パーティの終わり(〆)
アズテク・ストライカーを持った時、俺は特殊部隊の一員になったかのような快感を覚えた。
このアジー製の使い捨てロケットランチャー(ブッチのヤツは「正確にはミサイル・ランチャーだ」とか言ってたがこの際どうでも良い)を持ってきたのは仕事仲間のハリソンのヤツだ。
その他にもヤツはアレスのミディアムマシンガンとか、古典的なグレネードランチャーとか、あとはアレスの正真正銘の特殊部隊”ファイアウォッチ”も使ってるというあの”アレス・アルファ”まで、ハリソンはいろんな武器を持ってきていた。
それもこれも前回のランで予想外の儲けが出て、俺達の装備をメジャーリーグ級にするチャンスがやってきたと考えたからだとハリソンのヤツは言った。
それには俺も、チームのヤツらも全員賛成してた。
「ギャングがウジャウジャいやがる」
「思えば前回もギャングを殲滅しろってビズだったな。まさかあそこに生死を問わずな大物賞金首がいるとは思わなかったけどよ」
「今回もそうだと良いなァ。そうすりゃアもっと良い装備にできる」
「ハッ!最強の小さな軍隊が完成しちまうな?」
そしてメジャーリーグ級の装備に一新した俺達は早速ビズを受けることにした。
それも飛び切り派手にできて、新装備を試し撃ちできる的がいっぱい出てくるようなビズをだ。
フィクサーのヤツは前回俺達が予想外の儲けを出したからか、すごい嬉しそうに俺達に割のいい仕事をくれた。
いつもみてえにぺちゃくちゃと注意事項とかも話さなかったので、俺は今すこぶる機嫌が良い。どうやらそれは他のヤツらも同じようだった。
バンのガラス越しに見えるギャングどもが、今は撃ち殺せばカネを落とすモブみたいに見える。
「作戦はこうだ。まずジャックがアズテク・ストライカーを倉庫にぶちこむ!」
ハリソンのヤツが意気揚々と言った。
そうだ、そうこなくちゃな。
俺も早くアズテク・ストライカーを撃ってド派手に爆発させてえし、ハリソンの作戦には感謝しなきゃいけない。
「最高だなハリソン」
「だろ?次にブッチがストナー・アレスで倉庫内を制圧射撃!」
「任せろォ」
アレスのミディアムマシンガンはトロールのブッチが持つことになった。
何せ俺達は流石にあのどでかいマシンガンを持って撃ちまくる筋力を持ってない。
俺もトロールに生まれてくりゃ、マシンガンを乱射できる人生を謳歌できたかもしれねえのに。
この時だけ俺は、自分がヒューマンとして生まれたことを呪った。
「更にダーマがグレネード・ランチャーをポンポンと撃ちまくる!」
ダーマのヤツが無言でグレネードランチャーを構えた。
最高にキマってる。
「そして最後に、”アレス・アルファ”を持った俺と、ジャックが突入。後はアドリブよ。即興で全てを片付ける!」
「ギャングどもをブラッドバスにするのに相応しい作戦だなァ」
「Foo!!」
最高だ。
いつもならもう少し慎重にやろうとか言ったりするモンだが、今日の俺はそんなことをいちいち言うつもりはなかった。他のヤツらも例外じゃない。
それもこれも、俺達はハリソンが持ってきた最高のドラッグ”カミカゼ”をキメているのだ。
勿論ハリソンもこれをキメてるし、何ならハリソンは更にテキーラを呷りながら作戦を話してた。
今ならギャングどもが全員バリバリに改造した
「じゃあ景気よく一発。行け!」
ハリソンの言葉に俺は黙って頷いた。
そしてバンの扉を開けて外に出れば、ブッチからあのアズテク・ストライカーを渡される。
これから、コイツを撃って倉庫を爆発させる。
俺には最高過ぎた。
それも一番槍をくれるなんて、今日のコイツらは気前が良い。
アズテク・ストライカーを構えて、ふと俺は気付く。
「ありゃ、コイツどうやって使うんだったか」
「ファッキンジャック!ボタン押せば良いだけに決まってんだろ!」
ハリソンがテキーラを呷りながら言った。
ブッチはそれにサムズアップして、俺を期待するようにニヤニヤと見ている。
ダーマのヤツは相変わらず無口だが、目がガンギマっていて早く俺に開戦の狼煙を上げてほしそうにしていた。
よくよく考えれば深く考える必要なんてなかった。
一発やって、ドカン。
そしてメジャーリーグ級の装備を纏った俺達が制圧。
完璧な作戦だ。今更何を考えることがあるんだ?
「そうだよな!」
俺はアズテク・ストライカーの引き金を引いた。
ミサイルが勢いよく飛び出して、ぐるぐると回って……
隣の雑居ビルに着弾した。
爆発音と多数の悲鳴が俺の耳に響いた。
こいつは……
「良いぞジャック!もう一発だ!」
「撃てェジャァック!」
一瞬パニックになりそうになったが、ハリソン達の言葉で俺は正気を取り戻した。
そうだ、当たらなければもう一発撃てばいい。
俺はブッチからもう一発のロケットを渡されて、アズテク・ストライカーに装填した。
今度は倉庫からギャングが出てきてくれたので、俺はそいつらに向かってストライカーを発射させた。
ミサイルは今度こそ倉庫に命中して、最高の火の海を作り上げてくれた。
「良いぞ!突撃しろ!」
ハリソンがそう言うと、俺にアレス・アルファを投げ寄越してくれた。
ブッチはバンから飛び出して、ストナー・アレスを生き残りのギャングどもにフルオート射撃している。
俺はハリソンとダーマと共に、火の海に飛び込んでいく。
最高のパーティの始まりだ。
◇◇
「ハァーッ……!ハァーッ……!」
バカだった。
カミカゼのドラッグの効果が切れてきて、俺は自分達が招いた最悪な事態を直に突きつけられていた。
まず、一発目のアズテク・ストライカーの射撃の時に雑居ビルに着弾させたことで、ナイトエラントの重武装警官どもが数分も経たずに現れた。
その時には既にギャングどもは俺達の過剰火力で木端微塵になっていたが、背後から現れた重武装警官どもに俺達は対処し損ねた。
まずやられたのはダーマのヤツだった。
あいつはちょっと前に脳天を撃ち抜かれて少し先の遮蔽の影で転がっていた。
次にブッチのヤツはストナー・アレスを撃ちまくって何人かに銃弾の雨を叩き込んだが、結局は重武装警官のヤツらに蜂の巣にされた。
ハリソンのヤツはというと、
「クソクソクソ!何だってこんな事になったあぎゃっ!?」
今死んだところだ。
もう、俺の仲間は一人も残ってない。
俺は手元にあるアレス・アルファと、地面に転がっているアズテク・ストライカーを見た。
こんな特殊部隊が持ってるってだけの銃器を持つだけで、俺が特殊部隊の一員のような力をつけれるわけでもなかった。
アズテク・ストライカーをぶっ放して倉庫を破壊したのも、よく考えてみればただのテロリスト紛いの行為でしかない。
それ以前に雑居ビルを破壊しているのだ。
弁護の余地がない。
俺はアレス・アルファを投げ捨てて、遮蔽から手を上げて出た。
「投降す――」
BRATATATATATATT!BLAMN!BLAMN!BRATATATATATATT!
一瞬だった。
俺は銃弾の嵐を浴びた。
思えば投降したところで、今更どうなるというのだ。
ギャングを皆殺しにして警官を蜂の巣にしまくったのだ。
そしてあろうことか、雑居ビルにミサイルを撃ちこんでる。
そんな凶悪犯罪者が武装解除して前に出たところで、結末は分かり切っていることだった。