黒の剣士と紺の浮浪児   作:gobrin

3 / 33
原作と少しだけボス部屋を発見するタイミングを変えてます。

ちょっと理由がありまして。


第三話 初のボス戦

その日の午後。第二回攻略会議が開かれた。

あのあとボス部屋にお邪魔してきたらしい。

ボスの名前がわかった後、新しいガイドブックが配布された。

それにはボスの情報が細かく載っているだけでなく、裏に、『この情報はベータテストの時のものです。現行版では変更になっている可能性があります』と書いてあった。

攻めるねぇ、アルゴ。

 

 

「みんな、よく集まってくれた!もうみんな見たと思うけど、ボスの情報がガイドブックに載った!これを元にボスを攻略しようと思う!納得出来ない人もいるかもしれないけど、偵察する必要がなくなったのは大きい!了承してくれ!じゃあみんな、周りの人とパーティーを組んでくれ!始め!」

 

「「「……え?」」」

 

 

俺達は思わず固まる。

周りを見ると、もうすでに組む相手が決まっていたようだ。

六人パーティーが七つできていた。

 

 

「よしじゃあ組むか!」

 

「そうだな!組もう!」

 

「そうね!組みましょう!」

 

 

努めて明るく言う。

まあ実際は始めから可能なら俺達だけで組むつもりだったから問題ないが。

その後、パーティー毎に役割を決めた。

 

高機動高火力の攻撃(アタッカー)部隊が三つ。

重装甲の(タンク)部隊が二つ。

長モノ装備の支援(サポート)部隊が二つ。

そして俺達の遊撃隊。

なんかMob狩ってろだってよ。まあ、そうなるわな。

 

それで会議が終わり、明日の集合時間を伝えられたところで解散になった。

 

 

「じゃあ帰るか」

 

「ああ。風呂にも入りたいしな」

 

「……お風呂ですって!?」

 

 

『風呂』というワードを口にしたキリトの肩をガシッ!と掴んでアスナがすごい迫力でキリトに食いつく。

 

 

「あ、ああ……。俺達が借りてるところは風呂があるけど……」

 

「あ、でもアスナがそういう部屋を借りられるかはわかんねえぞ?俺達はワンフロア貸し切ったし、他のプレイヤーもそういうところを優先的に抑えてるだろうからな」

 

「なら貸して。今日だけでいいから。あと今日泊めてくれない?今から泊まるところを探すのも骨が折れるわ。ワンフロアってことは他にも部屋があるんでしょう?」

 

「いいのか?仮にも男二人が借りてる部屋だぞ?あと風呂は俺達の部屋にしかないが」

 

「大丈夫よ。変なことしたら明日圏外に出たところで殺すから」

 

 

口調は軽かったが、その目はマジだった。

 

 

「うわ。やる気はなかったが何もできねぇな、コレ」

 

「そんなことどうでもいいでしょ。早く行くわよ」

 

 

俺達は明日の準備のために商店街に向かおうとした。

が、そこで俺はあることを思いつく。

 

 

「悪ぃ、キリト達は先に行って自分たちのもん買っといてくれ。そんで買い物が終わったら帰っといてくれてかまわねぇ。ちょっと用事を思い出した。少し時間かかるだろうからな」

 

「……?なにする気だ、カイ?」

 

「彼がいいって言ってるんだから早く行きましょう。早く買い物を終わらせてお風呂に入りたいわ。ああもうこのフード鬱陶しくなってきた」

 

 

そう言って、アスナはフードを取った。

当然顔が露になるわけだが――こんな綺麗な顔の人間がいるのかと疑うような美貌だった。

……こりゃフード被ってないとダメだな。

 

 

「おい、アスナ。フードは被っとけ。目立ち過ぎだ」

 

 

慌てて頼むと、アスナは渋々といった様子でフードを被った。

言うことを聞いてくれてホッとする。

 

 

「じゃ、また後でな」

 

 

そう言って俺達は別れた。

 

 

 

 

「さーて、ちょっくら()()()()と遊んでくるかな」

 

 

誰ともなく呟き、俺は町の外へ足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

俺が帰ってきた時、アスナは風呂に入っていた。

 

 

「え?アスナ何時から風呂に入ってんの?」

 

「そこそこ前だな。そろそろ出てきてもいい頃だと思うんだが……」

 

「早く上がってくれないと気が散って大変ってか?」

 

「な、なに言ってるんだ、カイ!?」

 

「見りゃわかるよ。キリトわかりやすいからなぁ?」

 

 

ニヤニヤしながらキリトをからかっていると、不意にドアがコン、コココンとノックされた。

これはアイツの符丁か。

 

キリトが扉を開けて、内心の動揺を悟られないようにあらかじめ言うと決めていたかのようなセリフを言った。

 

 

「……珍しいな、あんたがわざわざ部屋まで来るなんて」

 

「まあナ。クライアントが今日中だってうるさくてサ」

 

 

そう言って――情報屋『鼠のアルゴ』はニシシッと笑いをこぼした。

 

前にも言ったがコイツの情報収集能力は大したもんでかなり色んなことを調べてもらってる。

その分金は大量に取られているがな。

コイツは両の頬に三本線が引いてあって、髪の毛の特徴――短い金褐色の巻き毛だ――とも相まって『鼠』と呼ばれるようになった。

 

 

 

「――で、売る気になったカ?」

 

「……サンキュッパときたか……」

 

 

アルゴは情報の取引のみならず武器の売り買いの代理交渉も受け持っている。

今回の代理交渉はキリトのメイン武器《アニールブレード》を買いたいというプレイヤーが金額を引き上げてきたっつー報告だった。

 

ちなみに《アニールブレード》は俺も持ってる。キリトのほど強くはないが。

しかしサンキュッパか。ちと多すぎねぇか?

三万九千八百コルもあれば、素体の《アニールブレード》が今のと同じ強化具合になるまでの金銭面の心配はなくなる。時間はかかるけどな。

……ん?時間がかかる?……ああ、なるほど。キリトの武器に拘る理由がわかった。そういうことだったか……。

 

 

「………アルゴ。クライアントの名前に千五百出す。クライアントに確認してくれ」

 

「分かっタ」

 

 

アルゴがクライアントに簡易メッセージを飛ばす。

 

キリトも疑問に思ったか。でもクライアントの名前は正直意味がねぇな。後ろにいる奴がわからねぇと。もう予想はついたが。

俺の想像通りなら、ここは相手は張り合ってこないはずだ。

 

 

「教えて構わないそーダ」

 

 

やっぱりな。

返ってきたメッセージを見て、肩を竦めながらアルゴが答える。

 

 

「……何なんだよ、ホント」

 

 

キリトのため息にアルゴも苦笑い。

キリトの片手剣を欲しがってもおかしく思われない奴といえば……。

 

 

「もうキー坊は知ってるはずダ。なんせ、今日の攻略会議で大暴れしたんだからナ」

 

「……キバオウ、か」

 

 

……予想通りか。だとするとあの野郎リスキーなことすんな。上に立とうと必死なのか。

てか今のアルゴの言い方だと俺も選択肢に含まれそうだな。笑えねぇ。流石に暴れたって自覚くらいはあるぞ。

 

 

「………もしかして」

 

 

お?キリト気づいた?

 

 

「……何か分かったのカ?」

 

 

ふぅん。アルゴでもわからないのか。まぁ、そうか。

俺もわかるが共感はできねぇ考え方だしな。

 

 

「いや、多分違うと……思いたいな」

 

「……そうカ。――それで、今回も取引不成立ってことでいいのカ?」

 

「ああ……」

 

「じゃあ今度はカイ坊ダ。相手は――」

 

「いや、言わなくていい。どの道売らないからな。そんでどうせまたキリトよりは値段が低いんだろ?なめやがって」

 

「……そうカ。分かっタ」

 

「つーか俺のことよく知りもしねぇで俺の武器買いたいとか意味なさ過ぎ。俺を無力化したいなら全部買い取る気で来いっての」

 

「……お前のスタイル知ってる奴なんてほとんどいないだろ」

 

「まぁそうなんだが。アルゴにももし聞かれたら高値で売るように言ってるしな」

 

「あんなことできる奴は少ないからナ。貴重な情報だヨ。――あっと、そうダ。風呂場借りるゾ。夜衣装に着替えたいからナ」

 

「ダメだ。帰れ。いますぐ帰れ」

 

 

風呂場に向かおうとしたアルゴの前に立ち塞がり行く手を阻む。

今この先に進ませるわけにはいかねぇ。

 

 

「な、なんでダ?別にいいじゃないカ。何がダメなんダ?カイ坊」

 

「……トップシークレットクラスの情報だ。買うなら風呂場を貸してやる。買わないなら帰れ」

 

「…………いくらダ?」

 

「百五十万」

 

「ハァッ!?なに言ってるんダ!?」

 

「言ったろ。トップシークレットだってな。まぁお前には世話になってるからまけて八十万だな。これ以上は譲れねぇ。どうする?」

 

 

これでも大分吹っかけてるが……どう出る?

 

 

「………買うゾ」

 

「まいど。じゃあ、ほら金渡せ」

 

「ほらヨ」

 

 

俺達の目の前に八十万コルが積まれる。即座に回収。

 

 

「確かに。じゃあ言うな。アスナっていう女性プレイヤーが今ここの風呂を使ってる。あと今日はここに泊まってくってよ。部屋は別だけどな」

 

「……んなァ!?それに八十万だト!?ぼったくりもいいところじゃないカ!?」

 

「……あいつが有名になったらそれ以上の値がつくだろ。あと俺達の命が狙われる可能性の分の値段だ。良心的な値段だろ?」

 

「そもそも有名になるかわからないじゃないカ!!」

 

「いやアレはなるだろ……なぁ?」

 

「………ああ、アレはな……」

 

「キー坊もそう思うのカ?」

 

「ああ」

 

「まぁ何にせよ、取引成立だ。風呂場使っていいぞ」

 

「……わかっタ。借りるゾ」

 

「おう」

 

 

納得いかないという表情でアルゴが風呂場に入っていく。

 

 

 

 

 

 

「そこでアーちゃんに会っタ。ありゃ確かになるナ」

 

「だろ?つかもうその呼び方かよ」

 

「ああ、疑って悪かっタ。じゃあナ。今後とも御贔屓に頼むゾ」

 

「おう。また何かあったらよろしく頼むぜ」

 

 

出てきた時のアルゴはとてもスッキリとした顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――もうすぐデスゲームが開始されてから四週間になる。

そのことに少しだけショックを受けつつもボス部屋を目指して歩く。

俺の隣にはキリト。さらにその隣にはフードを被ったアスナがいる。

アスナは綺麗すぎて目立つからな。

 

 

「もう四週間か」

 

「……ああ」

 

「正直、こんなに時間がかかるとは思ってなかったわ。遅くても二週間くらいで第一層がクリアされると思ってたから」

 

「こーなってくると百層ってすげぇな。どんだけかかるんだか」

 

「それもこれも今回の攻略が上手くいくか――ひいては第一層のボス《イルファング・ザ・コボルドロード》の強さがベータ版から変更されてるかどうかにかかってるな」

 

「そうだよなぁ。そんなことよくわかってるはずなのに、アホなことする奴もいたもんだ」

 

「……そうだな」

 

「昨日言ってた人のこと?」

 

「ああ、そうだ」

 

 

俺とキリトは昨日の夜にお互いの考えを伝えあい、ある推測を立てていた。

その場にはアスナもいたけど。

 

 

「でもLAを取るのってそんなに悪いことなの?」

 

 

LA――ラストアタックボーナス。ボスにトドメをさすともらえるものだ。

優秀なアイテムと莫大な経験値をもらえる。

俺とキリトはベータ時代、二人で攻略階層ほぼ全てのLAを取っている。

張り合ってたらいつの間にか。

 

 

「いや、別に?まぁ、それまで攻撃に参加してなかったくせに取ったとかだったら悪いけどな。俺らはちょっと取り過ぎた気もするが」

 

 

気がするだけで、悪いことは何もない。

 

 

「それだったら誰もあなた達に文句を言う筋合いなんてないじゃない」

 

「当たり前だろ。なのに俺らも言われて迷惑してんだ。多分、脚色して伝えてんだろ」

 

「でも、なんでキバオウさんに情報を流してる人がベータテスターだってわかるの?」

 

「俺達のことを知ってるのはテスターしかいないからだ。アルゴは自分のステータスだって売るがベータ時代の情報は絶対売らない。その危険性を理解しているからな」

 

「危険性?」

 

「ああ、情報が変わってる可能性があるだろ?あいつは不確実な情報は売らない。いざこざが発生しても困るからな。ところでカイ、やったの誰だと思う?」

 

 

ベータテストの時と比べて、Mobの行動や地形などが変わっていない保障などどこにもない。

アルゴは情報を扱っているからこそ、情報の危険性も理解している。

 

アスナは、俺とキリトの説明を聞いて納得したようだった。

 

 

「ナイトに一票。アイツは手慣れてるみたいだし、攻撃部隊だ。LAも狙いやすいだろ。レベルもそこそこありそうだしな」

 

「やっぱそうなるか……」

 

「聞いてきてやろうか?」

 

「やめとけ。お前確実に喧嘩売るだろ」

 

「エー、ソンナコトナイヨー」

 

「棒読み棒読み」

 

 

俺達がいつもの感覚で話していると、アスナが会話に参加してきた。

 

 

「ねえカイ。あなたいつもそんな態度なの?」

 

「そんなって?」

 

「喧嘩っ早いっていうか好戦的っていうか」

 

「俺の交友範囲内に影響を与えてくるクソ野郎とは徹底的にやり合うぜ?より効果的と思われるやり方でな」

 

「効果的?」

 

「カイが一番得意とすることは状況の観察・分析なんだ。それは相手も環境も含む。今回は相手を観察して、言われたら痛いところを突くつもりなんだろ」

 

「説明あんがとな、キリト。そーゆーわけ。まあそれが俺のスタイルに繋がってる一つの要因だな」

 

「スタイル?」

 

「俺の戦闘スタイルだ。いつか見せることもあるだろ。でも、あんま大勢に知られたくねぇんだよ。自分の情報は隠しときたい性分なんでな」

 

「ふーん。……あ、ボス部屋に着いたわね」

 

 

興味なさそうなアスナの言う通り、ボス部屋へ続く扉が目の前にあった。

扉が重々しい音を立てて開く。

さぁ、ボスとの対面だ―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋の中に入ると玉座に座っていたボスが立ち上がる。

《イルファング・ザ・コボルドロード》は右手に骨を削って作られた無骨な斧を持ち、左手に革を貼りあわせたバックラーを持っていた。腰に湾刀を挿している。

その周りには取り巻きの《ルインコボルド・センチネル》が群がっている。

 

コボルドロードが息を吸い―――

 

それに合わせてナイトが剣を掲げ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

号令をかける前に、俺は飛び出した。

 

 

「「「「なっ」」」」

 

「あちゃー」

 

「彼どうしたの?」

 

「一撃入れに行った」

 

 

周りが驚いている中、キリトとアスナは呑気に話している。

落ち着きすぎだろあいつら。まあいい。

助走で勢いをつけ、コボルドロードの前で高く跳ぶ。

 

 

「よぉ!昨日ぶりだが憶えてっか!?憶えてるよなぁ!昨日は憶えててくれたわけだしなぁ!」

 

 

俺はコボルドロードの瞳に怯えの色が走るのを確かに見た。

空中で体勢を整え、ソードスキルを発動させる。

短剣ソードスキル、高命中刺突攻撃《アーマーピアス》。

コボルドロードの鼻っ面に叩き込む。

 

 

「どっせーい!」

 

 

確かな手応えとともに、ボスのHPバーが僅かに減少する。

さすがにボスだな。やっぱあんま削れねぇや。

着地して振り返り、声を張り上げる。

 

 

「オイオイ、何ぼさっとしてんだよ!さっさと動け!遊撃隊しか動いてねーぞ!!」

 

 

キリトとアスナはすぐ側に来ていた。スキル後の硬直で動けない俺が取り巻きにやられないようにセンチネルの対処をしてくれる。

 

 

「……っ!勝手な行動をするな!」

 

「無駄口叩いてる暇あったら動けよ、ナイトさんよぉ!」

 

 

ナイト達がやっと到着し、ボスのタゲを俺から取る。

 

 

「……後でさっきの発言の意味、聞かせてもらうわよ」

 

 

近くでアスナが囁く。怖ぇ。

 

 

「わかったよ。……キリト、アスナ、一旦下がれ!」

 

 

俺は再びソードスキルの構えを取る。

二人が退避した瞬間、ソードスキルが発動する。

短剣ソードスキル、高命中範囲攻撃《ラウンド・アクセル》。

自分の前にいる敵の集団をまとめて吹っ飛ばす。

敵のHPバーが大きく削れ、敵のHPを残り数ドットまで追い込む。

 

 

「キリト、アスナ、頼んだ!」

 

「「了解!」」

 

 

二人が息の合ったコンビネーションで敵を屠っていく。

今のところ誰もダメージを受けていない。

 

 

「――二本目!」

 

 

ナイトの叫びが聞こえ、コボルドロードの一本目のバーが消えた。

間髪入れずにセンチネルが湧く。

可哀想に湧いた瞬間にはHPがかなり減っている。出てくる瞬間を読んで、《ラウンド・アクセル》を使ったためだ。

残りは声をかけて二人に任せて、俺は周囲の状況を把握しようとする。

 

そのとき、俺の後ろに何かが近よる気配がした。すかさず蹴りを放つ。反射で。

 

 

「――当てがはずグフォォッ!」

 

「え?」

 

 

なんか変な音したな今。なんだ?

後ろを見るとサボテンが倒れていた。

俺はすぐさま自分のアイコンを確認する。幸い色は変わってない。

攻撃とは認識されなかったようだ。ラッキー。

 

 

「大丈夫か、サボテン!」

 

「大丈夫やないわ!お前が蹴っ飛ばしたんやろが!」

 

「俺の後ろに立つほうが悪い!で、なんだ?何か言おうとしてたろ」

 

「ふん。当てが外れたやろ。ええ気味や」

 

「……あ?」

 

 

ちょっと何を言っているのかわからない。できれば人の言葉を話してほしい。サボテンには無理な相談だろうか。

 

 

「ヘタな芝居すなや。こっちはもう知っとんのや。ジブンらがこのボス攻略に参加した動機をな」

 

「ああわかった。何が言いたいかわかった。だからもう黙れ」

 

 

今度は理解できた。そう説明できんなら初めからそうしろよサボテンめ。

 

 

「……なんやと?」

 

「あまり俺らをなめるなよ?それくらい予想つくっての。ところでお前にその話をした奴は誰から聞かされたって?」

 

「えろう大金『鼠』につぎ込んでネタを買ったっちゅうとったわ」

 

「わかった。お前にもう用はねぇ。どっかいけ。邪魔」

 

「な、なんやと……」

 

「――ラストだぞ!」

 

 

その声が聞こえた瞬間、センチネルが再び湧いた。俺は愕然としているサボテンを無視してキリトとアスナの下に駆け寄る。

その俺に声がかけられる。

 

 

「……雑魚コボ、もう一匹くらたるわ。あんじょうLA取りや」

 

 

もち無視。

 

 

「キリト、予想通りだ」

 

「そうか……なら、俺達の武器を買おうと――」

 

「グォオオォォオオ――――!!」

 

 

キリトの声は、腰のものを抜いたコボルドロードの雄叫びに遮られた。

コボルドロードに抜かれたそれを見て、俺とキリトが驚愕する。

 

あの武器は―――違う!曲刀じゃねぇ!――野太刀だ!!

 

 

「やべぇ!!」

 

「――ダメだ!全力で後ろに跳べ――っ!!」

 

 

俺とキリトの叫び声が響く。が、遅かった。

 

ドンッ!とコボルドロードが勢いよく飛び上がる。

身体が空中で捻られ、武器に力が溜められる。

――そして、落下と同時に溜め込まれたエネルギーが、深紅のライトエフェクトを伴いながら竜巻のように放たれる。

 

軌道――水平。攻撃範囲――三百六十度。

カタナ専用ソードスキル、重範囲攻撃《旋車》。

 

 

「「「うわぁぁぁああ!!」」」

 

 

コボルドロードを囲んでいた六人が軽く吹っ飛ばされ、そのパーティー――ナイトのパーティーだ――のHP平均値ゲージが黄色に染まる。全員が同等のダメージを負ったと見ていいだろう。

 

一撃がデカすぎる。やっぱ刀はおかしいだろ。

つーか《旋車》はマズイ。ほらみろ……《スタン》だ。

攻撃をもらった六人の頭の上で黄色い光が渦巻いている。

 

あれはSAOのバッドステータスの一つ、《スタン》。

効果時間は短いが、その間身動きが取れなくなるので十分に凶悪だ。

誰かがタゲを取らなきゃダメなんだが、誰も動けてねぇ。ディアベルがやられて動揺してるんだろう。

エギルが動き出したが、あいつの位置と敏捷パラメーターを考えると間に合わねぇ。

 

俺は素早く、装備武器を短剣から片手剣――《アニールブレード》に、選択武器スキルを短剣スキルから片手剣スキルに変える。

――――――間に合うか?

 

俺以外の全員が動けない間に、コボルドロードが硬直時間から抜け出した。

 

 

「グルォッ!!」

 

 

床スレスレから切り上げられた野太刀が、ディアベルの身体を跳ね上げた。

 

カタナ専用ソードスキル《浮舟》。

低威力だが、アレのあとはスキルのコンボが待っている。

コボルドロードがニヤリ、と獰猛な笑みを浮かべ、目にも留まらぬ速さでディアベルを鋭く斬り下ろす。

 

すでに走り出していた俺は、続く斬り上げに対して、片手剣ソードスキル《スラント》を発動させて迎撃する。

お互いがお互いの武器を弾き、相手を仰け反らせる。

だが、俺はその反動で上体を起こすだけにとどめ、その体勢をソードスキルの構えに繋げる。

片手剣ソードスキル、突進技《ソニックリープ》をすぐさま発動させ、コボルドロードの脇腹を切り裂きながら相手の後ろに回り込む。

 

 

「キリト!アスナ!――やれ!」

 

 

俺の声に二人が反応し、片手剣ソードスキル範囲技《ホリゾンタル》と、細剣ソードスキル《リニアー》を使いコボルドロードを吹っ飛ばした。

コボルドロードは俺の頭上を越えていく。

いくら二人とはいえなんつー威力だよ。

コボルドロードは向こうでジタバタしている。

 

 

「おい何やってんだ!邪魔だから下がれ!もしくは周りが下がらせろ!」

 

 

俺は動かないディアベルどもに怒鳴る。

周りの奴らは今の攻防を見て動けなかったっぽいが。

そして受け答えを見ることなく尋ねる。

 

 

「エギル!いるか!?」

 

「お、おう!いるぜ!」

 

 

エギルでさえ動けなかったみてぇだ。

空気が悪い。俺達で変えるしかねぇか。

 

 

「悪いが(タンク)頼む!さすがに俺達の装甲じゃ辛い!」

 

「わ、わかった!――行くぞ!」

 

 

エギルがパーティーメンバーを連れて駆けてくる。

 

 

「あとサボテン!突っ立ってる暇があんならセンチネル殲滅してろ!ディアベルどもが死ぬぞ!」

 

 

慌てて動き始めたサボテンを横目に、急いで武器と武器スキルを元に戻す。

 

 

「カイ、ごめん。反応遅れた」

 

「気にすんな。あとキリト。今回のLAは譲る」

 

「なに?」

 

「俺は本気で削りにいく。本気でだ。だからお前がトドメをさせ。まあお前にも少しは削ってもらうけどな。嫌なら変わるが?」

 

「……はっ。やるに決まってるだろ!」

 

「頼んだぞ相棒。削るのは任せとけ。アスナ!キリトとスイッチ使って削ってくれ!俺は一人でやる!」

 

「え!?彼大丈夫なの!?」

 

 

俺を心配しながらもフードを取るアスナ。やる気満々だな。

ちなみにスイッチなどの用語は昨日の夜に教えてある。

 

 

「カイなら大丈夫だ。それよりも、来るぞ……!」

 

 

コボルドロードが《転倒(タンブル)》状態から抜け出し、こちらに向かってくる。

 

 

「ソードスキルは俺とキリトが見切って指示する!あんたらはその都度対応してくれ!囲まなければ範囲攻撃はこない!行くぞ!」

 

 

俺の号令でエギルの(タンク)隊と俺達遊撃隊が動いた。

まず俺が突っ込む。それに反応したコボルドロードが野太刀を振り上げ、刀身がライトエフェクトに包まれる。――――黄色!

 

 

「垂直切り!俺は突っ込む!」

 

「ソードスキルで防げるぞ!カイの援護!」

 

 

それにエギルが呼応し、両手斧を構え――刀身を光らせる。

 

 

「ウグルォォッ!」

 

「ぬぉおお!」

 

 

両者の武器がぶつかり合い、弾き合う。

その瞬間に俺は短剣ソードスキル、五連撃重攻撃技――《インフィニット》を叩き込む。

 

 

「どりゃぁぁああ!」

 

「うぉお!」

 

「ハァッ!」

 

 

直後、キリト、アスナが最大威力のソードスキルで続き、硬直がとけた俺もすかさず短剣ソードスキル《クロス・エッジ》で続く。

 

 

「どらぁ!」

 

 

さらにそのあとも似たような連携で、コボルドロードのHPをジワジワ削っていく。

上手くいってるぞ。

 

そして、コボルドロードのHPバーが残り三割を割った。

そこにエギルの隊が追撃しようとコボルドロードを囲んだ。――囲んでしまった――。

 

 

「馬鹿野郎!囲むなっつっただろ!」

 

 

怒鳴りながら、俺は短剣を全力で斜め上に投げ上げる。

武器が俺の手から離れたことによって、今の俺は《装備なし》状態になっている。

そして素早く――恐らく過去最高速度で――装備を《アニールブレード》に変える。スキルも言わずもがなだ。

短剣じゃ上空に技が届かねぇ。ちっと厳しいが――やるしかねぇ。

 

硬直時間から抜け出したコボルドロードが《取り囲まれ状態》を察知し、高く飛び上がる。

 

――《旋車》を出される前に、潰す!!

俺は()()()片手剣ソードスキル、突進技《ソニックリープ》を再度叩き込もうとする。

 

 

「と、ど、けぇぇぇえええ!!」

 

 

雄叫びをあげながらコボルドロードを追う。

システムアシストをもらった俺は、流星のような速度でコボルドロードに突っ込み、コボルドロードの体勢を大きく崩し《旋車》を発動寸前でキャンセルさせた。

 

そして、空中でコボルドロードの上に乗るような形になった俺は――片手剣を手放し、先ほど投げ上げた短剣を右手で掴む。さらに装備とスキルを変更し、最初に一撃入れた時のソードスキル――短剣ソードスキル、高命中刺突攻撃《アーマーピアス》を叩き込んで、コボルドロードを叩き落とす。

 

そして、叫ぶ。

 

 

「行けぇぇぇえええ!キリトぉぉぉおお!!」

 

「うおぉぉぉおおお!!」

 

 

見ると、キリトお得意のあの技を使おうとしていた。

それを見て、俺は勝利を確信する。

 

V字の軌道を描き、キリトの剣がコボルドロードを駆け抜ける。

片手剣二連撃技《バーチカル・アーク》。

 

 

その直後、コボルドロードの身体にヒビが入り――ポリゴン片となって、爆散した。

 

 




はい、カイの戦闘スタイルが判明しました!

これがカイのユニークスキルのヒントです。
予想などはご自由にどうぞ!(いや無理だろと)

感想、質問その他、お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。