次代の天災   作:名前が思いつかぬ

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クラス代表決定

 ピットで待機していると、いつも通り無表情の澪ちゃんが戻ってきた。

 ISを解除して無表情のまま視線を下に向ける澪ちゃん。

 一夏と箒も何と話しかけていいか分からずに俯く。

 そんな中で私は、澪ちゃんにいつも通り抱き着いた。

 

「お帰り、澪ちゃん」

「蓮華」

 

 珍しく澪ちゃんが少し驚いているような気がする。

 実際は声に抑揚が無いので、驚いているのかは分からないけど。

 

「お疲れ様、楽しめた?」

「楽しかった、けど」

「やり過ぎちゃった?」

 

 私の確認に澪ちゃんは頷く。

 確かに、澪ちゃんに負けたオルコットさんは担架で保健室に運ばれて行った。

 ISの絶対防御が機能したためか、外相は見られなかった。

 それでも、あれほど強力なエネルギー砲を直に受けた以上、意識が飛ぶのは仕方がない。

 

「じゃあ、謝りに行こうか」

 

 澪ちゃんは私の言葉に頷いて、歩いてピットの出口に向かう。

 

「私も澪ちゃんについて行くから、また明日」

「ああ」

「おう」

 

 一夏と箒に挨拶して澪ちゃんの後を追ってピットを出ていく。

 澪ちゃんと一緒に保健室に着くと、ちょうどオルコットさんが目を覚ましていた。

 

「良かった。ちょうど、目が覚めてたんだ」

「何の用ですか?」

「用があるのは私じゃないよ。ほら、澪ちゃん」

 

 オルコットさんの問いに、私は澪ちゃんを前に押し出す。

 

「ごめんなさい。やり過ぎ、ました」

「……気にしていませんわ。貴女の方が私より強かっただけのことですわ」

「良かったね、澪ちゃん」

 

 思った以上にオルコットさんは簡単に許してくれた。

 澪ちゃんに抱き着いていると、オルコットさんが問いかけて来る。

 

「彼女はどうしてあまり話さないのです?」

「ああ、それに関しては私もあまり詳しくないから、織斑先生に聞いてくれる」

「?貴女は、彼女と仲が良いのでしょう?話さない理由を聞いたことは無いのですか?」

「あるけど、教えてくれなかったんだよねぇ。一応、さっき織斑先生に聞いたけど」

 

 私の言葉に澪ちゃんが視線を向けて来る。

 話せない理由を知られたことで、何か思うことがあるのだろう。

 

「まあ、相手のことを全部知っていないと、親友に慣れないってことは無いからね」

「貴女は、姫宮さんのことを信頼しているのですね」

「まあね。まあ、そういうことだから、詳しい事情は織斑先生に聞いてね」

「分かりましたわ」

 

 オルコットさんが納得してくれたようなので、次の話題に移ろう。

 

「じゃあ、クラス代表のことなんだけさ」

「姫宮さんがなるのでしょうか?」

「澪ちゃんは、クラス代表にはなれないよ」

「……まあ、そうですわね」

 

 オルコットさんは澪ちゃんに視線を向けて少し考えて口を開いた。

 正直、多くて三単語しか話さない澪ちゃんにクラス代表は無理。

 

「それで提案があるんだけどね」

「何でしょう」

 

 オルコットさんに私の考えを話して納得して貰い、澪ちゃんと一緒に寮に戻った。

 翌日のホームルームでクラス代表が発表された。

 

「一組のクラス代表は織斑一夏君に決定しました」

「えっと、先生。俺、昨日の試合で全敗だったんですけど……」

「それは、私が辞退したからですわ」

 

 一夏の疑問に対してオルコットさんが立ち上がり、説明する。

 

「クラス代表決定戦の後、私と蓮見さんで話し合って決めたのです。代表候補生である私と姫宮さんが、クラス代表になるより、専用機を持って間もない一夏さんが経験を積むためにクラス代表を譲った方が良いと」

「は?」

「一夏も強くなりたいでしょ。だから、オルコットさんに話は通しておいたよ」

「まじかよ……」

 

 一夏は面倒な仕事を押し付けられて頭を抱えているが、一夏にとっても悪いことばかりではない。

 クラス代表に選ばれた相手との試合は、必ず一夏を強くしてくれる。

 これからが楽しみだね。

 

 クラス代表が一夏に決まってから数日が経ち、ISの実習授業が始まった。

 

「ではこれより、ISの基本的な飛行操縦を実践して貰う。だが、その前に、蓮見その恰好はなんだ?」

「ISスーツですけど」

 

 スクール水着状のISスーツを着ている女子達の中、私一人だけが浴衣のようなISスーツを着ている。

 正確には、下着のようなISスーツも着ているが、肌をあまり出したくないかったので開発したISスーツだ。

 ISスーツの性能としては通常のものより高性能になっている。

 

「それでないとだめなのか?」

「ダメです。このISスーツでないとだめなんです」

「はあ、分かった」

 

 千冬さんが諦めてくれて助かった。

 

「まず、織斑、オルコット、姫宮、蓮見、試しに飛んでみろ」

 

 まさか、実習授業開始直後に見世物にされるとは思ってなかった。

 セシリアと澪ちゃんは、すぐにISの展開する。

 一夏はまだ苦戦しているが、すぐに展開するだろう

 私もさっさと、展開しよう。

 専用機『天照』の展開をイメージすると、0.1秒未満で展開を終える。

 

 天照は十二単のように何枚も重ねられた着物で、体の装甲部分は全て覆われている。

 非固定浮遊部位は光輪状のスラスターになっている。

 着物は赤系統の鮮やかな色だが、白を基調とした羽織を羽織っているので、そこまで派手ではない、と思う。

 機体の名前の通り、天照大御神をイメージしてデザインされた機体だ。

 

 私が天照を展開すると、一組の全員の視線が私に集中する。

 

「すごい機体ですわね、蓮華さん」

「すごいでしょ。私の会社が作った最高傑作なの」

「そんな機体で戦えるのか?」

「ちゃんと戦えるよ」

 

 セシリアとISの展開が何とか終わった一夏の疑問に答える。

 そんなことをしていると、千冬さんが指示を出す。

 

「全員展開で来たな。よし、飛べ」

 

 千冬さんの指示に返事をしてセシリアが真っ先に飛んでいく。

 セシリアに続いて一夏も飛んでいくが、かなりフラフラしている。

 一夏を心配そうに見ていると、澪ちゃんも飛んでいき。

 ある程度の高さになると、一気に加速して最初に飛んだセシリアに追いつく。

 

 さて、私も飛びますかね。

 

 私も澪ちゃん達を追って飛び、恐ろしく静かに急加速する。

 一瞬で澪ちゃん以上の速度に到達し、澪ちゃん達に追いつくと速度を落とす。

 

『なんだよ、今の速度!?』

『貴女も高機動型ですの?』

 

 一夏とセシリアは私の出した速度に驚いているようだ。

 

『天照は高機動型じゃないよ。全体的に高性能な万能型』

『まじかよ……』

『滅茶苦茶』

『本当ですわ……』

 

 天照の性能に三人とも呆れているみたいね。

 まあ、現行のISでは天照が最高位で間違いないでしょう。

 

『遅い、スペック上の出力は白式はブルー・ティアーズより上だぞ』

 

 未だにふらつきながらゆっくりと飛んでいる一夏が千冬さんに叱られる。

 

『そういわれても……イメージが掴めないんだよなぁ』

『一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ』

『大体、空を飛ぶ感覚自体がまだあやふやなんだよ。なんで浮いてるんだ、これ?』

『一夏は考えても分からないことを考えてないで、数こなして慣れる方が早いよ』

『やっぱり、そうなるよなぁ』

 

 私に何を言われるか分かっていたようで、一夏はため息をつく。

 正直、ISが浮いている原理を一夏が理解できたとして、ISでの飛行が上手くなるとは思えない。

 一夏の場合は理論を理解するより、数をこなして感覚に慣れた方が上手く飛べる。

 

『織斑、オルコット、姫宮、蓮見、急下降と完全停止をやって見せろ。目標は地上から10㎝だ』

『了解です。では、お先に』

 

 セシリアは千冬さんの指示を聞いて、一番最初に急降下していく。

 そして見事に地上ギリギリで停止する。

 

『うまいもんだなぁ』

 

 一夏が感心している中、澪ちゃんが急降下していき、目標通り地上から10cmで停止する。

 かなりの速度で降下し、その速度を殺すためにスラスターを逆噴射したせいでかなりの土煙が上がっているが、大丈夫なのかな。

 

『じゃあ、私も行くねぇ』

 

 最後に一夏を残して私も澪ちゃんと同じような速度で急降下し、一切の衝撃もなく地上に降り立つ。

 澪ちゃんやセシリアのように逆噴射により、土煙を上げることもなく停止した。

 私の天照だけ、明らかに異質なのは見ていた一組の全員が理解したに違いない。

 

 さて、一夏は大丈夫かな。

 私が一夏を心配して視線を向けると、一夏は自分の速度を制御出来ずに地面に激突した。

 そして盛大にクレーターを作る。

 

 速度の制御を注意しておけば良かったかな。

 盛大にやらかした一夏にISを解除して近づく。

 すでに、千冬さんや山田先生、箒、セシリア、澪ちゃんが一夏の作ったクレーターに近づいていた。

 

「生きてるね」

 

 クレーターを覗くと、一夏の前で箒とセシリアが喧嘩をしていた。

 一夏も無事そうなので、関わらないでおこう。

 一夏を取り合いに巻き込まれるのはごめんだ。

 その後、千冬さんに怒られた一夏はグラウンドの作ったクレーターを埋めさせられていた。

 

 その日の夜、夕食後の自由時間に食堂で一夏のクラス代表就任パーティが行われた。

 私は一夏と澪ちゃんの幼馴染ではあるが、今回のクラス代表に関しては部外者なので、一人で用意されたお菓子を黙々と食べる。

 一夏達は新聞部の先輩に絡まれていたが、特に問題はなないでしょう。

 お菓子を大量に食べられただけで、私は満足だ。

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