「( ^ω^ ) そ、マ? 」
サッチーがニコニコ顔で動かない。これには少し訳がある。
少し前。風間大尉が司波達也に告げたのは、軍人さんとの『素手なら何でもありの組み手』に参加してみないか?という提案だった。
サッチー自身も最初は、(ここ世紀末の世界なんか?無差別級とかいうレベルじゃないぞ?)と思ったらしい。トイレに行くと良い、軽く鉄パイプを調達して暴れてやろうか。とも思ったほどである。
少年に対し、軍人の方々による手加減なしの組み手、普通は勝てないどころか勝負にならない。しかし、司波達也は違った。
あろう事か、全ての組手で圧勝した。運動神経も、反射神経も、体幹もピカイチだった。そして、組み手相手の中に、一昨日、達也にパンチを放った大柄の男がいた。その人も軍人だった様で、達也との組み手の後、少し仲良くなっていた様子だった。完全に悪だったのはこっちだった事に、サッチーは胃を痛めた。ちなみに戦いの中で、達也は
そう。様々なことがあったが此処までは良かった。達也は、もはや一人で何でも出来るパーフェクトヒューマン。妹の深雪も同様だろう。自分があの時でしゃばる必要はまるでなかった。サッチーはそう反省し、今日の見学は楽しかったな。と、今日の振り返りを頭の中で考えていた時。
「あ〜幸生くん。君も達也くんとやってみないか?」
風間大尉という、こんなに部下に慕われ、信頼も厚そうな方を『ぶん殴りたい』と思ったのは、生まれて初めてだったらしい
「( ^ω^ )そ、マ? 」
こうして最初の場面に戻るわけである。
────────────────
(ほう・・・組み手ですか・・・マジですか?)
「お、俺ですか?」
「ああ、君の体つきをみれば解る。相当な場数を踏んでいる様だ。君も見ていただけでは、退屈だっただろう。今は幾つだね?」
「あ〜20歳です」
「なるほど、将来有望だね。して、素朴な疑問だが、今は何を?」
ピンチ!この世界で、サッチーは小中高、大学も行っておらず、ミッションなる物をしているだけで、幸運が幸運を呼び生活に困らなかった。なので、今まで職という職にはついていない!ミッションがいつ来るかもわかないのも職についていない理由の一つ。何てったって一時期、週2、3回という脅威のミッション頻度の時があったからである!
「あー今は何もやってないっすね!ただ、世界中をブラブラしてます!お金なら有るんで!」
「そ、そうか。も、申し訳ない」
「全然大丈夫です!(強メンタル)」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
真田さん、達也くん、深雪ちゃんが憐れみの目でこちらをみる。
べ、別に、ど、どうとも思わないし・・・
「すまない。話が逸れた。それで、どうする?」
そう言い、風間大尉が改まって真剣な眼差しで見つめてきた。
「・・・・っし!やります!」
今頃、愉悦神はニッコリであろう。
〜移動中〜
(い、勢いでやるとか言っちまった。いや、だって軍人さんの皆様方が全員こっち見てたし・・・)
そう考えながら、赤い線で大きく正方形が書かれた枠の中に入る。組み手中は、この正方形の赤い線内で戦い、一本取られるか、或いはこの赤い線外に出れば、負けである。
「宜しくお願いします。幸生さん」
すると、組み手相手の達也くんから声を掛けられた。
「よろしくな、達也くん!負けないぜ!」
(って言葉ではカッコよく言えるけど、マジでやるんけ?さっきの達也くんの無双っぷり見たけど、自分相手にならんと思うよ?・・・まあ全力で頑張りますけどねぇ!)
さぁ、行くぜ!真正面からッ!ぶち抜くッ!
開始の合図と同時に、渾身の右ストレートを達也くん目掛けて放った。
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村山幸生と司波達也の戦いが始まってから、数分。周りのギャラリーは異様な光景から目を離せずにいた。
「風間大尉。どう思いますか?」
開発部の真田は、風間大尉にこの異様な光景の説明を少しでもしてほしかった。
「あり得ない」
「あ、あり得ないですか?」
「ああ、あり得ん。幸生くんのあれは・・・ただ、力任せに殴り、蹴りを繰り出しているだけ、避けるときは、反射神経のみ。まるで何かを習っていた動きではない。他にも指摘すべき点は幾つもあるが・・・。そうだとしても、達也くんは恐ろしく強い。そう言った相手の対応もしっかりわかっているはずだろう。それが通用していないのであれば、幸生くんを倒せない理由が必ず有る筈だ」
「しっかり見ておけ。こんな戦いは二度と見れんかもしれんぞ」
風間大尉は、2人の組み手を見ながら、鋭い目付きをしてそう言った。
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司波達也は、村山幸生という恩納基地に見学しに来た謎の男に驚愕していた。
まるで素人丸出しの動き。力を入れて殴り、力を入れて蹴る。ただそれだけの動作運動。隙だらけで攻撃し放題。そう思っていた。
しかし、何度攻撃を当てても一切怯まず。 攻撃の一撃が非常に重く、一度ガードすればダメージが響く。
(強い、物凄く。こんなにも説明不可能な人物が存在しているとは思わなかった。技を掛けても動かない。攻撃を受けてもびくともしない。どういう鍛え方をすればこんな・・・まるで人の形を模倣した違う生命体と言った方が納得がいく。最初は鉄パイプの男なのかとも思ったが、それは断言出来ない。鉄パイプの男から発せられる異様な威圧とオーラがまるで無い。ただ、一番可能性があるのはこの男。・・・村山幸生。これは調べなければならない)
一進一退の攻防を繰り広げながら、司波達也は冷静に熟考していた。
そうして時間は流れ─────
ピーッ!という試合終了のブザーがなると同時に村山幸生、司波達也の拳が両者の顔の前に来たところでピタリと止まった。
両者ともに姿勢を正し、握手をした。
「あ、ありがとう!達也くん!いい試合だった!」
「幸生さん」
「うん?どうしたの達也くん?」
「貴方は一体・・・」
「?ああ!そういうことかぁ!では、改めて、俺の名前は村山幸生です!」
「いえ、そういう訳では・・・いえ、何でもありません。ありがとうございました」
「????え、あ、うん!こちらこそありがとうございました!」
この組み手を最後に、今日の見学は終了した。
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ホテルに戻ったサッチーは、部屋でガッツポーズを決めていた。
「よっしゃ!何とかなったぞ!!」
3回目のガッツポーズを決めたサッチー。それもそのはず、しっかりミッション?をこなせたからである。
愉悦神がどう言ったプレゼントをしてくれるかワクワクしながら4回目のガッツポーズを決めた。
「べ、別にぃ〜お金でも、もちろんいいですけど!別にブランド品でも高級な時計でも何でもいいですよ?あ、あと別に高級車でもいいですよ?まあ免許は・・ど、どうにかしてもろて・・・いや、でもここ最近報酬的なもの貰った試しがないんだよなぁ・・・」
明らかに独り言にしては押し付けるような言い方でサッチーはべしゃる。何と単純で現金な男なのだろうか。
「ふぅ〜考えても仕方ないか。ちょっと仮眠でも取ろうかな。寝ましょうねぇ」
そう言い、サッチーはベットに横たわると、2秒も経たないうちに寝てしまった。
サッチーが寝てから30分後。
目覚まし時計の隣に、何かが書かれた紙が出現した。