹。会いに来たよ」

 

「ファッ!? ……熱っ。ヤベ、コーヒー零し熱い熱い熱い!」

 

 だ、誰だ! 俺に声をかけやがった不届き者は! どこにいる! ってどこから入ってきた!? 鍵は閉めたはずなのに……。

 不法侵入者め。俺にこんな思いをさせた事を後悔させてやる。ククク、どうしてくれようか。

 

「大丈夫? 火傷してない?」

 

 ……ナンカ、イル

 

 俺のスマホから飛び出すように映し出されているそれは、昨夜出会った彼(・)女(・)───

 

「な、なにやってんスか。ミクさん……」

 

──初音ミクだった。

 

 

 ……だが一番驚いたのは俺のスマホにホログラム機能があったことである。

 




オリ主のプロセカキャラへの印象
【ワンダーランズ×ショウタイム編】

天馬司:親友。5つ生まれたセカイのうちの一つ、『ワンダーランドのセカイ』を生み出した『想いの持ち主』

神代類:噂は色々と聞くけど話したのは初めて。変人である事は間違いないが悪い人では無さそう(実は野菜ジュースを持つ春樹を奇異な目で見ていた)

草薙寧々:知らない

鳳えむ:知らない

春樹「司……恐ろしい子っ!」
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