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第一話 世界の始まりと出会い
あの日から、俺達のデスゲームは始まった……。
今日はVRMMORPG《ソードアート・オンライン》の初ログインの日だ。
幸運にもソフトを買えたゲーマーたちは皆、この日のこの瞬間を心待ちにしていただろう。
俺はゲームにログインして、一緒に行動する約束をしていた幼馴染――桐ヶ谷和人を探しているんだが――見つけた。
「よぉ、無事ログインできたな」
向こうから近づいてきた和人に声をかける。
向こうも手を上げて声をかけてきた。
「ああ、ってお前リアルのまんまだな」
「その方が臨場感出ねぇ?」
「そうか?俺にはよくわからないかな。ところでお前、ベータテストのときと名前変えたのか?」
「いや、変えてねぇよ。お前は?」
「俺も変えてない。そうか……じゃあ、またニューカイなのか。ダサすぎだろ。
「うるせー。桐ヶ谷和人だからキリトなんて安直なやつに言われたくねー。まあ、いつも通りカイって呼んでくれや」
「OK」
こいつが俺の幼馴染、桐ヶ谷和人だ。こいつとは家も近くて、昔から仲がいい。
こいつん家の近くの剣道場にも一緒に通っていたことがある。今は二人とも通ってないが。
こいつは少しだが、俺ん家の合気道場に通っていた。
だからこいつとは家族ぐるみの付き合いだ。
「さて、どうする?」
キリトの問いに少し考える。
が、まあ、やることなんて決まっているだろう。
「テキトーに狩ろうぜ。少しは経験値とれんだろ。お前、武器は?」
「変わらず片手直剣だ。お前は?」
「まずはベータ時代に一番使いやすかった短剣だな。手に馴染んでしっくりくる」
「短剣が手に馴染むって……確かお前一番得意な格闘技がバーリ・トゥードだっけ?どこのラノベ主人公だよ。普通は得意な格闘技なんてないってのに」
「んなもん知るか。じいちゃんに仕込まれて得意なんだからしゃあねぇだろ。ま、行こうぜ」
「おう」
俺達はしばらくその辺でMobを倒して、感触を話し合っていた。
「どーよ、キリト。感覚戻ったか?」
「ああ。ばっちりだ。カイは?」
「俺も短剣は完璧だ。次は――」
と続けようとしたところで、
「お〜い、そこのお二人さ〜ん」
と、声をかけられた。
こいつはクラインというらしい。
なんでも、こういうのは初心者だから少し指導してほしいとのこと。
俺は感覚派で教えるのには向いてねえから、クラインはキリトに任せて少し離れたところで
使いづらい武器はないかの確認だ。
今は入手できる武器が少ないので確認することも少ない。
が、だからこそ俺は入念にチェックした。
と、確認を終えたところでキリトに呼ばれた。
「おう、クラインの特訓無事に終わったか。で、なんだ?」
「ああ、ログアウトのボタンがないんだ」
「……なんだと?」
不穏な話題に眉をひそめる。
「クラインがログアウトしようとして、ないのに気がついた。俺のもなかった。カイはどうだ?」
「ちょっと待て。……ねぇな」
「くそっ、なんなんだこれ!バグか!?GMコールも反応ねえし!こっちはピザ頼んでんのによぉ」
「いや、重要なのそこじゃねぇだろ。帰れねぇってことだぞ」
「ああ、いまクラインとその話になって――」
その時、鐘が鳴った。その音を怪訝に思う間もなく、俺達は強制転移させられた。
―――広場だ。なんだ?この人数。まさか、全プレイヤーが転移させられたのか?
思考を走らせていると――。
『――プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』
その声に空を振り仰ぐと、赤いフードが浮かんでいた。
「GMか……?」
「いや、それにしては中に誰もいない。おかしいぞ」
俺の呟きにキリトが律儀に答える。
『プレイヤーの諸君。私の世界へようこそ』
なぜ繰り返したし。
『プレイヤーの諸君ぅ!反応してよぅ!』
―――しつけぇ!ガキか!
――落ち着け。
こんな初期に大イベントなんて普通はない。
しかもオープニングの演出にしては不自然なほど凝り過ぎている。
そして、この世界を《私の世界》とまで断言できる人物となると――――。
『私は茅場 昌彦。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ(ドヤァ)』
ご丁寧に答えてくださったよ。
何故だかわからないがドヤ顔してる気がする。
何か腹立つな。
だが、やはり茅場か。
だとするとログアウトできないのは――――。
『プレイヤー諸君は、既にメインメニューウィンドウからログアウトボタンが消滅しているのに気づいているだろう。――だがこれは《ソードアート・オンライン》の本来の仕様であ〜る』
チッ。やっぱりか。
「し……仕様、だと……」
クラインのかすれた声が広場に響く。
それほど静かだということに、今気づいた。
『諸君らは、この城の――アインクラッドの頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできないのだっ!』
ログアウトの必要条件はゲームクリアか。
ちなみに語尾は無視することにする。
『また、外部の人間によるナーヴギアの停止及び解除はあり得ない。もしそれが試みられた場合――』
プレイヤーに緊張が走る。
ここで断言するということは恐らく――、
『――諸君らの脳は、ナーヴギアから発せられる高出力のマイクロウェーブにより、破壊される』
クソ、今日は嫌な予感ばかり当たりやがる。
周りは重苦しい静寂に包まれている。無理もない。
「キリト、動けるように準備しとけよ……。これは普通じゃない」
「……もうしてる」
「……さすが」
茅場の説明は続く。
『また、諸君らのHPがゼロになっても、脳は同様に破壊される』
つまり、デスゲームか。ここも予想通りだ。
この世界には魔法はないし、こんなに手の込んだことをする奴がそんな抜け道作るわけがない。
「な、なあ、キリト、カイ……。そんなこと可能なのか……?」
クラインが否定してほしそうな口調で聞いてくる。
「ああ、可能だ。ナーヴギアは馬鹿みたいな量のバッテリーを内蔵してるからな」
「そ、そんな……マジかよ……」
『最後に、餞別として諸君らのアイテムストレージにアイテムを送らせてもらった。確認してもらいたい』
見ると、確かにアイテムストレージに《手鏡》というアイテムが送られている。
それを取り出すと、周りが光に包まれ――それが晴れると、周りの奴らの容姿が変わっていた。
……ん?和人がいる。キリトじゃなくて和人が、だ。
なるほど、今のアイテムはアバターをリアルの姿にするものか。
周りは騒然としている。つか、一気におっさん増えたな。
余計なことを考えつつも、俺はずっと空を見上げていた。
空に浮かぶ赤ローブから、目を逸らさなかった。
この光景を、脳裏に焼き付けるために。
『私の目的はこの世界を作り出し、観賞することだ。そしてそれはいま達成された』
俺はその言葉のどこかに不透明な違和感を覚えた。だが、それについて深く洞察している暇はない。
『以上で、《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。―――諸君らの健闘をいにょっ!―――――コホン。健闘を祈る』
周りの人間がずっこける。俺達は耐える。
そう言って、茅場――いや、赤いフードは姿を消した。
その瞬間、俺達は動く。
「キリト!行くぞ!」
「おう!」
一瞬のうちに広場を出て、次の村に向かう。
もうこれはデスゲームだ。リソースの奪い合いになる。ちんたらしてる暇はねえ。
《はじまりの街》を出ようとしたとき、後ろから声をかけられた。
クラインだ。
「なあ、行っちまうのか?」
受け答えはキリトに任せる。
「ああ、クライン一人なら連れて行けるけど……」
「……いや、俺は仲間と約束してるからな。一人で行くわけにゃあいかねえ」
「………そうか。……なら、ここで別れよう。何かあったらメッセージ飛ばしてくれ。……じゃあ、またな、クライン」
「ああ、じゃあな!っと、キリトぉ!」
クラインが最後にキリトに呼びかける。
「おめぇ、案外カワイイ顔してんじゃねぇか!その方が似合ってんぞ!」
「クラインこそ、その野武士面のほうが十倍似合ってるよ!」
軽口を交わしあって、キリトは前を向いた。
もう振り返るつもりはないらしい。俺も一言言うか。
「じゃあな、クライン。……生き残れよ」
「おう、お前さんもな!じゃあ、また会おうぜ!」
そう言ってクラインは去っていった。
クラインが立ち去った後、キリトが辛そうな表情で振り返る。
「キリト、クラインなら大丈夫だ。ああいう心が強い奴は必ず生き残る。必ずだ。俺達も心を強く持つぞ」
「ああ、わかってるよカイ。……行こう」
その後俺達はベータテスト時代の知識を使い、様々な有益なクエストを凄まじい速度でクリアし、レベルをあげていった。
そして一か月ほど経過したある日。俺達は第一層迷宮区の帰り道、あるプレイヤーの戦闘を目撃する。
レイピアを使うそのプレイヤーは、見ている側がヒヤヒヤするような危なっかしい戦闘をしていた。
相手の攻撃を最小限の動きでギリギリで躱し、相手の体勢が崩れたところに細剣ソードスキル《リニアー》を叩き込む。
そのパターンを三回繰り返し、《ルインコボルド・トルーパー》を無傷で屠っていた。
奴は別に雑魚ではない。それなのに無傷とはすごいことだ。。かなりの実力者であることは間違いない。
が、そのことが逆に俺達に強烈な違和感を抱かせる。
だが、その違和感を疑問としてぶつけることはできなかった。
そいつは敵を殲滅したら、急に倒れたからだ。
「……どうするよ?」
「……とにかく、ここじゃ敵がポップする。安全地帯に運ぼう」
「りょーかい。なら、その役目よろしく〜」
「え?手伝ってくれないの?」
キリトが目を丸くして俺を見つめてくる。
どれだけ見つめられても手伝わねえからな。
「やだよ、んなめんどくせぇの」
「薄情者め……」
そいつを安全地帯に運んだ後、俺達はこいつに話を聞くために安全地帯に留まって話をしていた。
「こいつ、すげぇズタボロだが……ソードスキルはすさまじかったな」
「ああ、まるで流れ星だった」
そう、このズタボロさんはソードスキルの使い方が上手かった。
「威力とスピードを上手い具合にブーストしてやがったな」
「プレイヤースキルがかなり求められるのにな……」
この世界にはソードスキルが存在する。
規定の構えをとるとシステムがその構えを読み取り、自動でソードスキルを発動してくれるのだが、その動きを阻害しないように自分の身体を動かすと既存のものより威力等を上げることが出来る。
俺やキリトはベータ時代に練習したから余裕で出来るが、こいつも中々だ。素質がある。
……お、気づいたな。
そいつは目を覚ましてすぐに俺達に気づいたのか、警戒心も露わに俺達から距離を取った。
「……なに、あなたたち」
「迷宮区うろついてたらあんたが倒れるのが見えてな、ここまで運んだんだよ」
「……余計なことを」
「アァ?」
ボソリと呟かれた言葉に反応して口調が荒れる。
何言ってんだ、こいつ?
「カイ、落ち着けよ。君、あそこにそのままいたらリポップしたMobにやられて死んでたよ?」
「……そんなのわかってる。ほっといて」
「なんだ、死にたがりか。そんなに死にたいなら俺が殺してやろうか?まあ、やるにしても後でだが」
「……後で?……何か用?」
「少し話が聞きたい。だから助けた。……んで、そんなにフードズタボロにして、なにやってんだあんた?」
訊くと、端的に返事が返ってきた。
「……三日か四日、ここに篭ってる」
…………は?
俺もキリトも言葉が出ない。
何言ってんだ、こいつ?
「……今、なんて?」
キリトが動揺しまくりながら聞く。俺も混乱してるよ。
「……だから、三日位ここに篭ってる。それで怪物と戦い続けてる」
「武器はどうしてんだ?壊れんだろ」
俺がそう言うとそいつ――今気づいたがこいつ女だ――はバックの中身を見せてきた。
――そこには近くの町で買える一番安いレイピアが複数本新品で入っていた。
これが意味するところはつまり――。
「てめぇは武器が壊れたら次の奴ーってやって武器を使い潰してるってことか?」
コクリ。女が頷く。
俺は一瞬、頭に血が上った。
「ふざけんじゃねぇぞ、てめぇ……武器は大事にしやがれ」
「カイ、落ち着けって。でもカイの言う通りだ。武器は大事にしなきゃダメだ」
「……なんで。どれも同じ、所詮はポリゴンデータでしょう」
女の声は疑問というよりも、納得が行かないことへの不機嫌さの色が強いように感じた。
「武器は強化できるし、使っていると馴染んでくる。それと武器が信頼できるようになる。これはこの世界では重要な要素だ」
「……そう」
女が興味なさそうに呟く。
「もう一つ聞きたい。さっきの君は明らかにオーバーキルだったけど、この意味、伝わる?」
女は意味がわからないといったふうに首を傾げた。
「オーバーキルっていうのは相手のHP残量に対してとどめのダメージが過剰だってことだよ」
端的に説明するが、これでもまだ伝わっていないらしい。首を傾げたままだ。
……こいつ、ゲームの経験が皆無に近いんじゃないか?
「……過剰で、何か問題があるの?」
「効率が悪ぃだろ。最後の一発打つまで躱すのにも神経使うしな」
「……よくわからないけど。もういい?そろそろあの怪物が復活してると思うし」
「待った。あんたなんで死に急ぐようなことをした?」
「……どうせ、皆死ぬのよ。死ぬのが早いか遅いかの違い。戦って死ぬか、ひきこもって死ぬかの違い。それなら戦って死のうと思っただけ。この世界に負けるのは嫌だったから」
「そうか、戦う意志はあるんだな?なら、わざわざここで死ぬこともねえ。一緒に町に戻るぞ」
「……なんでよ」
「《会議》に出るからだよ」
「……《会議》?」
女の言葉にキリトが頷き、補足説明をする。
「ああ、今日《トールバーナ》の町で《第一層フロアボス攻略会議》が開かれるんだよ。多分ボス部屋が見つかったんだろ」
「そこでどうボスを殺るかの会議が開かれるのさ。戦う意志があんなら参加しとけ」
「じゃあカイ、行くか」
「おう」
「……ちょ、わたし、了承してない……」
とか言いながら女がついてくる。
そこに嫌味の意味も込めて言ってみた。
「おっと、そうだ。助けられたのに礼もなしか?」
「……そんなこと頼んでない」
「アァァ?」
煽るつもりが逆に煽られた。この女……。
「はいストップ。俺はキリト。もうわかってると思うけど、こいつはカイ。君の名前は?」
「……アスナ」
「アスナか。よろしく」
「……よろしく」
「ほら、カイも」
「……チッ。よろしくな」
「……ふん」
「はいはい二人とも落ち着いて」
キリトが仲裁に入る。
それにしてもこの女、アスナだったか。
癪にさわるな。
俺達は迷宮区を後にした。
こんにちは、gobrinです。
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