仮面ライダーローサー   作:夜野千夜

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ティタネスの真実

わたくしには、今も忘れられない日がありますの。

 

「私は東雲愛莉子って言うんだ。よろしくね」

 

わたくしの初めての主様──東雲愛莉子様。あの方と出会えた日を、わたくしは一生忘れませんわ。

常に明るく皆の幸せを祈るあの方は、わたくしにとって太陽のような方でした。

 

「私、人の笑顔を見るのが好きなんだ!だからみんなのこと笑顔にしたいんだよね。それに笑ってればみんな幸せでしょ?」

 

そう言って笑う愛莉子様のなんと眩しいことか。このお方に仕えることができて幸せと何度思ったことかわかりませんわ。……たとえ今はその笑顔を見ることができずとも、わたくしにとっての主は愛莉子様だけ。そう思っていましたの。

 

「私は、すべての人を幸せにしたい」

 

そう強い眼差しで微笑む深紅様を見て、愛莉子様を思い出さずにはいられませんでしたわ。生まれつき人の上に立つことが約束された方と、ただ人の幸せを願う方とではまったく違うように見えるでしょう。でも、わたくしにはたしかに深紅様に愛莉子様が重なって見えたんですのよ。根底にあるものは、きっと二人とも同じですわ。

 

(あぁ、きっと神瀬様も深紅様に愛莉子様の面影を見出していたのですね)

 

そうでなければあんなに気にかけたりしてませんもの。……えぇ、今度こそわたくしは間違えませんわ。二度も運命の主様を失うことなど、してたまるものですか。

 

ーーーーー

 

「仮面ライダー……シャーリィ……」

 

優雅さを絵に描いたような白百合の仮面ライダーは、私を庇うようにヴィードと私の間に立った。

 

「下がっていてくださいませ、ご主人様。恐らくあのヴィードは上位ヴィードの中でも強いものと推測されますわ。今のご主人様の実力では敵わないでしょう」

「どうしてそれがわかるんですか?」

「わたくしの得た情報ですと、ヴィードは融合する材料の一つとなった有毒植物の毒の強さで格付けされていますの。あのヴィードの有毒植物は、体の植物を見るにおそらくトリカブト。有毒植物の中でも最強格ですわ」

「え、それもっと早く言ってくれません?」

 

最強格のヴィードとこんなに早く遭遇するとは。たしかに鍛えてはいるけど、今の私では敵わない相手だろう。

 

「邪魔をしないでもらえますか」

「それはこちらの台詞よ。わたくしとご主人様の前に立たないでもらえるかしら?頭が高いわ。不敬罪で殺すわよ?」

「ずいぶんと過激なレディーなようで。いくら情報で優位に立っているとは言え、人間が私に敵うとでも?」

「その人間に先程反撃されたのはどこの誰だったかしら?あぁ、そうそう。一応貴方のお名前聞いておこうかしら。墓標を作るのに必要だものね」

「失礼なレディーですね。……しかし、名前ですか。まぁ名乗るくらいの時間は許されているでしょう。我が名はアコニートゥム。好きに呼んでください」

「ニート……」

「その略し方はやめてください」

 

ヴィードのくせにニートの意味知ってるのか、なんて感心してしまった。いけないいけない、まだ戦闘中だ。

 

「では、名乗りも終わりましたし」

「ええ」

「「殺し合いましょうか」」

 

二人の声が揃った時。すでに剣戟は始まっていた。アコニートゥムの大剣とシャーリィの剣が激しい音をたてて交わる。シャーリィの剣はアコニートゥムの大剣と比べたらだいぶ細身だ。それだと言うのに互角に渡り合っている。──いや、もしかしたら互角以上かもしれない。だってアコニートゥムの顔が歪んでいくのが見てとれるから。

 

「くっ!人間のくせにやりますね」

「そうやって人間を見下しているから負けそうになるのよ。第一、貴方と私じゃ力量の差があるわね。──ほら、背中がお留守よ?」

「!」

 

アコニートゥムがそれに気づいた時、すでに大量の短槍がアコニートゥムの背中に刺さっていた。

 

「ぐはっ!い、いつの間に……!」

「貴方が私と斬り合うのに夢中になってる間に小細工させてもらったわ。背中も気にするのが日本の戦士のやり方よ」

 

シャーリィは膝をついたアコニートゥムの喉先に剣を突きつけた。

 

「さて、勝負はついたわね。貴方が知ってること、洗いざらい吐いてもらうわよ」

「……それはできません。ですから、ここは一時退却といきましょう」

 

そう言うなりアコニートゥムの体からボトボトと種のような物が落ちてきて、種は雑魚ヴィードの形に変化した。

 

「時間稼ぎはこれで十分でしょう。それでは、また」

「愛華さん、雑魚は私が片づけます。愛華さんはニートを追ってください!」

「了解しましたわ。待ちなさいニート!」

「その呼び方はやめてくださいと言いましたよね?」

 

私と数体の雑魚ヴィードを置いて、シャーリィとアコニートゥム……もうめんどいからニートで良いや、はどこかへ去っていった。

 

 

 

「……というわけです」

「なるほど、上位種のヴィードか……」

 

アジトに帰った私は、カミセンに上位種のヴィードことニートに出会ったことや愛華さんが追いかけていったことを話した。

 

「カミセン、何か申し開きは?私に言いましたよね、今はそんな戦力揃ってないって」

「いや、申し訳ない。まさかティタネスがそこまで戦力を増強していたとは私も思わなかったんだ。正直予想外だった。だから深紅くん、私をアーティファクションキーでプスプス刺すのはやめたまえ。地味に痛いから」

 

カミセンは降参、と言わんばかりに両手を上げ肩を竦めた。カミセンに素直に謝られたので、私もこれ以上怒ってるのは大人げないなとアーティファクションキーをしまった。

 

「……しかし、トリカブトのヴィードか。他に特徴はなかったかい?」

「いえ、大剣を振り回すくらいしかなかったかと」

「ふむ……大剣ね……」

 

カミセンが何か考え込むそぶりを見せたので、私と橙弥は顔を見合わせた。

 

「あの、神瀬先生。そもそもヴィードって何なんですか?」

「あぁ、橙弥くんにはそこまで説明していなかったか。そうだな……」

 

カミセンは意味ありげに時計を見やった。するとタイミングを見計らったかのように、愛華さんが戻ってきた。

 

「ただいま戻りましたー」

「おかえり、愛華くん」

「お疲れ様です、愛華さん」

「お気遣い感謝しますわ、ご主人様」

 

愛華さんがそれまでの無表情を崩し笑みを浮かべると、今度はカミセンと橙弥が顔を見合わせた。

 

「え、愛華さんってそんなキャラでしたっけ?」

「わたくしは皇深紅様を仕えるべき主と判断しましたのよ、弟君」

「お、弟君?そもそも愛華さんって瀧さんの秘書じゃ?」

「それは仮の立場ってやつさ。仕えるべき主が見つかるまでの仮雇用。そういう契約でね。さて、愛華くん。何かわかったかい?」

「もちろんですわ」

「では、情報共有といこうか」

 

カミセンが用意したホワイトボードの前に愛華さんが立った。準備をしている間にまだ休んでた瀧さんを起こし、全員万全の状態で揃ってから愛華さんの話を聞くことにした。

 

「まず、ティタネスについてですが。ティタネスが大切な人を亡くした人間を中心として構成員を募っているというのはもう全員ご存知ですわよね?」

「大切な人間を蘇らせる……というのが誘い文句だったな」

「その通りですわ。では、なぜそのようなことをしているのでしょう?」

「そういえば……なんでかな?姉ちゃん」

「私もさっぱり……」

「正解は、死者の魂を材料にヴィードを作り出している、ですわ」

 

その言葉に、場がしんと静まり返った。

 

「ヴィードは伝説や神話上の生き物と有毒植物を融合させて生み出された存在。とは言え無から生命を生み出すことなど彼の月城奈音教授でも不可能。そこで利用したのが死者の魂……ということですわ」

「で、でもどうやって死んだ人の魂をヴィードにするんですか?」

「その辺りの技術はさすがにわかりませんでしたわ。その辺りは神瀬様の方が詳しいのではなくて?」

「ん?……あぁ、そうだね。恐らくだが、記憶や想いといった可視化できないエネルギーを元に魂を引き寄せているんじゃないかな。あくまで推測だけどね」

「だそうですわ。では、続けますわね。今やティタネスの構成員はわたくし達の想像を超えるほどに増えていますわ。先に出会ったあの上位ヴィード……ニートの存在なんかが良い例ですわね。これ以上敵の戦力が増えないうちに、本拠地を叩くことを提案しますわ。いかがでしょう?」

「……いや、まだそれは時期尚早かな」

 

珍しく大人しいカミセンが、愛華さんの提案を却下した。カミセンのことだからてっきり乗ってくるかと思っていたのに、と少し意外に感じてしまった。

 

「敵の本拠地を叩くには、まだ準備が必要だと思うよ。なにせこっちは戦力が少なすぎる。深紅くんもまだ発展途上なわけだし」

「うっ……」

「せめてちゃんと準備を整えてからにしよう。それで良いかい?」

「わたくしは深紅様がそれで良いなら構いませんわ」

「俺は神瀬さんに賛成だ。深紅、お前はどうする?」

「オレはもちろん、姉ちゃんに賛成するよ」

 

一斉に意見を求めるようにこちらを見られて、戸惑いながらも私は口を開いた。

 

「私もカミセンに賛成。……正直、ティタネスは今すぐにでもぶっ飛ばしたいけど、それで私達が返り討ちにあったらあいつらに対抗できる術がなくなってしまう。だから、今は耐えよう。それで良いね?」

 

全員が頷いたと同時に、私のスマホが震えた。

 

「あ、ごめんちょっと電話出てくる」

 

部屋から出て画面を見ると、そこには私の友人の相澤悠理(あいざわゆうり)と表示されていた。

 

「もしもし?どうした?」

『た、助けてくれ、皇!俺は……俺は、どうしたら良い!?』

「落ち着け、相澤。なに、また修羅場にでも巻き込まれた?」

『違うんだよ!!り、梨菜が……梨菜が、化け物にされたんだ……!』

 

ーーーーー

 

深「これでこのコーナーも何回目ですか?」

 

失「六回目くらいじゃないかい?はいというわけで今日も元気に始めていくよ!」

 

深(いい加減やめてくれないかなぁ)

 

失「今日紹介するのはこちら!」

 

深「通販番組みたいなノリで紹介するんですね。で、えーと……何です?これ。おもちゃの銃みたいな……」

 

失「えぇ~?深紅くんにはこれがおもちゃに見えるのかい~?」

 

深(うぜぇ……)

 

深「もったいぶってないで教えてくださいよ」

 

失「気になるかい?気になるよね!これは題して本物のレーザーガンさ!」

 

(手に取るなり綺麗なフォームで愛華に投げる深紅)

 

深「愛華さん後処理よろしく!」

 

愛「任されましたわ」

 

失「あーっ!!何てことするんだい!?」

 

深「んな危険なもの作ってんじゃねー!!もう我慢なりません、お説教します!!」

 

失「えぇーっ!?」

 

深「橙弥カモン!」

 

橙「呼んだ?姉ちゃん」

 

失「あ、橙弥くん呼ぶのはやめたまえ深紅くん!橙弥くんの説教めちゃくちゃ長いんだからね!?」

 

深「知ってます。だから呼びました」

 

失「うわーん!!」

 

その後カミセンは五時間もの間正座で説教を受けましたとさ。

 

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