次代の天災 作:名前が思いつかぬ
クラス代表就任パーティの翌日、澪ちゃんと一緒に教室に入ると、二組の話をしていた。
「二組のクラス代表が変わったんだってね」
「ああ、中国からの転校生に変わったんだってね」
「転校生?今の時期に?」
どうやら一夏も話に参加しているみたい。
しかし、今の時期にクラス代表を交代するってことは、その転校生はかなりの実力者なのかもしれない。
「私の存在を今更ながらに危ぶんでの転入かしら」
セシリア、それは無いと思うよ。
代表候補生一人の為に、国が実力者を送るなんてことはないでしょ。
それこそ、モンド・グロッソの優勝候補でもない限りないと思うわよ。
「どんなやつだろう。強いのかな?」
「今のところ、専用機を持ってるのは一組と四組だけだから、余裕だよ」
「その情報、古いよ」
突然、教室の入り口の方から誰かが話に参加する。
しかし、この声は聞き覚えがある。
「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝出来ないから」
私が視線を声のした方に向けると、格好つけたポーズをしている鈴が立っていた。
「お前、鈴か?」
「中国代表候補生、鳳鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ!」
鈴はなぜあんなに格好つけているのだろうか?
とても似合ってない。
「鈴、なに格好つけてるんだ?すっげー似合わないぞ」
「なっ、なんてこというのよ、あんたわ!」
あ、鈴後ろ危ないよぉ。
「いたっ!なにすんのよ!」
「もうショートホームルームの時間だぞ」
「ち、千冬さん」
「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、邪魔だ」
相変わらず容赦がないねぇ、千冬さんは。
「す、すいません。……また、後で来るからね。逃げないでよ、一夏!」
それだけ言い残すと、鈴はさっさと帰っていった。
一夏は鈴が代表候補生になっていたことに驚いているようだ。
まあ、澪ちゃんも一年でなれたし、実力があればなることは出来るか。
鈴がそれほどの実力者だというのは、知らなかったけど。
午前の授業が終わり、昼休みの食堂で一夏達と料理の受け取り町をしながら鈴に話しかける。
「久しぶりね、鈴」
「久しぶり」
「蓮華と澪も久しぶりね」
「びっくりしたぜ。お前が二組の転校生なんてな。連絡くれりゃ良かったのに」
「そんなことしたら、劇的な再開が台無しになっちゃうでしょ」
鈴が居た頃と変わらない雑談をしながら、料理を受け取る。
私、澪ちゃん、一夏と鈴の四人で席について話しながら食べる。
澪ちゃんは、相変わらずほとんど話さないが、四人ともいつも通りとでもいいたげな雰囲気をだしてお昼を食べている。
まあ、私達以外はいつも通りと思ってないようだけど。
「そろそろ説明して欲しいのだが!」
「そうですわ、一夏さん。まさか、こちらの方とつ、つつ、付き合ってらっしゃるの?」
「いや、付き合っているのなら、私と澪ちゃんが空気読まなすぎでしょ」
「では、どういうお関係なんですの!」
はあ、一夏を狙っている女子の対応は相変わらず面倒くさい。
「ただの幼馴染だよ」
そもそも一番空気を読めてないのは、一夏本人だ。
これだけ、アプローチされているのに、どうして気づかないのだろうか。
出来ることなら、一夏には早く彼女を作って貰いたいねぇ。
まあ、無理だろうけど。
「幼馴染?」
「箒は知らなくて当然よ。鈴は箒が転校した後に、転校してきたから」
「箒はファースト幼馴染、鈴はセカンド幼馴染ってところだ」
「順番なら、箒、澪ちゃん、私、鈴のはずなんだけど」
「ん?じゃあ、鈴はフォース幼馴染か?」
「分からなくなるだけだから、順番付けるのやめたら」
「それもそうだな。まあ、鈴は箒と入れ違いで転校して来た、幼馴染なんだ」
幼馴染の順番なんてどうでもいいこと言ってないで、さっさと向けられた好意に気づけ朴念仁。
まあ、これに関しては箒達にも問題があるのだけど……まあいいか。
「初めまして、これからよろしくね」
「ああ、こちらこそ」
「私の存在を忘れられては困りますわ。私はセシリア・オルコット、イギリスの代表候補生ですわ。一夏さんとはーー」
「あんな一組の代表になったんだってぇ」
「まあ、成り行きでなぁ」
セシリアの長い話を無視して、一夏に話しかける鈴。
一夏もセシリアの話を無視している件については、何も言う気は無いんだね。
可哀想なセシリア。
まあ、私も何か言うつもりはないけどねぇ。
「良かったら、私が練習見てあげよっか、IS操縦の」
「ああ、そりゃあ、助かる」
「って、ちょっと、聞いていらっしゃるの!」
「ごめん、私、興味ないから」
流石鈴、ばっさりと言い切るねぇ。
「言ってくれますわねぇ」
「一夏に教えるのは私の役目だ!」
「貴女は二組でしょう。敵の施しは受けませんわ」
「私は一夏と話してるの。関係ない人達は、引っ込んでてよ」
関係ないので、引っ込んでますよ。
それに私は一夏の練習に付き合う気ないしねぇ。
「貴女こそ、後から出て来て何を図々しいことを!」
「後からじゃないけどね。私の方が付き合いは長いんだし」
「それを言うなら、私の方が早い。一夏は何度も家で食事をしている間柄だ」
「それなら、私もそうだけど」
一通り箒達の話を聞いて思ったことは……
「それって私が一番ってこと?」
「なぜそうなる!」
「どうしてそうなりますの!」
「どういうことよ!」
何となく漏らした言葉で、ここまで攻められるのはどうしてだろう。
「まず、付き合いの長さは私と澪ちゃんが同じくらい長いでしょう。出会ったのも箒とあまり変わらないし」
「それなら、澪も該当するだろう」
「付き合いの長さならそうだけど、家で食事しているってことなら私が一番なんじゃないかな」
「ああ、確かに、それなら蓮華が一番だろうな」
「どういうことだ?」
私と一夏の話に鈴達は意味が分からないという顔で問いかけて来る。
「小学校五年くらいから、ほとんど毎日一夏は家で夕食食べてるし」
「「「はあぁぁぁ!?」」」
ただ事実を話しただけなのに物凄い耳が潰れそうな声で叫ばれた。
まあ、こうなるとは思ってたから、今まで秘密にしてきたんだけどねぇ。
口を滑らせなければ言うつもりも特になかったし。
「どういうことだ、一夏!」
「説明しなさい、一夏!」
「そうですわ、説明してください、一夏さん!」
「え?俺?」
どうやら、矛先は一夏に向いているようだ。
今のうちに逃げようかな。
「……あれ?」
「逃がさない」
「澪ちゃん……」
まさか、澪ちゃんまでもが敵に回るとは、これは予想外だ。
「説明って言われてもなぁ。働いてただけだし」
「「「?」」」
ああ、一夏にそもそも説明は無理だったか。
仕方ない、一から説明しようかな。
「私が説明するよ」
「おう、頼んだぜ」
どうして私が睨まれないといけないのだろうか。
「一夏には私の家の夕飯を作って貰ってたの。一夏の料理の腕は知ってたから、冗談で働かないかって話したのが始まりね。一夏が千冬さんの負担を減らしたいって言うから、本当に仕事として夕飯を作って貰って一緒に食べてただけよ」
「おかげで家計が助かったぜ」
「まあ、助け合いは重要だからね」
私も千冬さんに恩を売れたから、多少の我儘は見逃してくれる。
まあ、それでも厳しいのは変わらないけどねぇ。
「そうだったのか」
「そういうことよ。だから、箒達の理論で行くと、私が一番なわけ」
「じゃあ、蓮華がISの操縦教えてくれるのか?」
「まあ、私が教えるのが一番効率的だろうけど、教えてくれる人が四人もいれば、私いらないんじゃない」
「それはそうなんだが……」
まあ、箒達の指導に問題があるのは分かるけど、私が参加しようものなら確実に面倒に巻き込まれる。
それだけは絶対に嫌だ。
「折角教えてくれるって言ってるんだから、人の好意を無下にしたらだめだよ」
それだけ言い残してさっさと離れる。
説明したから澪ちゃんも逃がしてくれたし、後は修羅場にでも地獄にでも勝手になってください。
放課後、大浴場から戻る途中で明らかに怒っている鈴を見つけた。
「鈴、どうしたの?そんなに怒って」
「蓮華。ねぇ、聞いてよ、一夏の奴がーー」
ああ、これ面倒な奴だ。
けど、話しかけて置いて逃げれないし、諦めて聞くしかないかぁ。
「分かったから、ラウンジで話そう」
「……それもそうね」
取り合えず、近くのラウンジに移動して鈴の話を聞く。
正直、呆れて頭を抱えたくなる。
「まあ、鈴の言い分は分かった」
「あいつ、絶対に謝らせてやるんだから」
「無駄なことを」
「無駄って何よ!」
正直、クラス対抗戦で鈴が勝って一夏に謝らせて進展しないし、一夏が勝っても鈴がまともに説明できるとは思えない。
「はあ、仮に一夏が誠心誠意謝ったとして何か変わると思ってるの?」
「それは……思ってないけど」
「一夏の鈍感さは今に始まったことじゃないんだから、押し倒した方が早いわよ」
「そ、そんなこと出来るわけないでしょ!」
まあ、それが出来るなら鈴はとっくに一夏と付き合ってるわね。
それに下手なことをすれば、千冬さんに何されるか分かったものじゃないしねぇ。
「まあ、上手く進展することを祈っておいてあげる」
「……あんたが祈るって、望みは薄いってことね」
「祈るだけまし、可能性がないなら祈らないもの」
「そうなんだ……」
鈴は微妙な表情をしているが、何か不満でもあるのかな。
一夏と付き合える可能性があるのだから、それだけでも十分じゃないかな。
「じゃあ、おやすみ」
「……おやすみ」
鈴との話を終わらせて部屋に戻る。