あ、前話の最後、展開変えました。
カイ達は付き合ったままです。
今回オリジナルの話をやって、あと色々ちょこちょこやって、やっとこさ原作第一巻に入れます。
頭の中に構想があるのでパパッと書いちゃいたいんですけどね。
その書く時間がとれないというジレンマ(笑)
でもまあ、これからも頑張ります。
応援していただけるなら幸いです。
俺の告白から数日。
俺の過去を知っても、シリカもアスナも変わらず接してくれていた。
とてもありがたい人達だ。
今日俺達は、四人で四十六層の《絶縁の樹海》ってダンジョンに狩りにきている。
武器関連の素材集めのためだ。
あの日の翌日、俺の謝罪の後色々話してるうちに武器の話になった。
皆強化や生成をしたいと思っていたようで、素材を集めたいようだった。
んで、どうせなら一緒にやろうってことになって、アスナがKoBの休みを取れた今日、行くことになったってわけだ。
俺、キリトにとってはあまり経験のないパーティープレイだ。
シリカもここまで高レベルプレイヤーとのパーティープレイは初だろう。
ま、俺と合わせられるくらいだからすぐ慣れるだろ。
俺達も経験があまりないとはいえ、ボス戦では他のパーティーに入って戦うことはある。
問題は起きねぇだろ。
………………とか考えてた時代が俺にもあったぜ。
「おい、シリカ!《思い出の丘》行った時のこと思い出せ!
あんときはちゃんと倒せるようになっただろそいつら!」
「カ、カイさん!だ、だってぇ〜!」
今俺達の前にいるのは、植物型のモンスターだ。
俺とシリカが付き合うきっかけの一つとなったダンジョン、《思い出の丘》。
あそこでは今戦っているタイプの植物型モンスターが数多くポップした。
見た目がかなりグロテスクなので、シリカは序盤尻込みしていた。
だが、後半は慣れてきていたと思ったんだが―――。
「いやぁぁああっ!!!!こないでっ!!こないでよっ!!!」
………結構本格的にビビってる。
無闇矢鱈に短剣を振り回してないだけ、前よりはまだマシだが………。
ピナも牽制してくれてるしな。
ちなみにシリカは二体しか相手にしていない。
シリカのレベルから考えても、安全マージンは十分にある。
対して俺達三人は、それぞれが四体ずつを相手にしているため、援護に行けない。
……本当は俺だって、スイッチを駆使して戦いたかったさ。
それがパーティープレイの定石だしな。
そもそも、なぜ俺達がこんな状況に陥ったかというと、場面は少し前に遡る。
朝出発した俺達は、そろそろ昼にしようかと考えて、どこか良さそうな場所を探して談笑しながら歩いていた。
そのとき、俺の索敵範囲の端に大量のカーソルが現れた。
なんだ、コレ――!
俺が息を呑むのと同時に、キリトも息を呑んでいた。
―――数が多すぎる。
カーソルの数が、十や二十じゃきかねぇ。
シリカとアスナは俺達の様子を不思議そうに見ていた。
俺とキリトはソロで狩りに行くことも多い。
いつでも一緒なわけないからな。
故に俺達は一人でも困らないように、索敵スキルをかなりのレベルで習得済みだ。
だがこの二人の索敵スキルは俺達ほど高くないんだろう。
当然のごとく、俺達に聞いてくる。
「どうしたんですか、カイさん?」
「キリト君、どうしたの?」
だが、俺達にその問いに答える余裕はない。
「いや、キリト、これはやべぇだろ」
「ああ、個々のレベルはそこまでではないだろうけど、この数は……!」
「え、敵!?何この数!?」
アスナが気づいた。
シリカが理解しきれてないようだから説明する。
「敵だ。俺達の索敵範囲の端にいるからまだ距離はあるが、何しろ数が多い。
しかもなぜか全部こっちに向かってきてる」
「え!?」
「で、だ。どこを突破する?
どこでも大して変わらねぇと思うが」
「そうだな。どこでもいいから一カ所突破しよう。
幸い、コイツらはいくつかのグループに別れているようだし」
「そうね。このまま真っ直ぐに行きましょ」
「よし。そうと決まれば善は急げだ。走るぞ」
そうして駆け出した俺達がぶつかったのがこの植物型Mobの団体だ。
これでも数が少ない方だったがな。
そして今に至る。
「フッ!」
「ハァァッ!」
「オラァッ!」
キリトの《バーチカル・スクエア》が。アスナの《リニアー》が。
そして俺の《ラピッド・バイト》が、それぞれの前にいた敵をポリゴン片に変える。
「もう、嫌!」
それに少し遅れて、シリカの方からも爆散エフェクトの音が聞こえてきた。
どうやら何だかんだ言って倒したらしい。
「お疲れ、皆。さあ、他の奴らが集まってくる前に行こう、ぜ……って、んなぁ!?」
俺が素っ頓狂な声を上げたのには理由がある。
突然、周りのカーソルが消滅したのだ。
一斉に。一体の取りこぼしもなく。
「な、なんだコレ!?どうなってやがる!?」
「わ、わからない!バグか!?……ッ!!?」
再び俺とキリトが息を呑む。
無理もない。
なぜなら、
「な、なんなんだ一体!?」
「キリト、落ち着け!
この配置は………ここが……こうで……あれがああだから……。
そして、さっきのは……。
………ま、まさか!
チッ!誰か、転移結晶を取り出せ!」
「え!?ど、どういうこと、カイ!?」
「あんま説明してる時間はねぇ!
ただ、コイツは恐らく強制発動型のイベントだ!
もしかしたら転移結晶が封じられてるかもしれねぇ!
もしそうだった場合、さっさと打開策を見つけ出さなきゃ全滅だ!
転移できるならそれに越したことはねぇ!
つーわけだ!誰か早く転移してみるんだ!」
俺の説明に、いち早く反応したのはキリトだった。
さすが、手慣れてる。
すぐさま転移結晶を掲げ、高らかにコールした。
「転移!アルゲード!」
………しかし、転移結晶は消費されず、キリトが転移することもなかった。
「くそっ!やっぱりか!」
「ちょ、ちょっと!説明して!なんでこれが強制発動のイベントだってわかったのよ!」
「ああもう!時間ねぇのに!
いいか、一回しか言わねぇからな!
まず一つ!敵の数!あまりにも多すぎる!
二つ!今現れた敵の配置がさっきのと全く同じであること!
三つ!さっき俺達が植物達と戦闘している間、その音を聞きつけて寄ってくる敵がいなかったこと!
四つ!俺達が一つの団体を全滅させたとき、周りの敵が一斉に消えたこと!
そして五つ!さっきも今も、敵が俺達の索敵範囲の限界にポップしたこと!恐らくパーティーメンバーの中で索敵範囲が一番広い奴の限界にポップするんだろ!
んで、出現条件はわからねぇが、達成条件はなんとなく予想がつく!」
「え!?そうなのか!?」
キリトが驚きの表情を浮かべつつ聞いてきた。
「恐らく、あの団体のうちの一つの団体だけが持ってるアイテムがあるんだ。
それを入手すればイベント達成ってとこだろ!」
「あれのうちから一つ!?マジで!?」
今度はキリトが素っ頓狂な声をあげる。
「多分だけどな……!
てかもう敵が迫ってる!多分こっちから突っ込まないと全部に襲われる設定だ!
適当に突っ込むぞ!ついてきてくれ!さっきとは違う奴らと戦う!」
「「「了解!!!」」」
三人の返事を聞くと同時に、俺は飛び出した。
―――結果から言うと、俺の予想は間違っていた。
確かに、アイテムはあった。
しかし、それの入手条件が違った。
俺は『数ある敵の団体のうちの一つが持っている』と予想したが、恐らく正解は『数ある団体を全て一回は倒す』というものだった。
重複がありかはわからない。俺は一度も重複することなく一回ずつ倒したからな。
――――そして、手に入れられるアイテムの意味も違った。
俺は、『そのアイテムを入手したら、このキッツイ包囲イベントは終わり』だと思っていたんだ。
………だが、違った。
結果的に、俺がそのアイテムを入手したんだが、そのアイテム名は《クリスタルワイバーンの餌》。
何だコレ?と俺が首を傾げて、皆に聞いてみよう、と振り向いたとき。
――俺は、強制転移させられた。
「な、なんだぁ!?」
突然の事態に戸惑いながらも、すぐさま周囲を警戒すると――――
まず視線が行くのはその全身だ。全身がクリスタルに覆われている。
次に印象に残るのは、その頑強そうな
さらに大きな翼。これもクリスタルに覆われていて、重そうなのにどこまでも飛び上がって行きそうな力強さを感じさせる。
そして太い尻尾。これまたクリスタルに覆われている。それだけではなく、クリスタルが針の様にびっしり生えている。
こいつの名前は、見た目通りの《クリスタルワイバーン》。
そーかい。あのアイテムを手に入れた者が餌ってわけだ。
上等だ。ぶっ潰してやるよ。
さーて、レベルはっと……。
………ろ、66!?
ありえねぇ!俺達の前にこのイベントに出くわしたって話は聞いたことねえから、多分条件付きで発生するイベントだろう。
だからといって、階層の二十上のレベルを持つ奴とかあっていいのか!?いやダメだろ!
…………だが、俺の敵じゃねぇ。
この程度の中ボスに俺が負けるわけがない。
ま、油断は禁物だが。
ちなみに、今の俺のレベルは92だ。
シリカと付き合い始めてからは少しペースダウンしちまったが、色々貴重な体験が出来てるからな。
どうってことねぇ。
――こいつよりは二十五以上か。これが関係ありそうだな。
『ギュアァァァァアアアア!!!!』
おっと、考察してたら相手がキレちまった。
――そんなにやられるのが望みなら、やってやるよ!
大きな翼を羽ばたかせ、ワイバーンは空中から突進してきた。
俺はその突進をステップで回避した――否、しようとした。
「ぐっ……!」
突進を左にずれて躱し、翼を下に潜り込んで躱したのはよかったが……最後の尻尾が読めなかった。
奴は尻尾を振り、俺に強力な一撃を与えてきた。
尻尾に生えていたクリスタルの針が数本、俺の身体に刺さったまま貫通継続ダメージを与えてくる。
「くそっ!」
俺は針を素早く引き抜き、ワイバーンに狙いを定める。
「……今だっ!」
投剣スキル最上位技《ジャミングシュート》。
六本の針が俺に刺さっていたので、《ジャミングシュート》も二回使う。
これでバッドステータスにできれば……!
「何っ!?」
だがしかし、本日何度目かわからない驚愕が俺を襲った。
ワイバーンの身体を覆うクリスタルが、針を弾いたのだ。
考えてみれば強度が同じなんだから弾けるような気もするが……。
………そりゃねぇだろ!
「この状況はマズいな……。相手の方がリーチでは圧倒的に有利。
さらにある程度の強度がないと、攻撃が弾かれる。
勢いのあった同強度の攻撃が通らなかったから間違いねぇな。
ぶち込むべきは、重い一撃………仕方ねぇ。やるか」
『グルル……ギュアッ!』
ワイバーンは溜めを作り、ファイアブレスなんぞを吐いてきた。
「うおっ!このワイバーンはブレス吐けんのか!?
聞いてねぇぞチクショウ!」
盛大に愚痴りながら、何とかブレスを回避する。
ともかく、少し隙を作らないと戦えない!
『ギャアァァァアアアア!!』
「元気だなこの野郎!」
雄叫びを上げながらワイバーンが突っ込んできた。
さっきはギリギリで躱して反撃するつもりだったが同じ失態はおかさねぇ。
奴の攻撃を見切り、大きく横に飛び退く。
「よっとぉ!」
『グルァ!?』
奴との距離が開いた!今だッ!
俺はメニューウィンドウを開き、武器を短剣から両手斧に、選択武器スキルを短剣スキルから両手斧スキルに変える。
「よっしゃあ!こいつを実戦で使うのは久しぶりだ!久々に暴れさせてもらう!
覚悟しろよこのトカゲ!さっきまでの分、返してやらぁ!」
『グルギュアァアアアアア!!!』
俺の言葉を理解したわけじゃないと思うが、ワイバーンも裂帛の気合いを返してきた。
「いいねぇ!行くぜ!」
『グルル……ギュアァッ!』
「遅い!」
走り始めた俺に向かって奴はブレスを吐いてきたが、一回見てタイミングがわかれば大したことない。
「《エアリーシールド》!」
俺の前で斧が扇風機の羽の様に回転し、ブレスを弾く。
少しガードを抜けてダメージが発生するが、そんなの
「さあ、今度はこっちの番だ!」
ブレスが止んだ瞬間、俺は斧を左腰に添えて、居合いの様な構えをとった。
斧が水色に光り輝く。
「行くぞ!《メテオフォール》!」
ソードスキルを発動した直後、俺は爆発的な勢いでワイバーンに肉薄した。
奴は飛び上がって回避しようとするが……もう遅い。
そのタイミングじゃあ、逃れらんねぇよ。
斧を振り抜き、ワイバーンを斬り上げる。
続けざまに斧を振り下ろし、奴を斬り下ろしながら地面に叩き付ける。
そのとき地面に斧を突き刺し、刺さった地点を中心に振り下ろした勢いそのままに円運動をして奴に踵落し。
その勢いで斧を引き抜き、同時に奴を蹴り上げて俺と奴の間に間隔を作る。
さらに斧の柄頭で奴をぶん殴り、すぐさま右に斬り払う。
そのまま勢いを殺さずに左肩でタックルし、最後に正面を向いて大上段に構えた斧を振り下ろす。
これが、両手斧体術複合スキル、重攻撃八連撃技《メテオフォール》。
今までにこいつ喰らって耐えた中ボスなんてそうそういないんだが……。
………って、うおっ!
『ギュアアアア!!!!』
「ぐはっ!」
ワイバーンがぶっ飛んでった先で、何故か土煙が発生してたんだが、理由がわかった。
見た目は翼の生えたトカゲみたいでめっちゃ弱そうだが、コイツはやべぇ。
クリスタルの重石がなくなったことにより、スピードが格段に上がってる。
防御は下がっただろうが、その分攻撃の威力も上がってる。
HPバーが三割を下回ってるからそれが発動条件か?
「コレはえぐいぞ………!」
クリスタル装備時は、かなりの強度を持った重量級の武器じゃないとダメージを与えられない。
それに対して、クリスタル装備解除時は、スピード重視の武器とスキルじゃないと当てるどころか掠ることもできない。
俺みたいなタイプの奴じゃなきゃ、かなり苦戦するだろう。
「俺だって余裕ってわけじゃねぇしな……!レベル差が二十五以上とかあんま関係ねぇぞ、コレ!」
今の俺は奴の攻撃を躱すので精一杯だ。
さっき一撃喰らってわかったが、こいつの攻撃を受けながら武器とスキルを変えて、さあ反撃だ!ってなっても一撃当てるのはかなり至難の技だ。
しかもそのまま攻撃を喰らい続ければいくら俺でもHPが危なくなるだろう。
もし一撃で倒せなければ、俺がやられる。
だが、両手斧での攻撃を当てられるとは思えない。
結構手詰まり感がすごいんだが……!
『グルキュルアァアア!』
「ああ、くそっ!どうしろってんだ!」
方法は思いつかないこともない。
多分成功すると思うが……。百パーでもないんだよなぁ………。
「でもま、やるしかねぇか!」
俺は、奴の攻撃を躱した瞬間に、
「喰らえっ!」
『ギュアッ!?』
驚いた様な雰囲気を醸し出しながら、ワイバーンが斧を回避した。
「今っ!」
俺はこの一瞬の隙に、スローイングダガーを取り出し、《ジャミングシュート》を発動。
三本のスローイングダガーが、紫色のライトエフェクトを伴ってワイバーンに向かって飛翔していく。
「次っ!」
俺はダガーの行く先を黙って見届けるわけじゃねぇ。
今の奴の位置と、奴のスピード、そして今投げたダガーが制限する奴の行動範囲。
それらを総合的に判断し、次に奴が回避するであろう場所に向かって《パラライズシュート》を放つ。
《パラライズシュート》で放ったピックは四本。
それと少し時間差で、さらに四本のピックを取り出し《スタンシュート》を使う。
《スタンシュート》はその名の通り、当たった敵にスタンを発生させる素晴らしいソードスキルだ。
ま、発生するのは小スタンだけどな。
ちなみに、何故全て《ジャミングシュート》にしないのかというと、俺の狙いに理由がある。
今俺は、《ジャミングシュート》で奴の行動範囲を制限し、回避する位置をある程度誘導しようとしている。
そして、制限された範囲に状態異常付与を持ったソードスキルをばらまき、奴の動きを止めるのが目的だ。
だが、ここで《ジャミングシュート》だと問題が生じる。
このスキルは三つの投擲武器を同時に投げるため、ある程度の軌道制御なら出来るのだが、あまりばらけた場所に打つことが出来ないのだ。
今狙っているのは《ジャミングシュート》で制御できる範囲を超えてしまっている。
それゆえ《パラライズ》と《スタン》を使ったのだ。
ついでに言うと、俺的には《パラライズシュート》の方が使い勝手がいい。
小スタンが発動直後に一瞬相手の動きを止めるだけなのに対し、麻痺は発動に少し時間がかかるものの少しの間動きを拘束するからだ。
斧を投げ捨てた状態の俺なら、奴の攻撃は確実に躱せるしな。
ただこちらから攻撃を当てるのは難しいが。
二段目を《スタン》にしたのは、ソードスキルには
ちなみに《ジャミングシュート》には冷却期間は存在しない。
やっぱ使い勝手はいいんだけどな……。でもなぁ、他のスキルに比べると射程は短いし、ちょっと遅いし……。
ま、結論は一つ。麻痺ってくれるとありがたいんだが?
『ギュア!』
はいスタンでしたー。
こうなると短剣を装備してる時間はねぇな!
「行くぞオラァッ!」
どこぞのヤクザの様な声を上げながら俺は奴に肉薄する。
今度のはシステムアシストがないから自分の敏捷ステータスだけが頼りだ。
奴のスタンが解ける前に接近し、瞬時にソードスキルの構えをとる。
俺の両手両足――足の付け根と肩まで――に赤いライトエフェクトが灯る。
「――ハッ!」
気合いのこもった掛け声と共にソードスキルを発動する。
左のショートフックを打ち出し、ワイバーンを僅かに仰け反らせる。
すかさず右のストレートが飛び出し、ワイバーンを打つ。
身体が流れそうになったワイバーンを右の肘打ちが地面に叩き落とす。
だが奴の身体は地面に打ち据えられる前に俺の左のニーキックによってその場に強制的に留まらせられる。
右足を蹴り上げ奴をさらに上昇させて――システムアシストを受けた俺の左回し蹴りが奴を吹っ飛ばした。
―――体術スキル六連撃技《拳舞》。
足技も多いこの技が何故《拳舞》なのかは知らないが、俺はこの技が結構気に入ってる。
現実に戻ったら練習しようかとか考えてるくらいだ。多分やれなくはないだろうし……っと、集中しねえと。
さて、これで倒せてなかったら結構ヤバいんだが……。
このコンボを耐えきった中ボスは今までいないとはいえ、レベルはコイツが最高だしな……どうなる?
『グルル……』
「あれ?ホントに耐えちゃった?マジで?」
『ギュア…………』
クリスタルワイバーンは、力ない声を残して、ポリゴン片となって消えた。
その直後、俺の目の前にシステムウィンドウが開き、アイテムを入手したことが教えられた。
「《クリスタルワイバーンのインゴット》………」
そのまんまだが、つまりコイツはインゴット入手イベントだったってわけか?
大掛かりすぎるぜ全く……下手したら死んでた可能性もあるし……。
補足しておくと、インゴットってのは武器の生成に必要なアイテムだ。
これを使って、スミスが武器を作る。
つーか他に使い道を知らねぇ。
次いで、転移まであと三十秒という旨を知らせるシステムウィンドウが開いた。
どうやら、帰る時は教えてくれるらしい。
「おっと、《ドラゴニック・アックス》を回収しないとな」
この某病気全開の名前の斧だが、性能はいい。
モンスタードロップなんだが、俺はこれよりいい斧はまだ見たことがない。
ま、上層に行けばあるんだろうけどな。
斧を回収したところで、俺は再び強制転移させられた。
最後に、久々に全力を出せた相手に敬意を表す。
「じゃーな、クリスタルワイバーン。結構楽しかったぜ」
自己満足だけどな。
「よお」
俺が転移させられた場所は、三人のすぐ近くだった。
「カイさん!大丈夫でしたか!?」
「あのワイバーンは何だったんだ?」
「え?なんで知ってんの?」
キリトから思いがけない言葉が発せられてびっくりしてしまった。
キリトの話では、俺が転移させられた直後に三人も転移させられたらしい。
転移させられた場所は俺達の戦いが見えるところだったらしく、最初だけ三人で見ていたんだそうだ。
しかし、再び転移させられてこの場に戻ってきた。
やきもきしながら待ってたら、俺が転移してきたってことらしい。
「そっか、心配かけちまったみてぇだな。俺はこの通りぴんぴんしてるぜ」
「ホントによかった。急に転移させられたから心配したのよ。
ところで、ホントにあのワイバーンはなんだったの?」
「俺だって焦ったよ。あいつは《クリスタルワイバーン》。レベルは66。
あんとき俺が手に入れたアイテムが《クリスタルワイバーンの餌》で、あれを入手した奴を強制的にあいつと戦わせるイベントなんだろ。かなり凶悪な設定だけどな」
「そ、それ、カイじゃなきゃ危なかったんじゃ……?」
アスナが恐る恐るといった様子で確認してくる。
「ああ、俺もそう思う。しかも、あいつはレベルだけじゃない。
あの点をふまえると、キリトやアスナでも危なかったかもな」
「へぇ、カイがそこまで言うとはな。どんな性質を持ってたんだ?」
キリトがニヤリと笑みを浮かべながら聞いてくる。
…………やっぱこいつ戦闘狂のケがあるよなぁ。
「最初は異常に固くてな。他の武器で試さなかったから完璧にはわからねぇけど……。
多分あの強度なら、アスナの通常の攻撃は通らない」
「え?と、通らない?」
アスナが動揺全開で聞いてきた。
「ああ。あいつは身体全体がクリスタルに覆われててな。
わけあって奴のクリスタルの針で投剣スキルを使う機会があったんだが、その攻撃が弾かれた」
「それって、もしかして《ジャミングシュート》を使ったのか?」
「ん?そうだけど、それがどうかしたか?」
「いやおい!だってあれは武器の持つ攻撃力を一・五倍にする効果があるだろ!
それで弾かれたって……!」
「ああ、そういえばそんな性能あったな」
「忘れてたのかよ!」
キリトが全力でツッコんだ。
でも確かにそういう効果があったな、《ジャミングシュート》。
「それだと俺の攻撃が通るかどうかすら怪しくないか?」
「いや、キリトの攻撃なら通ると思うぞ。当てられれば、だが」
俺の言葉に三人が固まった。
「………え?そんな速いの?」
「んーとだな。速いっていうよりかは当てづらい、だな。
あいつ突進とブレスが主な攻撃方法だったみたいだから。
ちなみに突進はそれ自体と翼を躱しても、尻尾の追撃が来るぜ」
「うへぇ。聞くからにめんどくさそう」
キリトが辟易とした表情で呟く。
うん。超めんどかったよ。
「ま、キリトがあいつに攻撃当てても、第二形態で当てられなくなっただろうけどな」
「ま、まだあるんですか………?」
シリカがもう聞きたくないといった感じの雰囲気になっている。
ごめん、まだもうちょっと続くわ。
「そうなんだよ。俺は一発で三割以下まで削ったから発動ポイントはわかんねぇんだけど……。
あいつはHPバーがあるラインを下回ると、クリスタルの装甲を脱ぎ捨てて身軽になる。
俺でも斧持ってたら躱すのが精一杯だった」
「カイの敏捷で躱すのが精一杯ってそれもうレベル66どころの騒ぎじゃないでしょう」
「俺も思った。あいつはレベルとか大して関係ねぇな。
ともかく、あの状態になったらスピードがいままでとは段違いだし攻撃力も跳ね上がってた。
防御は下がってたっぽいけど、攻撃はほとんど当てられないから意味ねぇと思う。武器捨ててやっと殴り倒せたし」
「よく倒せたわね…………」
アスナが呆れまじりで感想を述べた。
他の二人も大きく頷いている。
「俺だって似た様な気持ちだよ。
っと、そうだ。あいつを倒したらインゴット落としたんだよ。
誰か腕のいい鍛冶屋知らないか?」
「あ、それならわたしに当てがあるわ。今回皆にもそこを紹介しようと思ってたの。
でも、昨日聞いたら最近忙しいらしくて……。少し落ち着いたら連絡してもらう予定だから、連絡もらったら行きましょ。まあ、わたしは行けない可能性の方が高いけどね………」
大手ギルドの副団長様は大変だなぁ……。ご愁傷様だ。
「へぇ、アスナのオススメか。楽しみにしとくぜ」
「そうですね!アスナさんのお知り合いならいい人なんでしょうし!」
「きっと腕もいいんだろうな」
ものすごい勢いでハードルが上がっているが、アスナは気にした風もなく言い切った。
「任せておいて!あの子、かなりの腕前だから!」
「そうか。なら、当日を楽しみにしとくか。………んで、どうする?帰るか?」
皆に聞くと、途端に疲れを前面に滲ませた。
「ああ、そうしよう……。色々あって疲れた………」
「わたしも……」
「あたしもです……」
「俺もだ。ワイバーンとは中々に白熱した戦いになったし、疲れた。じゃ、帰ろうぜ」
「「「りょ〜か〜い」」」
気の抜けた三つの返事が、今回の狩りを締めくくった。
どうでしたか?
次は恐らくリズベットさんの登場です。
あと、この話はファントム・バレット編まで行く予定です。
一応お伝えしておきますね。
では、感想、意見、批評、質問その他、お待ちしております。