次代の天災 作:名前が思いつかぬ
無人機のISがIS学園を襲撃して数日、山田先生が普段と違うことを報告する。
「今日は何と、転校生を紹介します」
山田先生が視線を教室の出入り口に向けると、二人の生徒が入ってきた。
一人は銀髪の軍服のような制服を着た少女。
そしてもう一人は、金髪で男子のような格好のボーイッシュな少女。
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。皆さん、よろしくお願いします」
普通に自己紹介をしたデュノアさんに対して、誰かが「お、男?」と呟いた。
どこから、どうみても女子でしょう。
男子みたいな格好で、ボーイッシュだからってちょっと失礼じゃないかな。
「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて、本国より転入を」
デュノアさんが男であることを認めたせいで、クラスから耳が潰れそうな歓喜の叫び声をあがる。
認めるなんて思ってなかったから、耳を塞げなかった。
全く、女子を男装させて転入させるなんて、フランスは何を考えてるのか。
おかげで耳が痛いじゃない。
「騒ぐな。静かにしろ」
千冬さんのおかげで漸く静かになった。
「皆さん、お静かに。まだ自己紹介が終わってませんから」
そういうと、山田先生は視線をもう一人の転校生に向ける。
しかし、転校生は自己紹介を促している山田先生を無視して黙ったままだ。
転校生の反応に山田先生が困っていると、千冬さんが転校生に声を掛けた。
「挨拶しろ、ラウラ」
「はい、教官」
このIS学園にまともな転校生なんて来ないみたい。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「………………あ、あの、以上ですか?」
「以上だ」
すごい子だ。
本当にすごい子だ。
一夏や澪ちゃんより、自己紹介が短い子がいるなんて……
私がくだらないことに感心していると、ボーデヴィッヒさんは一夏に近づいていく。
そして流れるような動作で一夏にビンタした。
「私は認めない。貴様があの人の弟であるなど、認めるものか」
よく分からないけど、一夏が恨まれてるってことは分かったわ。
まあ、一夏のことは放っておいて大丈夫でしょう。
女子とのトラブルなら放っておいても解決するでしょう。
そして、その後は一夏争奪戦の仲間入り、いやぁ、モテる男はすごいねぇ。
「ホームルームはこれで終わる。今日は二組と合同でIS実習を行う。各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。それから織斑、デュノアの面倒を見てやれ、同じ男子同士だ。解散」
千冬さんは指示を出し終えると教室から出ていく。
一夏もデュノアさんを連れて急いで教室を出て行った。
男同士じゃないけど大丈夫だろうか。
まあ、一夏なら何かあっても大丈夫か。
ISスーツに着替えて第二グラウンドに移動して実習が始まるのを待っていると千冬さんが来た。
千冬さんは戦闘の実演の為に鈴とセシリアを指名した。
二人とも出ていく時はやる気がなさそうだったが、千冬さんの「あいつにいいところを見せられるぞ」の一言で急にやる気になった。
きっと千冬さんは扱い安くて助かるとでも思っているのだろう。
二人を見ていると、空からISを纏った山田先生が落ちて来る。
どう見ても操作を誤った山田先生が、私達の上に落ちて来る。
「ど、どいてください!」
どいてと言われたので、速やかに安全な場所に避難する。
先生の言うことはしっかりと聞かないとだめだよ。
でないと、一夏のように巻き込まれることになるからねぇ。
「あ、あの、織斑君……」
土煙が晴れると、一夏は山田先生の胸を鷲掴みにしていた。
何と見事なラッキースケベ。
運が悪ければ死んでいたかもしれない事故を無傷で生き残り、その上女性の大きな胸を揉むとは、凄まじい幸運だ。
アニメや小説なら間違いなく主人公になれるだろう。
まあ、その幸運がさらなるトラブルを引き寄せるんだけどねぇ。
一夏が慌てて立ち上がると、一夏の傍をレーザーが通り過ぎる。
「ほほほ……、残念です。外してしまいましたわ」
何て恐ろしい女なのだろうか。
事故で胸を揉んだくらいで殺そうとするなんて、故意でもあってもしないでしょ、普通。
故意であるなら、一夏の彼女は殺す気で怒っていいと思うが、セシリアは片思いでしょうに……
まあ、もう一人一夏を殺そうとしている人がいるのだけどねぇ。
「織斑君、怪我はありませんか?」
「は、はい。ありがとうございます」
鈴がぶん投げた連結させた双天牙月を山田先生が撃ち落として一夏に問いかける。
元はと言えば、山田先生が落ちて来たのが原因なのだが……気にしない方が良さそう。
「山田先生は元代表候補だ。今くらいの射撃は造作もない」
「昔のことですよ。それに候補生止まりでしたし」
「さて、小娘ども。さっさと始めるぞ」
「え?あの、二対一で?」
「いや、流石にそれは……」
「安心しろ、今のお前達ならすぐ負ける」
流石は千冬さん。
言いずらいことをはっきりと言いますねぇ。
結果の分かり切った試合に興味はないけど、見てないと確実に怒られるよねぇ。
そんなことを考えながら試合を見ていると、千冬さんがデュノアさんに山田先生が使っているISの説明をさせる。
ラファール・リヴァイブについてデュノアさんが説明し終わってすぐに、鈴とセシリアが撃墜された。
「これで諸君にも教員の実力は理解出来ただろう。以後は敬意をもって接するように。次に、グループになって実習を行う。リーダーは専用機持ちがやること、蓮見は姫宮の手助けをしてやれ。では、分かれろ」
まあ、澪ちゃんがリーダーになっても意味がないからねぇ。
二人でやれるから楽だなぁ…………誰も来ないんだけど。
全員一夏とデュノアさんのところに行ったんだけど、これ教えなくていいパターン?
「この馬鹿者共が……出席番号順に一人づつ各グループに入れ!次もたついたら今日はISを背負ってグラウンド百周させるからな!」
まあ、千冬さんがそんなこと許さないよねぇ。
はあ、楽が出来ると思ったのに……
私達のグループは特に問題なく実習を終了した。
他のグループは問題?が少し起きているようだったけど、無事に全グループが終了した。
そして昼休み、普段の食堂ではなく屋上に私達は集まっていた。
「……どういうことだ?」
「大勢で食った方が美味いだろう。それにシャルルは、転校してきたばかりで右も左も分からないだろうし」
「そ、それはそうだが……」
まあ、デュノアさんはともかく、ライバルがいるのは不満なんでしょうね。
三人がそれぞれ手作りの弁当を持って睨み合っている。
澪ちゃんは、私のために手作りのお菓子を持って来ているが、弁当は無い。
私も当然持ってないので、先ほど購買で適当にパンを買って来た。
「昨日言ってくれれば、私達も弁当を持って来たのに」
「おっ、蓮華が自分で弁当を用意するなんて珍しいな」
「何言ってるの?私の分は一夏が作るに決まってるでしょ」
「「「なっ!?」」」
「あはは。やっぱり、俺が作るのか」
変なことを言う一夏に当たり前のことを言うと、三人に睨まれた。
いや、澪ちゃんを含めて四人か。
デュノアさんは少し意外そうに私を見て話しかけて来る。
「もしかして、蓮見さんって一夏と付き合ってるの?」
わー、すごい殺気を感じるよぉ。
デュノアさんが変な勘違いしたせいで、すごい睨まれてるよぉ。
「そんなわけないだろ」
「そうですよ、デュノアさん。私と一夏はただの幼馴染で、付き合ったりしてませんよ」
「えっ、そうなの?じゃあ、どうして一夏が蓮見さんのお弁当を作るの?」
「そんなの決まってるじゃないですか。一夏の料理が美味しいから作って貰うんですよ」
「そ、そうなんだ」
デュノアさんはよく分かってなさそうだけど、一応納得したみたい。
それでも四人からすごい睨まれてるんだけど。
「お前も俺と大して変わらないだろ。たまには自分で作れよなぁ」
「自分の為に料理作るのって、あんまりやる気が出ないのよねぇ。自分で作るなら購買のパンでいいかなって思うし」
「あ!なら、弁当作ってやる代わりに、俺の弁当作ってくれよ」
「え?」
ど、どうしよう。
完全に墓穴を掘った。
四人から今まで感じたことが無いほどすごい殺気を感じる。
一夏争奪戦に入ってないはずなのに、戦場のど真ん中に立たされている気分。
返す言葉を間違えれば、確実に殺される。
お、落ち着いて考えよう。
私ならきっと答えを導き出せる。
「そ、それなら、皆でおかず作ってきて分ければいいんじゃない」
「確かに、そっちの方がいいな」
「だよね」
よ、良かった。
殺気が消えた。
一夏争奪戦の戦場、地雷多すぎないかな。
ちょっと食い意地張っただけで死にかけたよ。
一夏、頼むから早く終わらせてよ。
地雷を踏んだ精神的な疲労を澪ちゃんの手作りお菓子で回復させていると、一夏がセシリアの料理を食べて死にそうな顔をしていた。
この昼食会物騒だなぁ。