宵咲 奏の幼なじみ 作:もち
・一人称を「うち」にしました。「あたし」のほうが良かったら遠慮なく言っていただければ幸いです。
宮益坂女子学園 通称宮女。
うちの家と奏の家両方から近いこの学校は、美人が多い……気がする。いやなんでか知らないけど多い印象がある。ほら、あれ見てみてよ。
視線の先には揺れる水色の髪。優しそうな顔、キュートな口元のほくろ。去年一緒のクラスだった日野森雫ちゃん。
なんでもアイドルグループの『Cheerful*Days』に所属してるんだとか。
生憎うちや奏はテレビなんてものはほとんど見ないから「あ、そういえばなんか見たかも」くらいの印象しかなかったんだけど世間一般では滅茶苦茶有名らしい。ごめんなさいね常識知らずで。
そして個人的に雫ちゃんに引けを取らないくらい美人だと(うちがかってに)思ってるのが今目の前から歩いてきた朝比奈まふゆちゃん。すっごい優しくて優等生ないい子。そしてかわいい。ただ……いつも笑ってるのに、どこか笑ってないような印象を受ける。
「まふゆちゃん、おはよ」
「終夜さん、おはよう」
「永遠でいいって言ってるのに」
「ふふ、おはよう終夜さん」
「もー!!」
ふふっと笑っているその顔はとてもかわいらしかった。
まふゆちゃんとふたりで教室に向かう。うちらは今年同じクラスになった。
まふゆちゃんはいい子だからすっかりクラスの中心人物。うちは浅く広くの関係が多い感じ。名前は憶えられてるけど仲がいい人を聞かれたときに4番目くらいに上がる人物。うーん、この格差よ。
「朝比奈さん、ちょっといいかしら?」
「先生? なんでしょう?」
どうやらこないだ授業でかいた小論文をコンクールに出させてほしいとのことだった。
……すごくない? うちなんて先生に酷評されたのに。今目の前にいるこの先生に。
「──それじゃあ、よろしくお願いします」
「まふゆちゃんすごくない?」
「それな! 永遠おはよ、それよりもさっきの話だよまふゆ、すごいね!!」
「うんうん、まふゆなら賞とかとれちゃうんじゃない? あ、永遠ちゃんおはよう」
話を聞いていたらしい子二人がまふゆちゃんの方によって来た。……これはまふゆちゃんに何か頼み事があると見た。
「ふたりともおはよ。それで、まふゆちゃんに何の頼みごとがあるんだい?」
「そうそう、そんなに急に褒めるなんて、何をお願いしたいの?」
「うっ、永遠にもバレてる……。今日も勉強教えてください、まふゆ様!」
「だと思った。昨日の課題、応用入ってて難しかったもんね。いいよ、今日は授業午前だけだし、一緒にやろ」
「やったー! 助かる~! あ、永遠も一緒にどう?」
「うーん、うちは理数はできるからなぁ」
「代わりに文系教科壊滅的だけどね」
「はいそこ静かにする。……ま、家帰ってもやることないしお付き合いさせていただこうかな」
「あ、それなら永遠ちゃんも教える側に回ってよ! 果たしてまふゆ一人で私らを捌けるのかな?」
「威張ることじゃないよ……」
こんな会話もあって、うちが放課後に残ることは確定。うーん、15時には帰れるかな。
うん、奏ごめん。12時には帰るって言ったけど、帰るの遅くなるわ。お詫びに高めの缶詰買って帰るから……。
「ううぅわかんなぁ~い。疲れたぁ、ちょっと休憩しない?」
「もう、まだ一時間もたってないよ?」
1時間経たずして一人ダウン。もう一人も疲れてそうだし休憩しようそうしよう。あと飲み物買ってきたい。喉が渇いた。
「ま、ムズイとこだったし一回くらい休憩はさんでもいいんじゃない?」
「それもそうだね。少し休憩しようか」
「うち飲み物買いに行くけど、なんか買ってくる?」
「いいの? 私いちごオレ!」
「じゃあ水で。まふゆは?」
「私は水筒持ってきてるから大丈夫。あ、終夜さん一人で大丈夫? 私も行こうか?」
「だいじょーぶ。いちごオレと水ね」
財布を握りしめて自販機へ向かう。うちは何にしようかな。無難にお茶? ってなんか新しいのある。なにこれ?
!! これ、Riptonのアップルティーだ! あんまこれ売ってるとこないからAmaz〇nで買ってるけどまさかこんなところにあるなんて……。いい発見をした。
「たまにはまふゆのしたいことも言ってくれていいんだよ?」
教室の手前で、そんな会話が聞こえてきた。思わず足を止める。やましいことなんてないはずなのに。
「……したいこと?」
「みんなが好きなように過ごしてほしいな。みんなが嬉しいと、私もうれしいんだよね」
「うわ~、まぶしい! これは天使どころか女神様クラスだね!」
違う、そうじゃない。チラッと、ほんのチラッと一瞬見えたまふゆちゃんの顔は、本当に自分が何をしたいのかわかっていなかった。何の表情もなかった。
……私は、いま、あの子のことを『怖い』と。確かにそう感じた。
大丈夫、取り繕える。この程度なら大丈夫だ。
「ただいま。……ってなにしてるの? なんで二人がかりで取り押さえてるの?」
「取り押さえてなんかないよ、抱き着いてるの!」
「そう、永遠ちゃん聞いてよ。まふゆさ、こんなこと言ってたんだよ!」
へえ、なんて相槌を打ちながら話を聞く。一瞬みたまふゆちゃんの顔は、笑っていたけど、やはり笑ってないように見えた。
「奏、ただいま。お昼食べた?」
「食べたよ。私を何だと思ってるのさ」
「生活力皆無の女の子」
奏がなにか言いたそうにしてるけど、うちは奏が口を開くより先にテーブルの上にあるものを見つけた。
「で、このお湯の入ったカップラーメンは何?」
「……お箸取りに行くのめんどくさくて、エネルギーメイトで済ませたから……」
「奏?」
「……………………ごめんなさい、って捨てないでね? まだ食べれるから」
「さすがに捨てないよ。これでそばめしっぽいものできないかなって。ちょっと作ってくるね?」
前にもこんなことがあったから活用法を調べておいた。見た奴はラーメンだったけど、たぶんカップ麺でもできるでしょ。
……うん、及第点。というか普通においしいなこれ。家でも作ってみよう。
「奏、できたけど食べる?」
「せっかくだし貰おうかな。それの半分……三分の一…………四分の一くらい」
「流石に食べれるでしょ……」
奏は結局三分の一くらい食べて「もう食べらんない……」って言って寝た。胃袋ちっちゃいな。…………かわいい。
原作との変更点
原作のストーリーでは先生が「コンクールに応募していい?」って聞いたのは会話的に放課後ないし授業後だと思われますがこの作品では朝、登校直後としています。なのでモブA、Bが聞いたのは昨日出された課題についてとなっています。
宮女の弓道部の顔面偏差値えぐくない?
ニーゴの1話の時期知ってる方いたら教えてください。