気分で書き始めた作品なので続けられるか分かりませんが、よろしくお願いします!
・中国 後漢末期197年 宛城の戦い
「追え!曹操を逃がすな!」
兵たちの鬨の声と炎で燃え盛る宛城の中、曹操は息子の曹昂と共に城内を走っていた。張繍の偽りの降伏により窮地に陥った曹操は厩舍に繋がれていた愛馬の絶影に跨る。
「父上!お急ぎを!」
「うむ、絶影よ頼んだぞ!」
眠っていた絶影は曹操の声で目を覚ますと危機的状況を察したのか目を見開き準備万端だと言わんばかりに後肢で地面を蹴っている。絶影に跨った曹操は手綱を手に取り、軽く絶影の腹に蹴りを入れる。
(ご主は…死なせん!)
合図と同時に絶影が凄まじい速度で走り出す。それに続いて息子の曹昂も自分の馬に跨り曹操の後を追う。城内の中は張繍の兵たちで溢れ辺りは敵だらけだ。しかし、これを突破できなければ自分の命運はここまでだ。
「絶影よ…私の命、お主に預けたぞ!」
(任せろ…!必ず、私が守る!)
高い嘶きと共に絶影が速度を上げる。目の前を遮る敵兵をなぎ倒しながらひたすら城の門へと疾走する。曹操も馬上で剣を振りながら応戦していると左右から矢の雨が降り注ぐ。
「射て!射て!あの黒い馬に乗っているのが曹操だ!」
「父上!危ない!」
(速く…もっと速く…!!)
しかし、絶影の速度が速すぎて狙いを定められず兵士たちの弓矢は曹操を捉えることができなかった。まるで影をもとどめぬその速さに張繍や兵たちも驚いていた。これなら逃げられると確信した曹操だったが突如、絶影の体が激しく揺れた。
「しまった!絶影よ大丈夫かっ!」
(…っく!!この…程度!!)
見ると絶影の腰角と左足に矢が刺さっている。だが絶影は速度を落とさない。前を見ると宛城の門はすぐそこだ。
(あと…もう少しだ…!)
「よし!城門を抜ければ逃げられるぞ」
そして遂に門をくぐり抜けたと思った矢先…
門の上から無数の矢が降りそそいだ。その矢の一本が絶影の額を貫いた。
「ぜ、絶影っ!!?」
(…ぐ…ぁ…)
目が霞み、全身から力が抜けていく。だが絶影は倒れない。額を貫かれながらも目を見開き、最後の力を振り絞って走り続ける。
(ま…だ…走れ…る…ぞ…!)
瀕死の重傷を負っている馬の速度とは思えぬ速さで絶影は足を止めず疾走する。しかし命の炎が燃え尽きようとしているのか徐々に速度が遅くなっていく。
「もはや我が命運もここまでか…」
「父上!この馬をお使いください!」
「そ、曹昂!」
気付けば曹操の後ろをついて来ていた曹昂が馬から飛び降り、自らの馬を曹操に差し出したのだ。その場に残された曹昂は張繍の兵たちに囲まれ最後には討ち取られてしまった。そして、今にも倒れそうな絶影の隣に曹昂の馬が並びかけてきた。
「曹昂っ!!す、すまぬ…」
曹操は走る絶影から曹昂の馬に飛び移り、手綱を握ると速度を上げる。一方、騎手を失い限界を迎えた絶影は体勢を崩しその場に倒れた。
(絶影よ…ありがとう。お主のおかげでこの曹孟徳の命は救われたぞ…!)
視界が暗くなる中、絶影は悲しそうな表情で自身を見つめて逃げる曹操の後ろ姿を安らかな表情で見つめていた。
(…ご主…元気…で…な…)
その言葉を最後に絶影は事切れた。
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・現代 日本 トレセン学園 美浦学生寮
URAによって運営されているウマ娘養成施設『トレセン学園』。トゥインクル・シリーズを目指して全国から選りすぐりのエリートウマ娘が集まる全寮制の中高一貫校の学園…それがトレセン学園だ。そんな学園の一日が今日も始まろうとしていた。
「…はっ!?」
気持ちよさそうに寮の一室で眠っていた一人のウマ娘が突如、目を見開き覚醒した。彼女の名前は『ドゥンケルストーム』と言い、今年から入学したばかりの中等部一年生のウマ娘だ。彼女は眠そうな目をこすりながら体を起こすと大きな欠伸をしながらベッドから立ち上がる。
(…今日のはいつもと違う夢だったな)
側に置いてある時計を見た彼女はパジャマから制服に着換え、鏡を見ながら櫛で髪を整えるとカバンを持って部屋から出る。他の生徒も同じく起床しそれぞれの部屋を出ていく中、ストームも自室から出て寮の門に歩いていく。
「おはよう!!今日も一日、張り切って頑張りな!」
「「おはようございます!ヒシアマ先輩!!」」
門の入り口の前にジャージ姿で仁王立ちしていたのはこの美浦寮の寮長を務めるウマ娘、ヒシアマゾンだった。曲がったことが大嫌いだが一本筋の通った性格の姉御肌で面倒見も良いことから寮で生活する生徒たちからの人望は厚い。
「おう、ストームじゃないか。おはよう!」
「…おはようございます」
「おいおい、まだ寝ぼけてんのかい?ほら、シャキッとしな!」
「…すみません」
ヒシアマゾンに肩を叩かれながらストームは美浦寮を後にすると他の生徒に混じって学園へと歩いていく。
(…やはり、都会の生活には慣れないな…)
そう言ってストームは数週間前の出来事を思い出していた。元々は地方の小さな牧場にいた田舎ウマ娘である彼女が何故、全国の強豪たちが集まるこの学園に来たのか…
その理由は彼女の故郷にある生まれ育った牧場が関係していた。彼女の両親はウマ娘ジュニアスクールと牧場を兼任した施設を経営しており数年前からレースで結果を残せるウマ娘を輩出できずに破産寸前の状況に陥っていたのだ。もはやこれまでかと諦めていたそんな時に娘であるドゥンケルストームが誕生したのだ。
物心ついた時から走るのが大好きで、幼少期から並外れた走行速度と持久力・耐久力を持っていたのだ。そんな彼女の持つ才能を見抜いたストームの両親は牧場の存続を賭けて、ストームを中央のウマ娘養成施設であるトレセン学園に入学させようと考えたのだ。
(親父…おふくろ…)
当初は不安から入学を渋っていたストームだったが、このままでは自身の育った施設が無くなってしまうことを両親から聞くとそれは嫌だと彼女はトレセン学園に入学することを承諾したのだ。入学試験の結果からストームの高い素質と学力が中央にも認められたのか数少ない推薦枠に見事入り込みトレセン学園に入学することが決まったというわけだ。
(…必ず、故郷の牧場を守るためにも必ず有名なウマ娘になってやる…!)
不安を押し殺し、自分に大丈夫だ!と言い聞かせながらストームは今日も学園に向かった。
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ストームがトレセン学園で生活を始めて数週間、慣れない環境に苦戦しながら忙しい日々を送っていた。普段は学園での授業に加えレースの知識を身につける座学にトレーニング続けでヘトヘトになって自室に戻る毎日だ。田舎での生活が抜けていないストームにとって落ち着かない環境だった。
(…疲れたな、大半は気疲れだが)
一日の激務を終えて自室に戻ったストームは崩れるようにベットに倒れ込んだ。初めてトレセン学園に来て施設の広さと充実さに度肝を抜かれ一睡もできなかった初日が昨日のことのように思えた。
(…私は、ここでうまくやっていけるだろうか)
とりあえず学園生活はなんとかなりそうだが、ストームにとってはそれよりも大切なことが一つあった。
(…よく考えたら、入学してから同級生の子と一度も会話できていないな…声をかけようとしても何故か逃げられてしまう…)
原因は自身の外見であり、鋭い三白眼にその風貌もあって不良生徒と勘違いされて周りから大いに怖がられているのだ。そのせいで他のウマ娘とうまくコミュニケーションを取ることが出来ないことがストームの最大の悩みだ。
(…相部屋の同級生とも全然、会話できていないしな…)
自身が寝ている隣のベッドにはストームと同じくトレセン学園に入学したばかりの同級生が静かに眠っていた。彼女は『マサキコスモス』という名で、相部屋に決まった時も簡単な挨拶しただけでこの一週間まともに会話したことなく部屋に帰ってきても気まずいため全く心休まらないのだ。
「……」
(…困ったな、どうしたらいいものか…)
結局、あれから同室のコスモスとまったく会話することもなく落ち着かない学園生活を送ることになったのだった。
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・数週間後
入学してから数週間後、なんとか学園生活に馴染めはじめたストームだったが、いつものように授業に出ていた時、授業の教師からある知らせを聞かされた。
「…模擬レースか」
数日後、トレセン学園で自己参加制の模擬レースが開催されると告げられたのだ。そして、その次には年に4回開催される選抜レースの一回目が開催される。トレセン学園に入学したウマ娘にとって将来を左右する重要なレースであり、ここで学園所属のトレーナーからスカウトを受けられるかでトゥインクル・シリーズへの参加が決まるのだ。
(…どんな奴らがいるんだ…?私の走りはここで通用するのだろうか…?)
一流のウマ娘たちが揃うこの学園で地方の片田舎出身で数回しかレースに出走たことがない自身が相手になるのか?地元では圧勝していた自分の走りだが、ひょっとしたらここでまったく通用しないかもしれないのでは?と自信が持てないでいたのだ。
(…それに噂ではあのウマ娘が出るらしいな)
実は今回の模擬レースには学園内で有名なとあるウマ娘が参加を表明していたのだ。しかし、彼女はストームだけでなく他のウマ娘たちも思わず参加を躊躇ってしまうほどの存在だった。
「…知ってるか?今回の模擬レース、あのナリタブライアンが出るらしいぞ」
「ああ、知ってる。まだデビューしてないがとんでもなく速いウマ娘なんだってな」
「ええ、彼女の走りは…まさに"怪物"よ」
その名はナリタブライアン…ストームと同じくまだ中等部でスカウトも受けておらずデビュー戦もまだなのだが、なんとG1での勝利経験があるウマ娘に片っ端から勝負を挑んでいるそうだ。
その凄まじい走りはまさに蹂躙であり競争相手に恐怖を覚えさせるほどのものらしい。彼女と勝負して心が折れてしまったり学園を辞めてしまった者もいるほどだ。
(…ナリタブライアンか、どんな走りをするのか見てみたいな)
その時、近くで新人トレーナーたちが話しているのを聞いてストームの足が止まった。
「あのナリタブライアンの走りが見れるのか…楽しみだな」
「絶対に俺がブライアンをスカウトしてやるぜ!」
「あ〜…多分無理だぞ、トレーナーからのスカウトは全部断ってるらしい」
「それに今回の模擬レースはブライアンが出走するって聞いて大勢のトレーナーたちが観戦に来るらしい。俺たちみたいな新人トレーナーは眼中にないさ」
(…それは大勢のトレーナーがレースを見に来るということか…私の走りを見てもらう好機かもしれないな)
「…よし、出てみるか…模擬レースに…」
意を決したストームはその後、数日後に行われる模擬レースへの参加を申し込んだ。今回の模擬レースへ参加するウマ娘は十人でその中には注目のウマ娘ナリタブライアンも含まれていた。
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・数日後 トレセン学園 レース場
それから数日後、予定通りトレセン学園のレース場にて模擬レースが開催されようとしていた。噂のナリタブライアンが出走することもあってか観戦席はウマ娘とギャラリーで溢れ、同じく大勢のトレーナーたちもレースを見に訪れていた。
「もうすぐだな」
「ああ、やっとブライアンの走りが見れるぜ」
「…まあ、今回のレースはナリタブライアンの圧勝で決まりだな」
やはりと言うべきか、注目の一番人気はナリタブライアンでこのレース場にいるほとんどの者がブライアンのレースを見に来ているようものだろう。言い方は悪いが彼女と競争する他のウマ娘たちのことなど話題にもなっていない。
ブライアンに劣らない見事な走りでも見せない限り観客やトレーナーたちの興味を引く事はできないだろう。同じくレース出走するウマ娘たちもそれぞれ複雑な思いを抱えていた。
(あのブライアンさんと走るのか…怖いなあ)
(みんなナリタブライアンのことばっかりじゃない!私だって…!)
(出走するって決めたけど、やっぱり勝てっこないよ…)
会場の空気にのまれて他のウマ娘のやる気も下がっているように見えた。そんな中、同じく今回の模擬レースに参加を表明したストームも少し遅れてレース場へとやって来た。
「…おぉ…すごい人だな」
地元の小さなレース場でしか走ったことがないストームは会場を埋め尽くすさんばかりの人数と熱気を見て少し圧倒されていた。しかし、不思議と自身の気持ちが高揚していることに気がついた。
(…楽しみだ…早くあの場で走りたいぞ…!)
先ほどまでは不安だったのだがこの熱気と広いレース場を見ていると無性に走りたいという気持ちが強くなる。武者震いなのか身体を小刻みに震わせて拳を力握りしめている。
「…よし!行くか」
「はぁ…はぁ…よかった。間に合った」
「…ん?」
するとストームの隣に汗だくになりながら走って来た者がいた。よく見ると胸元にバッジが付いているが、それは紛れもなくトレーナーバッジだった。
「…それは、トレーナーバッジ…あんたはトレーナーか?」
「え?うわっ!?そ、そうだけど…君は?」
「…ドゥンケルストームだ」
「ど、ドゥンケルストームか聞かない名だね…」
ストームの強面と厳つい外見に驚いたのかトレーナーは少し驚いて引いているようだった。聞けば彼はつい最近、トレセン学園に赴任してきたばかりの新人トレーナーらしく彼もまたナリタブライアンの走りを見にきたそうなのだ。
「…そうか、ブライアンのレースをか」
「そういえば、ゼッケンを持ってるみたいだけどもしかして君も模擬レースに出るのか?」
「…ああ、私も模擬レースに出る。あの"怪物"と呼ばれるほどの走りを見てみたい」
するとその新人トレーナーは何か思うところがあったのか、ストームのことを聞いてきた。ストームも自身がつい数日前に入学してきたばかりの新入生であることとデビュー戦もまだだということを伝えた。
「なるほどね、少しでも自分を見てもらおうと今回の模擬レースに参加したんだな」
「…そうだ、私のような田舎出身のウマ娘はよほどの実力者でない限り注目されることなどない…少しでも覚えてもらおうと思ってな」
「分かった。じゃあ、君の走りを見せてもらうよ」
「…!!本当か…?だが、トレーナーはブライアンの走りを見に来たんだろう」
「見たところ君は体格もいいし脚質も高い素質を秘めているように感じる、他のことは君のレースを見てないから分からないけどね」
「…そうか!なら、見ていてくれ」
そう言うとストームは嬉しそうにレース場へと走って行った。これが後に数々の武勇伝を刻むこととなるドゥンケルストームとそのトレーナーの最初の出会いだった。
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○名前
・ドゥンケルストーム
イメージCV:浅川悠さん
・バ場適正
芝:A ダート:B
・距離適性
短距離:B
中距離:A
マイル:B
長距離:A
・脚質適正
逃げ:B
差し:A
先行:A
追込:A
成長補正
スピード:20%
スタミナ:20%
○固有スキル
・封印されし絶脚
レース残り200m地点でものすごく加速と速度が上がる
イベント覚醒後 ↓
・影をも留めぬ絶脚
最終コーナーで加速と速度がものすごく上がる。その際、他のライバルを追い抜くたびに少しずつ速度が上がり続ける
○固有二つ名
・絶影
地方の片田舎出身のウマ娘でその優れた素質と学力の高さでトレセン学園に特別推薦で入学してきた。三眼目の鋭い目つきとぶっきらぼうな口調から不良と勘違いされやすく、周囲からは怖がられている。しかし、優しく大人しい性格で面倒見がよく、見かけによらず好奇心旺盛で気になる物事にはグイグイと首を突っ込んでいく。片田舎の出身のためか虫を素手で鷲掴みできたり薄着で日常を過ごすなど友人からは"田舎の野生児"と言われている。庶民派で都会の景色や流行には疎く、戸惑う一面もある。レースを"戦"と呼び、まだ見ぬ強豪たちとの勝負と駆け引きを内心楽しんでいる。その走りは実戦経験が浅いはずにも関わらず数多のレースを制した歴戦の猛者のように卓越している。
その正体は三国志の英雄である魏の覇王・曹操が乗っていた名馬・絶影の魂を宿した存在。時折、当時の記憶を断片的に夢で見る。
○自己紹介
…ドゥンケルストームだ。強い奴と戦うため…名を上げるためにここに来た…無愛想で走ることしか脳がないが…よろしく頼む…
・一人称:私
・得意なこと:レースにおける戦術と駆け引き
・苦手なこと:愛想よくすること
・家族のこと:立派に自身を育ててくれた、自慢の両親
・耳のこと: 感情に敏感で、分かりやすい
・尻尾のこと:あまり気にしたことはない
・ヒミツ① 夜中にこっそり笑顔の練習をしている。
・ヒミツ② 本当の戦場を走る夢をよく見る
・ヒミツ③ 夢の中に大切な親友がいる
・エピソード
宛城の戦いで曹操が乗っていたとされる名馬。
脱出の際、額と足を射抜かれながらも倒れることなく曹操を乗せたまま脱出に成功したが間もなく死んでしまった。名前の由来も"影をも留めない"ほどの速さだったことから名付けられた。
ウマ娘ならナリタブライアンが好きです!