ストリートスカムども   作:民根絶

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センセイ(#2)

ザラというこの女が現れたのは一週間程前、アローズとかいうクソオークの一味を始末し終えた頃だったという。

グレゴリーのヤツがアローズのアジトから出た時に、ザラはいたらしい。

その時のザラは酷く衰弱したような様子で、そのデカいバストとデカいヒップをボロボロのシャツと擦り切れたジーンズで包んでたものだから、薄汚ねえギャングどもにファックされる前に保護したって話だ。

まあ既にファックされた後だったのかもしれねえが、コイツの肉体の事を考えるとここらのチンピラ程度ではザラをファックはできないだろうし、そもそもグレゴリーのヤツは綺麗にした後娼館にぶち込んでカネを稼ごうとか考えず保護したようだ。

 

結果的に見れば良い判断ではあった。

ザラはアルファグレードのバイオウェアの塊で、カリッカリにサイバーアップしたオークの剃刀野郎(レイザーガイ)以上の力を持ってたからだ。

俺の直感は当たってたらしい。グレゴリーがドクにも確認済みだ。

こんなヤツに娼婦をやらせりゃ、客のちっこいナニをぶっ潰しちまうだろう。

それに娼婦にする前に、グレゴリーの一味も抵抗されて全滅してたかもだ。

多少腕っぷしに自慢があるトロールの俺も、ザラには殴り合っても勝てそうにねえ。

 

しかしそんなヤツがこのチンケなストリートでなんでボロボロになってやがった?

企業の実験体が逃げ出したか、どっかのデカいヤクザやらマフィア子飼いのアサシン候補の末路か……俺は仕事以外では回したくない頭を回してた。

体格的に試験管生まれっぽくもあるが、それにしちゃ口調がストリートに慣れてやがる。

どちらにせよ厄ネタには違いねえ。

だが一週間程度もありゃ、こんな人の形をした戦闘マシーン(コンバットモンスター)の本来の持ち主どもが探し回ってるってことくらいはグレゴリーやら俺のようなストリートの住民に入ってきても良い頃合いだ。

となればこのザラはそういうヤツらにとって気に入らない部分があった不要品ってところだろう。

それがグレゴリーの目の前に現れた。

チャンスと言うべきか、それとも厄介なもの押し付けられたと見るべきか。俺にはわからねえ。

だが確かに”見込み”はある。突然暴れ出して全員殺す”見込み”とかも含めてだが。

 

「センセイ!コートありがとうございやす!」

「センセイ呼びはやめろ」

 

俺の隣には新調したラインドコートを羽織っているザラがいる。

そう、俺は結局グレゴリーのヤツの依頼に応じちまった。

厄ネタと面倒事の臭いがはじめっからプンプンしてたが、更に新円を積まれちゃ応じない方がバカに思えてきたからだ。

だがちゃんとザラのヤツに最低限の素質があるかは見極めたつもりだし、依頼を受けるにあたって色々条件はつけた。

 

「一週間よろしくおねがいしやすね!ま、一か月まで耐え抜くつもりすけど!」

 

まず、前金の5000新円を受け取って期限は一週間。

それまでに俺がコイツから更なる素質を見出せなきゃ、2000新円時間取った分の報酬だけ貰って終了だ。

素質を見出せれば続行。その次にもう一週間、5000新円貰って更に鍛え上げる。

後はそれの繰り返しだ。それを四週間……一か月間やる。

 

「耐え抜くんじゃねえ。学べ。耐えてるだけじゃこの一週間で終わりだろうよ」

「ハイッ!センセイから学びやす!」

「だからセンセイ呼びは……もう良い」

 

ザラのヤツはやたら俺のことを”センセイ”と呼びやがる。

ガラにもなく懐かしい気持ちになっちまうが、俺はそれがイヤだった。

グレゴリーのヤツはどうやらこのザラに俺の昔の話をしたらしい。

元々俺は日本帝国で教師をやっていて、ゴブリナイゼーションでトロールになっちまったからシアトルに渡ってきて、グレゴリーのヤツがギャングに迎え入れてやったとか、そういう話をしたんだろう。

教師時代は思い返したくもねえ。

だが教師だったおかげでギャングのメンバーだった時は色々と重宝された。

今もそれなりに教訓は活きてる。

例えば話が通じないようなヤツに話を通す方法とかだ。

 

そして急遽そういうヤツに話を通すビズを調達してきた。

最近は繁盛してなかったが、このグレゴリーのいるストリート付近ではいくらでもビズがあるらしい。

だから俺はグレゴリーのヤツに言ってビズを仲介してもらった。

理由は勿論、今の段階のザラがどれだけ頭が回るかを見るためだ。

俺達はボロアパートの前まで来た。

 

「これからお前に色々と大事なことを言う。ちゃんと聞けよ?」

「ハイッ!」

 

ザラは背筋をピンピンさせて俺に向き直った。

褐色肌に銀髪と赤眼が良く似合っている。

ガタイが良い癖してまだあどけなさが残ってる顔だが、自然とその体とは馴染んでるし顔自体も良い。

そして何よりバストとヒップがでかかった。

これを作り出した研究者のヤツは良い趣味してるじゃねえか。

 

「これからクズに会いに行く。グレゴリーの友人のドクの娘さんと毎晩ファックしてるっていう野郎だ」

「セックスすか!」

「そうだ。セックスだ」

 

俺はコムリンクを取り出して、空中に小さなAR画像を投影させた。

そこにはファック野郎の顔写真。

 

「コイツがドクのかわいい娘さんとヤってるクリフって男だ」

「セックスすね!」

「いちいちうるせえ!」

「すんません!」

 

コイツはなんでそこまでセックスという単語にこだわる?

俺は気を取り直して、ザラにファッキンクリフの事を説明する。

 

「コイツは娘さん、レイチェルの彼氏。お熱いのはまあ良いことだ」

「火の精霊なんすか?それとも覚醒者?」

「……違う。イチャイチャしてるってことだ」

「なるほど」

 

眉間を抑える。

 

「まあ、ともかくだ。このクリフって野郎はP2でレイチェルの裸の画像やらファ……セックス動画を流しまくってる」

「P2?」

「トリプルAのホライゾンが保有してる世界最大のSNSだ。マトリックス上で娘の痴態が流れてるのは親父としても放っておけないんだろうよ」

「身元が特定されて仕事に支障がでるからすか?」

「それもあるだろうな」

 

ちょっとズレてるような気もするがまあまあ良い着眼点だ。

確かにドクの仕事に支障が出るのもいけねえ。

俺はコムリンクを仕舞った。

 

「だからコイツに、娘さんの画像やら動画やらを公開するのを止めさせる。それが今日の俺達の仕事だ」

「つまり殺すってコトすか?」

「そう来ると思った。これが違う」

 

ザラはぽかんと頭を傾げた。

 

「俺の仕事は殺すことじゃねえ。話をつけることだ。アイツにバカげたことをやめることを約束させる」

「破ったら?」

「ぶっ殺しても良い。だが今日はそうじゃねえ」

「じゃあどうするんすか?ペニスを切るとか?」

「そういう事をする時はあるが、無駄な暴力はしない。例えば牛がいたとする。そいつの仕事はミルクを出すことだ。だがある時、その牛がミルクを出さなくなった。まだ出す余地があるにも関わらずだ。ここで牛がちょっと仕事をしなくなったからといって、いきなりおっぱいを切り落とすか?」

「クリフの仕事ってペニスからミルクを出すことなんすか?」

 

どう考えたらそこでそんなことを言えるんだ?

だがまあ、コイツの頭がちゃんと回転してることは分かった。返事も早い。

変な方向に回転しているが今から調整してやれば良いだろう。

 

「……違う。いや、ある意味そうかもな……例えが悪かったかもしれねえ。そうだな、おっぱいじゃなくて首を切り落とすとしたら?」

「死ぬっすね。おしまい」

「そうだ。おしまいだ。だがここで何とか叩き直してミルクを出せるようにしたとする。するとどうだ?」

「まだ使える」

「そうだ。俺の仕事は、そういうミルクを出さなくなった牛を叩き直したりすることだ」

「なるほど!」

 

今はこれくらい理解したら良いだろう。

ストリートのクズどもはここで「一回出せなくしたから殺す!」だの「キモチイイから殺す!」だの戯言を並べやがるだろうが、ザラのヤツはそうじゃない。

ちゃんとクズどもを一応は生かす理由を少しは理解した筈だ。

難しいことは後にしておこう。

 

「でもクリフは何を出すんすか?」

「さあな。レイチェルとイチャイチャファックして中にミルクを出すんだろ。レイチェルは喜ぶだろうから万々歳だ」

「やっぱりミルクを出すんじゃないすか!」

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