ストリートスカムども   作:民根絶

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【突撃して……】/マルドゥ
どうするんだったっけ……(〆)


俺は天才だった。

フィクサーのアローズのヤツからのおつかいを1、2……とにかくたくさんこなして、アローズにたくさん褒められた。

他のヤツらはしくじって、アローズの持つアレスのなんちゃらーとかいうヘビーピストルで頭を撃ち抜かれておっ死んじまったが、俺がそうなることはないだろう。

何故なら俺は天才だからだ。

 

今日も俺はアローズからおつかいを頼まれていた。

 

(((良いか。俺を侮辱したイェーイのハウスに行って、全員ぶっ殺してこい。だが侮辱した本人……イェーイのヤツは俺自身の手で殺したい。だからそいつは連れてこい。分かったな?)))

 

ああ、完全に分かってるさ。

今でもその言葉がアルコールに乗せられて頭の中で何度も響き渡っている。

こうして完璧に仕事の内容を覚えているんだから、俺は天才に違いない。いいや、さっきも言ったが天才なのだ。

 

「マルドゥ、ボーっと突っ立って何してんだ?」

「さっさとぶち殺しに行こうぜ!」

 

そんな天才の俺を急かすヤツらが数人いる。

1、2……とにかくたくさん。確かアローズのヤツは5人って言ってたが、これが5人なのかは分からない。

だがめんどくさいので数えようとは思わなかった。

目の前にはドラッグをキメたりサケを呷ったりしてるたくさんのおつかいフレンズどもがいるが、こんなたくさんのヤツらを数えるのに脳みそを使いたくない。

だが俺は天才なのでめんどくさいことはしなくても、ギャーギャーうるさいコイツらの考えていることがよくわかる。

コイツらはアローズからのおつかいの内容をもう一回言ってほしいんだ。

 

「落ち着けてめえら。まずはアローズから言われたことをもう一回俺が言うぞ」

「もう一回言う必要なんかねえよ!」

「ホントホント」

「アー……イイ―……」

 

本当か?

コイツらは絶対覚えていない。

どうせアローズから「銃をぶっ放せ」としか言われていないんだろう。カワイソウなヤツらだ。

本命のおつかいを知らされた俺はやはり天才だ。

俺はサケを呷って、コイツらに言ってやった。

 

「どうせてめえらは銃をぶっ放せとしか言われてねえだろうが」

「ちげえぞアホ」

「アァ?」

 

違うのか?

俺は疑問に思った。

天才の俺の予想が外れているなんて、なんかよくわからないコトが起きてるに違いない。

コイツの話を聞いた方が良いのかも……。

 

「全員ぶち殺せ!って言われてるんだよ。いちいち言わせるな」

 

クソ、アローズのヤツめアッツにも真の目的を話すようになったのか。

そろそろ俺の天才の地位が危なくなっているかもしれない。

俺が覚えているコトとも100%合っている。

つまり俺が頭の中でアローズの言った内容を繰り返し言う必要はなかったワケだ。

脳みそを無駄使いしてしまった。

 

「そうだよ!クソ!全員殺すんだ!」

「イェーイのハウスだろ?分かってる筈だぜ、俺も、お前らも」

「クソ!目的の場所まで知ってやがるのか!?」

「アッツ様だからな!」

 

マズい。完全に俺の天才の地位が危ない。

ここはもう、勢いに任せて全員ぶっ殺し、キルスコアを稼いでもう一回天才になるしかないだろう。

なら俺のするべきことは一つだ。

 

「知ってやがるのは結構なことだ。だが俺はもう一つ言われてるぜ」

「なんだと?」

「早いもの勝ちだってなあ!」

 

そうだ。

時に天才は嘘をついて、相手の隙を突く事も大事なのだ。

俺はそう言って、真っ先に駆けた。

だがアッツのヤツは、俺よりも足が速かった。

すぐに俺の横を通り過ぎて、ハウスのドアを蹴破っちまった。

 

「アッツはえー!」

「クソ!卑怯だ!」

「アッツ様に続くんだなあ!」

 

遂にアッツのヤツはリーダー面までし始めた。

天才の地位を俺から盗み、そしてリーダーまでこなそうとするとは許せないヤツだ。

俺はピストルを抜いた。

マシンピストルだ。

アローズのヤツはこれを”セスカ・ブラックスコーピオン”と呼んでいた。

確かスコーピオンはサソリで、ブラックは黒。つまり黒いサソリなので、完全に俺の持ってる銃が強いことが証明されている。

そして強いヤツは何をしても良いのだ。

アローズはそう言っていた。

俺は引き金を引いた。

 

BBBLAMN!

黒い蠍が銃弾を三つ噴いた。バーストファイアとかいう機能は、一回引き金を引くだけで銃弾を三つも続いて吐き出してくれる。

これはよくわからないが算数的にも最強な事が天才の俺には理解できる。

そして三つの銃弾を避けれる可能性は0に近くなることもだ。

だがそれは、アッツには当たらなかった。

アッツはもうハウスに入って、銃をぶっ放し始めていた。

 

「マルドゥ何してんだよ!?」

「空中を撃ってどうすんだ!」

「アッツに撃ったのか!?」

 

おつかいフレンズどもがギャーギャーうるさい。

ギャーギャーうるさいヤツらは嫌いだ。

うるさいヤツらに黒い蠍を向けた。

 

「オイ何して――」

 

BBBLAMN!

黒い蠍から吐き出された銃弾のうちの一つがギャーギャーうるさいヤツの腹に命中。

ギャーギャーから一転「ぎゃっ!」とかいう間抜けな声を上げて、周りのヤツらも黙った。

「ぎゃっ!」とか言ってたやつはその場に倒れた。こんなところでおねんねか?

 

「俺は天才だ。何でもできるんだ。てめえらを黙らせることもイージーだ」

 

黒い蠍をおつかいフレンズどもに向けながら、コイツらを見渡す。

どいつもこいつも俺が黒い蠍を使った途端、黙り込んだ。

中には泣き出すヤツまでいた。弱虫め。

そして俺は、そんな弱虫どもを自分のペットにしちまう方法を知ってる。

アローズ直伝のしばき飼育法だ。

こういう天才になれなかったヤツらは、天才からのしばきによって自らのアホさを悟り俺のような天才に従うようになるのだ。

 

「アッツはウソをついて抜け駆けしたので、俺が始末しなきゃいけない。良いな?」

「「「あい!!」」」

 

そうだ。アッツこそが、嘘をついていたのだ。

嘘の反対は本当。つまりアッツが先に嘘をついたので、俺の嘘は本当ということになる。

世の中は表裏一体なので、これこそが世界の法則なのだ。

 

「あぎゃあっ!」

 

アッツの悲鳴だった。

振り返ると、肉の塊がドアから叩き出されていた。

俺は少し考えて、これがアッツだと理解した。

ドアから叩き出されたアッツは精肉工場に持っていって放置したらそのまま加工されちまうんじゃないかってくらいひどい状態だった。

ドアの方を見ると、そこには屈強なトロールが立っていた。

オークのアローズも十分デカいのに、トロールはそれよりもでかくて、強そうだった。

 

「強いヤツは何をしても良い……」

 

俺は思わず呟いた。

そう、強いヤツは何をしても良いのだ。

じゃあ目の前に強いヤツが現れたらどうなるか?

当然、そいつの好き勝手に俺達がめちゃくちゃにされる。

 

「アローズのトコのヤツらだな?テメェらに忠告する。これ以上—―」

「アアアアア!」

 

俺は黒い蠍を乱射した。

撃った銃弾が全部トロールに吸い込まれて欲しいと思ったが、黒い蠍はそんなのお構いなしに銃弾を外す。全然当たらねえ。

おつかいフレンズどもは俺と一緒に銃を撃ち始めたり、いっちょまえにカタナを持って突撃した。

トロールはカタナを持ったフレンズを拳で殴った。そいつは吹っ飛ばされた。

そしてヤツの後ろから、ピストルとかを持ってる仲間っぽいヤツらが現れた。

1、2……たくさんだ。

 

「全員殺せ」

「アーハハー!」「イェーイイェーイ!」

 

このままじゃ死ぬ。勝てない。

おつかいフレンズどもは笑いながらピストルを乱射して、突撃した。

中には逃げ出すヤツもいたが、ピストルが当たればその場に倒れこんで泣きじゃくった。

俺はそれに釣られそうになったが、天才なので多数の凡人どもに自分の動きを左右されるほど甘くはなかった。

俺は弾が出なくなっても引き金を引き続けながら、その場から逃げた。

 

◇◇

 

目を開くと俺はアローズの事務所にいた。

体を動かそうとしたが、椅子に縛り付けられてて動けない。

目の前には屈強なオーク……アローズがいる。アローズも縛られていた。

あの時逃げて……何が起きた?

アローズは深刻そうな顔をして、俺を見つめてた。

やがて、アローズが口を開いた。

 

「失敗だ」

 

失敗?

そう思った途端、BLAMN!という音が響いて、アローズの脳天から血が噴き出した。

アローズが倒れると、その後ろからでかい影が現れた。

でかい影は、すぐにトロールだと分かった。

イェーイの家にいた、あのトロールだ。

 

「て、てめえ……!」

「俺はイェーイの者じゃない」

 

トロールが言った。

 

「俺はイェーイの隣人でもない。なのにお前らが襲撃してきた。色々と面倒なことになったものだ」

 

アッツが突撃していったのは、イェーイのハウスじゃなかったのか?

 

「全員ドラッグをキメたりサケをやっていたようだな……まったく、救えないヤツらだ」

 

トロールが銃を俺の額に突きつけた。

バタバタとここから動こうとしたが、椅子から離れられそうにない。

 

「や、やめろ!」

 

必死に懇願した。

何ならこのトロールの靴だって舐める覚悟があった。

だがトロールの顔を見ると、それだけじゃ許してくれそうにはない。

もっと別の方法を考えなければ。

 

「何だってする!今、考えてるトコなんだ!待ってくれ!」

 

そう言うとトロールは鼻を鳴らして、何かを考えてるような仕草を一瞬だけした。

それだけだった。

 

「じゃあな」

 

それが俺の聞いた最後の言葉だった。

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