黒の剣士と紺の浮浪児   作:gobrin

10 / 33
またまた間があいてしまった。

今回も色々と不快な表現があるかもしれません。


あ、今回短いです。

では、どうぞ。




第十話 暗い過去

 

 

「――ただいま」

 

「「お邪魔します」」

 

「おかえりなさい。どうぞ」

 

 

ホームに着いた俺達は、シリカに出迎えられた。

 

俺達は装備を解除して、リビングに腰を下ろす。

シリカが人数分の紅茶的なものを用意してくれた。

 

 

「――じゃあ、俺のリアルであったことを話す。あんま楽しい話じゃねぇ。

アスナに言ったように、俺がレッドの奴らを殺したい理由を話すわけだからな。

………シリカに聞いてもらいたいと思ったのは、俺のエゴだ。嫌だったら聞かなくてもいいから」

 

「………あたしは、聞くって言いました。大丈夫です」

 

「……そっか。――じゃあ、話すわ」

 

 

 

 

 

 

 

―――俺の家は、合気道の道場をやってたんだ。

 

そこまでちゃんとしたものじゃなかったけどな。

軽く、近所の子供たちに教えるとかそんな感じだ。

 

習いに来てる奴はそこそこいたんだ。

十人強ってとこだな。

それぞれが解放されてる曜日のうち好きな時に行って気楽に合気道を習う――そんな緩いとこだった。

 

教えてたのは俺の親父、お袋、兄貴、姉貴。

俺も当然習ってた。

 

兄貴達とは結構歳が離れててな。

兄貴も姉貴もすでに結婚してて、兄貴に至ってはもう子供までいた。

俺の姪だ。

 

ウチは、俺達家族と、義姉さんと娘のスズ、義兄さん、それにじいちゃんの九人で一緒に住んでたんだ。

楽しく、仲良く、幸せに暮らしてた。

 

 

――あの事件が起きるまでは。

 

 

 

 

あの日、帰ってきた俺が見たのは、血の海だった。

 

 

習いにきてた奴の一人、金田(かねだ)(まこと)って奴が手に血まみれの刀持って立ってたんだ。

 

ウチには何故か日本刀が飾られててな。

ずっと偽物かと思ってたんだが、本物だったらしい。

 

奴が作ったと思われる血の海に溺れてたのは、親父、お袋、兄貴、姉貴、義兄さんの五人だった。

その日は皆仕事が終わるのが早かったんだろうな。

義姉さんも部屋の中で腰を抜かしてたよ。

 

 

俺は、何が起こってるのかわからなくて、半ば呆然としながら聞いたんだ。

 

『お前……何してんだ………?』

 

ってな。そしたら、金田の奴なんて答えたと思う?

 

『何って、殺したんだよ。見てわかんねえ?』

 

って、平然としながら答えたんだ。

俺は意味がわからなくて、『………なんで?』って続けて聞いた。

そしたら、

 

『楽しそうだったから。面白そうだったからとも言う』

 

なんて、抜かしやがったんだ…………!

 

 

そこで、一回俺の記憶が途切れてんだ。

 

多分、怒りで我を忘れたんだと思う。

気づいたら、俺の目の前で金田が倒れてた。

血を垂れ流しながら、な。

俺の手には奴が持ってた日本刀。

俺が刀を奪って金田を殺したんだって気づくのに、しばらくかかった。

 

そのとき、声がかけられたんだ。

 

『………新、何してるの?』

 

俺に声をかけてきたのは神野猛。

奴もウチで合気道を習ってた。

 

俺は自分でも驚く程冷静に、神野に状況を説明していた。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、だ。

しかもご丁寧に手袋まで付けて。

 

俺の話を聞いた奴は、

 

『ふぅん……。誠の奴、しくじったのか』

 

って呟いて、義姉さんの後ろに回り込んで、頸動脈を斬ったんだ。

返り血を浴びずに、あまりにも鮮やかに殺したもんだから、またもや何が起きたのかわからなかった。

でもすぐに、目の前のこいつがやったんだって気を持ち直して、斬りかかったんだ。

 

まあ、俺は刀とか扱ったことがなかったからよ。

すぐに返されて、軽く腕を斬られたんだけど。

 

その後アイツは、警察を呼んで、警察が来る前に手袋を処理して、俺の手当までしようとし始めた。

俺は普通にキレて殴りかかったんだが、アイツは『うわっ!何するんだ、やめろよ!』なんてほざきながら俺の手当を続けようとした。

 

――後でわかったんだが、アイツはそうやって演技することで、自分が何もやってないという状況を作り出したんだ。

確かに状況だけ見れば、全員の殺しを俺がやったかはともかく、俺が発狂して神野に殴りかかっていたように見えただろうからな。有効な手段だったよ。

 

警察が来て、俺は一時的に取り押さえられて、軽い事情聴取みたいなものを受けた。

金田が浴びていた返り血、刀の指紋とかの証拠、俺の証言から、事件はこういうことになった。

 

 

――俺の一家は、金田誠が殺害した。動機は不明。

俺は、帰宅した直後にその光景を見て、我を忘れて金田を殺害。

そのときに抵抗した金田に腕を斬られた(ご丁寧に神野の野郎、もう一本の刀にも金田の指紋を付けてやがった)。

その後、帰ってきた神野猛が警察へ連絡した後俺の怪我を手当しようとするも、錯乱した俺に殴られ軽傷。

俺は少し色んなところに世話になってから、釈放。

神野は当然のように何もなし。

 

 

俺は釈放までの間に色々考えた。

 

何故あの時間に、他の子供が誰もいなかったのか。

神野の言葉の意味は。

あの手際、犯行は計画的なものだったのか。

 

 

だが、三つ目の問いなど、答えられるのは本人しかいない。

しかし、それらの問いに答えてくれたのは、皮肉にも神野だった。

 

 

俺は不登校になり、バイトをして生活費を稼ぎながら、身体を鍛えていた。

 

新聞配達のバイトを朝早くからして、小学生のスズを送り迎えする。

スズは、ショックで精神的な疾患を抱えたからな。

じいちゃんが色んな格闘技を習っていたから、じいちゃんに鍛えてもらいながら独学で勉強する。

家事もする多忙な日々の中で、向かいに住んでるキリトとだけは交流を続けていた。

 

 

そんなある日、あまり人のいない――でも声をあげればすぐに人が飛んでくる――路地で俺は神野にばったり出くわした。

 

『てめぇ………!』

 

『やめときなよ。ここはすぐに人が飛んでくるよ?』

 

『……チッ。……オイ、神野』

 

俺は奴の指摘に苛つきながら、必死に自分を抑えて神野に話しかけた。

 

『なんだい?』

 

『聞きたいことがある。答えろ』

 

『いいよ。カワイイ後輩のためだ』

 

こんなことを平気で抜かすコイツに虫酸が走る。

 

 

――俺の疑問は瞬く間に解決された。

 

 

犯行は計画的なものだったのか?――YES。

 

あの時の神野の言葉の意味は?――もちろん、今回金田を唆したのは神野だということ。

 

何故あの時間に他の子供達が来なかったのか?――神野が事前に手を回して、その時間他の奴らは遊ぶように仕向けていたから。

 

 

俺は、最後の質問を神野にぶつけた。

 

『―――何故、あんなことをした?』

 

『人を殺すのって、どんな感じなんだろうと思ってね。でも、意外とあっけなかったな』

 

『てんめぇぇぇえええ!!!!』

 

これだけは我慢ならねぇ!勝手に人を殺しておきながら、『あっけなかった』だと!?ふざけんな!!

 

 

神野に殴りかかった俺は、地に倒れていた。

――――いなされた。

 

『新の力じゃ、俺を傷つけることはできないよ。諦めな』

 

そう言って、奴は立ち去った。

 

 

―――それきり、奴と出会うことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――話し終えた俺は、小さくため息をついた。

 

 

「てなわけで、俺は快楽殺人者を心の底から憎んでる。それこそ、全員殺しちまいたいくらいに。

それが、俺があそこにいた理由だ。レッドの奴らは全員が快楽殺人者だからな。

特に、神野だけは絶対に殺してやろうと思ってた。いや、今も思ってる。

そして、奴はこのSAOにレッドプレイヤーとして囚われていた。好都合だ。俺は絶対に奴を殺す」

 

 

俺の独白を聞いた三人は、黙りこくっている。

 

 

「これが、俺の抱えてる闇だ。俺は復讐のために生きてきた。家族の復讐が、俺の生きる目的であり、目標なんだ」

 

 

俺は、シリカに向き直る。

 

 

「シリカ。俺は、こんな人間だ。復讐に生きる俺と付き合っててもシリカにいいことなんか何一つない。

これまで楽しかった。俺達、別れよ―――」

 

 

俺は、最後まで言いきることができなかった。

 

シリカの平手打ちが、俺を吹っ飛ばしたからだ。

 

圏内だからダメージは発生しないが、紫色のシステム壁を通して衝撃は伝わる。

 

 

「な、なにを――」

 

「勝手なこと、言わないで!!」

 

 

シリカの叫びが、リビングに響き渡る。

 

 

「自分の過去をべらべらしゃべって!勝手に自分の考えを伝えて!

勝手に納得して!勝手に結論を出して、人に押し付けるな!!」

 

 

シリカが肩を上下させながら息を整える。

その間に、キリトが立ち上がった。

 

 

「カイ。お前がどんな気持ちで生きてきたか、同じ境遇にない俺にはわからない。

お前は自分と付き合っててもいいことはないって言ったけど、俺はお前と一緒に過ごした時間は、いいものだと思ってるぞ。

今日はもう帰る。お前がどんな結論を出そうと、俺はそれを尊重する」

 

「……カイ。わたしは、あなたになんて言えばいいのかわからないけど………。

……一人で結論を急がないで、他の人に相談するのも手だと思うよ?

わたしも、今日は帰るね。おやすみなさい」

 

 

アスナも立ち上がってキリトと一緒に歩き出す。

シリカが二人を送ろうとしたけど、二人は手でそれを制した。

 

 

二人がリビングを出て行ってしばらくして、シリカが口を開いた。

 

 

「………カイさん。あたしは、あなたと別れない」

 

「……なんでだよ。こんな復讐に生きる奴――」

 

「あなたは!あたしを助けてくれた!助ける義理は何もないあたしを!

なんで!?復讐に生きるというなら、なんで関係ないあたしを助けたの!?」

 

「そりゃあ………」

 

「あなたは、あたしが姪に似てるからって言ってた。

もしかしたら、ごまかすために適当に言ったのかもしれない。

でも!そんな気遣いをしてる時点で『復讐のため』じゃないでしょう!」

 

 

シリカの正論に、俺は何も言い返せない。

 

 

「……カイさんは、あたしといて楽しくなかったんですか?いいと、思ってくれなかったんですか?」

 

「そんなわけねぇだろ!………でも、俺とかかわってると、シリカを不幸にしちまうかもしれねぇ……」

 

 

俺の弱々しい言葉を、シリカが否定する。

 

 

「あたしは、あなたの過去に何があろうと気にしない!復讐を考えていても気にしない!

あたしが気にしてないんだから、いいんです!!」

 

「シリカ………」

 

 

シリカが、俺の目を真っ直ぐに見つめて、言った。

 

 

「カイさん。あなたの話を聞いた上で、言います。

あたしと、付き合っていてください……!」

 

「…………シリカ。本当に、いいんだな?」

 

「はい」

 

「俺は多分この世界で人を殺すぞ。そんな俺でもいいんだな?」

 

「はい!」

 

 

…………ここまで言われちゃあ、俺も腹をくくらないとな。

 

 

 

「シリカ。まず、謝らせてくれ。

お前の気持ちを考えずに、勝手なことを言って、悪かった」

 

「はい。でも、もういいです。許します」

 

 

シリカは笑顔を浮かべながら俺を許す。

 

この笑顔がもっと咲き誇ってほしいと願いながら、俺は言葉を紡ぐ。

 

 

「そして、俺の話を聞いた上で告白してくれてありがとう。

俺もシリカのことが大好きだ。

 

これからも、よろしく頼む」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はいっ!」

 

 

シリカが、花が咲いたように笑った。

 

 

 

 




読んでいただきありがとうございました。


次回は、少しほんわかとしたものが書けると思います。

感想、意見、批評、質問その他、お待ちしております。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。