黒の剣士と紺の浮浪児   作:gobrin

12 / 33


中々書く時間が取れません。

今回はリズの話です。
キリトが武器を作るやつですね。
この話ではカイも武器を作りまっせ!
それでは、どうぞ!




第十二話 鍛冶師リズベットと新武器

 

 

 

 

あの何気に強かったワイバーンとの邂逅から一か月と少々。

 

俺達はアスナから連絡をもらって、ついに鍛冶屋に余裕ができた旨を聞いた。

ま、アスナは忙しくて来られなかったんだが。

 

 

 

 

 

そんなわけで待ちに待った知らせが勧めてきたのは――《リズベット武具店》という四十八層にある店だった。

 

 

「へー、ここが」

 

「水車とかもあって、綺麗な場所ですね!」

 

「なんつーか、めちゃめちゃ高そうな物件だな」

 

「カイさん、そんな話しないで!」

 

「ごふっ」

 

 

感想を述べたらシリカに肘打ちされた。

ダメージはないからいいけどよ……。

 

 

「ま、入ろうぜ」

 

 

二人が頷いたのを確認し、扉を開けて中に入る。

 

 

「いらっしゃいませー!」

 

 

すると――なんか派手な女子がいた。

髪の毛がピンク色で、メイド服風なエプロンドレスを着たそばかすの女子。

これが店主?

 

 

「あんたが………リズベット?アスナの友達の?」

 

「あ、じゃああなたたちがアスナの知り合いね。

そうよ、あたしがリズベット武具店の店主、リズベット。よろしく」

 

「………奇抜な髪だな」

 

「カイさん!」

 

「ぐえっ」

 

 

また肘打ちされた。

 

 

「……別にあたしの趣味じゃないわ」

 

 

低い声。目から途端に光が失われるのは怖えよ。

 

 

「お、おう。そうか。……武器を見てもいいか?」

 

「あ、何をお探しですか?」

 

 

いきなり店主らしい口調になったリズベット。

流石の切り替えと言ったところだろうか?客商売ってすげーわ。

 

 

「俺は取りあえず適当に見るから気にしないでくれ」

 

「俺は片手剣をオーダーメイドで頼みたい」

 

「あたしは武器の強化を………」

 

 

わかると思うが上から俺、キリト、シリカな。

 

 

「今ちょっと金属の相場が上がってまして、多少お高くなってしまうかと思うんですが……」

 

「予算は気にしなくていいから、今作れる最高の剣を作ってほしいんだ」

 

「……と言われても……具体的にプロパティの目標値とか出してもらわないと……」

 

 

キリトに言われてリズベットが困ってる。

まああいつの頼み方も大概だがな。

 

 

「じゃあ、これと同等以上の性能、ってことでどうかな」

 

 

と言ってキリトが差し出したのは、《エリュシデータ》。

あれはモンスターのドロップ品だ。

つっても、あれはめっちゃレアドロップだけど。

俺は全種類の武器を使うから、それ相応の筋力パラメータがあって余裕で持てるが………。

普通の奴なら持つだけでキツいだろうな。

ちなみに俺はあれ以上の片手剣を知らない。

 

リズベットは《エリュシデータ》を持って重さに驚愕していたようだが、職人魂を刺激されたのかキリトに剣を返した後、壁にかけてあった剣を取ってキリトに差し出した。

 

ちなみに俺はあいつらの状況を眺めながら細剣を確認してる。

俺もオーダーメイドを頼むつもりだが、もしいいのがあったら買って、それ以外の種類のうちどれかを作ってもらう魂胆だ。

 

 

「これが今うちにある最高の剣よ。多分そっちの剣に劣ることはないと思うけど」

 

 

キリトはその赤い剣を受け取って素振りをして、首を傾げた。

 

 

「少し軽いかな?」

 

「………使った金属がスピード系の奴だから……」

 

「うーん」

 

 

ちょっと気になるな。

この店の最高の片手剣らしいし。

 

 

「キリト、ちょっと貸して」

 

「ん?ああ。ほい」

 

「さんきゅ」

 

「え?あなた細剣使いじゃなかったの?」

 

「諸事情だ。…………確かに軽いな。キリト、試してみればいいんじゃねぇの?」

 

「そうだな……。いいかな?」

 

「試すって……?」

 

「耐久力をさ」

 

 

そう言ってキリトは俺から剣を受け取ると、《エリュシデータ》を店のカウンターに横たえ、剣を頭上に振りかぶった。

意図を察したのか、リズベットが慌てて止めに入る。

俺は細剣、片手剣に極端にいい物がなかったので、槍を見てる。

 

 

「ちょ、ちょっと、そんなことしたらあんたの剣が折れちゃうわよ!」

 

「折れるようじゃダメなんだ。その時はその時さ」

 

「んな………」

 

 

その先の言葉をリズベットは発することはできなかった。

キリトの持つ剣が青いライトエフェクトに包まれ―――。

 

 

「セイッ!」

 

 

鋭い掛け声と共に素晴らしい速度で剣が振り下ろされ、剣同士がぶつかり、刀身が真ん中から折れて吹っ飛んだ。

――リズベットの最高傑作の。

 

 

「うぎゃああああああ!!?」

 

 

マジか。まさかキリトも当てた方が折れるとは思っていなかっただろう。

槍にもそこまでいい物がなかった。

いや、いい物がないわけじゃない。ただ、俺の求めている性能に合致していないだけだ。たぶん金属のチョイスが俺の趣味じゃないんだと思う。

斧は今ので十分だし…………次は棍かな。

 

リズベットは折れた剣の残骸を見下ろし、膝をついて項垂れている。恐らく修復不可能だろう。

 

 

「なにすんのよこのーっ!!折れちゃったじゃないのよーっ!!」

 

 

リズベットは肩をいからせキリトに掴みかかっていた。

 

 

「ご、ごめん!まさか当てた方が折れるとは思わなくて……」

 

 

やっぱり思ってたか。でもな、キリト。それは言わぬが華ってもんだろ。

 

棍も大したことねぇなあ………。

アスナには悪いけど、ここあんま俺の趣味じゃねえな。

でもそう言えば、アスナの《ランベントライト》はここでオーダーメイドしたって言ってたなぁ。

あれはいい細剣だ。あれクラスの物がほしいってのは高望みしすぎかなぁ。

つっても俺の持ってる武器ってあれに一歩劣るくらいの奴ばっかなんだよな……。

 

一応全部見とくか。

次は曲刀っと……。

 

ちなみにシリカは短剣を見ながらピナと戯れてる。和むな。

 

そしてキリトとリズベットは口喧嘩に発展していた。

…………何やってんだあいつら。

 

 

「おい、なにしてんだよお前ら………」

 

 

ざっと見た感じ、曲刀も大したことなかったので一旦二人の仲裁に入ることにした。

 

 

「あ、カイ。なんかリズベットと金属取りに行くことになった」

 

「……はい?」

 

 

ちょっと待て。何故そうなる。

 

 

「キリトがあまりにも失礼だから、凄いのを作ってコイツをぎゃふんと言わせるのよ!」

 

「あー。俺もオーダーメイドを頼もうと思ってたんだが……」

 

「え?あんたも?」

 

 

リズベットの言葉遣いは随分前にざっくりしたものになっていた。

 

 

「どれ作ってもらうのか決めたのか?」

 

「うーん、一応は決めたんだが。ついでだ、俺も一緒に行くわ。何取りに行くかは知らないけどな」

 

「じゃあカイはそれも使って武器作ってもらうのか?」

 

「ああ、ここに置いてあるのは全部大したことないしな」

 

 

…………あれ?俺、今結構マズいこと言わなかった?

 

 

「〜〜〜!!!なによあんたたち、馬鹿にして!こうなったらあんたもぎゃふんと言わせてやる!」

 

「ぎゃふんって古いぞ。ニューカイだ。カイって呼んでくれ」

 

 

………もうこうなったらとことん挑発してイイモン作ってもらうしかねぇ。

 

 

「………カイね。よろしく」

 

「ああ、よろしくな」

 

 

 

 

 

 

その後、事の顛末を見守っていたシリカも交えてリズベットの話を聞く事になった。

 

 

あるクエストで、五十五層にある村の長の白髭から――

 

西の山には白竜が棲んでいる。その竜は毎日餌として水晶を齧り、その腹に貴重な金属を溜め込んでいる。

 

てな感じの話が聞けたそうだ。

十中八九、インゴット入手イベントだな。

 

それを聞いた大人数のプレイヤーがこぞってドラゴンを討伐したらしいが……。

特に何も出なかったそうだ。

小額のコルと、ヘボイ装備アイテムだけドロップして終わったらしい。

 

その後も、たくさんのパーティーが狩りまくったが、一向に出ないらしい。

 

 

 

――という話を、リズベットから聞いた。

 

 

「その話、俺も聞いたことあるわ。確かに素材アイテムとしては有望っぽいよな。

でも、全然出ないんだろ?今更俺達が行っておいそれとゲットできるのか?」

 

「色んな噂の中に、《パーティーの中にマスタースミスがいないとダメなんじゃないか》っていうのがあるのよ。鍛冶屋で戦闘スキルを上げてる人ってそうはいないからね」

 

「なるほど、試す価値はあるかもな。――ま、そういうことなら早速行こうぜ。

カイ達はどうだ?」

 

「俺もすぐにでも行けるぜ。シリカはどうするよ?」

 

 

俺は、話し合いが始まってから一言も発してないシリカに尋ねる。

 

 

「うーん、あたしは武器の強化さえできればそれで………。

今回は遠慮します。お二人だけで」

 

「「わかった」」

 

「………」

 

 

リズベットが絶句している。………恐らく呆れて。

 

 

「あんたたち、そんな能天気っぷりでよく今まで生き残ってこれたわね……ゴブリン狩りに行くんじゃないんだから、それなりにパーティー整えないと……」

 

「でもそうなったら、目当てのブツが出ても最悪くじ引きじゃねぇか。

そのドラゴン、確か五十五層だろ?俺とキリトなら大丈夫だろ。なぁ?」

 

「そうだな。リズベットは陰から見てればいいよ」

 

「……よっぽどの凄腕か、よっぽどのバカチンね、あんたたち。

アスナの知り合いってこんなのばっかりなのかしら?心配になるわね………。

まああんたたちが泣いて転移脱出するのを見るのも面白そうだからあたしは構わないけどね」

 

 

キリトはふふん、と得意げに笑って言った。

 

 

「さて、俺達はいつでも大丈夫だぜ。リズベットは?」

 

「ああもう、どうせ呼び捨てにされるならリズでいいわよ。

日帰りできるみたいだから、あたしも準備はすぐに済むわ」

 

 

そう言ってリズはウィンドウを操作し始めた。

恐らく手持ちのアイテムを確認したんだろう。

 

それを終えた後、リズは店を出て客がいないのを確かめると、ドアの木札を裏返しCLOSEDにした。

準備は終わったみたいだな。

 

 

「じゃあシリカ、俺達は行ってくるわ。帰ってきたらメッセ送るな」

 

「はい。あたしはホームで待ってますね」

 

「ああ。暇だったら適当に狩りに出ててもいいから。

ただ安全はちゃんとな。いってきます」

 

「はい、わかってます。いってらっしゃい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シリカとは別れて、三人で行動を開始した俺達は、その噂の村に辿り着いていた。

 

 

フィールドのモンスターは俺達の敵じゃねぇな。

ああ、あのワイバーンとの奴みたいな心躍る戦いをしたいぜ。

 

ちなみに俺は今回かなーりオマケだ。

半ば空気と化している。

 

二人はここにくるまでの間も憎まれ口を叩き合っていた。

楽しそうなことで。

 

 

「ぶえっくしっ!」

 

 

村に入った途端、リズが女子らしからぬくしゃみをした。

気が抜けたのと寒かったのが原因か?

それを見たキリトが、からかいながらも自分の装備をオブジェクト化し、リズの頭にかぶせていた。紳士だ。

 

 

「村長の家ってあれか?」

 

「そうね」

 

「あれだな」

 

 

俺が村の奥に建ってた高い屋根の家を指差すと、二人も頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――結果的に村長の話は聞けたんだが…………。

あれは酷い。

話は何故か彼の幼少期から始まり、熟年期の苦労話を終えた後唐突に、そういえば西の山にはドラゴンが、という流れだった。

 

俺は途中で何度も寝そうになりながらも頑張って話を聞いてた。

俺は俺を褒めてやりたい。

 

 

なにはともあれ、めちゃくちゃ消耗した俺達が解放されたのは、夕暮れ時だった。

 

 

「……まさかフラグ立てでこんなに時間食うとはなぁ……」

 

「まったくね。明日また出直す?」

 

「でも山ってあれだろ?さっさと行ってさっさと終わらせちまおうぜ」

 

 

キリトが疲れた声をあげ、リズが日を改めることを提案したが、俺がそれを遮った。

マジで早く帰りたい。ジジイの声で荒んだ耳を、シリカの声で癒してもらいたい。

 

 

二人はまたもや軽口を叩き合いながら、賛同してくれた。

 

 

 

 

登頂にはさほど苦労はなかった。

このクエストの一番の苦労は、ジジイの話を聞くことだ。断言する。

 

山頂はとても綺麗なところだった。

一面の雪景色の中に、クリスタルの柱がそびえ立っている。

 

 

「うわぁ……!」

 

 

思わずといった様子で歓声を上げて走り出そうとしたリズを、キリトが襟首を掴んで止めた。

 

 

「ふぐ!………なにすんのよ!」

 

「おい、転移結晶の準備しとけよ」

 

 

キリトの表情は真剣だった。

俺も既に気持ちを切り替えてある。

 

リズもキリトの変化に気がついたんだろう。

口答えせずに素直に従っていた。

 

 

「それから、ここからは危険だから俺とカイの二人でやる。

リズはドラゴンが出たらそのへんの水晶の陰に隠れるんだ。絶対に顔を出すなよ」

 

「なによ、あたしだってそこそこレベル高いんだから、手伝うわよ」

 

「ダメだ!」

 

 

キリトが声を張り上げる。

俺も同感だ。てか俺マジ空気。

それはともかくとして。リズの実力じゃちょいと不安だしな。

 

 

キリトが「じゃあ行こうか」と言ってリズの頭に手を置くと、リズはコクコクと頷いていた。

………すっかり従順になってる。これはもしかしてもしかするか……?失恋ほぼ間違いなしだからあんまオススメはできねえんだが。

 

 

 

 

 

 

山頂の中央にはでかい穴が開いていた。

キリトが近くに落ちていた水晶の欠片を蹴り落としていた。反響音は聞こえない。

こりゃ落ちたら助かんねぇな。

 

 

「……落ちるなよ」

 

「落ちないわよ!」

 

 

リズとキリトが漫才をやっていた。

その直後、高い雄叫びが山頂に響き渡った。お出ましか?

 

 

「その陰に入れ!!」

 

 

キリトが有無を言わせぬ口調でリズに指示を出す。

リズはそれに従いながら、早口で捲し立てた。

 

 

「ええと、ドラゴンの攻撃パターンは、左右の鉤爪と、氷ブレスと、突風攻撃だって!

………き、気を付けてね!」

 

 

それにキリトはサムズアップで返していた。

 

………俺、ホントに空気だな。何か悲しくなってきたよ。

 

 

それとほぼ同時にドラゴンが現れた。

 

綺麗な鱗を持ったドラゴンに対し、キリトは背中の《エリュシデータ》を音高く抜いた。

そして俺はというと―――

 

 

「キリト、ちょっと武器変えるわ!」

 

「おう、わかった!」

 

 

と言ってウィンドウ操作に入る。

ちなみに装備してたのは短剣だ。

まあ俺のデフォだな。

 

ドラゴンはその顎を開き、白く輝く光の奔流を吐き出した。

 

 

「ブレスよ!避けて!」

 

 

リズが悲鳴に近い叫びを上げるが、俺達はそんなことはしない。

 

 

「悪いな、キリト。頼んだ」

 

「任せとけ」

 

 

キリトが剣を自分の前で縦にかざし、《エアリーシールド》を発動させる。

《エアリーシールド》はブレス系の攻撃を防ぐスキルだ。

場合によっては防げないこともあんのかもしれねぇけどな。

 

俺はキリトの背後に移動し、装備変更を完了させる。

 

俺達をブレスの奔流が襲うも、《エアリーシールド》に防がれ、ほとんどダメージがない。

その受けたダメージも、俺達の戦闘時回復スキルで完全回復できる。

 

 

「キリト!俺が先行する!」

 

「了解!」

 

 

奴のブレスが切れる寸前、俺は爆発的なスピードで飛び出した。

多少ダメージが増えるがどうってことない。

 

 

「行くぜ!」

 

 

俺は、奴の目の前まで飛び上がり()()スキル《リニアー》を発動させる。

 

アスナほどではないが、中々の威力を誇る俺の攻撃がドラゴンに吸い込まれる。

そして俺に続いてキリトも飛び上がってきて次々に攻撃を加える。

ドラゴンも両手の爪で応戦しているが、俺達の手数に敵うはずもなく。

 

一度の空中の攻防で、奴のHPは五割ほど減少していた。

 

 

再びドラゴンがブレスのモーションに入った。

 

 

「今度は躱して叩くぞ!」

 

「オッケー!」

 

 

俺とキリトは息を合わせ、同時に左右に展開しブレスを躱しつつ飛び上がる。

そして余裕のタコ殴り。

 

俺達が再び着地したときには、奴のHPはレッドゾーンに突入しそうになっていた。

 

 

「あと数撃!……ってオイ!」

 

「バカ!!まだ出てくるな!!」

 

 

俺達が驚愕したのは、リズが水晶の柱の陰から勝手に出てきたからだ。

 

 

「なによ、もう終わりじゃない、さっさとカタを……」

 

「クソ!間に合うか!?」

 

 

俺は悪態をつきながら奴の方へ駆け出すが………一足遅かった。

 

ドラゴンは一際高く飛び上がり、両の翼を自身の身体の前で打ち付けた。

それにより、奴の真下の地面で雪が舞い上がる。

 

 

「チクショウ!」

 

「早く隠れ―――」

 

 

俺は間に合わないことを悟り、地に身体を伏せる。

キリトは剣を地面に突き刺し、何とかリズに指示しようとしたところで、俺達は爆風に覆われた。

―――突風攻撃だ。

 

 

………ダメージはほとんどない。

相手の体勢を崩すのが目的の攻撃か。

 

俺は周りの状況を確認し―――リズが吹き飛ばされ、その先に地面がないのを見た。

 

 

「んな!?やべぇ!?」

 

 

俺の言葉の意味を一目で察したようで、キリトが剣を引き抜いて駆け出した。

俺は地面に伏していたせいで一足も二足も遅れる。

 

 

吹き飛ばされたリズを追ってキリトが大穴に飛び出し、リズの手を摑んだ。

 

俺も追ってキリトの腕を摑もうと手を伸ばすが――間に合わない。

 

 

「クソがっ!……キリト!ソードスキルを使え!」

 

 

大穴に向かって大声を張り上げる。

あいつなら自力で気づくかもしれないが保険だ。

 

この大穴がどこまで続いてるのかはわからねぇが、フロアの底辺だとしても十秒もありゃあ到着するはずだ。

キリトを信じるんだ。あいつなら大丈夫だ。絶対に生きてる。こんなところで死ぬわけがない。

 

 

「さてと………久しぶりにやるか」

 

 

俺はドラゴンに対峙し様子を見ながら、同時に別のことを考える。

 

()()()()

これが今俺がやってることだ。

複数の思考を同時に行うこと――つっても、俺は二つ同時が限界だがな。

 

 

俺が今考えるべきことは――四つかな。

 

一つ。キリトとリズの安否。

まあこれは既に終了している。

なぜならパーティーを組んだ時に出る、仲間のHPバーがまだ存在しているからだ。

かなりダメージを受けてるが、死んではいない。

何とか勢いを抑えたみたいだ。よかった。

 

二つ。このトカゲをどうするか。

これが微妙なところだよな。

今までにドラゴンを倒した奴らの話からすると、コイツを倒してもメリットがほとんどない。

一応パーティーにマスタースミスはいる状況だが……。

確証がないのに倒すのはあまりよくない気がする。

二人が一緒ならいいが、今ははぐれてるからな。

安易に行動しない方がいいだろう。

 

三つ。キリト達はどうやって脱出するのか。

ダメージが入ったタイミングから考えて、相当深い穴であることが伺える。

ぶっちゃけロープとかでどうにかなるレベルじゃないと思うんだが……。

いや、ロープ同士を繋げばいけるのか?

今までロープを繋げようなんて考えたことねぇからわかんねぇぞ。

ま、物は試しか。何かしらの脱出方法はある可能性が高いからな。

ついでに言っとくと、最初から転移結晶には期待していない。

こんなあからさまなトラップ、結晶使えたら面白くないだろ。

俺が茅場だったら確実に結晶無効化空間にするね。

………できるに越したことはないけどな。

 

四つ。これまでの方針をどうやってあいつらに伝えるのか。

多分、この中はダンジョン扱いだ。

となると、メッセージが送れない。

………んー、一番確実なのは……水晶の欠片に何かをくくり付けて落として伝える……かぁ?

現状、他の方法が思いつかねぇんだよな。

 

 

ちなみに、ドラゴンからの攻撃はずっと続いてる。

だから俺は並列思考を使って、ドラゴンへの対処と同時に色々考えてたんだ。

 

あ、そうだ。

俺、録音結晶持ってんじゃん。

あれに声吹き込んで落とすか。

耐久値が全損しねぇように、擬似パラシュートでも作るか。

 

 

「えーっと、確か……あった、これだこれ」

 

 

俺は録音結晶を取り出し、トカゲと距離を取る。

奴は………追って来ない。好都合だな。

 

 

「よし………ぽちっとな。

『あー、ちゃんと録音されてると信じて話すぞー。

俺は今から戻ってロープとかでどうにかできないか試してみる。

お前達は脱出できたらすぐに帰ってメッセ飛ばしてくれ。

それじゃ、またな』っと。これで録音できたか。

あとは………」

 

 

俺はアイテムストレージから毛布とロープをオブジェクト化して取り出す。

ロープは一本しかねぇからどの道届かないし今使っちまっても大丈夫だろ。

俺はロープのポップアップ窓を出し、結束ボタンを押す。

これで対象を選べば自動的に結ばれる。

録音結晶を選択。

 

 

「よし。ここまでは大丈夫だな。

問題は毛布を広げて結束したとして、パラシュート状になるかってことだ。

………待てよ。そういえばネタアイテムにあれがあったはず……!」

 

 

俺は再びウィンドウを操作して、あれを探す。

 

 

「………きたぁっ!あったぞ!()!」

 

 

これは天候がシステムによって決められるSAOにおいて、雨天時その気分を味わおうってことで売ってたネタアイテムだ。

面白そうだからと買ったが、まさか使い道があるとは…………!

 

俺はロープの結束準備をして、傘の柄をタップして選択する。

見事に、ロープは結晶と傘を繋いだ。

 

 

「いよっし!これで安心だ。

キリトは野営用アイテムもいっぱい持ってるからな。その点は大丈夫だろう。

そうと決まれば、さっさと行くか」

 

 

俺はパラシュート付き結晶を手に持ち、大穴に向かって駆け出す。

 

 

『ギャァァアアアア!!』

 

 

トカゲが俺に反応して威嚇してくるがそんなこと知るか。無視無視。

 

 

「ほいっ」

 

 

傘を開いて大穴に投げ捨てる。

 

 

「これでいいか。さーて、逃げよ」

 

 

俺は敏捷ステータスにものを言わせて一目散に逃げ出す。

みるみるうちにドラゴンが遠ざかっていき、道中出てくる《フロストボーン》っていう名前のスケルトンを蹴散らしながら下山した。

 

 

 

 

 

 

 

 

――次の日の朝。

キリトから脱出したとのメッセが届いた。

 

…………ちくしょう。

俺は色々検証して、いけるっ!って思って準備したのに………。

まあ、あいつらが無事だったならそれでいいか。

 

というわけで、俺は今シリカと一緒にリズベット武具店に来ている。

色々準備してたら昼すぎちまったけどな。

 

 

「邪魔するぞー」

 

「こんにちはー」

 

 

俺達が来たのに反応して、キリトとリズが――と思ったらアスナもいた――俺達を出迎えた。

 

 

「いらっしゃーい!」

 

「よっ。心配かけたな」

 

「全くだ。まあお前らが生きてるのはわかったし、一応ゲームなんだから脱出方法はあるとは思ってたけどな」

 

「ところでなんでアスナさんがいるんですか?」

 

「あ、リズが心配になって来たのよ。昨日全然連絡取れなかったから……」

 

「あ、悪ぃ。アスナにも伝えるべきだったな。忘れてたわ、すまん」

 

「うーん。ま、リズも無事だったしゴハン一回で許してあげる」

 

「うへぇ。オーケー、奢ってやるよ」

 

「やりぃ♪」

 

 

アスナがガッツポーズをする。

それを呆れた眼で見ながらリズが口を開いた。

 

 

「全くアスナは………。

さて、どっちからやるの?」

 

「シリカからにしてくれ。時間もあんまかかんねぇだろうし、俺はキリトの新武器を見せてもらうから」

 

「わかりました。リズさん、これの正確さ(アキュラシー)の強化をお願いしたいんですけど――」

 

 

二人は会話しながら奥の工房に入っていった。

 

 

「さて、キリト。見せてくれよ」

 

「おう。これだ」

 

 

キリトから渡された剣を持つ。―――重い。《エリュシデータ》と同等かそれ以上だろう。

鞘から抜いて軽く振ってみる。…………ふむ。

 

 

「いい剣だな。こいつの名前は?」

 

「《ダークリパルサー》。暗闇を払うもの、だな」

 

「ふーん。《エリュシデータ》は漆黒の剣。そしてこいつは純白の剣か……。かっけぇじゃん」

 

「ああ。………ああっ!」

 

「ん?どした?」

 

「………悪い、カイ。お前の分のインゴット取ってくるの忘れてた」

 

「ああ、そんなことか。いいよ。あの穴の中で取ったんだろ?ならそれはお前らの手柄だ。何もしてねぇ俺が受け取るわけにはいかねぇよ」

 

「そうか。ありがとな」

 

「やめろ。俺が礼を言われる理由がない。さってと、そろそろ終わったか?」

 

 

俺の言葉の直後、シリカが工房から出てきた。

 

 

「カイさーん!成功しました!」

 

「そっか。追加アイテムも結構持ち込んだし大丈夫だろうと思ってたけど……よかったな」

 

「はい!」

 

「ほら、カイ!早く来なさいよ!」

 

「ああ、わかったよ」

 

 

 

 

 

 

 

リズに呼ばれて俺も工房の中に入る。

 

 

「で?あんたは何を頼みたいの?」

 

「オーダーメイドって言わなかったっけ?」

 

「……そういえば言ってたわね。インゴットはあるの?」

 

「ああ、これだ」

 

 

俺はオブジェクト化した《クリスタルワイバーンのインゴット》をリズに投げ渡す。

 

 

「へーえ。中々のインゴットね。どうやって手に入れたのよ?」

 

「話が長くなるから後でな。それで短剣を作ってほしい」

 

「………あんた短剣使ってたわよね?何?あんたもキリトと同じクチ?」

 

「ん?あいつのこと聞いたのか?」

 

「見せてもらっただけ。聞いてはいないわ」

 

「そっか。俺は違ぇよ。ただいい短剣が欲しかっただけさ」

 

「ふーん、まあいいわ。短剣でいいのね?」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

「りょーかい」

 

 

リズベットがインゴットを炉の中に放り込む。

それが焼ける前に言っておきたかったことを言う。

 

 

「………リズ、お前、さっぱりした顔してんな」

 

「………よくわかったわね」

 

「昔あることがあってな。それ以来人の顔色に敏感になったんだよ」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

「ああ。……何があったかは聞かねぇから安心してくれ。これで安心して作製を任せられる」

 

「はは、あんたはあたしの作製に影響がないか心配だったわけ?」

 

「たりめーだろ。なんかモヤモヤしてるみてぇだったからな。

そのせいで手元が狂ってとか笑えねぇだろ?」

 

「あはは、そうね。大丈夫。任せて」

 

 

リズはそう言うと炉から焼けたインゴットを取り出し、金床の上に置いた。

壁にかけてあったハンマーを取り、メニューを設定する。

ちらりと俺を見てくるリズに親指を立てて返すと、リズは頷いて――真剣な表情で叩き始めた。

 

 

武器の作製は――作製する武器の種類と、使用する金属のランクに応じた回数インゴットを叩くこと――でいいらしい。

つまるところ、武器作製にプレイヤースキルは介在する余地はないわけだ。

でも、多くの鍛冶屋はそう思ってないらしい。俺もそうだけどな。

なんか、気合い入れた方がいいとかありそうじゃね?

 

 

 

 

何回叩いたのか――インゴットがまばゆい光を放ちながらその形を変えていく。

 

数秒かけてオブジェクトのジェネレートが終了し、そこには一本の短剣があった。

 

 

サイズ的には普通の短剣と変わらない。

だがその輝きが違う。

キリトの《ダークリパルサー》に勝るとも劣らない輝きを刃に宿し、透き通りながらもその存在を主張している。

柄も透き通るような澄んだ水色――空色と言ったほうがいいか。

そして、短剣が全体的に薄く澄んだ色を放つ中、一際目立つもの。

鍔でいいのか?そこで紅く輝く宝玉。クリスタルワイバーンの眼を彷彿とさせる。

 

 

俺はその造形に眼を奪われていた。

リズが短剣を手に取り、クリックして出現させたポップアップウィンドウを覗き込む。

 

 

「んーと、名前は《ヴァイヴァンタル》。

あたしが初耳だから、キリトの剣と同じで今の所情報屋の名鑑には載ってないと思う。

さ、どうぞ」

 

「おう、さんきゅ」

 

 

俺はリズから短剣を受け取る。

――短剣にしては重めだな。

メインメニューを操作して俺に装備する。

これで数値的ポテンシャルを見ることができるんだが……。

 

うはっ、すげぇ。

めちゃくちゃ優秀だな、こいつ。

あのワイバーンの特徴だった堅さと素早さを象徴するかのようなパラメータだ。

攻撃力等の他のパラメータは多少劣るものの、攻撃力のみ今使ってる《キリング・デストロイ》に僅差で負けるくらいだ。

《キリング・デストロイ》は攻撃特化の武器だから全然不思議ではない。

 

あ、《キリング・デストロイ》は五十七層のボスドロップの短剣だ。

ほら、いただろ?取り巻き共々ひたすらデストロイしようとしてた奴ら。

それにキリングなんて単語まで付いてた。笑えねぇ。なんで短剣をドロップしたのかは不明だ。

ちなみにこれも十分優秀だ。俺の持つ他のドロップ品共々使い勝手はいい。

 

 

「すげぇな、リズ。こいつはすばらしい短剣だ」

 

「ホント?よかった」

 

 

リズがほっと息をつく。

 

 

「あと、コイツの鞘が欲しいんだ。リズの知り合いに細工師はいるのか?」

 

「ええ、馴染みの細工師から仕入れてるから――」

 

「いや、そいつに頼んどいてほしいんだ。材料にはこれを使ってほしい」

 

 

そう言って俺はストレージからあるアイテムを大量に取り出した。

 

 

「………?それは?」

 

「知らないよな。これはハイレザーリザードっていうモンスターのドロップ品だ。

中々いい素材なんだけど、一体がドロップするサイズが小さくてな。効率が悪いんだ。革だし。

だからこれを使った鞘なんて売ってねぇんだよ。でも俺この紺色好きなんだよな。

今までは鞘は今ぶら下げてる短剣用のこれしかなくて困ってたんだが……。

リズ経由でそいつに依頼したい。材料はこれ全部。作ってほしいのは、短剣、片手剣、両手剣、曲刀、刀用の鞘それぞれ一つずつ。

作り方は俺が提供する元の鞘に貼付けてほしい。できんのかな?」

 

「え、ええ…………。多分大丈夫だと思うけど……。

カイあんた、一体がドロップするの小さいって言ってなかった?何この量?」

 

「狩りつくしたからに決まってんだろ。

俺がそれを狩りまくってた時期、そこはハイレザーしか出ない場所だったから敵がいないゾーンとして一時期話題になったんだぞ。

俺がいなくなったらポップしまくってたからすぐに消えた話題だけどな」

 

「はた迷惑な話ね……。わかった。あたしから頼んでみるわ」

 

「頼む。金は………こんくらいでいいか?」

 

 

俺はトレードウィンドウを開き、金額を提示した。

 

 

「ええっ!?多すぎるわよ!!」

 

「そいつに頼む分と、短剣の代金も込みだ。余ったら貯金しとけ。

俺は金は有り余ってる。そこに提示した分なんて俺の所持金の二十分の一以下だ」

 

「ええ〜。どんだけ持ってんのよ」

 

「すげぇジト目だな。俺はキリト以上に狩りに出て稼いでるからなぁ……。

そこらにいる奴には絶対に負けない自信がある」

 

「そんな自信はいらないわよ。お代、確かにいただきました。まいどありっ」

 

「おう。じゃ、鞘が完成したらメッセ飛ばしてくれ。受け取りにくる。

そもそも依頼できなかったらすぐ連絡してくれ」

 

「ああ、諦めて引き取りにくるのね?」

 

「違ぇよ。そいつんとこに直接行って金積むんだよ」

 

「…………うわ〜。ないわ〜」

 

「うるせぇ。俺は何としても鞘を手に入れるんだ。

キリトの鞘を見る限り腕は良さそうだったしな」

 

 

そして俺達は工房から出た。

アスナも今日は休日だということで五人で夕食を取り、別れた。

リズが作ってくれた《ダークリパルサー》と《ヴァイヴァンタル》は大絶賛された。

 

 

 

 

 

後日、俺の下に鞘ができたとリズからメールがあったので出向いて受け取った。

見事な出来栄えだった。

 

 

 

 




新武器です。
カイの新たな相棒です。

ちなみにカイの他の武器は、
片手剣:シュトリケイショナー
細剣:フロートスティン
曲刀:マンティサーベス
刀:時雨
両手剣:ヴォルカニックデイズ
片手棍:ヴェルキッシュ
槍:デモニックスピア

って名前です。
キリトの武器が変わらなかったようにカイの武器もこれ以上変わりません。
全部いい武器なんです。他のオーダーメイド品が良すぎるだけで。
ちなみに全部ドロップ品という設定です。
カイとキリトは今もLAを取りまくってます。

次回は再びカイの過去に触れると思います。

感想、意見、批評、質問その他、お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。