黒の剣士と紺の浮浪児   作:gobrin

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今回短いです。

いやあ、戦闘描写ないと字数稼げないっすわwww
暖かい空気にできてるといいな。


第二十話 謹慎一日目:シリカとデート

 

 

さて、俺が軽く死にかけた次の日―――の、午前三時。

俺は目を覚まし、身体の調子を確かめた。

 

 

――よし、大丈夫そうだな。質のいい睡眠のおかげで疲労は取れてる。

激しい戦いだったから、疲れが抜けてるか心配だったが……。

そうとわかれば、行動(ミッション)開始だ。

 

 

俺はそっと起き上がり、音を立てずにベッドを抜け出した。

シリカを見て、寝ていることを確認。

このまま抜き足差し足忍び足で扉に近づき、ノブに手をかけ――――た瞬間、けたたましいアラームが鳴り響いた。

 

 

「うおっ!?」

 

 

突然の音に驚いて、軽く悲鳴を上げてしまった。

―――そして、背後から修羅の気配。

………ああ、なるほど。そういう目的のトラップか。

 

 

「カ〜イ〜さ〜ん〜?」

 

「……ははは、お手柔らかに。……はぁ」

 

 

俺は逃走を諦め、両手を挙げてお叱りを待った。

 

 

 

 

 

 

 

「だから!!禁止って言いましたよね!?あたしは何を禁止しましたか!?」

 

「フィールドに出ること、だな」

 

「そうです!そしてカイさん!今、どこに行こうとしましたか!?」

 

 

シリカの剣幕が激しい。さて、どうやって誤魔化したものか。

 

 

「えーっとだな……」

 

「誤魔化したら謹慎が延びますから」

 

 

よし正直に言おう!やっぱり正直なのが大事だよな、うん!嘘よくない!

 

 

「フィールドに行って深夜のレベリングしようと思ってましたハイ」

 

「でしょうね。まったく、キリトさんから聞いてなかったらどうなってたか……」

 

「やっぱり情報源はアイツか」

 

 

くそう。やはりキリトとは一度決着をつける必要があるみてぇだな。

今のところ初撃決着デュエルの戦績は五百八十三戦二百九十二勝二百九十一敗。

次に俺が勝てば俺の勝ち越しだ。やったね。まあ今までそれで勝ち越せてないんだけど。

 

 

「はい。どうせ抜け出すだろうから注意しとけって言われました。

まさかと思いましたが……本当にやるとは」

 

「いやぁ、こっち来てから欠かしたことなかったし」

 

 

ここまでの会話でわかると思うが、さっきのアラームは俺が深夜にレベリングしてるのを知ったシリカが、俺を部屋から出さないために設置したものだ。

圏内だから注意してなかったな……。ミスった。

 

 

「カイさん」

 

「はい、何ですか」

 

 

シリカの迫力に負けて思わず敬語になった。

 

それはそうと俺、シリカの尻に敷かれてね?今思ったけど。

……はは、まさかそんな。…………うん、頑張ろう。俺の方が年上だしな。

 

 

「こっちに来て下さい」

 

 

これはもう無理か。諦めよう。

 

 

「んと?そっちってシリカのベッドか?」

 

「はい」

 

 

俺とシリカのベッドは別だ。

俺達はプラトニックな関係をうんたらというわけではなく、ベッドが元から二つ設置されていて、一つのベッドに二人で寝るのは狭かっただけだ。

いやまあ健全な関係を心掛けてるけどな?

と言うかどの辺からが健全じゃないってことになるんだろうな。

俺とシリカはすでに一緒に寝たけども。

メニューの最深部に倫理コード解除設定ってのがあってな。

あれを見つけた時、茅場は本気で俺達をデスゲームに参加させる心づもりだったんだなって改めて思い知らされたよ。

 

余計なことまで色々言った気もするが、今必要な情報は二人で寝るには狭いってことなんだが。

 

 

「狭くね?」

 

「抱き枕にします」

 

「そうか。なら俺はシリカの可愛い寝顔でも観賞してるよ」

 

「も、もう!煽てたってダメですからね!あたしは甘くないですよ!」

 

 

そういうつもりじゃなかったんだが。まあいいか。照れてるシリカが可愛いし。

 

俺はシリカの手を引いてベッドに近寄り、縁に腰掛けた。

 

 

「さあ、お嬢様。存分に抱き枕としてお使いください」

 

 

冗談めかしてそう言うと、シリカの頬が朱に染まった。

 

 

「うぅ……なんか負けた気がします……」

 

 

俺はどうやらシリカに勝ったらしい。何で勝ったのは知らないけど。

 

 

その後、シリカは俺の腕を枕代わりにしてコアラのように俺に抱きついて眠った。

 

寝顔がとても愛らしく、とても幸せな気分になった。

もう片方の腕で頭を撫でると、寝てても顔を綻ばせていたのが印象的だった。

 

……なんか小学生の読書感想文みたいになったな。どうでもいいけどさ。

 

 

 

 

 

ちなみに、朝の鍛錬はした。

シリカを起こさないように身体に回された腕を解くのに一番神経を使ったよ。

 

六時から風切り音以外の音を立てずに三十分やってると、シリカが起きてきて鍛錬に加わった。

最近はシリカも朝の鍛錬やってるんだ。

と言っても身体を軽く動かす程度だけどな。

圏内でダメージは発生しないから俺との模擬戦を三本くらい。

 

 

今日は俺の武器が短剣しかないから、流し、普通、本気の三種類でやった。

もちろん、レベルに段階を付けたのは俺だけだ。

 

流しではシリカの余裕の勝ち。普通では接戦の末俺の勝ち。本気は俺の圧勝。

シリカも強くなった。俺の普通ってのは、フィールドや迷宮区でMobを相手にする時と同程度に動くことだ。それと競れるってのは純粋にすごい。俺は対人だと培った技術を存分に盛り込むからな。あ、もちろんボスは違うからな?

本気なら流石に余裕がある。つーか、これで接戦になったら俺が凹む。

 

いつもは、ランダムに選んだ武器三種類で普通モードで三試合だ。

シリカは、相手の得物が長モノだとやり易いみたいだな。

小さな体躯を活かして相手の懐に潜り込み、相手のリーチを潰すのが上手い。

俺はもう慣れたが、初見ではかなりやり辛かった。

 

 

「お疲れ」

 

「は、はい……カイさん、やっぱり強いですね。全然敵いません」

 

「まあ、本気出したからな。簡単に追いつかれたら俺が困る。

俺のは歳の割には長い時間をかけて培ったモンだし」

 

「それはそうですけど……こんな有様でカイさんの隣に立てるか心配で……」

 

 

うーん、シリカはたまに自分を卑下し過ぎるきらいがあるよな。

二歳差で様々な覚悟と経験をしてきた俺と比べてるのかもしれないが……俺を比較対象にしてもいいことなんてほとんどないからなぁ……。

かと言ってただ大丈夫と言うだけじゃあ、シリカは本心から納得しないだろう。

さてどう言ったものか。

 

 

「……えっとだな。今のシリカなら俺の横で一緒に戦うなんて雑作もないことだと思うが、シリカが自分に納得できてないんなら、一緒に頑張って行こう。無理はせずにな」

 

「……カイさんがそれを言いますか」

 

 

シリカ の ジト目 こうげき!

カイ に 387 のダメージ!

 

 

「うっ……悪かったよ……」

 

 

……それを言われると弱い。

 

 

「…………ふふっ。でも、嬉しいです。そう言ってもらえると、少し自信になります」

 

「そっか。まあ、焦らずやっていこう」

 

「はい。じゃあ、朝ご飯の用意しますね」

 

「おう、よろしく」

 

 

 

 

 

SAOの数少ない良いところは、飯の用意に時間がかからねぇことだよな。

材料と調理方法を設定すれば三分もありゃあできる。アスナ傑作の調味料もあるから、味に変化を付けれるし。

 

一番はシリカに出会えたこの環境だ。もちろん、それ以外の奴らとの出会いもかけがえのないものだけどな。

茅場に素直に感謝できんのはこれくらいかな。

 

 

「そう言えばさ」

 

「?……んくっ。何ですか?」

 

 

ふと思ったことがあり、俺の飯が一区切りついたところでシリカに話を振ってみた。

シリカは首を傾げた後、口に含んでいた物を飲み込んでから訊いてきた。

…………俺はこの言葉を何度でも言おう。可愛い。

 

 

「シリカって料理できんの?」

 

「んぐっ!?ゴホゴホッ、ゴホッ!!」

 

「…………そうか、できないんだな」

 

 

口の中の物は全て飲み込んだはずなのに、何故か猛烈に咽せるシリカ。

うん、わかったからもういいよ。

 

 

「い、いえ?で、できますよ?きっと。やれば」

 

「ああ、できない奴は皆そう言うから」

 

「うぅ……」

 

「まあ料理できなくても大問題に発展するわけじゃねぇんだし、大丈夫だろ」

 

「大丈夫じゃありません!!大問題です!!」

 

「お、おおう……?」

 

 

俺はあまり気負わないようにしてもらおうと努めて軽く言ったのだが、シリカにものすごい剣幕で怒鳴られてしまった。

ま、思い当たる節がなくもない。

 

 

「えっと、向こうで俺に手料理を食べさせたいって考えてる?」

 

「………………はぃ」

 

 

長い沈黙の後、恥ずかしいのか顔を真っ赤にしながら掻き消えそうなか細い声でシリカが肯定した。

 

 

大事な人に自分の上手くできた手料理を食べてもらいたいという気持ちは、俺もよくわかる。

 

あの事件の後で急遽家事担当になった俺にはもちろん料理の技術など存在せず、二週間ほどはそれはもう酷いものだった。

料理本を見て作ったから、身体に悪いほど調味料を入れ過ぎた、なんてことはなかった。

が、炒飯はべちゃべちゃ。肉は焼け過ぎて硬く、野菜炒めは火の通りが甘くてこれまた硬い。

パスタを作れば麺が伸びまくり、カレーを作れば野菜が溶けて視認できなかった。味付けも基本的に薄かった。

 

そんな酷い料理なのに、スズは文句一つ言わずに食べてくれた。

それどころか、『シンにぃが忙しい中頑張って作ってくれたんだもん。文句なんて言わないよ』とまで言ってくれたんだ。

その優しさが嬉しくて、同時に小学一年生の女の子に気を使わせた自分が悲しくて泣きそうになった。

だが、爺ちゃんの前で泣くことは許されない。前じゃなくてもダメだが。ちなみに、爺ちゃんには散々文句を言われた。不味いだのなんだの。

 

俺は密かに奮起し、スズのために鍛錬の時間を削ってまで料理の練習をした。

その努力が実って、スズに『シンにぃ、美味しいよ!』って言ってもらえた時は嬉しすぎて涙が出た。その後キッチリ爺ちゃんにボコられたが。

 

 

「シリカ、俺もその気持ちはよくわかる。わかるけど……」

 

 

――俺の言い方が悪かったのか、シリカが早とちりしたのが悪かったのか。ともかく誤解したシリカが、見る見るうちに泣きそうになる。

 

 

「ちょ、待て待て!シリカはなんか誤解してる!

わかるけど、それでシリカに怪我とかしてほしくないって言いたかったんだ!料理なら俺が教えるから!一緒にやろう!な?」

 

 

するとシリカが一瞬惚けた顔になり、直後に顔を赤くしてワタワタし始めた。

……多分、早とちりで勘違いした自分が恥ずかしいんだろうな……。

 

 

「あー。で、シリカ。シリカがそれでもいいか?軽いデートみたいな感じでさ」

 

「あ、はい!それでいいです!と言うかむしろそれがいいです!お願いします!」

 

「落ち着け。落ち着けシリカ。わかったから」

 

 

シリカを落ち着かせて、デートに出掛ける準備をした。

ちょうど予定していた時間になったからよかった。どうやって時間を潰そうか考えてなかったんだよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、今日はどうする?」

 

「ん〜、食べ歩きしながら色んなお店を見て回りませんか?カイさんとの初デートは三十五層の店巡りでしたけど、あの気分を思い出したいです」

 

 

俺達はホームを出て転移門に向かって歩いていた。

今日のデートの最後は決めてるが、それ以外はノープランだ。

転移門までは少し歩くので、ここで決めちまおうと考えたわけだ。

 

 

「そうだな、食べ歩きもいいか。朝がちょっと少なかったのも、これを見越してか?」

 

「はい。最近カイさんが忙しくてあまりデートできてませんでしたから。いかにもデートって感じのことしたかったんです」

 

「………あ〜、すまん」

 

「いえ、気にしてません。色々大変だったのはわかってますし。その分、今日はいっぱい楽しみましょう!」

 

「……ああ、そうだな。それでよ、店を回るんだったらやっておきたいことがあるんだが、いいか?」

 

「……?何か予定があるんですか?」

 

 

シリカが不思議そうな顔をして訊いてくる。

本当は明日俺一人で行こうと思ってたんだが、シリカにも手伝ってもらった方がいいだろ。

……ま、実際は明日も一人で行動できないとは思うがな。

 

 

「ああ。リズにお詫びの品をあげたいんだ。あいつにも余計な心配をかけちまったみてぇだし……。仕事を大量に増やしちまったからな。アクセサリかなんか贈ろうと思ってさ。シリカも手伝ってくれねぇか?女子目線もあると助かる。

もちろん、シリカにもなんか買うけどな。一番心配をかけたのはシリカにだと思うから」

 

「カイさん……。そういうことなら、わかりました。あたしも精一杯選びます!」

 

「ああ、頼むよ。じゃあ、行こうか。何層にする?」

 

 

話している内に転移門広場に着いた。

どの層に行くかは全く話し合ってないな。

 

 

「うーん、どこって言われると難しいですね。カイさん、オススメはあります?」

 

「今まで行った中で一番よかったのは五十七層だな。美味いものがいっぱい食えた」

 

「なら、そこでいいですか?カイさんがかぶって嫌だったらダメですけど……」

 

 

不安そうなシリカに、苦笑を向けて答える。

 

 

「それを言ったら、俺はほとんどの層に行けなくなるよ。かなりの街で店を見て回ったからな。じゃ、五十七層でいいんだな?」

 

「はい!」

 

「うし、それじゃあ出発だ!」

 

「はいっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は移って五十七層。

 

俺達は屋台で買った物の食べさせ合いっこをしていた。

ちなみに屋台は五軒目。全てで食べさせ合いをしている。

 

 

「ほい、シリカ。あ〜ん」

 

「はい。あ〜ん、んぐんぐ、んくっ」

 

「どうだ?これは俺があの屋台で一番好きなメニューなんだが」

 

「はい、おいしいです。カイさんが選ぶ物はセンスがいいですね」

 

「そうか?それならよかった。あの人達に仕込まれた腕は鈍ってなかったってことか」

 

「……あの人達って誰ですか?」

 

 

――おっと、うっかり口から出てたな。気が安らいでる証拠かな。

 

 

「ああ、俺の家族だよ。親父もお袋も、兄貴も姉貴も、こういう食べ歩きとか大好きだったんだ。旅行行った先でこういうのがあるとすぐ飛びついてな。そっから目利き大会が始まるんだが、全員が同じ物選ぶから意味ねぇの。結果四人でなんか勝負して、勝った人から選んで買うっていうことをずっとやってた。

そんで、俺とスズ――はちょっと大きくなってからだけどな――に食べさせてどれが美味しかったか訊いてくるんだよな。

ぶっちゃけ全部美味しかったんだが、ウチの家族はそれじゃあ許さない。それで審査してるうちに味に敏感になって、いつの間にか俺もある程度の目利きはできるようになってた。懐かしいな――」

 

「――――カイさんは、ご家族のことが本当に好きなんですね」

 

 

シリカが優しい笑顔を向けて言ってくる。

俺も優しい表情をしてたんだろうか。

でも、そうだな。確かに――――。

 

 

「ああ。俺は、自分の家族が大好きだ。自慢の家族だ。それは今もだ。

願わくば、あの一家団欒がずっと続けばいいと思ってた。いずれ寿命が来るのはわかってたけど、それまでは――そう思ってたんだけどな」

 

「……カイさん―――」

 

 

――ああ、いけないいけない。デートに、こんな暗い気分は合わない。シリカに、そんな暗い表情は似合わない。

 

 

「止め止め。こんな暗い話はなしにしよう。ごめんな、俺から始まった話題なのにさ」

 

「い、いえ。あたしが不用意に訊かなければ……」

 

 

シリカ、そんな顔をしないでくれ。シリカには笑っていてほしい。無理してまで笑ってほしくはないが。

 

 

「いや、シリカは純粋に疑問に思っただけだろ?気にしないでいい。それが話のネタになるかもしれないんだからな。これからもどんどん訊いてくれよ」

 

「……はい……」

 

 

そう頷いてシリカは少し照れくさそうに笑った。

うんうん、シリカは笑ってる表情が一番素敵だ。

 

 

「さて、次に行こうぜ!」

 

「はい!」

 

 

そうして、俺達はその後十軒ほど屋台を回った。

…………流石に、食べすぎじゃないか……?まだ少し余裕はあるが。

 

 

 

 

 

 

 

「シリカ、昼飯どうする?」

 

「そうですね。なんか食べ過ぎちゃいましたし……。どうしましょう?」

 

「三択だな。ちゃんとした店に入って、軽い物を食べる。このまま屋台で腹を満たす。もういいや。どれにする?」

 

 

こういう時って、結構迷うよな。ぶっちゃけどれでもいい分余計に。

 

 

「うーん、ゆっくりしてもいいわけですし……最初のでいいんじゃ?」

 

「店に入って軽いものか。この辺の店にするか?」

 

「この辺って、屋台は多いですけどお店は少ないですよね……」

 

「そうなんだよな……。キリトと色々食べたことはあるが、どれもイマイチだったからなぁ……」

 

 

悩ましいのはここだ。美味いものを食いたかったら、転移門まで歩く必要がある。

まあ、それならそれで昼のピークは越えそうだから多少楽かもしれないが。

 

 

「なら、層を移りましょう。ここだとリズさんへのプレゼント選びにも向いてなさそうですし」

 

「そうだな。んじゃ、商業が盛んな層か……どこだ?」

 

 

俺の情報は色々ありすぎて、候補が多数で全くもってしぼれない。

 

 

「セルムブルグなんてどうですか?あそこなら、センスのいいものが集まってると思いますけど」

 

「……だな。そうするか」

 

「じゃあ行きましょうか」

 

「おう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セムルブルグにて。

 

 

「この、ネックレスどうだ?敏捷がちょっとあがるし、採集も自分でこなせるリズにはいいと思うんだが」

 

「このリングもいいですね。これも敏捷があがります。どうしましょう?」

 

「うーん、シリカがいいなら、両方買うのでもいいんだが」

 

「あたしがよければって?」

 

「あ、金の話だよ。区別ないだろ?」

 

「あ、そうでしたね。全然構いませんよ。買っちゃいましょう」

 

「よし、なら買おう。――ちょっといいか。これとこれがほしい。代金はこれだ」

 

「へい、まいど。ありがとうございやした」

 

 

俺とシリカは、リズへのプレゼントを選んでいた。

昼食?特に言うこともない面白みのないものだったよ。

 

ちなみに、今は夕方だ。そろそろ陽が沈むって感じの時間帯だな。

リズへのプレゼントを吟味してたら、思いの外時間がかかってなー。

だが、ようやく決まった。えらく人間味のあるNPCから商品を受け取り、俺達は店を後にした。

 

――まだ、デートの最後の目的を達成してないんでね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ここだよ」

 

「ここですか?」

 

 

俺はシリカを連れて、湖の畔のある位置に陣取った。

シリカはキョロキョロと辺りを見渡している。

そういう差じゃねぇんだよなぁ。もうすぐ、ここと他の場所との違いがわかるはずだ。

 

 

「…………そろそろだ」

 

「え?――――うわぁ……!」

 

「どうだ?中々いい景色だろ?」

 

「はい、はい!すっごく綺麗です!」

 

 

俺が今回のデートでシリカに見せたかったもの……それがここの景色だ。

この湖の、ここの周囲五歩以内くらいのところで見られる特別な景色。

 

地平線に沈む夕陽と、その光を受ける水面。

これだけなら他の場所でも見れるんだが、この辺だとそれにプラスして湖の所々にある石の光の反射がシンメトリーっぽくなってて幻想的なんだ。言葉にしきれないくらいな。

 

 

「…………綺麗」

 

「気に入ってもらえたならよかった。偶然見つけたんだよ、ここ」

 

「それはラッキーでしたね!」

 

「ああ。キリトにも教えてはいない。あいつなら自分で知ってるかもしれないが、そうでなければ知らないだろうな。

こんな美しい景色は、発見した時に初めて見たよ」

 

「……はぁ、そうなんですか……」

 

 

シリカがぼーっとした様子でため息を吐いた。わかるよ、その気持ち。

 

 

「ため息、吐いちゃうよな」

 

「あ、あ!?すみません、あたしったら……!」

 

「ああ、気にしないでくれ。俺も初めて見たときはため息吐いたから。なんか、そうさせる力があるんだよな、この景色。――おっと、今日はそろそろお終いだな」

 

 

この景色は、一日十分もない。しかも、快晴じゃないと見られないときた。

そういう意味では、今日は運がよかったな。

 

 

「さて、俺からシリカに贈りたいものも贈ったし、帰るか」

 

「はい!素敵なプレゼント、ありがとうございます!」

 

「つっても、俺はただ見つけただけだからな。設定した奴がすごい気もするが」

 

「そんなことありません。こういうのを見つけるのだって、立派な才能です」

 

 

シリカが励ましてくれた。さんきゅな。

 

 

 

 

 

「シリカ、今日は楽しかったか?」

 

 

セルムブルグの転移門に向かいながら、シリカに今日の感想を訊いてみる。

 

 

「はい、とっても!いっぱいお話できましたし、食べ歩きもお買い物も楽しかったです!プレゼントももらっちゃって」

 

「心配かけたお詫びだよ。大したもんじゃないしな」

 

「そんなことありませんよ。カイさんが選んでくれたものなら、大したものになるんです」

 

 

そこまで持ち上げられると、くすぐったいと言うか何と言うか。

 

 

「つっても、ただの髪飾りとかだろ?まあ、そう言ってくれるのは悪い気はしないけどさ」

 

 

そう、俺のプレゼントは何てことない髪飾りと、ブローチ、それにさっきの景色だ。本当に大したものじゃない。

 

 

「あたしがいいって言うんだから、いいじゃないですか」

 

 

ま、それもそうだな。

 

 

「だな。んじゃま、シリカ。これからもよろしく」

 

「はい!」

 

 

こうして、俺達の久々のデートは終わった。

 

 

 

今日は俺も楽しかったな。シリカといると、本当に日々が充実している。

――こんな風にのんびりできるのは、後どれくらいだろうな……。

 

 

 





次回はリズにお詫びに行く話の予定。
まあ、カイには単独行動は許されてないんですけども。

感想とかありましたら、お願いしまーす。

では、また次回〜。
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