ストリートスカムども   作:民根絶

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【ミーティングの行く末】/”エイトエイト”
酒場にて(〆)


酒場に入ってきたのは、ストリートでたむろする娼婦かってくらい露出度の高い水着姿みてえな恰好の女だった。

だがその上に近所のウォルマートで買ってきたかその辺のゴミ箱で拾ったかのようなアーマージャケットを羽織っていて、下着の上に巻かれたベルトのホルスターにはブローニング・ウルトラパワーが納められている。まあ、ありがちではあった。

そしてぞろぞろと、後ろから虹色に光るモヒカン頭なり、典型的なストリート・パンクファッションなり、いっちょまえに日本の”着流し”を着てカタナを帯刀したやつなりが入ってきた。

そいつらは水着女と一緒にこっちのテーブルに座った。

水着女はタフを気取ってるのか股をおっぴろげて座っていたが、他のヤツらはテーブルの上に足を載せたり、開幕早々テーブルの上のグラスを割っちまったりでそいつが一番マシに見えた。

 

「テメェらが件のヤツらだな」

 

俺は確認するように言った。

できれば、そうであったほしくないと思いながら。

すると着流し男はカタナの柄に手を掛けたかと思うと、「拙者、赤松丸也」と妙な喋り方で自己紹介してきた。

俺は、ここでカタナを抜いて何か言ってくるよりはマシだと自分を落ち着かせないと気がおかしくなりそうだった。

 

「そうだけど?何か?」

 

やけに反抗的な態度で、水着女が言った。

確かコイツの名前はベローチェ。

一応強化反射神経やらといったサイバーウェアを入れていて、その腰に下げてるブローニングにはスマートガン・システムを内蔵させてるらしい。

態度以外なら使えそうだ。顔も良い。

まあ、言うことをきちんとこなしてくれればの話だが。

 

「そうだけど何か、か。まあ良い」

「ヒヒッ!」

 

虹色モヒカン男が下卑た笑みを浮かべた。

コイツは多分……マリアックス。

デッカーらしいが、そうは見えねえ。

本当にサイバーデッキを持ってるのか?スクラップレベルのサイバーデッキですら持てねえような身分に見える。

 

そして典型的ストリート・パンクファッションの野郎が、覚醒者のメイジって事になってるアロウ。アトウだったかもしれねえ。

足をのっけてるのはこいつだ。

くっちゃくっちゃとガムを噛みながら、俺を見下すように見ている。

 

「とりあえず全員揃った。まあ、まずはサケでも飲もうじゃねえか、なあ?」

「ファックしたら奢ってくれる?」

 

ベローチェが言った。

急に何を言い出すかと思えば、ファック?

俺は実行役の女と、少なくともミーティングの場ではファックはしないと決めてる。

コイツは俺をナメてるのか?

 

「ファックせずとも、奢る。わかったな?ああ?」

「へえ、後から堪能する気なんだ」

「拙者、ジンジャーエール飲むでござる」

「ヒヒッ……ミルクで」

 

アロウだかアトウだかは黙ってくっちゃくっちゃとガムを噛み続けている。

ベローチェのヤツは「テキーラで」と端的に言った。

俺はもう頼んであるので、これ以上は何も頼まなかった。コイツらと一緒に飲む気すら失せてきたので、先に頼んでおいて良かった……ということにしておく。

 

従業員のヤツがテーブルに各々のドリンクを置くと、ヤツらは一気に飲み始めた。

俺はそれを一瞥して、グラスの中のビールを一口飲む。

どいつもこいつもまるでプライベートで酒場に来てるかのように、周りの視線を気にしないような飲みっぷりだった。

 

「本題に入ろうか」

「ちょっと待って」

 

ベローチェが手を上げて、言った。

 

「テキーラもう一杯」

「か、かしこましました……」

 

俺はもう、マジか?と思って精神力のリソースを削ることすらしたくなくなった。

ベローチェのヤツはちょっとはマシだと思っていたが、そんな希望すら泡のように弾けて消えちまった。

 

「……本題に入ろう」

 

俺は言い直して、続ける。

 

「お前らにはここらで最近イキってやがるギャングを殺してきてもらう。ブラッドバスだ」

「それは一体どんなヤツらでござるか?」

 

赤松丸が言った。

 

「”マイナスドライヴァーズ”だ」

「規模は?」

「10人程度だ」

「10人?アタシ達をナメてんの?」

 

そっちからナメてるのか?ときたか。

俺はテーブルの上に拳を叩きつけそうになったが、冷静に、対処しようとした。

だがマリアックスのヤツが「クソ雑魚ナメクジフィクサー」と呟いたので、俺は咄嗟にピストルを抜いた。

艶消しされたアレス・プレデターVをだ。

コイツらはスッと動きはしたものの、ピストルやらカタナやらをすぐに抜かなかった。

フィクサーの俺を攻撃しない、という配慮かと一瞬思ったが……タダ反応がどんくさかっただけだったようだ。ベローチェのヤツは良い線まで行ってるが、強化反射神経まで入れてるのにこの反応速度は遅すぎる。

 

「オイ、てめえら。俺をナメちゃいけねえ」

「……ナニを舐めたら見逃してくれる?」

「うるせえぞクソアマ!」

 

マリアックスのヤツに銃口を向けていたが……オイ、冗談だろ?

コイツは泣き始めた。しかも「ママァ……ママァ……」とか抜かしやがった。

アロウだかアトウだかはくっちゃくっちゃとガムを噛んでるスピードが若干落ちて、ビクビクと震え始めていた。

赤松丸は……よくわからねえ。タフなのか、この状況を理解していないのか、ずっとアホ面を浮かべてやがる。

 

「良いか。とにかくてめえらは仕事をこなしゃ良いんだ。わかるだろ?なあ?」

「ママァ……」

 

ああ、もう、クソッタレ!

そう思った時、ベローチェの後ろにスーツに身を包んだ男どもが三人現れた。

 

「ああ?あんたら誰だ」

「ベローチェ。お前はジェイムズのヤツにまだ多額の借金がある。そして返済期間は過ぎている」

「え……マジで?」

 

俺が言いたかった。

ジェイムズというのは、この酒場のVIPルームにいる高利貸しのクソ野郎だ。

まさかこのクソアマがアイツから新円を借りてたとは……というか、まさかだがコイツは借金をしてサイバーウェアを入れたのか?

ファック!

 

「ちょっと、エート……見逃して?」

「断る」

 

スーツ野郎が掴みかかろうとした。

ベローチェはそれを躱して、代わりにせわしなくホルスターからブローニングを抜いた。

オイオイ、そりゃね―――BLAMN!

 

「ファック!?」

 

思わず叫んだ。

ベローチェのヤツはスーツ野郎にブローニングを撃ちやがった。

酒場は一瞬でパニック状態だ。

俺は咄嗟にテーブルの下に隠れて、様子を見守った。

 

「女性に手を上げるなど許せないでござる!」

 

赤松丸はカタナを抜こうとした―――が、引っ掛かったようで抜けなかった。

スーツ野郎がブローニングを取り出して強烈に殴りつけると、赤松丸のヤツは一瞬で昏倒した。

あんな弱っちいのにカタナで戦おうとしてたのか?

 

アトウかアロウは何事かをブツブツと呟き始めたが、それを察知したもう一人のスーツ野郎がそいつにブローニングを一発、二発、撃ちこんだ。

アーマーベストすら着てなかったのか、アロウだかアトウだかはそれだけで死んじまった。ファック!

マリアックスはただ泣きじゃくって、「ママァ!」と叫びながらガラスを突き破ってどっかに行っちまった……かに思われたが、ガラスの破片が突き刺さったようでその場で倒れこんで泣きじゃくり始めた。嘘だろ?

 

「死ねクソ野郎!」

 

BLAMN!BLAMN!

ベローチェのヤツは遮蔽に隠れもしねえで、ブローニングを撃ちまくってる。

スマートガン・システムを搭載してたってのは嘘なのか?それとも本当なのか?

よくわからねえが、アイツはずっとレーザーサイトでスーツ野郎を狙っていた。

まあ、それも全然当たらなかったんだが。

 

スーツ野郎が囲んでベローチェを殴って、プラスチック拘束具で手首を縛りあげると、ヤツは動かなくなった。

人数で勝ってたにも関わらず、今日のビジネスパートナーになる筈だったヤツらはあっさりと高利貸しの手下どもの前に敗北した。

ある意味これで良かったのかもしれねえ。

マイナスドライヴァーズの連中はまだここら辺を離れそうにねえし、今回の案件は依頼主とかも存在しない俺からのガキのおつかいだ。

これがもし依頼主のある仕事だったら……俺は今頃シアトルのシーフードどもに食われてるところだ。

 

「お邪魔しました。エイトエイトさん」

「「失礼します」」

「お、オウ」

 

俺は高利貸しの手下どもがベローチェを引きずっていくところをただただ見てるしかなかった。

パニックになって、今の酒場の一階には縮こまってるバーテンダーしかいねえ。

俺はバーテンダーを呼んで、ここの一番高いやつを注文した。

次からは予算は絶対ケチらねえ。

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