仮面ライダーローサー   作:夜野千夜

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王の素質

「それにしても」

 

今日も今日とて私は特訓していた。瀧さんと模擬戦をし、模擬戦中の動きを愛華さんから客観的に評価してもらい、それを意識しながら今度は一人で仮想の敵と戦う。この流れを繰り返す日々が続いていた。少しは瀧さんのスパルタにも慣れ、空いた時間でカミセンの作ってくれたトレーニングマシンで筋トレができるようにもなってきた頃に、私はふと気になったことを愛華さんに尋ねた。

 

「ティタネスって今何してるんですか?カミセン襲撃してからしばらく経ちますけど、何もしてきませんよね?」

「これはあくまで推測ですがー」

 

愛華さんはそう前置きした上で話し始めた。

 

「今は構成員を募っているところかとー」

「構成員を?」

「はいー。こちらをどうぞー」

 

愛華さんは私にパソコンの画面を見せてきた。そこにはティタネスについて話している掲示板の様子が表示されていた。

 

『ティタネス、亡くなった人を復活させられるって噂だけど本当かな』

『なに、信じてんの?』

『無理に決まってんだろw』

『でも、本当だったらすごいよな』

『トップが月城教授な時点でちょっと信憑性ない?なにせアーティファクトを復活させた一人だぞ?』

 

「月城教授ってたしか……」

「神瀬様とリバイブファクト計画を進めていた、計画の中心人物の一人ですねー。とても優秀な方でしたー」

「そんな人がなんでティタネスなんか立ち上げたんだろ……。愛華さんは知ってたりします?」

 

私がそう尋ねた途端、愛華さんは普段の無表情を崩し不快そうに顔をしかめた。

 

「あんな女、どうでも良いわ。あんな人間の屑に構ってる時間ほど無駄なものはないわ」

「あ、愛華さん……?」

「……どうかされましたー?」

 

さっきまで明らかに怒気を纏っていたのに、一瞬でそれを打ち消して愛華さんは普段の無表情に戻った。どうやら何かあったみたいだ。これ以上は聞かないでおこう、と私は話題を変えることにした。

 

「そういえば、愛華さんはどうしてカミセン達と一緒にいるんですか?」

「それはですねー、私が神瀬様をある方に頼まれたからですー」

「ある方?」

「はいー。私が以前仕えていた方……神瀬様の奥様ですねー」

「あぁ、カミセン結婚してたんでしたっけ。亡くなった、と聞いてますけども」

「そうですねー。エリコ様という方なのですが、私は最期に二つの命を預かりましてー。その一つが神瀬様を見守ることでしたー」

「二つ?もう一つは?」

「私が夢を追うことをやめないことですー。……笑われるかもしれませんが、私には夢がございましてー。それが運命の主様に出会うことなのですー」

 

愛華さんは珍しく真剣な瞳でまっすぐどこかを見つめていた。

 

「私が命をかけても守りたいと思えるような、そんな人に出会いたい。それが私の夢なのですー」

「へぇ……素敵な夢じゃないですか」

 

私がそう返すと、愛華さんはきょとんとした顔でこっちを見てきた。

 

「笑わないのですかー?」

「笑いませんよ。人の夢を笑う権利なんて誰にもありません。……まぁ、私の夢も途方がないからと笑われてきたからというのもありますが」

「深紅様の夢、ですかー?」

「はい。言っちゃえばシンプルですけどね」

 

私はスポーツドリンクを流し込んだ。その間愛華さんが興味深そうにこっちを見ていたので、私は観念し夢を口にした。

 

「すべての人が幸せに暮らせる世界を作る、です」

「!」

「私は、私を信じてくれるすべてを幸せにしたい。今は私を信じていない人でも、いつかは私を信じてくれる。そう思っています。だから、私はこの世界のすべての人を幸せにします」

「……強欲ですねー?」

「自分でもそう思います。でも、人の上に立つ人間なんて強欲じゃなきゃやってられないでしょう?」

 

笑ってみせたけど、愛華さんはなぜかずっとうつむいていた。どこか悪いのか聞こうとしたけど、その時橙弥が駆け込んできた。

 

「姉ちゃん!神瀬先生呼んでる!ヴィードが出てきたって!」

「わかった、今行く!」

 

私は愛華さんを置いて急いでトレーニングルームから出た。

 

 

 

「カミセ……何やってるんですか?」

「来たね、深紅くん」

 

私がカミセンの研究室に入ると、そこでは謎の機械を前に真剣な顔のカミセンと汗だらけで自転車を漕ぐ瀧さんがいた。

 

「いやぁヴィードの出現を知らせる機械を作ったは良いんだがね?これエネルギー源が人力じゃないとダメなんだよね」

「いやそれかなりの欠陥では?瀧さん大丈夫なんですか?」

「これ……しき……」

「全然大丈夫じゃなさそうなんですけど!?早く休ませてあげてくださいよ!!」

 

私は橙弥と協力して瀧さんをソファまで運び、ヴィードの出現について改めて聞くことにした。

 

「どの辺りに出たんですか?」

「君達の家があった周辺だね」

「あぁ、神瀬先生が爆破した」

「……それでだね」

 

((話をあからさまに逸らした……))

 

不自然に話を逸らされたことに私と橙弥は気づきつつも、あえて口に出さなかった。私たちは空気が読めるので。

 

「恐らくだが、ティタネスもまだ戦力はそれほど揃っていないだろう。深紅くんに渡したリバイブファクトーーローズカリバーの力を見極めながら戦う。これを意識してほしい」

「そんなぶっつけ本番でどうにかなるものなんですか……?」

「まだそんなに強いヴィードはいないはずだからね。頑張りたまえ!」

「あぁもうわかりましたよ……」

 

私は頷き、愛華さんと一緒にアジトから出た。

 

 

 

「この辺りのはずですがー」

「あ、あれじゃないですか?」

 

ヴィードらしき怪物は、自身に向かってくる私たちを見て威嚇の態勢をとった。

 

「前瀧様と深紅様が交戦したヴィードと同じ系統と思われますー。それほど強くはないと思いますが、油断することなきようー」

「わかってます」

 

私は愛華さんを庇うように前に立つと、アーティファクションキーをバックルに差した。

 

「変身!」

 

普通の剣のサイズにまで大きくなったローズカリバーを手に、ヴィードに向かっていく。たしかに姿は以前瀧さんと交戦した、大量にいたヴィードの姿と同じだ。前と違ってそんなに数もいないし、これなら私一人でも全員倒せるだろう。

 

向かってくるヴィードを斬り伏せる。それだけでヴィードの体は簡単に朽ちていく。どうやらこのヴィード達はあまり強くないようだ。雑魚ヴィード、とでも呼べば良いだろうか。

 

「よし、あと一体!」

「!深紅様、上ですー!」

 

愛華さんの声に反応して上を見ると、私に向かって急降下する何かが見えた。慌てて避けると、怪人が大剣を地面に刺して落下してきた。

 

「……避けられてしまいましたか」

「しゃべった!?」

 

大剣を持ったヴィードらしき怪人は、ゆっくりと顔を上げた。騎士の鎧のような見た目をしているけど、ところどころに穴が空いていてそこから紫の丸い花がのぞいている。ヴィードは威嚇の声しか聞いてないからてっきりしゃべれないものだと思っていたけど、まさかしゃべれるとは。

 

「ええ、しゃべりますよ我々も。人語を話すのは我々のような上位のヴィードのみですが」

「カミセン話違うじゃん!強いヴィードいるんじゃん!」

 

カミセンへの怒りをこめて最後の雑魚ヴィードを叩き切る。

 

「やはり、あなたは神瀬失人と関りがあるのですね。ともに来てもらいましょうか」

 

上位ヴィードは一気に私との距離を詰め、大剣を振り下ろしてきた。ローズカリバーで受け止めるけど、相手の力が強くて簡単に競り負けそうになる。

 

「ぐっ……!」

「……弱いですね。その程度の力で私に挑むなど、無謀にも程があるのでは?」

「はっ、だから何!?」

 

脇腹を蹴り上げ、ヴィードと距離をとる。

 

「弱いことくらい、私でもわかってるよ。だからって逃げることは絶対にしない。私は死ぬことよりも、誰も守れないことの方が怖いんでね!」

「愚かですね。だからと言って、この力量差が覆るわけでもないでしょうに」

「愚かなのはそちらではなくて?」

 

突然、上位ヴィードの体が横に飛ばされた。何が起きたかわからず呆然とする私の前に、愛華さんが降り立った。愛華さんは今まで見たことがないほど穏やかな笑みを私に向け、恭しく頭を下げた。

 

「今までの非礼をお許しください、我が主よ」

「え……ある……?」

「これよりわたくしーー宮古愛華は、皇深紅を生涯の主とし、誠心誠意仕えることをここに誓いますわ」

「え……えと、なんでそんな急に……。てか、そんなことしてる場合じゃーー」

 

いつの間にか上位ヴィードがまた距離を詰め、愛華さんに大剣を振り下ろそうとしていた。

 

「愛華さん!!」

「……空気の読めない男だこと」

 

その時、愛華さんの腰にいつの間にか私のと似たベルトが巻かれていることに気づいた。愛華さんは左手に持った剣で上位ヴィードの大剣を容易く受け止めてみせた。

 

「なっ……!」

「目障りよ、消えなさい。主の目が汚れるわ」

 

素早く剣の柄から槍を取り出した愛華さんは、上位ヴィードに槍を突き刺した。

 

「ぐっ!」

「我が主を侮蔑した罪。その身で贖ってもらうわ」

 

愛華さんの体が巨大な白百合に包まれる。花が綻び、中からは全体的に白く百合の花の形に似たマントを羽織った仮面ライダーが現れた。

 

「仮面ライダーシャーリィ。これより戦闘に移りますわ」

 

ーーーーー

 

深「これやる意味あんのかな……」

 

失「あるに決まってるだろう!?何を言ってるんだね深紅くん」

 

深(今んとここの人何してんだろうって感想しか湧いてないんだけど……)

 

失「それでは今回の発明だ!今回紹介するのはこちら!デデン!」

 

深「コップ……ですか?」

 

失「そう、コップだよ」

 

深「見た目は普通のコップですよね?」

 

失「と、見せかけて~。深紅くん、そこにある水を注いでみたまえ!」

 

深「はぁ……。あれ、色が変わった!」

 

失「そう、このコップに水を注ぐと水の色が変わるのさ!」

 

深「え、珍しくマトモな発明だ」

 

失「私の発明はいつだって普通だよ?」

 

深「はいは……って、なんかこの水絵の具臭くないですか?」

 

失「そこがネックなんだよねぇ。なんでかこのコップに注いだ水は全部絵の具を溶かした水みたいな味になるのさ」

 

深「どういうメカニズムなんですか!?」

 

失「では今回はここまで!」

 

深(てかカミセン絵の具溶かした水飲んだことあるのか……?)

 

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