黒の剣士と紺の浮浪児   作:gobrin

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タイトル通りです。
オリジナルストーリーですね。

カイが大変な目に遭います。


第十九話 リズベット武具店に行こう!

 

 

ダッカーの扱きから始まった黒猫団の特訓を終えた次の日。

俺はある場所に向かっていた。

 

今日は俺の隣にシリカがいない。

今頃シリカはアスナの下で調味料に関するレクチャーを受けているだろう。

だから俺は俺で、シリカ抜きでできることをしちまおうと考えたわけだ。

 

と、言うわけで―――。

 

 

「おーい、リズー!!いるかー!?」

 

 

俺はリズベット武具店の扉を開け放ち、大声で呼びかけた。

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、何よ!?聞こえてるから!そんな大声出さなくても聞こえてるから!」

 

 

俺が呼びかけた二秒後、リズが慌てて工房から飛び出してきた。

ちょうど他の客はいなかったようだ。タイミングいいな。

 

 

「よお、リズ。ヒースクリフとの決戦前に来たのが最後だから……六日ぶりか?」

 

「そぉね。あんたがあたしに大量の研ぎを依頼してから六日ね」

 

 

うっ……心なしかジト目がキツイ気がする……。

 

 

「あ、あー。今日は客はどうした?」

 

 

かなり苦しいが、ここは話を逸らすのが最善手と見た!

 

 

「ああ、朝一のお客さんならもう帰られた後……って、まさかカイ!お客さんがいない時間に来たんじゃないの!?」

 

 

あ。逸らした先も地雷だった。

 

 

「ああ。偶々来たら客がいなくてびっくりしたぞ」

 

「っ!?……信じらんない!?もしお客さんがいたらどーすんのよ!?取り敢えず大声出したんでしょ!?」

 

「大丈夫だって。リズベット武具店の信用はそれくらいで失墜するものじゃないさ」

 

「そういう問題じゃない!!」

 

 

いい笑顔でそう言ったのだが、怒られた。当然だけど。

 

 

「すみませーん」

 

「あ、いらっしゃいませー!……カイは静かにしててよね」

 

「あいよ」

 

 

新しく客が入ってきた。リズが応対に行く。釘を刺された。大人しくしてるか。

 

 

「えっと……片手直剣を探してるんですけど……」

 

「あ、でしたらこちらの棚になります。どのようなものをお探しですか?」

 

「えっと……ちょっと重めの剣がいいですね」

 

「重めなら……これなどいかがでしょうか?」

 

 

俺は感動していた。

リズが……リズが、店長らしいことをしている!すげぇ!店長にしか見えねぇ!

 

少々気の弱そうな片手剣を探しにきた青年は、リズに薦められた剣を振り、感触を確かめている。

だが、あの振り方を見る限りまだ軽いみたいだが……。

 

 

「うーん、ちょっと軽いですかね……」

 

「その次に重いものだと、これになります」

 

 

次にリズが取り出した剣を振って、青年が顔を顰めた。

あれは重すぎるのか。微妙なラインのものを欲してるんだな。

 

 

「えっと……これだと少し重いかな……」

 

「そうですか……どうなさいますか?買われるのでしたら、軽い方かと思いますが……」

 

 

二人とも表情を変えて悩んでいる。

ふむ。あの人は攻略組で見たことないから、それよりは下の人なんだろうけど……。

ちょっと手を貸すかな。

 

 

「リズ、両方の剣貸してくれ」

 

「え?あ、うん。行くよ、ほい!」

 

「マジかよ」

 

 

まさかのスローイングだった。自分の店の品物だろうに……。

難なく受け取り、重量を確認する。

 

これの間なら……多分あるぞ。

 

 

俺はメニューを操作して、ドロップ品を探し出す。

えーっと………お、あった。これこれ。《デリーキーン》とかいう由来のわからない名前の剣だ。

性能もリズの剣には及ばないが比較的まともだし。

あ、そうだ。どこら辺で戦ってるのか訊かないとな。

 

 

「おい、あんた。何層を探索するつもりでここに来たんだ?」

 

「えっと、六十層辺りを……」

 

「六十層なら行けるだろ。こいつ、持ってみな」

 

「え、あ、はい」

 

 

青年に剣を渡すと、彼の目が輝いた。

 

 

「あ……!これ、ちょうどいいです!すごいです!どうしてわかったんですか?」

 

「いや、あの二つの剣の間だろ?それならこれくらいかなって思っただけだ。性能は問題ないか?」

 

「えっと……はい。この数値なら大丈夫です。あの、この剣を譲ってください!」

 

 

青年が頭を下げてくる。

ここに来て収穫なしってのも可哀想だし、どっかで死なれても目覚めが悪ぃからやるのは吝かじゃねぇが……。

 

 

「俺から直接やるわけにはいかねぇな。あんたはリズの店に買いに来たんだろ?その客を取るのは俺の趣味じゃねぇし。

リズ、この剣タダでやる。性能はお前の作ったやつより悪いから、適当な値段付けてこの人に売ってやってくれ」

 

「ちょ、それじゃああんたが損するだけじゃない!」

 

「ドロップ品だから気にすんな。リズに正規の値段で売ってもいいが、それだとこの人が買うときの出費が大きくなるだろ?だが俺がタダで提供すれば、リズは材料費が浮く分安く売れる。この人のためにも、もらってくれ。俺の所持金は山ほどあるから気にしないでいい」

 

 

俺が頑な姿勢を見せると、リズは深いため息を吐いた。

 

 

「……はぁぁぁ〜〜。カイに引く気はなさそうだし……。しょうがないわねえ。もらってあげるわよ。

えー、では。この剣の性能ですと、値段はこうなりますが……いかがいたしますか?」

 

「買います!ありがとうございます!」

 

「お礼はそいつにお願いします」

 

「はい!あ、あの、ありがとうございました!」

 

「気にしないでくれ。頑張ってな」

 

「はい!失礼します!」

 

「ご来店、ありがとうございました〜!またのおこしをお待ちしております〜!」

 

 

青年は剣を買うと、慌ただしく出て行った。

 

 

「……はぁ。ま、お礼は言っておくわ。ありがとね」

 

 

あの青年もいい気持ちでここを去れただろう。リズベット武具店の印象が悪くなるのは、俺としても不本意だからな。

 

 

「だから気にするなっての。どうせストレージで死んでた武器だ。さてと、俺の依頼いいか?」

 

「いいわよー。今度は何?まさか研ぎなわけないわよね?オーダーメイド?」

 

 

……確かに、普通なら六日かそこらで剣を研ぐ必要な状態になることはほとんどない。

ここ大事な。あくまでも、()()()()だ。

 

 

「………あー、悪ぃな。その研ぎの依頼だ」

 

「なんで!?」

 

「こいつ頼む」

 

「しかも《ヴァイヴァンタル》って!?どんな使い方したのよ!?」

 

 

《ヴァイヴァンタル》は素材がいいので、耐久値も高い。切れ味も衰え難いが、あんな使い方をすれば磨り減るのも仕方がない。

ヒースクリフの盾を攻撃しまくったからな。ストーカーを斬り飛ばし、トドメにあのトラップだ。

未だかつてない勢いで研ぎが必要な域に達した。

 

 

「それと――」

 

「何!!まだ何かあるの!?」

 

 

リズ、キレてんなー。しょうがねぇと思うけど。

 

 

「スローイングダガーとピックを買いたい」

 

「また!?もう在庫ほとんどないわよ!?というかあれだけ買っていってなんでまた補充する必要があるのよ!?」

 

 

リズはヒースクリフとの決闘を見に来ていたから、俺がそれらを一本も使っていないことは知っているはずだ。

だから余計にシャウトしてるんだろう。すまん、許せ。あのトラップが悪ぃんだ。

 

 

「ちょっと色々あってな……。何なら、素材採って来てやるよ。いつもどこで集めてんだ?」

 

「うう、頭が痛い……。そうね、お願いしようかしら。五十六層の《プリティカル》って街、わかる?」

 

「ああ、あの変な名前の街か。知ってるが?」

 

 

《プリティカル》なんて丸っこい響きのくせに、周りが荒野で剥き出しの岩がごろごろしている街だ。

なるほど、確かにあそこの近くなら色々ありそうだな。

 

 

「あの街の入り口から左に進むと、《塊鉱(かいこう)の岩肌》ってダンジョンがあるの。今はそこで採取した素材からピックとダガーを作ってる」

 

「わかった。どれくらい採って来ればいいんだ?」

 

 

俺はリズに言われたことを記憶すると、出発する準備を整えた。

 

 

「あ、《ヴァイヴァンタル》はどうするのよ?」

 

「あの階層なら《ヴァイヴァンタル》はいらねぇだろ。研いどいてくれ。俺はもう出るわ」

 

「わかった。気を付けなさいよね」

 

「おう。んじゃ、行ってくるわ」

 

「いってらっしゃーい。お願いねー」

 

 

後ろから聞こえてくるリズの声に手だけ振り返し、俺は転移門に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《塊鉱の岩肌》に着いた。

道中は特筆することはなかったな。低い階層だし。

 

っと――。

 

 

「これこれ。本当にごろごろしてんなー」

 

 

俺は《塊鉱の岩肌》に入ってから、すでにかなりの数の素材を集めていた。

まだ採集始めて一時間も経ってねぇけどな。

 

もうリズに指定された分は超えてるんだが、せっかくだからと集め続けている。

まとめて大量に作ってもらった方が俺としても楽だしな。

 

 

「また出た。マジで多いな」

 

 

今度はさっきとは違う鉱石を採取。ちょっと調べたらすぐに出てくる。石投げたら当たるレベルだ。

 

 

「グルルルル……」

 

「おっと、お前に用はない」

 

 

すると、《ロックリザード》って名前のリザードマンが出てきた。鱗が岩石っぽくなってるリザードマンだな。

ロックって言う程硬くはない。俺のレベルだと余裕で倒せる相手だ。

 

 

「ほいっと」

 

「グルアアア……」

 

 

断末魔の叫びをひっそりとあげて、ロックリザードが消滅する。

Mobが弱すぎて、肩ならしにもならねぇな。

 

 

 

―――この考えを持ったのが全ての原因だったと、俺は後に後悔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「採集っと……。これでリズに頼まれた分の五倍は集め終わったか。……ん?行き止まりか」

 

 

このダンジョンに入ってから数時間。

俺はダンジョンの最奥の部屋に辿り着いた。

俺のアイテムストレージには、夥しい数の鉱石が眠っていることだろう。

このダンジョンにもう用はない。帰るか。

 

俺は振り返って―――思考が一瞬停止した。何故なら――。

 

 

「…………は?入り口は?」

 

 

――入り口が消滅していたからだ。

 

 

―――この唐突に始まる異常事態。

―――トラップを踏んだ記憶がないという状況。

―――そして湧き上がるこの嫌な感じ。

……似た様な状況にものっすげぇ心当たりがあるな。

 

 

「オイオイ、冗談だろ……!?今は《ヴァイヴァンタル》もねぇってのに……!」

 

 

()()()も《ヴァイヴァンタル》は持ってなかったが、あそこはここより十も階層が下だった。

それに、この感じ……あの時よりもヤバい気がする。

 

装備していた《キリング・デストロイ》を構え、神経を張り詰める。

 

部屋は比較的広い。縦横二十メートルってとこか。高さも十分ある。俺の跳躍じゃあ天井には届かないだろうな。

 

 

その部屋の壁際に、ポリゴンが集中する。

それらは集まって、あるものを形作った。

 

 

「オイオイ、マジかよ…………」

 

 

《ウェイブロックゴーレム》と《タングストンブリザード》だ。

 

《ウェイブロックゴーレム》は、高さが三メートルを超えるゴーレムだ。

両腕の先には武器が付いていて、右に斧、棍、両手剣。左に片手剣、短剣、曲刀だ。

顕微鏡の対物レンズの倍率のリボルバー式って言えばわかるか?くるくる回せるやつだ。

あれの要領で、最初は斧と片手剣がセットされている。

 

《タングストンブリザード》は、端的に言うと鰐だ。

四つ足で地を踏みしめ、鋭い歯を見せて威嚇してくる。表皮は恐ろしく硬く、優秀な素材になる。

こいつの武器は、言うまでもなく歯と、その硬い身体。そして駄洒落なのか、ブレス攻撃もしてくる。

尻尾を振るう一撃は、同質量の普通の鰐の攻撃の倍じゃ利かないほどの威力だろう。

脚は短いため踏みつけられることはまずないが、実際にそうなったら死ぬだろう。

 

こいつらは、この階層のボス部屋に着く前に戦闘になった、中ボスだ。

それが、それぞれ十体ずつ。

しかも、単体の威圧感が中ボス時の比じゃない。

これは――。

 

 

「厄介なことになったなぁ……」

 

 

まあ、嘆いていても仕方ねぇ。総勢二十体のモンスターが我先にと突っ込んで来てるからな。

ぼーっとしてたら死ぬ。

 

 

「ま、この場に誰もいないのがせめてもの救いか……。やるっきゃねえよな。

……チェンジレフト。《フリー》・トゥー・《ロング》」

 

 

俺は向かってくる敵に臆することなく、こちらから飛び込んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チェンジ!《ショート》・トゥー・《ボウス》!!」

 

 

俺は簡易変更スキルを使い、タングストンブリザードを短剣で斬りつけ両手剣で吹き飛ばす。

 

 

「おしっ、追撃……って、ヤバっ!?《エアリーシールド》!!」

 

 

大きく吹き飛ばされたタングストンブリザードに追撃をかけようとして、相手の行動を見て慌てて中断し防御する。

このブリザード攻撃には行動阻害効果があるので、万一にも食らうわけにはいかない。

 

 

「………よしっ、今だ!《カラミティ・ディザスター》!!」

 

 

両手剣スキル奥義技が炸裂し、最後のタングストンブリザードをポリゴン片に変える。

完全な技後硬直に陥る前に、繋げる!

 

 

「チェンジ!《ボウス》・トゥー・《ショート》ッ!!」

 

 

後ろから棍で殴りかかって来ていたウェイブロックゴーレムの攻撃に両手剣を合わせてノックバックさせ、短剣で追撃する。

 

さらに体勢を崩したゴーレムから一旦距離を取る。

相手のHPバーを見る限り、一撃で決めるのは難しそうだな……なら!

 

 

「これで……どうだ!?」

 

 

短剣スキル四連撃技《ディスピステップ》。

相手の左右の脚にそれぞれ二撃ずつ入れ、移動阻害をかける技だ。

 

ゴーレムが立ち上がるが……よし、動きづらそうだ!

 

 

「トドメだ!《リターンクロス》!」

 

 

俺はゴーレムに接近し、ヒースクリフとの決闘でも活躍した《リターンクロス》を使う。

狙い澄ました四連撃は全てクリティカルヒットして、ゴーレムのHPを削りきった。

ゴーレムが爆散し、部屋が静寂に包まれる。

 

 

 

 

 

 

「はあっ、はあっ、はあっ………これはさすがにヤバかった……!」

 

 

何とか生き残ったが、今回はヤバかった。死ぬかと思った。

 

まず、武器はほとんど研ぎ直しが必要だ。

無事なのは棍と両手剣くらいか。他はほぼ全滅だ。耐久値が全損しないようにはしたが、これ以上の戦闘は耐えきれないだろう。

 

さらに、回復アイテムをかなり使った。

回復結晶三つに、HP回復POTを十本以上。一回HPがレッドゾーンまで行って、ヒヤヒヤした。

 

あと、集中力もヤバい。あのクラスのモンスター二十体は厳しかった。

レベルを確認する暇はなかったが、恐らくそれぞれが七十弱はあったと思う。

そのくらいのレベルの中ボスに攻撃食らった時と同じくらいHPが減ったからな。

 

ドロップはたくさんあるが、全然嬉しくねぇ。

 

あー、でもよかった。これで無事帰れ……る…………?

 

 

「………………え、えーっと?おかしいな?転移、《リンダース》。………え?」

 

 

……俺はさっきから並列思考を展開して、転移結晶を取り出していたんだが……。

え?転移できない?―――ってことは、まさか―――。

 

 

ドンッ、と。俺の背後から、何か重たいものが着地したような音が聞こえてきた。

…………振り返りたくねぇが、振り返らざるをえない。

 

ゆっくり振り返った俺の目に映ったものは――。

 

 

「…………ですよね――」

 

 

でっかいゴーレム。高さは五メートルくらいあるんじゃねぇか?

腕が太い太い。直径一メートルくらいありそうだ。武器はなし。

脚は……どう頑張っても切り崩せないな、あれは。見ただけで頑丈さがわかる。

でかいだけで他にはそれと言った特徴はねぇが……この場合はでかいのが脅威だからな。

 

名前は……《ギルゴレム》か。知らねぇ名前だな。恐らく、このイベント固有ボスだろうな。威圧感が半端無い。

 

 

「あの連戦の後にこいつかよ……。完全に殺す気じゃねぇか」

 

 

それにしてもこいつ……なんで動かないんだ?

今俺は突っ立ってるだけだから、絶好の機会だと思うんだが。

 

 

「……あ、なるほど。わかった。こいつ、自分に敵対行動を取って来た奴だけを相手にするのか。

つまり、こうして黙ってる分には害はないが、こいつを倒さないと帰れないと。鬼畜設定だな」

 

 

やむを得ず戦うスタンスじゃなく、自分から仕掛けろとかえげつねぇな。

いい性格してるよ、茅場は。

 

まあ、俺もこのままってわけにもいかねぇし……。

 

 

「しかし、武器はどうする?どれも実用に耐えねぇと思うが……」

 

 

…………んー。

…………あ、一つ方法を思いついた。でもこれキツそうだなぁ……。やりたくねぇ……。

 

 

「でもま、これまたやるしかないよっと……」

 

 

俺は右手に片手棍、左手に短剣を装備して、HP回復POTを飲んでおく。

これは継続回復の効果があるからな。事前に飲んでおいても損はさほどない。

 

 

「結晶アイテムも用意して……うし、やるか」

 

 

意を決して、ギルゴレムに向かって走る。

その瞬間、ギルゴレムの頭(でいいのか?)に付いている緑色の光が赤色に変わり、ギルゴレムが両腕を振り上げて叫んだ。

 

 

「グモオオオオオ――――!!」

 

「っしゃあ、行くぞオラァ!!」

 

 

奴の腕の振り下ろしを回避し―――って、うおっ!?

 

 

「グハッ!?」

 

「ウロオオオオオ――――!!」

 

 

ギルゴレムが殴った床が弾け飛び、衝撃で俺まで吹き飛ばされた。

なんつー威力だよ……!?

 

 

「チッ、躱すのじゃダメなのか!」

 

「ウロオオ――!!」

 

 

今度は右腕でパンチを繰り出して来た!

字面は可愛らしいが、実物はヤベェ!!だが迎え撃つ!!

 

 

「うおらぁぁああああ―――!!」

 

「グオオオ―――!!」

 

 

左手の短剣を手放し、右手の片手棍でスキルを発動!

食らえ――――!

 

 

「グウッ!?」

 

「グオオ――!」

 

 

な、何とか弾き返せた……!

つか、このスキルでも相打ちが精一杯とか本格的にヤベェ!

 

俺が使ったスキルは、棍スキル低命中重攻撃技《グランドオウル・インパクト》。

単発技で、一目で遠心力を利用しているとわかる大振りのスキルだ。

隙は大きいし当たり難いし単発だが、その分一撃の威力は計り知れない。

俺が思うに、一撃の威力は全スキル中最高だろう。このスキル、熟練度がそこそこ上がってから覚えたしな。

しかし、それでもやっとのことで互角。使用できる武器が棍と両手剣しかない以上、俺に相当不利だな、この戦い。

 

棍と両手剣のスキルは、他の武器に比べてどちらも手数で劣る。どちらかと言えば一撃の威力に重きを置いている武器だからだ。

攻撃を受けてわかったが、あれに対抗するには一瞬の内に何発も攻撃を叩き込むか、どでかい一発で押し返すしかねぇ。

今の俺の武器的に後者を選ぶしかないわけだが、それができるのは、恐らく《グランドオウル・インパクト》だけ。

もしくは、武器を使い潰す気でやるかだが……それは最終手段だな。ひとまずやってみるっきゃねぇ。

 

 

今のことを並列思考で考えていた俺は、体勢を立て直して攻撃に移っていた。

奴はノックバックがあまりにも大きかったのか、まだ体勢を崩している。今がチャンスだ。

 

 

短剣を掴んだ俺は、ひとまず両手の武器でタコ殴り。

片手棍では遠慮せずにボカスカ殴り、短剣の方は慎重にギルゴレムの腕の関節などの弱そうな部分を刀身を傷めないように斬りつける。気を抜いたら《キリング・デストロイ》が折れるな。

 

 

「グ……グオオオオ――!!」

 

「今だ!」

 

 

ギルゴレムがノックバックから立ち直り、体勢を立て直そうとする。

俺は身体を起こしつつあるギルゴレムの腕を()()()()()、頭らしきものに向かってスキルを発動する。

 

 

「ここへの攻撃は効くんじゃねぇか―――!?」

 

 

俺の両脚がライトエフェクトに包まれ、身体が勝手に回転する。

 

腕に立ったまま左脚を軸足に右脚の回し蹴りを繰り出し、右脚を左脚の側に下ろし今度は右脚を軸に同じ回転で左の回し蹴り。

同様にして回し蹴りの六連撃を繰り出した後、両脚で踏み切って縦回転し踵落しの二連撃を叩き込む。

 

体術スキル八連撃技《旋風脚》。体術スキルの上位スキルだ。威力も相応にある。

これが俺の思いついた方法だ。要するに、武器が限界なら身体で殴ればいんじゃね?ってことだな。

 

 

「グオオ――!」

 

「これでも倒れねぇのか……!なら……!」

 

 

仰け反った状態で踵落しを食らっても倒れないギルゴレムの足腰の強度に驚愕しつつも、次の攻撃に移る。

 

難なく着地し、ギルゴレムの足下にダッシュ。技後硬直は空中で解けた。

 

靴を滑らせながら体勢を低くして停止し、そのままの勢いでスキルを使う!

 

 

「フッ!!」

 

 

左脚を前、右脚を後ろの体勢で両脚を輝かせて止まった俺は、低い体勢のまま右脚で地面スレスレのローキックを放つ。

右脚を振り抜いたら両手を地面について勢いを利用して無理矢理回転、左脚で先ほどの攻撃の軌道をなぞるように蹴りを放つ。

 

体術スキル二連撃技《腰落とし》。

二本脚で立っている相手の両脚を払って、転倒させることを重視したスキルだ。

相手を《転倒(タンブル)》状態にできれば、戦闘をかなり有利に進めることができるからな。

 

今回、上体も仰け反っていたギルゴレムは、耐えきれずについに転倒した。

 

 

「よっしゃあ!もらったぁ!!」

 

「グオオオオ―――!!」

 

 

ギルゴレムは未だに叫んでいるが、俺にはそれが断末魔の悲鳴にしか聞こえなかった。

 

 

その後、戦闘は何事もなく進み、俺はギルゴレムを倒した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦闘終了後、俺は即座に転移結晶を使って、《リンダース》に跳んだ。

 

 

「た、ただいま………」

 

「あ。どうしたのよ、カイ?あまりにも遅いから心配したじゃない。何かあったの?」

 

「あ、ああ……色々な……。それより、これ……」

 

 

今は説明する元気もなく、手に入れた鉱石をトレード欄に載せてリズに送る。

リズが表示された鉱石の数を見て、仰天している。

 

 

「ちょ、なによこれ!?どんだけ採取したのよ!?」

 

「いや、いっぱい作ってもらおうと思って……あと、これ全部研ぎ頼む……」

 

「ぎゃああ!?またなの!?」

 

 

おいリズ、女子がその悲鳴はどうかと思うぞ。

 

 

「って、今回はえらくボロボロね。本当にどうしたの?」

 

「悪ぃ、なんか飲み物もらえねぇか……?ぶっちゃけフラフラでさ」

 

「あ、うん。ちょっと待ってて」

 

 

俺はリズが出してくれた紅茶を飲んで一服し、事のあらましを話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カ、カイ……あんた……よく生き残ったわね……」

 

 

俺の話を聞き終えたリズは、頬を引き攣らせながらそうコメントした。

 

 

「ああ……。俺も今回はダメかと思った。一回HPがレッドまで落ちたからな」

 

「うわぁ……。本当にカイが無事でよかったわ……」

 

 

リズは本当に心配してくれている。いい友人を持ったな、俺。

今度何かお詫びの品を持ってこよう。

 

 

「とまあ、そういうわけだから、研ぎ頼むわ。投擲武器もよろしくー」

 

「ええ、わかったわ。でも、他のお客さんの依頼もあるからすぐには無理よ」

 

 

そりゃそうだ。この店は人気のある有名店だからな。攻略組でも懇意にしている奴も多いし。

 

 

「わかってる。どのくらいかかりそうだ?」

 

「うーん、このくらい!って言うのは難しいわね……。多分三日くらいかかると思うけど」

 

「三日?思ったより長いな。もしかして、今日たくさん依頼が入ったのか?」

 

 

そうとしか考えられないな。リズは仕事が早い。それなのに三日もかかるってことは、相当な数の依頼があったんだろう。

 

 

「そうなのよ。頑張ってはみるけど、多分三日が最速ね」

 

「いや、無理して頑張らなくてもいい。これは俺が無理した結果だし。ま、気長に待つからできたらメッセ飛ばしてくれ。時間がある時に受け取りに来る」

 

 

それでリズに倒れられでもしたら本末転倒だからな。無理はいけない。俺が言う事じゃねぇが。

 

 

「そう?わかった。いつも通りやって、できたら連絡するわ。じゃあはい。取り敢えず《ヴァイヴァンタル》ね」

 

「おう、さんきゅー。……ああ、《ヴァイヴァンタル》よ!今日ほどお前が必要だと思った日はなかったよ!」

 

「…………え、えっと、カイ?大丈夫?特に頭とか」

 

 

リズが変な物を見るかのような目を向けてくる。

でもさぁ、本当にそう思ったんだから仕方ないじゃん!

《ヴァイヴァンタル》だったら、あそこまで耐久値を消耗しなかったと思うし。

 

 

「ああ、大丈夫。ちょっと安心しただけ。こいつはマジで最高の武器だし」

 

「ありがと。それを作った者として鼻が高いわ」

 

「おう。……あ、そうだ。リズに頼まれた分以外の素材は、八割は俺の投擲武器にしてくれ。全部買うから。残りの二割は取っといてくれ。ストックにでもしたらいいんじゃねぇか?」

 

「え、いいの?」

 

「ああ。んじゃ、そういうことでよろしく」

 

「わかった。ご来店、ありがとうございました」

 

「あいよー」

 

 

リズに頼むべきことを頼み、俺はリズベット武具店を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

…………家に帰ったら、シリカに問いつめられた。

 

遅い。何をしていたのか。

 

だそうだ。シリカの迫力に負けて、正直に話したらめっちゃ怒られた。

それはもう怒られた。シリカの背後に修羅が見えた。

 

罰として、俺は武器が直るまで街から出てはいけないということになった。

ま、ちょうどいいからシリカとデートでもするかな。

 

 

 





いかがでしたか?
感想とかもらえると嬉しいです。

リズはいい友人ですね。
カイと親友になれそうな感じ。

リズはカイに恋心を抱いてはいません。純粋に友人として心配しています。
シリカが抜けただけで、キリトハーレムは健在です(笑)描写は少ないですが。

カイはフィールドに出られないので、次回はほのぼのした話になる予定です。
あと二話くらいオリジナルストーリーを入れたら、キリトとアスナの下にあの娘が行くことになると思います。

では、また次回。

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