お久しぶりです、gobrinです。
なんと、1ヶ月くらいでの更新です。
こいつ更新早いな(なお現実でやらなければならないことから逃げている模様)。
ま、まあ、気にせずどうぞ。
ドン引きの表情でこちらを見てくるキリトと女剣士。
俺はその視線に納得がいかず、カゲムネと名乗った重戦士に声をかける。
「なあ、俺そんなに非常識なことしてるか?」
「ん……いや、答えにくいことを聞かないでほしかったかな……ハハ……」
こいつも同じこと思ってんのかよ!!
そういうことならもういいよちくしょう!!
「あ、そういえばその火の玉みたいなのは何?」
「シッ、アレは《リメインライト》。さっきのプレイヤーの意識はまだそこにあるの。会話も聞いてる。気をつけて」
俺の不満げな表情から心境を察したか、キリトが露骨に話題を変えた。んにゃろう。
それはそうと、あの死亡エフェクト、意識がしばらくそこにある設定なのか。なるほどな。魔法がある世界観な訳だし、あの状態の時に蘇生可能って感じか?
女剣士の説明が終わった数秒後、火の玉────リメインライトが次々に消滅した。
「……ふぅ。これで大丈夫ね。────それで?あたしはスプリガンの貴方と戦えばいいの?」
「えぇ……俺的にはヒーローが女の子を助けたシーンなんだけど……感激したヒロインがヒーローに涙ながらに抱きついてくる的な……」
「なっ、何言ってるのよ!?」
女剣士が顔を赤らめて叫ぶ。
怒り:照れが6:4〜7:3ってとこか?少なくとも嫌悪感はないみてえだな。印象は悪くない、か。
「寝言は寝てから言った方がいいぞ、キリト」
「おまっ、カイ……。ちょっと引いたの根に持ってるだろ」
「さて、何のことやら?」
「そうですよ、ダメですよパパ!」
俺がすっとぼけていると、ユイの声が聞こえた。
あ、確かにキリトの発言はアスナとユイがいる身としては不適切だったな。
「あ、こら、出てくるなって」
キリトも厄介ごとになるのが簡単に予測できるんだろう、ユイを制止するが────
「パパにくっついていいのはママとわたしだけです!」
「ぱ、パパァ!?」
キリトの胸ポケットから颯爽と現れたユイがそんな爆弾発言をぶちかます。
女剣士も驚きで素っ頓狂な叫びを上げた。
「…………ナビゲーション・ピクシーにパパと呼ばせることなんてできるのか……?」
カゲムネが訝しげな声音で呟く。
……これもしかしなくても良くない展開か?
他言無用のための交渉材料、あっかな……。
「ねえ、それってプライベート・ピクシーってやつ?」
俺が1人頭を悩ませていると、女剣士がそんな問いかけをキリトに投げる。
「ああ、プライベート・ピクシーか。なるほど、あんな感じなんだな」
「ま、まあそんなところかな……」
俺の隣でカゲムネが納得するように頷く。
キリトが空笑いを浮かべて肯定した。
この感じだと俺もカナの説明に困りそうだから、それで一応の納得が得られるならパクるんだけど……。
「ん?だがプライベート・ピクシーはプレオープンのキャンペーンで抽選だったはずだろう?初期装備なのは妙な気がするが……」
納得したと思わせておいてまさかの疑問。
カゲムネー、頼むから思考を止めてくれー。
だが、その疑問なら言い逃れは可能だな。
「ああ、俺とあいつは昔アカウントだけ作ってずっと別のVRMMOで遊んでてな。だから仮想現実には慣れてるんだが、この世界には慣れてないんだ。だからまあ、初心者じゃないと言えなくもない」
「ああ、そういうことか。キミ達はリアルでの知り合いなんだね」
ちょっと説明が丁寧すぎるかもと思ったが、誤解させることには成功したみたいで内心ホッとする。
いやーしかし、迂闊なこと言えねえなこれ。
「まあな。それよりもキリト、さっさとやることやった方がいいんじゃねえの」
「……そうだな、そうする」
何とか話題をやり過ごし、キリトを本来の目的に誘導する。
キリトも何が大事かは理解しているから、すぐに思考を切り替えたようだった。
俺達の目的は、まずは情報を集めることだ。ここには、それなりにこのゲームのことを知っていそうな奴らがいる。
「まずは自己紹介だな。俺はニューカイ。カイって呼んでくれ」
「俺はキリトだ。よろしく。この子はユイ」
「あたしは……」
女剣士は名乗る前に、カゲムネへと視線をやった。
その意味はよくわからなかったが、結局そのまま名乗りを上げる。
「……まあいいわ。あたしはリーファ。助けてくれてありがとう」
「さっきのが聞こえてたかもしれないが、改めて。カゲムネだ。カイ……くんに脅迫されている」
「別にくん付けとかしなくてもいいぞ、カゲムネ。そっちもリーファって呼んでいいか?」
「ええ、構わないわ」
自己紹介を終えたところで、リーファが切り出した。
視線を俺とキリトに交互に動かす。
「それより、カイくんがやることって言ってたけど、君達はこの後どうするの?」
「や、特に予定はないんだけど……」
「カゲムネに相手してもらったら、俺もキリトと同じくだな」
「そ。じゃあ、その……お礼に1杯奢るわ。どう?」
その申し出を受けて、キリトが嬉しそうに破顔した。
無邪気な笑顔なことで。俺はこの世界ではあんな風には笑えない。
心情が表情に反映されやすいこの世界では、俺の笑みには黒いものがよく混じる。
「それは嬉しいな。実は色々教えてくれる人を探してたんだ」
「色々?」
「この世界のことをね。特に……あの樹のこととか」
キリトが指差した先には、世界樹がある。俺達の目的地。
「世界樹?いいわよ、あたしこう見えても結構古参だから。街で話そっか」
「あ、リーファ。それならキリトにコントローラーを使わない飛行の仕方を教えてやってくれないか?俺はその間に、カゲムネと
「そう言うってことは、随意飛行、カイくんはできてキリトくんはできないんだ」
遊んで、の部分でカゲムネが盛大に顔を引きつらせてた気がするけど、気にしない。
リーファの理解に頷く。
「ああ。俺の方が早くコツを知ったってだけだがな。キリトならすぐにモノにするはずだ。よろしく頼む」
「ふーん……わかったわ。任せて」
リーファがキリトに近寄って説明を開始するのを横目に、俺はカゲムネに視線を合わせる。
……いやなんつー顔してんだお前。
「てなわけで、やるか?」
「やらずに帰してくれるなら帰るんだけどね……そうもいかないだろうし、わかった。始めよう」
「うし。ちょっとだけ待ってくれ。カナ、出てきていいぞ」
俺が呼びかけると、カナが胸ポケットから飛び出してきた。
「お呼びですか?」
「何か用があるわけじゃない。ちょっとした確認だ。これから空中戦闘をするんだが、キリトのところに行ってるか?」
「キミもプライベート・ピクシーを持っているのか……」
カナを見たカゲムネがそう呟く。
「まあ、偶然な。で、どうする?」
「では、そうさせてもらいます。終わりましたらお呼びください」
「了解。キリト達には名前だけ名乗っとけ。さて、待たせたな」
「いや、問題ない」
カナがキリトの下へ飛んでいくのを見送った俺とカゲムネは、翅を広げ飛び立った。
先ほどの広場の上空で対峙する。
「さて、空中戦の練習台とのことだったが。どういう戦闘がお好みかな?」
「その辺りはカゲムネに任せる。俺は本当に知識のない初心者だ。どういうのがセオリーとかもわからない。だから取り敢えず、適当に仕掛けてくれると助かる。その最中に指導してくれるとなお嬉しいね」
「……そうか、わかった」
そう言うと、開始の宣言もなくカゲムネが突っ込んできた。
開始宣言をしないということは、このゲームでは空中戦をいきなり仕掛けられることもあるってことだろうな。
こいつは自分に害にならない範囲では律儀な奴だと話していて感じた。
そんな奴が何も言わずに突っ込んでくるのは、「こういう戦闘開始もあるぞ」と示してくれているんだ。
戦闘開始からありがたい指導を受けつつ、その突撃をいなす。が、さっき倒したプレイヤーの突撃と違い、こちらが弾き飛ばされた。どういうことだ?
「地上と違って、空中での近接戦は翅の使い方が極めて重要なんだ。体重をかけられない代わりに、推進力で圧をかける」
カゲムネが一度離れ、そう言いながら再度突撃してくる。
そのアドバイスを受けて、納得がいった。
俺がさっき簡単に敵を受け流せたのは、さっきの奴が真っ直ぐ俺を貫くことしか考えていなかったから。左右に逸らされることを一切警戒してなかったから簡単に進行方向をズラせたし、その勢いを利用して投げ飛ばすこともできた。
一方カゲムネは、俺のいなそうとする力に逆らう方向にも推進力をかけたんだ。そうなれば、俺は相手の一撃が急に重くなったように感じる。
なら────これで、どうだ!?
俺は、先ほどと同じようにカゲムネの突撃を逸らそうとする。
カゲムネの表情が軽く呆れたようなものに変わり────
「うおっと!?」
「せいやっ!」
────俺に攻撃を逸らされた上に蹴り飛ばされ、最終的に驚愕へと切り替わった。
相手が追加した推進力をも利用して攻撃を受け流す。それと同時に自分も動き、相手に反撃。翅を操作すればこのくらいは地上以上にできるわけか。
「なるほどね。こうやんの」
「……これは驚いたな。まさか、口頭で説明した直後にそこまで精密な機動ができるとは」
カゲムネの驚いた顔を見て内心で笑みを浮かべる。
だが、その感情は表情に出さない。戦闘中の癖みたいなモンだ。相手に与える情報は、選択して減らす。
なるべく、「得体の知れない強いやつ」という印象を与えておきたい。
俺は不敵に笑って、背中を親指で差した。
「ハッ、こいつは仮想とはいえ俺の骨と筋肉なんだろ?だったら思い通りに動かせねえ道理はねえな」
「………なるほど。キミは常人とは異なる感性を持つようだ。……さて、実は今説明したことがALOの空中戦の基本にして真理なんだが、まだ続ける必要があるかな?」
それは俺も感じていたことだった。カゲムネの言う通り、今の動き方が空中戦での肝だろうし。
他に見たいことと言えば……あ、1つあったな。
「すまねえな、あと1つだけ付き合ってくれ。魔法を絡めた空中戦を体験したい」
「魔法か……確かに、純粋な斬り合い突き合いとは違った戦闘になる。わかった、付き合おう」
「助かる。今度も自由に仕掛けてきてくれ」
またもや、カゲムネが無言で突っ込んできた。しかも、さっきよりも速い。
こりゃ、最初は手を抜いてたな。配慮がありがたくて涙が出るぜ。
でもよ────。
「その速度が限界かぁカゲムネェ!?そんなんだったら簡単に見切れちまうぞ!?」
「ぐっ……これでも魔法戦だと意識した上での最高速で動いているんだけどね!」
俺はカゲムネの攻撃を受け流し、腰の片手剣を引き抜いて斬りつける。手応えはまあまあ。まあ、死にそうになったらカゲムネなら言うだろ。
カゲムネは挑発に乗ることなく速度を維持した。煽られながらも、その集中を切らしていない。
仕掛けてもらってばっかじゃ悪ぃから、俺からも仕掛けるか。
「こっちからも行かせてもらうぜ!」
「くっ……ガッ!?」
俺はわかりやすく片手剣を振りかぶる。
剣を槍で受け止めたカゲムネに対して、俺は接触点を支点にして動き、蹴りを叩きつけた。
あ、ヤバい。これ、楽しいぞ。
空中で自由に動けるのもそうだが、地上ではあり得ない機動が翅のおかげで実現できるところが一番楽しい。
これは……ハマるのも、わかっちまう。
俺の蹴りを食らって、俺が攻撃にも体術を使うことを理解したカゲムネはそれも含めてガードを試みている。
が、俺の攻撃は面白いように通った。槍を用いた反撃も、簡単に受け流せる。
なんか、相手の翅の動きがはっきり見えるんだよな。次の相手の動きが先読みできるから、即応できる。
ALO……このゲームは特に、俺に向いてるらしい。
SAOでも似たような先読みはやってたが、流石に筋肉の動きまでは見えなかったからな。相手の動き出しを見てから予測で対応ってのが最速だった。
だが、ALOは違う。
俺の動きが格段によくなったことに気づいたか、カゲムネが無理やり距離を取った。
槍を雑に振り回し、一気に離脱。
動きの予想はできたから追撃しようと思えばやれたんだが、これは練習だ。魔法を撃ってもらわないとな。
俺から距離を取ったカゲムネが、何かを口ずさんだ。
流れるようなその言葉の意味は理解できないが、言葉のたびにカゲムネの周囲に文字列のようなものが出現する。
アレは……恐らく、単語の組み合わせかな?
火属性であれば『ファイア』や『フレイム』みたいに炎に該当する言葉があって、他の意味を持つ言葉と繋げることで魔法の詠唱を造っているんだろう。
もしかしたら、文法みたいなのもあるかもな。
と、考察をしていたらカゲムネの魔法が完成したらしい。
ぶっとい炎の槍が飛んできた。
俺はそれを回避する。
その時、炎の槍の中に何かが見えたような気がした。ありゃなんだ……?
ちょっと動きを止めた俺に、両手を挙げたカゲムネが近寄ってくる。
「いやぁ、アレをあっさり躱すか……参った。これ以上だと本気を出さないといけなくなって、ただの練習戦じゃ済まなくなる。正直言って終わりにしたい」
「ん、こっちもそれでいい。悪かったな、妙なことに付き合わせて」
「いや、見逃してもらえる対価だと思っているからそれはいいさ」
俺はいくつか気になったことを訊ねることにした。
「質問いいか?」
「ん、なんだい?」
「さっきの魔法、アレは遠くからただ撃つための魔法なのか?それとも接近戦を別の奴が仕掛けている時に援護するための魔法?」
「それはどちらでもある、という答えになるかな。空中戦だと前者の場合が多い。標的を逃がさないためだったり、近づいてくる相手を牽制したりね。空中で援護しようにも、互いの動きによっては味方を狙撃してしまうから、そっちの目的ではあまり使われない。逆に地上戦なら、援護に使いやすい魔法という印象かな。爆発させたりする魔法に比べてピンポイントで狙えて速度もあるからね」
「なるほどな、さっきのは上手い使い方ができる状況じゃなかったか。通りで避けやすかったわけだ。次、俺の蹴りやら何やらは、ダメージになってたのか?」
「避けやすい魔法ではないんだけどなぁ……。蹴りもダメージ判定になるよ。ダメージエフェクトは出にくいけど。確かALOのダメージ算出式は、武器の攻撃力と攻撃のスピード、攻撃される部位と受ける側の装甲の4つの要素で決まるから、攻撃が素早く敵のウィークポイントを打つなら、打撃でも充分に効く」
俺はカゲムネの説明に感心していた。
「わかりやすい説明だな……流石は部隊を任されてるだけのことはある」
「やめてくれ、下っ端に毛が生えたくらいのものなんだから」
「ハハッ、すまねえな。っと、俺が訊きたいことはもうねえや。助かったぜ。そっちからはなんかあるか?」
「いや、特にないよ。じゃあ、これで失礼する」
「おう。また
「キミとはもう戦いたくないなぁ」
「うわぁぁぁぁあああああああああああああ!?」
俺とカゲムネがそんなやり取りをしていると、下からキリトが猛烈な勢いで飛び出してきた。
そのまま、虚空で∞の字を描きながら飛び続ける。
……まっっったくコントロールできてねえでやんの。
「…………彼は、何をやっているのかな?」
「さてな。アレを見物していくのはいいけどよ、そろそろ戻った方がいいんじゃねえか?」
「ん、そうだね。では、失礼するよ」
「ああ。またな」
苦笑いとともにそんな言葉を残し、カゲムネは飛び立って行った。
その後、リーファとユイ、カナが俺と同じ高さまで上がってくる。
リーファとユイはキリトの制御できない飛行を見て、謝りながらも楽しそうに笑っていた。
カナが、俺の側に寄ってくる。
「戦闘は終了したようですね」
「ああ。呼びに行く前に来てもらって悪いな」
「いえ、構いません」
そう言いながら、カナが俺の右肩に乗ってくる。
定位置ができつつあるな……。
そんなことを思いつつ、カナに確認する。
「あいつらにどこまで説明した?」
「カイの指示通り、名前のみ伝えました。カイ自身が説明するつもりだと推測したので」
「あ、察してくれてたか。助かる」
「いえ」
カナは何とも思っていなさそうな声で返事をした。
実際何とも思ってないんだろうが……。
それはそうと、この後街まで飛ぶことを考えると、翅の使用時間が少し気になるな。休めておくか。
「おーい、リーファー!俺、下で少し翅を休めてる!キリトに飛び方を教えたら報せてくれ!」
「あ、うん!わかったー!」
腹を抱えて本格的に笑うリーファにそう声をかけ、俺は地上に降り立った。シュッ、と音を立てて翅が消失する。
さて、何をして時間を潰そうか。
「……そういえば、近場にいたプレイヤーがキリトで、連れているピクシーがユイだったのにカナは驚いた様子がなかったな」
俺はキリト達だと気付いた時に結構驚いたのに、胸ポケットにいたカナからはそういった反応が何も感じられなかった。
ふと疑問に思った俺の呟きに、衝撃の答えが返される。
「ワタシはあそこにいたプレイヤーの所有しているナビゲーション・ピクシーがMHCPー01であることは知覚していました。そこから、プレイヤーがキリトであることも推測していました。驚く理由がありません」
「は?理解してたのか?」
「はい。カイにもそのように伝えましたが」
「は?」
さっきから「は?」しか言えなくなってる。そのくらい驚きが大きい。
え、伝えられたか?いつ?
「…………。あ、『ワタシ
「…………他にどういう意味が……?」
ワタシ同様の、つまり存在がSAOに由来するナビゲーション・ピクシーだと。
いやいや、普通ナビゲーション・ピクシーというシステム的な分類のことだと思うじゃん……。
そう伝えると、カナは少し驚いたような表情の変化を見せた。
こいつ意外と感情豊かだな?
「……今後は、カイに意図が正確に伝わるような説明を心がけます」
「……ああ、俺の方も意識しておく」
コミュニケーションって、人間同士だけじゃなくてAIとでも難しいのな。初めて知ったわ。
カナ相手に他にも色々と話していると、上空からリーファが声をかけてきた。
「おーい、カイくーん!そろそろ行くよー!」
「おう!わかった!」
リーファに返事をし、翅を出現させる。軽く震わせて、飛び立つ前にカナに声をかけた。
「んじゃ、行くか」
「はい」
「ほー、ちゃんと飛べるようになってんじゃん。キリトも流石だが、リーファ、教えるの上手いんだな」
「あたしは、そんな……キリトくんの筋がいいだけだよ。カイくんも、すごいね?飛ぶなんて珍しい行為、すぐにできるようになるなんて」
「まあ、たまたま得意だったってだけだよ。ところで、どこに行くんだ?」
「ちょっと遠いけど、北に行くと中立の街があるから、そこにしようかなって」
「あれ?スイルベーンって街が近いんじゃないのか?」
俺とリーファが行き先の相談をしていると、キリトがそんなことを言い出した。
あー、これユイからそこまでは聞けてねえのか。
だが、俺がどの程度知ってても違和感がないかが不明瞭だ。俺が説明しなくてもリーファがしてくれるだろうし、無駄にでしゃばるのはやめとこ。
「キリトくん、ホントに何も知らないんだね……スイルベーンはシルフ領なんだよ?」
「何か問題でも?」
「問題っていうか……街の圏内じゃキリトくん達はシルフを攻撃できないけど、逆はアリなの」
「なるほどね。でも、皆が即襲ってくるわけでもないんだろ?リーファもいるしさ」
「うーん、まあそうなんだけど……カイくんは?」
「ん、まあ俺もスイルベーンでも大丈夫だぞ。むしろ1回襲われてみたいな……どの程度の対応まで可能なのか、知りたくもある」
「「うわぁ……」」
「オイお前らハモるのやめろ。その目もやめろ。オイやめろって」
ドン引きしてます、という態度と表情。
キリトはまだしも、なんで今日初対面のリーファから2度もドン引きされなきゃいけないんだ。
「まあ、それは置いといて。目的地はスイルベーンでいいってことね?」
「うん」
「異議なし」
「じゃあ、付いてきて」
リーファが先導して飛翔する。その後をキリトとユイが追い、俺は最後尾からカナとともに付いて行った。
あいつらの会話内容が一応聞こえるくらいの距離を保ちながら、俺はカナに小声で訊ねた。
キリト達は飛ぶことの楽しさなどを語り合っている。ザ・雑談だな。
「なあ、カナ。この世界の各種族のホームタウンの位置を示したワールドマップ。あるか?」
「お待ちください……ホームタウンの位置まで示したワールドマップはゲーム内に存在しません。そういった仕様のようです」
「そうか……」
「現実世界に範囲を広げて検索します」
そう言うや否や、カナは俺の胸ポケットに身を滑らせた。
現実世界から情報を持ってくる場合、飛行が覚束なくなる程集中する必要があるのか。覚えておいた方がよさそうな情報だ。
1分程して、カナが胸ポケットから顔を覗かせた。
「お待たせしました。複数のプレイヤーが作成し、特定のグループのみで公開している地図がありましたので取得してきました。組み合わせたものをゲーム内で使用できるワールドマップに重ねておきます」
「ありがとう、助かる」
「カイくーん」
「うん?」
カナと話していると、リーファが声を掛けてきた。なんだ?
「もうちょっとスピード出してもいい?」
「急にどうした?」
「キリトくんに煽られちゃってねー」
「いや、事実だけど……なんか言い方がなぁ」
「キリトのせいか、じゃあ仕方ねえな。付いてくから、遠慮すんな」
「りょーかいっ」
「カイまでそんな言い方しなくても……」
キリトが不貞腐れる中、リーファが楽しそうに笑いながら加速しだした。
キリトはそれに追随し、表情を朗らかなものに変えていく。
まあ、2人の気持ちはわかる。飛ぶのは楽しい。とてもな。
じわじわと加速していたリーファだったが、恐らく俺達に多少配慮してたんだろう。多くの場合は付いていけねえのかな?
ぴったりと付いてくる俺達を見て驚き、口許を引き締め、急加速に入った。
……速いな。最大スピードか?
俺達もしっかり付いていくが……風切り音がすげえな。大声を出さないと声が届きそうにない。
と、視界内で何かが動いた。
……ああ、ユイか。スピードに付いていけなくなったのか、キリトの胸ポケットに滑り込んだようだった。
それを見て、顔を見合わせて笑うキリトとリーファ。
うーん、マジで声が聞こえん。
そのまま、俺が妙な孤独感に包まれながら飛翔していると、遠くに輝く街が見えてきた。
みるみるうちに大きくなっていく。それ程、俺達のスピードが出てるわけだな。
キリトが声を張り上げる。
「アレか!?」
「そう、アレがあたし達シルフ領の首都!スイルベーン!」
「へえ、すごいな!」
「前方に見える、一際大きな塔の根元に着陸するわよ!!」
キリトとリーファが大声で会話している。あのくらいの声だと俺にも聞こえるな。
…………って、着陸?
「そういえば、キリトくん、カイくん……2人とも、ランディングのやり方解る?」
リーファも同じ懸念事項に気づいたのか、俺達にそう訊ねてきた。
「俺は解るが……キリト、着地に失敗してたような……?」
「………………解りません」
「あ、えーっと……」
キリトの答えに、リーファはどう説明しようか迷うような素振りを見せ────。
「ごめん、もう間に合わないや……こ、幸運を祈るよ!」
「悪ぃな、キリト」
「そ、そんなぁぁぁああああああ!?」
諦めた。
俺は大きく翅を広げて空気抵抗を急増させ、急制動を掛ける。
流石にあのスピード、身体に掛かる負担も大きいが……俺とリーファは難なく塔の根元に着陸する。
上の方から「べちんッッッ!!!」という、めっちゃ痛そうな音がした。
…………すまん。いやホントに。
「酷いよリーファ……カイも……」
「ご、ごめんって。
恨みがましく俺とリーファを見上げるキリトに心が痛んだか、リーファがキリトに回復魔法を掛ける。
うーん……予想した通り、単語の羅列っぽいなぁ。今のリーファの発音とカゲムネがしていた発音は異なるように思える。
「お、おおっ!これが魔法かぁ。俺にも使えるのかな?」
キリトが魔法の効果に驚きながら、そんな疑問を口にする。
その表情は「使ってみたい!」という感情に溢れているが……俺はどうもなぁ。肉弾戦で良くねえかと思っちまう。読まれにくいし。
「うん、これは使えるよ。種族毎に適性があるから、中々使えない魔法はあるけどね」
「スプリガンってのは何が得意なんだ?」
「スプリガンは幻惑系とトレジャーハント系。戦闘向きじゃあないわね。インプは
「えぇ……」
「マシって表現が笑えるな」
まあ、デバフ要員は「いて邪魔になる訳じゃないけど別にいなくてもいい」枠な印象があるからわからなくもねえけど。
「────リーファちゃ〜〜〜〜ん!!」
「あ、レコン」
向こうからシルフの少年がリーファの名前を叫びながら走ってきた。知り合いみてえだな。
「無事だったんだね!」
「うん、何とかね」
「あの人数相手に、流石リーファちゃん────って、スプリガンにインプ!?」
レコンと呼ばれた少年が1歩跳び退り、腰のダガーに手を掛けた。
いや、気づくの遅ぇよ。
リーファが慌ててレコンに告げる。
「あ、大丈夫。この人達が助けてくれたのよ」
「キリトだ。よろしく」
「ニューカイだ、カイって呼んでくれ。さっきの言い方だとリーファと一緒だったのか?すまねえな、間に合わなくて」
「あ、いえいえどうもご丁寧に……じゃなくて!」
握手に応じるのかと思ったら頭を振ってまた構えた。忙しい奴だな。
「大丈夫なの!?スパイとかじゃ……」
「うーん、大丈夫だと思うよ。スパイにしちゃキリトくんは天然ボケが入りすぎで、カイくんは悪目立ちしすぎ。問題行動ばっかりですぐに目をつけられちゃうよ」
「うわ、ひっでえ」
「あのなぁ……」
あんまりな言い分に軽く抗議の視線を送るが、リーファは堂々としたものだった。
「だって、普通の人は他種族領で攻撃されて、どの程度までの対応が可能か試してみたいなんて言わないもん」
「あ、それは頭おかしいね」
「おいコラ。喧嘩売ってんなら買うが?」
「ハハッ。散々な言われようだな、カイ」
ひでえ話だ、全く。
「確かにスパイっぽくないっていうのはわかったよ。で、リーファちゃん。シグルド達がいつもの場所取って待ってるから、早く行こう?」
「あー……今日はいいわ。この人達に1杯奢る約束してるから。4人で分配しちゃって」
「えー」
「じゃ、次の狩りの時間とかはメールちょうだい。参加できたらするから。お疲れ!」
リーファはそう言って、オブジェクト化させた布袋をレコンに手渡した。
なるほど、レコン以外にも複数人とパーティーを組んでるんだな。
俺は味方の人数が少なければ少ない程やりやすいと感じるタイプだから、こういう普通のパーティープレイをしている奴のことを素直に凄いと思う。しがらみとかクソ怠そう。
「じゃあ2人とも、付いてきて。奢るわ」
リーファの先導で、俺達はシルフの街を歩き出した。
というわけで、カイとキリトは少しずつ目的に向けて動き出しました。
カイ、自分から他人に戦闘吹っかけておいて何だか一番ノンビリしてたまでありますね。
カーディナルとも交流を深めて、多少わかり合ったようです。情報収集能力にめちゃくちゃ助けられてますね……ある意味いい相棒になってくれそうです。
これからカイがどう動くのか、お楽しみに。
では、また次回。