黒の剣士と紺の浮浪児   作:gobrin

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黒猫団と迷宮区に行こう!
という趣旨のオリジナルストーリーです。

前回の殺伐とした話から一転、楽しいものになってると思います。
………なってたらいいな。

では、どうぞー。




第十八話 黒猫団と迷宮区攻略という名のキャンプ

 

 

七十五層に転移した俺達を黒猫団のメンバーが出迎え、俺がいることに驚愕していた。

特にダッカーが。

 

 

「か、かかかか、カイ!?な、なんでいるんだ!?」

 

「あ?俺はシリカの夫だぞ?ここにいたっておかしくはねぇだろ」

 

「いやいやいやいや!KoBに入ったんだろ!?ギルドでの攻略は!?」

 

「そっちは諸事情でな。今日からしばらくはフリーだ。

それとも何か?ダッカーは俺がいると何か不都合があるのか?」

 

 

ダッカーの驚きは尤もな気がする反面、オーバーリアクションだとも思う。

何をそこまで驚いているのやら。

 

 

「い、いえいえ。滅相もございません……」

 

「なあ、ケイタ。こいつの態度に心当たりはあるか?」

 

「うーん。あるけど、ここで言っていいものか……」

 

 

ほう、何やら原因がありそうだ。ここは言ってもらおう。

 

 

「教えてくれないか?何なら、武器か何かプレゼントしようか?結構気になるから、それぐらいの出費は構わないが」

 

「あはは、それはいいよ。でもそうだね、ここで黙ってて攻略中に何か失敗されてもいいことはないし。わかった、教えるよ」

 

 

流石ケイタ、話がわかる。後ろでダッカーが首をブンブン振っている気配がするから、余計に聞きたくなっていたところだ。

俺は適当な金額をトレード欄に置いて、ケイタに送りつけた。

 

 

「これは?」

 

「情報料の代わりだ。何かの足しにしてくれ」

 

「あはは、カイは律儀だなあ。わかった。ありがたく受け取っておくよ」

 

「おう。それで、心当たりって言うのは?」

 

 

こういう時の俺が引かないとわかってくれているんだろう。ケイタは素直に受け取ってくれた。

俺は、ケイタの発言に耳を傾ける。

 

 

「まず、カイが参加すると戦闘が厳しくなることが多いっていうのが一つ。

そして、ダッカーがシリカちゃんに気があるっていうのがもう一つ」

 

 

俺が戦闘に参加すると、何故かMobがよく湧く。そこで出てくるMobの中では強い奴が集まってくるのも特徴だ。何故かは知らない。俺的には、レベル上げがやり易くて助かる。

だが、そんなことがどうでもいい内容が聞こえてきたんだが……?

 

 

「……ケイタ、それは俺をからかうための嘘とかじゃないんだな?」

 

「まさか。そんなこと言うの、カイは嫌いじゃないか」

 

 

その通りだ。俺は、その手の冗談は嫌いだ。本当にケイタはよくわかってる。

だが、そうすると――――。

 

 

「………ダッカー。何か、申し開きは、あるか……?」

 

「い、いやいやいやいや!!あのな!?気があるっていうのはな!?アイドルを可愛いなって思うのとかと同じ様な奴だよ!!決して恋愛感情とかではなく、一種の憧れとして……」

 

「………遺言は、それでいいのか?」

 

「いやいやいやホント待って!!ちょっと待って!!何か誤解があるって!!俺の話を聞いて!!ぷりーずりっすんとぅーまいすぴーち!!」

 

「………問答、無用!!!」

 

「ぎゃあ―――――――!!!!」

 

 

ダッカーの断末魔の悲鳴が上がった。

圏内では、ダメージを与えられない。紫色の窓が出現して、ダメージを一切通さないからだ。

逆に言えば、ダメージのみを遮断する。衝撃は全て素通りだ。

 

つまり、今の俺にはただただ好都合だ。

どれだけ攻撃してもダッカーを殺さずに済むし、衝撃でショックは与えられる。

こいつが命乞いするまで続けてやる―――!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三十分後。

 

怒りが収まった俺は、へたり込むダッカーに向けて言い放った。

 

 

「これに懲りて、シリカは可愛いなと心の中で思うだけにしておけよ?変な色目使ったら殺すからな?」

 

「は、はい……。すみませんでしたぁ……」

 

「わかればよろしい」

 

 

俺の全力の攻めによって、ダッカーは精魂尽き果てていた。

ケイタが苦笑を湛えながら俺に話しかけてくる。

 

 

「ハハ……。カイって本当に、シリカちゃんのこととなると厳しいよね」

 

「当たり前だ。シリカが色目使われてたなんて聞いて黙ってられるかっての。

まあ、シリカが止めてほしいと思ってるんだったらすぐにでも止めるがな。

シリカが俺のこと嫌いになったり別れたいと思ったりしない限りは止めるつもりはない」

 

「あたしは嬉しいですよ?カイさんがあたしのことを思ってやってくれてるわけですし。

今のはちょっとやりすぎなんじゃないかと思ったりもしましたけどね」

 

「でもそれを言わないシリカちゃん」

 

「まあ、ダッカーさんだからいいかなって」

 

 

シリカの発言に、ダッカーが驚愕の表情を浮かべる。

 

 

「シリカちゃんの俺の扱いが思ったよりも酷い!?」

 

「そんなことありませんよ?」

 

「そんなことないだろ?」

 

「「だってダッカー(さん)だし」」

 

「訂正する!二人揃って酷いな!?」

 

「「「アハハハハ!!」」」

 

 

もう復活してツッコミを入れるダッカーに笑いが起こる。

やっぱり、黒猫団は空気がいいな。

 

 

「さてと。コントはこれくらいにして、そろそろ行こうぜ」

 

「コントってそりゃないだろ!?」

 

 

俺の提案に、ダッカーがツッコミを入れた。

……ダッカーって、いつからこんなツッコミ要員になったんだ?まあいいか。

 

 

「ああ、そうだ。皆に言っておくことがある」

 

「ん?どうしたんだい、カイ?」

 

 

黒猫団を代表してケイタが訊いてきた。

やっぱり、ケイタはリーダーらしいリーダーだよな。

 

 

「俺、今回ソードスキルを基本的に使わないから」

 

「え?カイ、それってどういうこと?」

 

「それ、あたしも初耳ですよ!?」

 

 

サチが口を挟んできた。驚きのあまり、声が出てしまったんだろう。

シリカがそう言うのも当然だ。何故なら、今言ったからな。

 

 

「まあまずは聞いてくれ。一応理由はあるんだ」

 

 

俺がそう言うと、一旦了承してくれたのか、皆が聞く体勢になった。

 

 

「ほら、キリトが二刀流使いって評判になっただろ?あれ、やってみたくなってさ。

短剣を両手に持つことは可能だから、今回やりたいな、と。

だが、そうなるとイレギュラー装備状態となってソードスキルが使えないからな。

一応、俺はあるスキルのおかげですぐにソードスキルを使える状態にできるけど。

もちろん、今回の攻略のリーダーはケイタだし、皆の意見を無視する気もない。

だから、俺がそれをやってもいいか、皆で相談して決めてほしい。俺はその決定に従う」

 

 

俺の言葉を聞いて、黒猫団+シリカが、早速相談を始める。

こういう時の反応も速くなって、出会った頃と比べると何とも懐かしい気持ちになる。

 

 

「カイ、訊きたいことが二つあるんだけど」

 

「あいよ。何だ?」

 

 

俺が懐かしい気持ちに浸っていると、ケイタが質問してきた。

 

 

「それ、ソードスキルが使えないだけで、戦闘には参加するよね?」

 

「もちろん」

 

「じゃあ、さっき言ってたすぐにソードスキルを使える状態にできるスキルって何かな?教えられる範囲でいいけど、教えてもらえる?」

 

 

ケイタがこんな前置きをするのは、スキルの詮索がマナー違反だからだな。

だが、俺はこいつらに隠し事をする気はあまりない。

 

 

「それくらいならいくらでも。俺が言ったスキルは、投剣スキルの派生スキル《スローイングテクニック》だ。

これはパッシブスキルで、俺が装備してる短剣をスローイングダガーとして扱えるってスキルだな。

つまり、俺はいつでも片手の短剣を手放せるってわけだ。これでいいか?」

 

「うん、ありがとう。参考になったよ」

 

 

ケイタは再び相談の輪に戻り、すぐに俺の方を向いた。

もう結論が出たのか?早いな。

 

 

「それなら大丈夫そうだって結論になった。カイの行動を許可するよ。

でも、今日の探索は最前線だ。僕が指示したらすぐに従ってね。もちろん、カイが危険だと判断したらやってくれ」

 

「わかってる。ってことは、俺の行動も一つの目安にされるのか?」

 

「そういうことになるかな。ま、そんな状況が来ないことを祈るよ」

 

「全く同感だな」

 

 

俺がケイタの言葉に深く頷くと、ササマルが少々棘のある声で言った。

 

 

「ダッカーがまたトラップを踏まなければいいが………」

 

「おいおい、ササマル!いくら俺でも、カイの前でそんなことしねえよ!」

 

 

それを聞いて、俺の目が一気に冷めたものになる。

その状態でダッカーを見つめると、俺の視線に気づいたのかダッカーがぎこちない動きで俺の方を向いた。

 

 

「…………俺がいなくても、やるなよ?」

 

「……………わ、わかってるよ。うん、わかってる」

 

 

冷や汗ダラダラの状態で言われても説得力がまるでないんだが。

 

 

「ダッカー、説得力がないよ」

 

 

サチが、呆れの表情で告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、お前らの中で何か面白い話はないのか?」

 

「面白い話って?」

 

 

迷宮区に向かう道すがら、俺が黒猫団のメンバーに訊くと、疑問の声が返ってきた。

 

 

「いや、サチが誰かといい感じとかそういうの」

 

 

俺の言葉を受けて、テツオ、ササマル、ダッカーの三人がある方向を向いた。

俺とシリカがその視線を追うと、ケイタが目に留まる。

ケイタは顔を赤らめていた。サチも近くで顔を真っ赤にしている。

 

 

「………マジ?」

 

「「「マジ」」」

 

 

三人の返しが完璧に揃った。

 

 

「いつからだ?俺が最後にお前達と探索したときはそんなことにはなってなかったと思うんだが」

 

「うーん、二週間くらい前かなぁ……」

 

「そのくらいだった気がするな」

 

「ケイタにデュエルを申し込んだのはいい思い出だぜ」

 

 

結構付き合い始めたばかりだった。

てか、ダッカー。お前そんなことしてたのかよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおおぉッ!!」

 

「テツオ、スイッチ!」

 

「おう!」

 

「ダッカー、サチの援護よろしく!」

 

「任せとけ!」

 

「ササマル、僕と一緒に削るよ!」

 

「了解!」

 

 

 

「あいつら、かなりやるようになったな」

 

「コンビネーションが凄いですよね」

 

 

俺達は今、迷宮区の部屋でモンスターと戦闘していた。

部屋の広さはそこそこ。入り口は二箇所ある。

相手は四体。《グレイブボーンナイト》という名前の骸骨剣士だ。

剣士と言っても、こいつの武装はランダム。

パターンは、片手剣と盾持ち、片手斧と盾持ち、短剣と盾持ち、曲刀と盾持ち、片手棍と盾持ちの五つある。

個体の強さに若干の差があり、先に挙げたものほど強い。

今戦っている四体は、全て片手剣を装備していた。これも俺がいるせいなのか否か。

 

黒猫団が二体受け持ち、俺とシリカが二体受け持っていた。

俺とシリカは、レベルの高さと二人の息の合った行動に物を言わせ、苦もなく骨どもの相手をしていた。

 

しかし、驚かされるのは黒猫団の呼吸の合いようだ。

テツオとサチは自分達の判断でスイッチを繰り返し、それに合わせてケイタが指示を飛ばす。

ダッカーとササマルはそれに瞬時に従い、骸骨剣士に一切の隙を見せない。それどころか、絶妙なタイミングで援護攻撃して、テツオとサチの攻撃の隙間を悉く埋める。

 

普通、五人もパーティーメンバーがいると、ここまで息が合うことはないんだが……。

ま、そこは流石の黒猫団ってことなのかね。息の合い方だけなら、俺とキリトが黒猫団に出会ったときからこれくらいだったし。もちろん、戦闘技術は今の方が遥かに高い。

 

 

 

「サチ、そこでソードスキルを!僕がトドメを刺すからテツオはすぐにもう一体を抑えて!」

 

「「了解!!」」

 

「二人はテツオのフォローを!」

 

「「わかった!!」」

 

 

今もケイタの指示で全員が迷うことなく動き、一体の《グレイブボーンナイト》を撃破。

テツオが指示通りにもう一体を抑えた。ダッカーとササマルもテツオのフォローに入る。

 

 

「流石だな。さてシリカ。俺達もそろそろ倒すか」

 

「そうですね」

 

「二人での動きは大丈夫だろ。個別に撃破でいいか?」

 

「……はい、大丈夫です!」

 

 

シリカは一瞬考え込んでから、元気よく返事をした。

今の思考は何だったのか。できれば一緒に倒したかったなとかそういうものであってほしい。

 

ちなみに、俺達はずっとパリィかステップ回避で攻撃に対処していた。そして、通常攻撃でちまちま削っていた。

つまり、こいつらのHPはあまり減っていない。まあ、俺達には関係ないが。

 

 

「よし、俺が左右に弾き飛ばす。どっちをやる?」

 

「今右にいるから右のをやります」

 

「了解。なら俺は左だな。――ハアァッ!!」

 

 

俺は二体の骸骨の攻撃を回避して奴らの懐に潜り込み、両手の短剣を左右に振り切った。

短剣は俺の狙い通りに骸骨の持つ盾に直撃し、奴らを左右に引き剥がしてたたらを踏ませる。

 

 

「そっちは任せたぞ、シリカ!」

 

「はい!」

 

 

俺はそのまま地面を蹴って左に流された骨を追う。

シリカも右の奴を追撃しに行った。

―――さて、ここからが俺の今日やりたかったことだな。

 

 

「っしゃあ、行くぜ!!」

 

「ふるるるぐおおぉぉおお!!」

 

 

骸骨剣士も負けじと斬りかかってくるが――ダメだな。遅い。

 

 

「ほらよっとぉ!」

 

「ぐおっ!?」

 

 

振り下ろされた剣の横っ面を左の短剣で叩き、骸骨の身体が俺の左に流れるようにする。

俺の目論み通りになったので、右の短剣を骸骨目掛けて突き込む!

これは恐らく阻まれると思うが――?

 

 

「ぐるおっ!?」

 

「そらきたっ!」

 

 

案の定、骸骨は盾で攻撃を受けた。

だが、これは想定通り。これで、こいつの体勢は大きく崩れる。

 

再び左の短剣を今度は逆の方向に振るい、相手の持つ盾の円周部に当てて両腕を開かせる。

これで、こいつの胴体は無防備だ――。

 

 

今の俺は、両手が俺の右側に流れている体勢だ。

この体勢なら、あれが使える。

 

俺の身体が、淡い輝きに包まれる――――。

 

 

「フッ!!」

 

 

現実では到底無理だろうが、俺は一瞬でトップスピードに至り、左肘を骸骨に叩き込む。

仰け反ったところを追撃。右足で踏み込んで勢いを乗せた右拳を胴体中心部にアッパー気味に打ち込む。

攻撃はまだまだ続く。今、拳を打ち込んだところ目掛けて左膝を打ち上げた。

そのまま左足で床を踏みしめて踏み切り、左のショルダーアタックで骸骨を大きく吹き飛ばす。

身体に若干かかっている右回転の勢いを殺さず左足を軸に回転、回し蹴りをぶち込む。

今度は左足で踏み込み速度重視で左、右とワンツーパンチ。

そして右拳を突き出した身体の捻りを利用して右の鋭いローキック。

右足が地面を捉えるや否や先ほどとは逆向きに回転し左脚を高く振り上げ、脚払いを受けて床に転がっている骸骨剣士に強烈な踵落しを入れてフィニッシュ。

 

体術スキル九連撃技《旋回乱舞》。

スライム型のモンスター等には効き目がイマイチだが、両脚で立っている所謂人型のモンスターにはかなり有効なスキルだ。これも現実に帰ったら練習したい。

 

このスキルの特徴として、最後の一撃が必ずクリティカルヒットになる。

問題は、効きづらいモンスター相手には、その前のローキックで動きを止められる可能性が高いことだ。それに、技後硬直も長い。

今回のように完全な一対一の状況が作れていないと使いづらい、使用どころの難しいスキルだ。

威力は申し分ないし、見た目もカッコいいんだけどな。

 

 

《グレイブボーンナイト》はポリゴン片になってあっさり爆散。

 

硬直が解けてから周りを見ると、ちょうど戦闘が終わるところだった。

 

ピナのサポートが見事に嵌って、シリカのソードスキルが骸骨に突き刺さる。アレは《インフィニット》か。

黒猫団の方は、五人全員による四連続スイッチでトドメを刺していた。

今思ったが、黒猫団レベルで息が合ってれば、敵が一体の場合エンドレススイッチで終わりだよな。

 

 

「どんな感じだ?」

 

「はい、あたしは問題ありません」

 

「うん、いい感じだね。無理なく戦えた」

 

「上手く回れたよね」

 

 

全員に今の戦闘がどうだったか訊くと、いい返事が返ってくる。全員、好調なようだな。

 

 

「そうか。なら、油断せずにやっていけば大丈夫だろう。リーダーからは何かあるか?」

 

 

本来なら、こういう場合はリーダーのコメントしか言わない気もするが、俺達は違う。

俺と黒猫団は初めて出会った時から俺が指導役みたいなもんだったし、シリカにも俺が戦闘の指導をした。

だからか、戦闘が終わる度に俺にコメントが求められる。キリトがいればキリトにも。俺はもういらないと思うんだけどな。

 

 

「そうだね……。僕としては、ローテが上手くできてたからよかったかな。カイとシリカちゃんも問題ないんだよね?」

 

「はい」

 

「ま、これくらいならな」

 

「なら僕からも特にはないかな。カイ、本当に思ったことはない?」

 

 

俺があっさりコメントを終わらせたからか、ケイタが再度確認を取ってきた。慎重なのは悪いことじゃねえ。

確かに、俺には言いたいことがある。だが、ケイタが気づいたのが偶然なのかが気になるな。ハッキリさせるか。

 

 

「なんでそんなこと言うんだ?」

 

「いや……言葉では上手く説明できないけど、カイが何かを言い渋ってる感じがして……。

僕が気づいてないことがあったのかなって思って。実を言うと、僕も何かが引っかかってて……。それが何なのかはわからないんだけど。シリカちゃんはどう思う?」

 

「あたしもそう思います。カイさん、多分何かを隠してますね。いつもと雰囲気が違いますから」

 

 

ふむ。ケイタは気づいてたのか。なら及第点かな。

てかシリカはシリカですげえな。判断基準が雰囲気かよ。いやまあ、俺もシリカがいつもと違ったら気づくけどな?

 

 

「よくわかったな。確かに、俺は言おうと思ってたことがあった。ケイタが気づかなくても自主的に言うつもりだったが。

ケイタが違和感に気づいてたなら今はいい。自分でその内容までわかるともっといいけどな」

 

「うん、そうだよね。頑張るよ。それで、何かな?」

 

「ケイタが違和感あるって感じてたんなら多分間違いねぇとは思うが、俺はお前達の通常戦闘を見るのは久しぶりだ。もし指摘が間違ってたら言ってくれ」

 

「わかった」

 

 

ケイタの了解ももらえたし、言うか。

 

 

「二度目のスイッチ、サチが前に出た時のダッカーの援護だが。少し前に出過ぎに感じたんだが、どうだ?」

 

 

俺の指摘を受けて、ケイタが先ほどの状況を思い出そうと考え込む。

 

 

「……確かに、いつもより少し前のめりだった気がする」

 

「間違いないか?」

 

「……うん。僕が感じてた違和感も、そこだったと思う」

 

 

名前が出てからダッカーが生まれたての子鹿みたいにプルプルしてるが、そこは気にしない方向で行こう。

 

 

「ダッカー」

 

「ひゃい!!」

 

「………そこまで怯えなくても。

あの位置だと、相手が未知のアクションを取ってきたときに対処しきれない可能性がある。もう一体のアクションにも反応できるかは微妙な位置だったしな。

俺がいて緊張してんのかもしれねぇけど、気にしすぎてミスるなよ」

 

「……おう」

 

「まあ、お前の敏捷なら大丈夫だとは思うんだが、万一ということがあるからなぁ……」

 

 

そんな感じで俺達が戦闘後の反省会をしていると、片方の通路の奥を二体のグレイブボーンナイトが歩いていた。両方とも片手剣持ちだ。

 

 

「ちょうどいい。あいつらで俺がやってみせるから、ダッカーはそれを見て参考にしてくれ。あくまでも参考で留めとけよ。俺が常に正しいわけじゃないからな」

 

 

俺はピックを二本取り出して投剣スキル《クイックシュート》を放つ。

ピックは見事に骸骨の骨を捉え、骸骨どもはこちらに向かって進んできた。

 

 

「わかった」

 

「あの場面を再現するだけだから、サチとテツオが手伝ってくれればいい。

残りの三人は、そっちの通路からMobが出てこないか見張っててくれ」

 

「「「了解」」」

 

 

ダッカーが俺の動きを見逃さないように目を凝らし、シリカ達はもう一つの通路を見張る。

 

 

「サチ、テツオ、頼んだぜ」

 

「さっきみたいにやればいいんだよね?」

 

「ああ。あの場面だけでいいからそれまでは省略しよう。テツオが前に出た状態でスイッチよろしく。来るぞ!」

 

 

そして俺は、俺が思う適切な動きを披露した後さっさと終わらせるために左手の短剣を投擲し、ソードスキルを使いまくって骸骨どもを瞬殺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数ある安全地帯の内の一つに辿り着いた俺達は、誰ともなく円を描くように座った。

ちなみに今は、二十三時を少し過ぎたところだ。思ったよりも安全地帯を探すのに時間がかかった。

 

 

「さてと、遅くなったけど晩飯にしようぜ!」

 

「うわぁ〜腹減ったぁ〜」

 

 

俺が提案すると、ダッカーが我慢の限界というように弱音を上げた。

皆も思いは同じのようで、頷いている。

 

 

「はい、カイさん」

 

「お、さんきゅな、シリカ」

 

「いえいえ」

 

 

俺はシリカに手作り弁当を渡される。

手作り弁当っていい響きだよな。なんか幸せな気分になる。

これは、シリカが事前に用意してくれていたものだ。黒猫団と一緒に攻略することが決まった時点で作っておいたらしい。それを持ってきたわけだ。

…………考えてみると、俺が奴を殺したのは今日の昼なんだよな。………生き残れて、よかった………。

 

 

「はい、皆の分」

 

「おっ、さんきゅー!」

 

「ごちになります」

 

「いつも悪いな」

 

「サチ、いつもありがとうね」

 

「そんな、気にしないで」

 

 

サチが黒猫団の四人に弁当を配る。

向こうはサチが料理担当だ。黒猫団と行動を共にしていた時に食わせてもらったことがあるが……普通に美味かったな。

ま、こういう時にやることは決まってる。

 

 

「サチ、お前の作った弁当、一口もらってもいいか?」

 

「あ、うん。いいよ」

 

「それじゃあカイ!俺と一口分交換しようぜ!」

 

 

ダッカーがいの一番に挙手したが、悪いな。

 

 

「断る。ケイタ、いいか?」

 

「うん。サチが許可したからね。僕に断る理由はないよ」

 

「何故なんだぁぁぁあああ!!」

 

 

ダッカーが慟哭を上げる。

ふむ。ここは一つ、からかってみるか。

 

 

「ダッカー。俺はお前にシリカの料理を食わせるつもりはない。ケイタから感想を聞いて悔しがるんだな」

 

「な、なん、だと……!?……鬼!悪魔!カイの人でなしぃ!!」

 

「ハッ、何とでも言うがいいさ。シリカに色目を使った罰だ」

 

「うわぁああその節は本当にごめんなさい!!出来心だったんです!!」

 

「知らね」

 

「ちくしょうカイのケチぃぃぃ!!そして俺の馬鹿あああ!!」

 

 

これぐらいで意趣返しはいいだろう。まあ、俺からは一口もやるつもりはないが。

 

 

「さてケイタ。サチの弁当のオススメは何だ?」

 

「僕が一番好きなのはこの鶏の唐揚げかな。三つあるから一つあげるよ」

 

「そりゃどうも。なら俺からはこれだな」

 

「それは?」

 

「ロールキャベツ的な何かだ。めっちゃ美味い」

 

「ふぅん。……あ、本当だ。すごく美味しい」

 

「だろ?……お、この唐揚げはシリカに作ってもらったことなかったな。美味い」

 

「僕もこれは作ってもらったことはなかったね。今度から弁当に入れてもらおうかな」

 

「だがこれ、無駄に要求熟練度が高いぞ?サチは大丈夫なのか?」

 

「大丈夫。ちょっと前に完全習得したから」

 

「おう、サチ。聞いてたのか。ってかすごいな」

 

「いいなぁ……。あたしはまだだし……」

 

「シリカは料理スキルを獲得したのが遅めだったからな。仕方ないだろ」

 

「うぅ……そうですけどぉ……」

 

 

俺達四人が仲睦まじく会話をしている横で、三人の男が寂しく弁当をつついていた。

 

 

「くっそう、羨ましい……」

 

「独り身はつらいな……」

 

「まあとにもかくにも、俺達が言いたいことは一つだな」

 

「ああ」

 

「「「リア充爆発しろ」」」

 

「いいのか?俺達四人がここで実際に爆発したら、お前達を巻き込むことになるが?」

 

「「「それは止めて!!」」」

 

 

俺が笑いながら茶々を入れると、三人揃って首を横に振った。それによりこの空間が笑い声に包まれる。

……やっぱり、落ち着くな。心が洗われるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ寝ようか」

 

 

晩飯を食い終わって一息吐いたところで、ケイタが切り出した。

 

 

「でもさ、どういう順番で寝るの?」

 

「それは今から決めよう」

 

 

サチの疑問は当然のものだ。

いくら安全地帯とはいえ、俺達には危険が常に付き纏う。

邪な考えを持ったプレイヤーがここに現れたとき、俺達を殺す方法なんて普通にあるからな。

 

一つはMPK。モンスタープレイヤーキルだな。

ある程度の筋力パラメータがあれば、人を一人持ち上げるのなんて雑作もない。この階層で戦えるなら、ほとんどのプレイヤーが条件を満たすだろう。

それで俺達を通路に運び出してMobに襲わせれば、それで終了だ。

 

もう一つはデュエルを申し込むこと。睡眠PKって呼ばれたりもする。

完全決着モードの申請をして、相手の指を動かして受諾させる。そして殺す。はい終了。

 

あとは毒ダメか?

安全地帯では直接攻撃によるダメージは通らないが、毒や出血ダメージは継続して与えられる。

強力な毒を塗ったピックを突き刺して、毒ダメと貫通継続ダメを与え続ける。

戦闘中じゃないから戦闘時回復スキルは効果を発揮しないし、殺すことは可能だとは思う。

時間がかかり過ぎて現実的じゃないが。

 

 

俺がパッと思いつくのはこれくらいか?

でもまあ安全地帯にいる人間を殺そうと思えば殺せるわけだ。

万が一にもそれをされないように、見張りを立てるってわけだな。

いや帰れよ、とか思うかもしれないが、今回は泊まる予定だからな。仕方ない。

警戒用アラームをセットしてもいいが、それだと落ち着いて寝れない。

迷宮区では、寝れる時に寝ておくのがセオリーだ。

 

んじゃま、俺の意見を言いますか。

 

 

「それについては俺から提案がある」

 

「なんだい、カイ?」

 

「俺は三時間寝れば十分だから、俺を先に寝させてくれ。その後は俺と誰か一人でいいだろ」

 

 

世の中には、深い眠りにつくことで眠りの質を引き上げ、実際の倍近い時間寝たのと同等の睡眠を取ることが可能な人間が存在する。俺がそうだ。

というか、家族が殺されてからやることが多すぎて、爺ちゃんに言われてそうやって睡眠時間を減らして時間を確保することにしたんだよな。言われたのは俺が一度倒れた後だけど。

そのおかげで、俺はキリトをも上回るレベルになっているわけだ。実際の睡眠時間があいつの半分以下だからな。

一日の活動時間の三時間差は大きい。それが二年も続けばなおさら、な。

 

 

「そう?なら、最初は――」

 

 

 

 

見張りの順番が決まり、最初に寝るメンバーは寝ることにした。

最初の見張りはシリカとサチだ。女子は纏めてしっかり寝させてあげようという黒猫団男子メンバーの配慮だな。

 

 

「んじゃ、おやすみー」

 

 

俺は一言告げて、一瞬で眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きっかり三時間後。俺はアラームなしで目を覚ました。

 

 

「おはよ」

 

「ああ、カイ。よく眠れた?」

 

「おう。残るのはどっちだ?」

 

「俺だよ」

 

「そうか」

 

 

俺が見張っていたケイタとダッカーに近づいて尋ねると、ダッカーが見張りを続ける旨を伝えてきた。

 

 

「それじゃ、おやすみ」

 

「俺達が見張ってるから心配すんな」

 

「しっかり休めよー」

 

 

ケイタが寝たのを見届けて、俺達はリラックスして見張りを続ける。

空間を沈黙が支配するが、息苦しい感覚はない。この静寂は嫌いじゃないって奴だな。

 

 

 

 

 

「…………なあ、カイ」

 

「どうした?」

 

 

しばらく経ってから、ダッカーが真面目な声音で話しかけてきた。

真面目な話なら、俺も真面目に答えよう。

 

 

「……俺達、ちゃんと帰れるのかな……」

 

「……お前はそう思わないのか?」

 

 

俺の答えは決まってる。だから、先にダッカーの想いを、考えを、聞きたいと思った。

 

 

「……帰りたいよ。そりゃ帰りたいさ。

……でもよ、二年だぜ?このデスゲームが始まってから二年。二年かけてやっと四分の三だろ?しかもMobもどんどん強くなってる。

こんな状況で、本当に帰れるのか不安になってきてさ………。死ぬんじゃないか。今日にも誰か仲のいい奴が死んじまうんじゃないか。もしかしたら明日。それとも明後日。そう考えたらどんどん不安が大きくなって、さ」

 

「………………」

 

 

ダッカーは、ずっと不安だったんだろう。

もしかしたら、いつもの陽気な態度も、それを隠すためのものなのかもしれない。

 

 

「……真剣に悩みを打ち明けてもらったところで悪いが、俺に言えることは大したことじゃねぇ」

 

「……まあ、そうだよな」

 

「だが、真面目に答える。お前の最初の呟きに対する、俺にできる精一杯の返答だ」

 

 

一旦言葉を区切って、ダッカーの目をしっかりと見る。ダッカーも逃げずに目を合わせてきた。

 

 

「俺は、()()()()()()、じゃねぇ。()()、だ。

俺はシリカのためにも、このゲームをクリアする。そしてシリカを、現実世界に()()

そんで、こっからは俺の我が儘だが、俺の周りにいる大切な人間は絶対に死なせない。絶対に、だ。俺は、守れる限りは守りきる。

…………とまあ、答えになってない語りは以上だ。別に聞き流してくれていい」

 

 

俺の言葉を聞いて、ダッカーが数回まばたきした。

 

 

「帰れるかじゃなくて帰る、か……。カイは強いな」

 

「そうでもねぇよ。俺だってシリカに支えられてるしな」

 

「あっ、惚気かチクショウ!くそっ、見てろよ!俺だって可愛い彼女を作ってみせるからな!」

 

「できるといいな。ま、無理だろうが」

 

「その澄ました顔が腹立つぅ!こうなったら絶対帰ってやるぅ。俺は現実世界に絶対帰るぞ!」

 

 

気持ちドヤ顔で言ったんだが、しっかり顔に出てたらしい。

だが、ダッカーの気分が明るくなったな。

 

 

「その意気だ。ま、頑張れよ」

 

「おうよ!……ありがとうな、真面目に聞いてくれて」

 

「俺は真面目な話をされてまでふざけるほど人でなしじゃねぇつもりだが……そんな風に見えるのか?」

 

 

俺の発言に、ダッカーは目を逸らした。おいこらてめぇ。

 

 

「……まあ、見えるかな」

 

「……よぅしそこになおれ。ボコって考えを改めさせてやる」

 

「ちょ、ごめん、嘘だって!お茶目なジョークじゃん!?」

 

「遺言はそれか?」

 

「またそれ!?そのネタは夕方やったじゃん!?」

 

「ネタの使い回しだ」

 

「止めて!ネタが過労死しちゃう!!」

 

 

そんな感じで俺達は、他の皆が起きない程度に騒いでいた。

覚悟を決めたのか、ダッカーの顔は心無しか凛々しくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

テツオが起きてきて、ダッカーと交代した。

その後はテツオと一時間静かに見張りを続けてたんだが、ササマルが起きてきた。

 

 

「あれ?ササマルの番はまだじゃなかったか?」

 

「そうだったんだけど、目が覚めた。テツオが休む番まで、カイは休んでてくれ」

 

 

ふむ、これは気を利かせてくれたっぽいな。なら、ちょっと頼んでみるか。

 

 

「なら頼んでいいか?」

 

「任せとけ。………って、どこ行くんだ?」

 

「日課だよ」

 

「日課?」

 

 

見張りはテツオとササマルに任せて、俺は立ち上がって通路に向かう。

ササマルが怪訝な声で尋ねてきた。まあそうなるだろうな。休むのかと思いきや、通路に向かってるんだから。

 

 

「俺は毎日三時間も寝れば十分だからな。毎日、深夜にレベリングをしてたんだよ。

行かせられないって言うなら休んでるが……」

 

「あ、ああ……そうなのか?気を付けてな?」

 

「おう」

 

 

困惑した表情の二人を置いて、俺は安全地帯から出た。

 

 

 

 

 

 

「迷宮区でやるのは久しぶりだな。特に、攻略階層でやるのなんて何時ぶりだ?」

 

 

俺は通路を歩きながら、呟いた。

索敵スキルを発動させて、Mobを探す。

 

 

「おっ、敵のアイコンが出たな。そっちか。………ラッキー」

 

 

新たなMobを察知し、そいつらのいる位置へ向かう。

 

通路から部屋を覗き込むと、グレイブボーンナイトの片手剣持ちが二体、片手斧持ちが一体、短剣持ちが一体。

それに《バイエルリザード》っていうリザードマンの強い奴が二体。合計六体だ。

 

 

「こりゃ、楽しめそうだな……」

 

 

一旦通路に戻って深呼吸。

近くに他のプレイヤーがいないことを確認し、《ヴァイヴァンタル》と《キリング・デストロイ》を抜き放つ。

部屋にいたモンスターの配置を思い出し、一応シミュレーション。

うん、行けるだろ。

 

索敵スキルの表示を眺め、奴らが逆側を向いた瞬間、飛び出す!

 

 

「シッ!!」

 

 

鋭く息を吐きだし、一気に部屋の中に飛び込む。

俺の()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっす。悪ぃな、任せちまって」

 

 

一時間弱暴れた俺は、軽い足取りで安全地帯に戻った。

 

 

「おお、カイ。おかえり」

 

「よし。カイも戻ってきたし、俺はちょっと眠らせてもらうわ」

 

「おやすみ」

 

「少しでも身体を休めとけよ」

 

 

俺の帰還を確認し、テツオが睡眠の確保に入った。

 

 

今は六時少し前。最初の組は零時に就寝したから、六時間程経っていることになる。起床は七時の設定だ。

女子は六時間、男子は五時間寝ることになっている。ダッカーは、自主的に四時間睡眠にしたみてぇだが。

 

 

「カイ、どうだった?何かいいドロップはあったか?」

 

「いや、特に何も。まあ数はこなしたから、はした金にはなると思うけどな」

 

「そうか。それにしても、すごい日課だな」

 

「もう慣れたよ」

 

「そうか」

 

「ああ」

 

 

ササマルと他愛もない話をしながら、皆の起床を待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、じゃあ帰ろうか」

 

「「「「おう」」」」

 

「「はーい」」

 

 

ケイタの号令で、皆が立ち上がる。

今は八時。朝飯はすでに食べた。

と言っても、俺の分は時間の関係で作れなかったから、シリカに少し分けてもらったくらいだけど。

あーんとかしてもらってたら、非リア充組にめっちゃ睨まれた。俺達はどこ吹く風だったが。

サチにも少しだけ恵んでもらった。おいしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして探索しつつ帰りの道中。

 

 

ダッカーが宝箱を発見した。

 

 

ってオイオイ、このパターンはまさか…………。

 

 

「おっ、宝箱じゃん!ラッキー!!」

 

「ちょっと待てダッカー!!罠の可能性が………!」

 

「あ、開けちゃった」

 

 

ブーッ、ブーッ、ブーッ!!!

 

 

「やっぱりトラップじゃねぇかコラァ!?」

 

「ご、ごめん!!宝箱を見るとつい……」

 

「ついじゃねぇ―――!!」

 

 

俺の制止を聞かずに、ダッカーが無警戒で宝箱オープン。

案の定けたたましくアラームが鳴り響き、部屋の三方に新たな通路が出現。さらに今入ってきた通路が閉ざされた。

新しい通路の先はマップにないエリアだったはずだ。ってことは――――!!

 

 

「ぞろぞろ出てきたぁ――!?」

 

「これはマズイ!」

 

「くそっ、全員体勢を低くしろ!!」

 

 

テツオが叫び、ケイタが危険を告げた。

三つの通路から、この層のモンスターが次々に出てくる。

 

このままやりあったら負ける!!

俺の指示に従って、全員が姿勢を低くする。

 

 

「シリカ、宝箱は任せた!!破壊しろ!!」

 

「はい!!」

 

「《ジャミングシュート》!!」

 

 

シリカが《アーマーピアス》で宝箱を破壊するのと同時に、俺はスローイングダガーを二本取り出して《キリング・デストロイ》と合わせて投げる。

もたついてる余裕はない。すぐさまピックを三本取り出し、別の方向に再び《ジャミングシュート》。

今度はスローイングダガーを取り出して先の二回とは異なる方向に《ジャミングシュート》。

 

ヒースクリフとの決闘のために買ったものの使わなかったピックとダガーを使い切るつもりで《ジャミングシュート》を放ち続ける。

 

 

「これで、最後だッ!!《ジャミングシュート》!!」

 

 

残ったピックが二本、ダガーは零。これでほとんどの敵に状態異常をばら撒けただろう。

後は気合いで何とかするしかねぇ!!

 

 

「これでほとんどの奴が状態異常になったはずだ!意地でも切り抜けろ!!」

 

「「「「おう!!」」」」

 

「「はい!!」」

 

 

なんか俺がリーダーみたいになってるが、緊急事態ではよろしくとケイタに言われている。

確かに俺が慣れているのも事実だから、俺は異議を唱えてはいない。その気になればケイタもできるだろうしな。

 

 

「俺もこれは真剣にやらなきゃな…………!」

 

 

部屋が広いため、かなりの数のモンスターが湧いていても動けるスペースは豊富にある。

孤立しないように気を付けながら、突っ込む!

 

 

「行くぞ、《ラウンドアクセル》ッ!!」

 

 

今の俺の役目は、広範囲攻撃を連発して、MobのHPを削ることだ。

そのために、硬直を強引に消す!

 

《ラウンドアクセル》が敵を捉え、かなりの数が吹っ飛んだ。

続けて―――

 

 

「チェンジ!《ショート》・トゥー・《スピア》!!」

 

 

―――簡易変更スキルを被せる。

 

このスキル、トリガーが音声認識だからか、硬直する寸前に発動すると前のスキルの技後硬直を打ち消せる。

硬直する寸前なのは、使ったスキルが勿体ないからだ。スキルの途中でも発動はできる。

まあ、ヒースクリフとの一戦でやってから、一度も使ってないけどな。

 

一番近くにいた曲刀持ちグレイブボーンナイトに肉薄して斬りつけ、続いて槍を普通ではない軌道で振るう。

これで、繋げれる―――。

 

 

「オラァッ!!」

 

 

槍スキル全方位範囲技《ヘリカル・トワイス》。

その場で二回転して全方位の相手に二撃を叩き付ける。

 

簡易変更スキルのいいところその二。軌道を自由に操れる。

これで軌道をコントロールして普通のソードスキルに繋げるってわけだ。

そして再び簡易変更スキルを発動。

 

 

「チェンジ。《スピア》・トゥー・《アックス》」

 

 

ここからは作業だ。心を無にして、ひたすら削れ。

 

もう一回転して槍を振るい、斧を次の構えに。

 

 

「フッ!」

 

 

両手斧スキル全方位範囲技《ワイルド・ウィンド》。

これまた二連撃。

 

 

敵が集まっているところに飛び込み、重点的に荒らす。

相手のHPを削り、状態異常と合わせて黒猫団が一撃で倒せるところまで持って行く。

 

 

「チェンジ。《アックス》・トゥー・《ボウス》」

 

 

次の目的地に向かってジャンプして斧を振り下ろし、両手剣を振り回して構えを取る。

今度は両手剣スキル全方位範囲技《ブラスト》。これも二連撃。

だが今度の一撃は重かったのか、大半のMobがポリゴン片になった。うわぉ。

 

お次ぎは片手剣だ。

 

 

「チェンジ。《ボウス》・トゥー・《ロング》」

 

 

近くにいる敵でHPが一番多い奴に両手剣を突き刺し、片手剣を手に一回転。

そして―――。

 

 

「そろそろ粗方削れたかぁ!?行くぞ、《ホリゾンタル》!!」

 

 

―――チャンスになった時こそテンションを上げろ!!

片手剣スキル広範囲技《ホリゾンタル》。

キリトも敵に囲まれた時によく使っていた。

 

 

 

ここらでちゃんと黒猫団の方を確認。

視界の端には収めていたがな。危険はなかったようだし。

 

 

なるほど。

テツオとサチを別々にして、それぞれにダッカーとササマル、シリカとケイタが付いて対応しているのか。

敵のHPが減っているからこそできる芸当だな。

 

テツオとサチが盾で相手の攻撃を受けきり、ササマルとケイタが攻撃。

それで倒しきれなければダッカーとシリカが遊撃で撃破。

倒せていれば他の相手からの攻撃をパリィ、か。

よくやってるじゃないか。

 

 

「チェンジ!《ロング》・トゥー・《ショート》!!」

 

 

片手剣から短剣に戻し、そのついでに()()()()に向かう。

その場所とは――《キリング・デストロイ》の落ちている場所だ。

 

 

 

よし。《キリング・デストロイ》は回収できた。

 

 

左手で《キリング・デストロイ》を拾い、二刀流モードに。

ここまで削ればソードスキルはいらねぇだろ。

 

 

「もう少しだ、頑張れ!!」

 

 

発破をかけると、口々に返事が返ってくる。

うん、気持ちも負けてない。やっぱり成長したな。

だが、それはそうと――――。

 

 

「ダッカ――ァァァ!!!てめぇ街に戻ったらデュエル五十連だからな!?

ビシバシ扱いてやっから覚悟しろォ!!」

 

「はいぃ!すんませんっした――!!」

 

 

あいつは鍛えなおす必要があるな全く!

ま、それもここを切り抜けてからだ!

 

 

 

 

その後、俺達は五分かけて敵を殲滅した。疲れた………。

あ、新たな通路の先には本物の宝箱があった。

俺が一番頑張ったからと言ってたくさん受け取らされそうになったが、あれは俺だけの功績じゃないからな。ちゃんと全員で分けた。

 

 

 

 

 

 

そして街に戻り、ダッカーと初撃決着モードでデュエルをした。ちゃんと五十回。

動きの悪いところとか改善できるところは指摘しまくった。

ダッカーは最後はフラフラになっていたが、かなり動きはよくなっていた。何だかんだで吸収は早い。

 

そこで終わればよかったんだが、黒猫団の全員に同じことをやってくれと頼まれた。

相手と同じ武器を使って、ダッカーにやったのと同じように指導した。

 

 

…………うん、ぶっちゃけやりすぎたかな。

なんか見違える程に動きがよくなってた。

全力ではないとは言え、俺に付いてこれるとか十分にすげぇ。

 

後日聞いた話だと、全体での動きもよくなってたんだとか。

そろそろ集団戦闘で黒猫団に敵うチームはなくなったんじゃねぇか?

 

 

 

 

こんな感じで、黒猫団との攻略は幕を閉じた。

本当に疲れたぜ全く……………。

 

 

 

 

 





とまあこんな感じでした。

ダッカーはやらかすのさ!
途中かっこよかったのに勿体ない(書いたの作者だけど)。

最後のところ、書いた方がよかったかな?
いらないと思ったから書かなかったけど……。

ま、何かありましたら感想お願いします。

次回はカイがリズベット武具店に行くぜ!!
お待ち頂ければ。

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