どうも、gobrinです。
宣言通り、続けての投稿です。(連日投稿っていう意味じゃないよ!頑張ったけど無理だったよ!)
そろそろアインクラッド編もクライマックス!盛り上げていきましょう!
もし前回の『森の迷子③』を読んでいない人がいましたら、そちらを先に読んでくださいね。
では、どうぞ。
ユイの一件から数日。
俺はヒースクリフから呼び出しを受けていた。恐らくキリト達の方にも通達が行ってるだろう。
俺はグランザムのギルド本部に着いたが、キリト達はまだ来てないみたいだな。
「んで?何の用だよ?」
会議室でヒースクリフと他の幹部達を前に単刀直入に切り出す。シリカは外で待たされている。
ヒースクリフは一つ頷くと、俺を呼んだ用件を口にする。
「うむ。ボスの偵察隊が全滅した」
「――――は?」
一瞬、ヒースクリフが言ったことが理解できなかった。が、徐々に理解が追いつく。
だが、んな馬鹿な……。
「昨日のことだ。七十五層迷宮区のマッピング自体は、時間はかかったが何とか犠牲者を出さずに終了した。だがボス戦はかなりの苦戦が予想された……」
「だろうな。クォーターポイントがキツイのは今までから考えても間違いないだろう」
「……そこで、我々は五ギルド合同のパーティー二十人を偵察隊として送り込んだ」
……妥当な判断だな。偵察ならまずそのくらいの人数を送り込むのが正解だろう。全滅の憂き目に遭う可能性も低いだろうし。それが何故――。
「偵察は慎重を期して行われた。十人が後衛としてボス部屋入り口で待機し……最初の十人が部屋の中央に到達してボスが出現した瞬間、入り口の扉が閉じてしまったのだ。ここから先は後衛の十人の報告になる」
俺は真剣な表情で頷いて先を促す。
「扉は五分以上開かなかった。鍵開けスキルや直接の打撃等何をしても無駄だったらしい。ようやく扉が開いた時――――部屋の中には、何もなかったそうだ。十人の姿も、ボスも消えていた。転移脱出した形跡もなかった。彼らは帰ってこなかった……。念のため、黒鉄宮のモニュメントの名簿を確認に行かせたが―――」
「名前の欄には、横線が引かれていた―――そういうことだな」
ヒースクリフは厳しい表情で頷く。
俺はふむ、と一つ頷き、
「結晶無効化空間の上に扉も閉ざされるか……茅場晶彦もえげつねぇ設定にしたもんだな。な、ヒースクリフもそう思うだろ?」
なんて話を振ってみた。あいつは苦々しい顔をしながらも、俺に賛同するように頷く。
「……そうだな。趣味の悪いことをする。性格が悪いとしか思えないな」
俺の言葉に同意するような発言だが、これは完全に俺への当て付けだな。目が物語っている。
「話はわかった。そんで?」
「結晶による脱出は不可な上、今回は背後の退路も断たれてしまう構造らしい。ならば統制の取れる範囲で可能な限り大部隊をもって当たるしかない。君たちを呼ぶのは不本意だったのだがね」
「了解。優先順位はかなり低いが、一緒に戦う連中も死なないように配慮はするよ。俺が指示する権限は?」
「明確な権限を与えるわけではないが、緊急事態では指示を出してくれて構わない。君の状況判断能力には期待しているよ」
「あいよ。時間は?」
「攻略開始は三時間後。予定人数は君たちを入れて三十九人。七十五層コリニア市ゲートに午後一時に集合だ。では解散」
話が終わり、ヒースクリフは配下を連れて部屋を出ていった。
さて、俺もシリカのところに戻りますかね。
「――――ってな感じらしい」
俺は、ヒースクリフが話した内容をシリカに聞かせていた。
シリカの表情は硬い。そらそうだ。あんな話聞かされたら、誰でもそうなる。
「俺はシリカの意思を尊重する。行きたくなかったら行かなくていい」
自身の中で決めかねているであろうシリカに、言いたいことを言っておく。
俺はそんなことでシリカに幻滅とかはしねぇし。
「………あたしは」
長い沈黙の後、シリカが口を開いた。俺は頷いて、先を促す。
「怖いです。どうしようもなく怖い。カイさんにも行ってほしくないくらいですけど……行くんですよね?」
「ああ、俺は行くよ。俺にはやることもあるしな」
俺の曖昧な言い方にシリカは首を傾げたが、一度俯いてから、頭を上げて宣言した。
「…………なら、行きます。カイさんを支えるって、決めましたから」
「そっか。なら俺も宣言通り、シリカを守るよ。安心してくれ、何があってもシリカは守り抜く」
「………はい!」
シリカが、輝く様な笑顔を俺に向けた。
俺達はリズのところへ行って、超特急で武器を研いでもらってから七十五層へと赴いた。
俺達が到着した時には、七十五層の転移門広場には、すでにかなりの数のプレイヤーが集まっていた。
全員が一目でハイレベルとわかる。皆緊張した様子だ。無理もない。
その連中は、転移してきた俺達に向かって目礼やギルド式の敬礼をしてきた。
まあ確かに、俺達は今回の攻略の要になるだろうしな。わからないでもないが。
アスナが慣れた感じで返礼し、キリトがぎこちなく敬礼を返す。
俺はお座なりに手を振り返しておく。シリカはぺこりと頭を下げてた。可愛い。
「よう!」
軽いノリで肩を叩かれたので誰かと思って後ろを見ると、クラインだった。
その横には、両手斧を携えたエギルもいる。
「なんだ……お前らも参加するのか」
「クラインはわかるが、エギルもか。どういう風の吹き回しだ?」
「なんだってことはないだろう!」
俺とキリトの失礼な物言いに、エギルが憤慨した様子で言い返してくる。
「今回はえらく苦戦しそうだって聞いたから、商売を投げ出して来たんじゃねえか。この無私無欲の精神を理解できないたぁ……」
その発言を聞いた俺とキリトは一瞬の内に目配せし、同時にエギルの腕を軽く叩く。
「その素晴らしい精神はよーくわかった。流石だな、エギル」
「つまりお前は戦利品の分配からは除外していいのな」
揚げ足を取られたエギルは、困ったように眉尻を下げた。
「いや、それはだなぁ……」
それを見ていたシリカ、アスナ、クラインが朗らかに笑い、それは周りにいたプレイヤーにも伝染していった。
これで、少しは緊張がほぐれるといいんだが。
「キリト、カイ」
名前を呼ばれて振り向くと、ケイタがこちらに歩み寄って来ていた。
「よ、ケイタ」
「月夜の黒猫団も参加か」
「うん、怖いけどね。皆で話し合った結果、頑張ろうってことになった」
それがこいつらの決断なら、俺が言うことは何もない。
「そうか。ま、死なないように頑張ろうぜ。あいつらにも伝えといてくれ」
「うん、わかったよ。じゃあ、これで」
「あ、そうだ」
「ん?カイ、どうしたの?」
俺の後ろ髪を引く言い方に、ケイタが立ち止まって尋ねて来た。
じゃあ、これも伝えといてもらうかな。
「ダッカーに伝えといてくれ。死んだら殺すってな」
「………ははは!うん、わかった。それも伝えておくね。じゃ、頑張ろう」
「おう」
ダッカーはこうやって発破をかけとけば大丈夫だろう。あいつは強いからな。
俺にできる限り、あいつらも守ろう。
午後一時ちょうど。
ヒースクリフ率いる血盟騎士団の部隊が転移門から現れた。
部隊っつっても数名だけどな。精鋭だ。
そう言えば、俺とヒースクリフってどっちのレベルが高いんだろうか?
俺達二人を除けば、トップは間違いなくキリトだ。その次がアスナ。
その下はシリカなのか?急成長を遂げたが、レベルっていう面では違うかもな。
なんて益体のないことを考えていると、ヒースクリフが人垣を割って俺達の下に向かって来る。
クラインとエギルが気圧されたように数歩下がったが、まあ無視だな。
アスナが敬礼を返している。めっちゃ慣れてんな、アスナも。
ヒースクリフは立ち止まって俺達に頷きかけると、集団に向き直って声をかけた。
「欠員はないようだな。よく集まってくれた。状況はすでに知っていると思う。厳しい戦いになるだろうが、諸君の力なら切り抜けられると信じている。――解放の日のために!」
ヒースクリフの力強い言葉に、連中は鬨の声で答えた。
――――こいつは、本心でこの言葉を言ってるんだろうな。ヒースクリフは、本当に信じている。俺達の力ならできると。
キリトが何やらヒースクリフを凝視していた。
その視線に気づいたのか、ヒースクリフはキリトに向き直って微笑しながら声をかける。
「キリト君、今日は頼りにしているよ。《二刀流》、存分に揮ってくれたまえ」
キリトが無言で頷きを返すと、ヒースクリフは俺にも声をかけてきた。
「カイ君、君もだ。よろしく頼むよ」
「ああ、任せとけ」
俺の言葉に満足したように頷くと、再び集団に向き直って言葉を発した。
さっきから色んな方向を向いて忙しそうだな。
「では、出発しよう。目的のボス部屋の前まで、コリドーを開く」
その発言を受けて、プレイヤー達が軽くどよめいた。
回廊結晶って高いからなぁ。結構レアなんだよ、あれ。
まあ、俺からしたらはした金で買える程度だけど……。財布もシリカと共有されてるから、余計に。
そういや言ってなかった気がするけど、結婚すると全データと全情報が共有される。
つまり、俺とシリカの財布やアイテムストレージは共通だ。そして、俺はいつでもシリカのステータスを閲覧できて、その逆も然り。
お互いに隠し事は一切できなくなるため、俺はシリカにお願いしまくった。主にスキルに関することで。色々と黙っててくれてるシリカには感謝だ。
そんな今はどうでもいいことを考えながら、プレイヤーがコリドーに飛び込んで行く様子を見守る。
最後に、俺達とキリト達が残った。
「んじゃ、あっちでな」
「お先に失礼します」
「ああ」
「ええ」
俺はシリカの手を引いて、コリドーの光に身体を踊らせた。
「これはまた……」
「何と言うか、嫌な感じがします……」
俺とシリカは、ボス部屋の扉を見て感想を零す。
何となくわかるんだよな、二年もやってると。この部屋の主がどれくらいヤバいのか。こいつは相当だ。
周囲で武装などの確認をしているプレイヤー達も、その表情は硬い。
ヒースクリフが部屋前の回廊の中央で装備を鳴らし、言葉を紡ぐ。
「皆、準備はいいかな。今回、ボスの攻撃パターンについては一切情報がない。基本的にはKoBが前線で攻撃を食い止めるので、その間に可能な限りパターンを見切り、柔軟に反撃してほしい」
ヒースクリフの静かな声に、剣士達が頷いた。
「では――行こうか」
静かな声音のまま、ヒースクリフは無造作にボス部屋の大扉に近づき、中央に右手をかける。
向こうでキリトがクラインとエギルに声をかけているのを横目に見ながら、俺は近くにいた黒猫団のメンバーに歩み寄る。
「ケイタ、また会ったな」
「あ、カイ。そうだね」
「俺は、お前らのコンビネーションならどんな状況にも対処できると思ってる。死ぬなよ」
「―――うん」
俺の信頼の言葉に、黒猫団の全員が神妙に頷く。
気負い過ぎている様子はない。いい感じだな。
その直後、大扉が重々しく動き出した。
プレイヤー達が次々に抜刀する。
キリトが一際高い音で二刀を引き抜き、アスナもその隣で細剣を構えている。
俺も《キリング・デストロイ》を抜き放ち、号令を待つ。
シリカがそっと手を握ってきた。
俺も優しく握り返す。
シリカが安心したような笑顔を見せ、手を離す。
最後に、十字盾の裏側からヒースクリフが音高く長剣を引き抜き、右手を高く掲げ、叫んだ。
「――戦闘、開始!」
そのまま、完全に開ききった扉の中へと走り出す。全員が続く。
内部は、かなり広いドーム状の部屋になっていた。
俺達がヒースクリフと決闘した闘技場と同じくらいの広さだ。
三十九人全員が部屋の中に走り込み、自然な陣形を整えたところで、入って来た扉が大きな音を立てて閉じた。これでもう、俺達はボスを殺すか死ぬかしかない。
一秒、また一秒と時間が経つが、一向にボスが現れない。
と、そこで俺はピリピリしたものを感じ、ふと上を見た。
そして、ギョッとした。
天井に、ボスが張り付いている。
パッと見は、全長十メートルもある百足に見える。背骨の様な突起のある太い骨を軸に、その節の一つ一つから骨が剥き出しの脚が伸びている。
その軸骨を追って行くと、徐々に太くなっていった先に、頭蓋骨が付いていた。
人間の物ではない凶悪な形。禍々しい二対四つの眼窩を持つ流線型の頭蓋の顎には鋭い牙が並び、頭骨の両脇からは鎌状の骨の腕が飛び出していた。
名前は――――《The Skullreaper》。骸骨の刈り手。
「おい――」
誰かが耐え切れないといった風に声を出した瞬間、軽く呑まれかけていた俺の意識が復活する。
「上だ!!」
「上よ!!」
俺はすかさず声を上げる。同時に、アスナも叫んでいた。あいつ、呑まれなかったのか。強いな。
無数の脚を蠢かせて天井を這っていた骨百足は頂上に辿り着くと、唐突に全ての脚を大きく広げ、俺達の頭上に落下してくる。
「マズイ、退がれ!!」
「固まるな!距離を取れ!!」
俺とヒースクリフの鋭い叫び声で、凍りついた空気が引き裂かれた。
我に返ったように全員が動きだし、落下予測地点から離れる。
俺もなるべく遠くに行こうとして―――百足の真下を見て、止まった。
骨百足の落下予測地点の真下に、三人のプレイヤーが残っている。
真下にいたからか、どちらに行こうか迷うように上を見上げている。
俺はそいつらに向かって走り出した。
「こっちだ!」
キリトが三人に声をかける。そいつらの呪縛が解けて動き出す。
それとほぼ同時に俺は三人の下へ辿り着いた。一人の手を取り、思いっきり腕を引く。
そいつは勢い余ってよろめいたが、多少は遠くに離脱できた。
――と、その瞬間。俺の目の前、つまり逃げ遅れた二人の背後に、奴が地響きとともに降り立った。
奴の落下で、床全体が大きく震える。
「――うおっ!?」
俺はそのタイミングがわかったからなんとか耐えられたが、走っていた二人は振動に足を取られてたたらを踏む。
そして、俺達目掛けて百足の右腕――鎌だけで人間の身長ほどあるそれが横薙ぎに振り下ろされた。
こいつは――――マズい!!
俺は瞬時に危険と判断し、軌道上に《キリング・デストロイ》を構える。
受けて踏み留まることはできないだろうが、少なくとも直撃は避けないと―――!
百足の右腕は二人を斬り飛ばし、俺に襲いかかってくる。
《キリング・デストロイ》を合わせて――――刀身が一撃で砕かれた。
マジか!?こいつは研いできたばっかだぞ!?それが一撃――!くそっ、短剣の耐久じゃあこの攻撃は受けきれねぇ!!
俺は反射で動いていた。これの直撃は絶対にもらえない。俺の紙耐久じゃ即死とは行かなくても、イエロー、いや、レッド寸前まで持って行かれることは十分にありえる。
武器が何らかの原因によって切り離されたりした場合でも、武器が一瞬で消滅することはない。
以前キリトがリズの片手剣をへし折った時や、俺がストーカーとのデュエルで両手剣を叩き折った時とかだな。
武器が完全に修復不能となった後に消滅するまで、わずかだがタイムラグがある。
そして、
後ろに跳び退って衝撃を少しでも受け流そうとし、残っていた柄で鎌を辛うじて受けとめて直撃は免れる。
だがしかし、その一撃は重く、俺は衝撃で大きく吹き飛ばされた。
「カイさん!!」
シリカの悲鳴が耳に届く。恐らく直撃を食らったように見えただろうが、大丈夫だ。俺はもらってない。
高く吹き飛ばされながらも、他の二人の様子を見ようと周囲に視線を飛ばす。酔いそうだ。
あの二人の装備を見るに
そして、俺は見た。
――――なんだって!?一撃で死亡だと!?
SAOのシステム上、ここにいるハイレベルプレイヤー達のHPは相応にあるはずだ。
クリティカルヒットしても、俺みたいな紙耐久の奴でさえ一撃で死亡なんてことにはならないだろう。まあ多分だけど。
しかし、そうなった。ということは―――
俺は吹き飛ばされつつ並列思考を展開していたが、二つの並列思考の内、周囲の状況を捉えていた思考が警鐘を鳴らした。
それに促されて警戒すると、床がもの凄い勢いで迫っている。
――――このままだと、落下ダメージで死ぬ!!
「チェンジ!《フリー》・トゥー・《ボウス》!!」
武器を破壊されて素手状態になっていた俺は、落下の勢いを利用して光り輝く拳で床を殴りつけた。
その反動で腕一本で跳ね上がり、手に現れた両手剣を空振りする。
着地した俺に、シリカが駆け寄ってきた。
「カイさん!!大丈夫ですか!?」
「ああ、大丈夫だ。直撃はもらってない。それより、悪い!今は会話してる時間はない!」
「あ、カイさん!」
短い技後硬直が解けた俺は、シリカを置いて駆け出す。
シリカには悪いが、あの鎌を自由にさせるわけにはいかねぇ!
骨百足は、すでに違うプレイヤーの一団目掛けて突進している。
「ヒースクリフ――――――ッ!!」
「承知!!」
俺は走りながら大声でヒースクリフに呼びかける。
奴も今はふざける余裕はないようで、真剣な声音で叫び返してきた。
恐慌して逃げ惑うプレイヤー目掛けて振り下ろされた左腕の鎌を、ギリギリ飛び込んだヒースクリフが盾で受けとめる。
それに続く右腕の一撃を、広場を端から中央まで駆け抜けた俺が両手剣を振り抜いて受けとめた。
「ああもう、重いなちくしょう!」
重いが、なんとか受けとめることは可能だ。できる限り鎌を押し込み、弾き返す。
――――よし、なんとか立て直せそうだ。だが、ここで攻めなきゃ勝てない!
「大鎌は俺とヒースクリフで受け止める!お前等は、側面から殴れ!」
俺の大声での指示に、全員が動いた。一斉に突撃し、各々の武器を振り下ろす。
やっと百足のHPが減少した。こっから少しずつダメージを与えて――。
「「「うわあああああ!!!」」」
「くそっ、今度はあれか!」
俺の並列思考はしっかりと状況を捉えていた。
槍のようになった骨百足の尾の先にプレイヤー達が薙ぎ払われたんだ。
だが、鎌ほどの攻撃力はなさそうだ。どうする―――!?状況を的確に把握しろ!
尾の近くに、黒猫団と《風林火山》!これなら――!
「――――尾の攻撃は、《月夜の黒猫団》、《風林火山》、キリト、アスナ、シリカで一組の三グループで対処しろ!!
《風林火山》はそのまま尾の左で!黒猫団は尾の正面に行け!キリト達は右側まで走ってってくれ!お前等の敏捷ならすぐのはずだ!
左右のグループは攻撃の勢いを弱めて、自分達がダメージを受けないことだけを考えろ!
黒猫団は、勢いが弱くなった尾を確実に弾き返せ!お前等ならできる!
もし正面に振り下ろされた時は今の指示と逆のことをやれ!
二グループでの連続パリィで尾の攻撃を受け流す!
他の奴らと尾が来なかったグループは、今言った奴らの邪魔にならない位置から攻撃を続けろ!これが一番被害が少ない勝ち筋だ!気合い入れてけ!!」
「「「オオオオッ!!」」」
黒猫団とクライン達、キリト達は俺の指示の途中から動いていた。慣れって大事だな。
他の奴らも、士気は十分だ。これなら折れることはないだろう。―――この状態が崩れなければ、な。
戦闘は苛烈を極めた。
と言っても、俺達の必死のパリングのおかげで死人は少ないが……。
時折、他の骨に攻撃されて死んでしまうプレイヤーもいた。
尾を担当している皆のパリィのタイミングが僅かにズレて、尾に串刺しにされてしまう奴もいた。
だが、何とかやれている。このまま行けば、死人は十人に届くことはないだろう。
そう、このまま何もなければ……。
だがしかし、俺の儚い願いは叶わない。
「むっ!?カイ君、来るぞ!!」
「げっ、あんなの受けきれねぇよ!?」
ヒースクリフに注意喚起されるまでもなく、俺も気づいている。
立て続けに攻撃を受け止める俺達に業を煮やしたのか、骨百足が両腕の鎌を揃えて横殴りに振り抜こうとしている。それも俺目掛けて。あれは受けきれな――って、やばっ!?
「キシャァァァアアアアアア!!!!」
「くっ、そぉぉおおおおお!!負けてたまるかぁぁああああ!!!!」
あれを受けきるには大技をぶつけるしかねぇ!もう回避は間に合わねぇし、これに賭ける!
左の腰だめに両手剣を構え、身体を捻じる。
両手剣が血色に強く光り輝き、爆発的な勢いで打ち出される。
「《タイラント・ショックウェーブ》ッ!!」
両手剣スキル重攻撃単発技《タイラント・ショックウェーブ》。
一撃の威力っていう意味なら、両手剣スキルでこれを上回るものはない。
この鎌相手に《簡易変更》スキルで迎え撃つなんてのは無謀だし、頼む――――ッ!!
「キシャアアアアアアア!!」
「うおおぉぉぉおおおって、何――ッ!?」
マズイッ!!こんの、クソ骸骨百足がぁぁぁあああ―――――!!!!
ギャリィィィンッッ!!!
という甲高い音を響かせて、俺の両手剣が奴の鎌を弾き返す。……
こいつ、僅かに攻撃のタイミングをズラして俺のスキルをスカしやがった――――こいつは、やべぇかもな……。
ガッキィィィィィィイイイイインン!!!!
突如、俺の前に割り込んできた人影が大鎌を受け止めた。
――ヒースクリフ。
「なっ……」
「ふっ、君としたことが情けない。らしくない判断だったのではないかな?」
「ちっ……その通りだよ。悪ぃな、助かった」
俺は舌打ち一つすると、鎧を着た背中に礼の言葉を投げかける。今のはヒースクリフに任せて回避、その後攻撃を受けない位置から攻撃が正しい判断だったろう。
ヒースクリフは軽く笑い、言葉を返してきた。
「何、どうと言うことはない。助けが間に合うはずなのに助けなければ、不審がられてしまうからね」
「理由が最低だな……」
そうだな、うん。こいつはこういう奴だ。誰かに入れ込むことはない。全員に等しく興味があり、等しく興味がない。
「それとも何かね?――――君を助けに来たよ!僕は、君のことが好きだから……とでも言えばいいのかな?」
ヒースクリフに渾身の攻撃を弾かれ、思いっきりノックバックしている骨百足に容赦なく攻撃を加えながら俺とヒースクリフは会話を続ける。側面から攻撃を加えていた連中もチャンスを悟り、次々にスキルをぶちかましている。
「やめろ、気色悪い。じゃあさっきみたいな攻撃が来たら、てめぇに防御押し付けるからな。しくじんじゃねぇぞ」
俺はちょっとしくじったが、尾の方はしばらくはほとんどミスもないようだ。流石だな。
「無論だ。私が防御に徹すれば、あの攻撃も僅かなダメージで受けきることが可能だ。君も、その間の攻撃は任せるよ」
「おうよ。……ところで」
「何かな?」
声を潜めた俺を怪訝な目で見てくるヒースクリフ。
骨百足は奇声を上げながら、俺達に両腕の鎌を別々に振り下ろしてくる。俺は朱色の両手剣で、ヒースクリフは純白の盾で危なげなく受け切る。
俺は俺達のすぐ傍には他のプレイヤーがいないことを確認し、念のため小声のままヒースクリフに訊ねる。
「あの攻撃は、何か特殊効果を持たせているのか?それとも純粋に攻撃力が高いだけなのか?だが後者だとすると、お前がそんな少量のダメージで受け切れることが不思議でならないんだが………」
俺達がこんな会話をしている間にも、骨百足がさっきと同じ攻撃を繰り出してきた。それをヒースクリフは体勢を低くして盾を前面に押し出し、俺の目の前で完璧に受け切って見せる。奴のHPバーが一センチほど減った。やっぱおかしいだろ、おい。
脳内でツッコミつつ骨百足の懐(?)に踏み込んで、両手剣スキル三連撃技《キャスリング・アヴォイド》を発動させる。
斬り下ろし、斬り上げに続けて、振りかぶった剣の腹でぶっ叩いて距離を取るという力技なスキルだ。距離を取るところからキャスリングって名前を付けたみたいだな。アヴォイドなんて完全に『避ける』だし。
「ああ、そのことか。なに、大したことではない。あの鎌による攻撃は必ずクリティカルヒットするようになっていて、身体に当たれば相手の防御力を無視するというだけだよ」
「というだけだよ、じゃねぇだろそれは……。相変わらずえげつねぇ設定にしてんなぁ」
「まあそういう効果なので、カイ君のレベルならばもしかしたら耐えられるかもしれないがね」
ヒースクリフが俺に微笑みかけてそんなことを言ってくる。
確かに防御力を無視するというなら、純粋にHPの多い俺が一番耐える可能性が高いだろう。だが――。
「アホか。誰が好き好んであんな攻撃喰らうんだよ」
「ふっ、尤もな話だな」
「無駄口叩いてねぇで、指示出せよな。そろそろ、終わりだぞ」
俺達が呑気に会話している間に、骨百足のHPが残り少しになっている。
動きも鈍くなってきてるし――――――そろそろ、フィニッシュだ。
ヒースクリフも同じ意見なのか、奴のHPバーを確認すると、大きく息を吸い込んだ。
「ふむ、そうだな。――――全員、突撃!!」
大きな声を張り上げ、全員の意識を鼓舞する。いやぁ、流石だな。――さて。
「俺も行くかな。……さっき危ない目に遭わせてくれた、お礼だ。受け取れッ!!」
俺も他のメンバーに続くため、体勢を低くして駆け出した。そして、高らかに叫ぶ。
「チェンジ!《ボウス》・トゥー・《ショート》ォ!!」
両手剣を振り上げ骨を斬り、入れ替わりで現れた《ヴァイヴァンタル》で続けざまに斬りつける。
その振り抜いた後の体勢を調節し、ソードスキルに繋げる。
「……これで決める。――――《ヘル・オア・ヘヴン》」
地獄を表すような禍々しい紺色と、天国を表すような神々しい純白が複雑に混ざり合ったようなライトエフェクトが《ヴァイヴァンタル》を包んだ。
俺は骨百足を斬りつける。
一度。奴のSTRが上昇する。
二度。奴のVITが上昇する。
三度。奴のAGIが上昇する。
四度。奴のDEXが上昇する。
五度。奴の上昇したステータスの数値だけ俺の短剣の攻撃力が上がり、さらに奴の上昇したステータスの数値だけ奴の防御力が下がる。奴のステータスの上昇がリセットされる。
六度。俺の突き出した短剣が奴に突き刺さり、一瞬で奴のHPバーを削り切った。
短剣スキル六連撃技《ヘル・オア・ヘヴン》。
相手のステータスをそれぞれ半分の数値分上昇させ、その後、相手の上昇値を利用して与えるダメージを爆発的に増やすスキルだ。
かなり強いスキルだが、これは諸刃の剣だ。
一撃毎の間隔は長いから、途中で反撃されると無駄に相手のステータスを上げるだけになってしまう。まあ、止められたことなんてないんだけどな。
骨百足が激しい音と共に爆散し、ポリゴンの残滓をばら撒く。
俺の目の前にメッセージが表示された。俺がラストアタックらしい。ラッキー。
皆が、戦闘が終わったことの安堵からか地面にへたり込む。かなり疲弊しているようだ。
ヒースクリフを見やると、座り込むことなく周囲を眺めていた。実験動物を見る目をしている。
バレるぞ、おい。まあいいか。
俺はヒースクリフに軽く目配せすると、三人で固まって座っているシリカの下へ駆け出す。
――早く労ってやらないとな。
いかがでしたでしょうか。
スカルリーパーの鎌の能力とかは、それらしい能力を考えました。作者オリジナルですのであしからず。文句は受け付けます。
やっと、ここまで来ました……。
アインクラッド編は残り数話です。いやぁ長かった。まあ僕のせいなんですけど。
その後はフェアリィ・ダンス編に続きますが、まあ今はそれは置いといて。
次回は――ヒースクリフの秘密が明らかに!?(棒)果たして、その秘密とは一体なんなのか!?(棒)
ですかね。
できるだけ早く更新しようと思っています。
お楽しみに。
感想などお待ちしてますよー。
では、また次回。