黒の剣士と紺の浮浪児   作:gobrin

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第五話 月夜の黒猫団

SAOがデスゲームとなってスタートしてから五か月程が経ったある日。

俺達は前線から十層以上も下のフロアの迷宮区に、息抜きついでに武器の素材アイテムの収集のために訪れていた。

 

俺達二人分の素材だったが、今の俺とキリトなら何の問題もない。

 

俺達はベータ時代の知識を使ったえげつないスタートダッシュと、経験値効率の良い狩り場を荒し回ったおかげというかせいというか。

まあともかく、そんな理由でキリトは最前線のMob共と単独でも渡り合えるし、俺に至ってはキリトよりもレベルが七くらい高い。

 

そんな俺達だと他のプレイヤー達と出会わないようにしながらでも一時間かからずに終わった。

かなりの量だったんだがな。これにはさすがの俺も驚きだ。

 

その帰りに、通路のモンスター群に追われながら撤退しているパーティーを見かけた。

 

見かけたんだが――えらく危なっかしいパーティーだった。

なにせパーティーの五人中、前衛を出来るのが盾持ちメイス使いの一人だけ。他は短剣のみのシーフタイプ、クォータースタッフ持ちの棍使い、長槍使いが二人。

前衛とスイッチできるやつがいないためにジリ貧だ。

 

HPバーを確認してみたら、なんとも微妙な残量だった。

ギリギリ出口まではいけるだろうが、途中で別のモンスターを引っ掛けたら危ういだろう。

 

俺達は視線だけで会話を試みる。

 

 

(――どうする?)

 

(―――――――)

 

(だよな。そうだよな)

 

(―――。――――――)

 

(そうだ。その通り。―――――――ダメだ、全然わかんねぇ)

 

 

言葉を交わさずに視線だけで理解し合うなんて幻想だな、幻想。

 

 

「キリト、わかんねぇわ。んで、どうする?」

 

「助けたい。助けたいけど……」

 

 

キリトがなぜ躊躇っているのか手に取るようにわかる。

ここは、俺がフォローするところだろう。

 

 

「大丈夫だ、任せろ。非難は俺が受ける」

 

「――悪い、カイ。俺は……弱い……」

 

「気にすんな。俺もお前に助けてもらってるからな。持ちつ持たれつだよ」

 

「――ありがとう、助かる。じゃあ、行こうか」

 

「おう。だが、スキルのレベルは抑えろよ?経験値の横取りはマズイ。やむを得ない場合はしょうがないけどな」

 

 

俺達は脇道から飛び出し、リーダーっぽい棍使いに声をかける。

 

 

「ちょっと前、支えてましょうか?」

 

 

棍使いは一瞬迷ったようだったが、すぐに決断した。コイツの判断力は眼を見張るものがあるな。リーダー向きだ。

 

 

「すいません、お願いします。やばそうだったらすぐに逃げていいですから」

 

「なら、俺は他のMobが来たら相手しとく」

 

「すいません、ありがとうございます。助かります。もし厳しかったら言ってください。できる限り援護します」

 

「無理はしなくていい。今は目の前の敵に集中しろよ」

 

 

キリトは前衛のメイス使いと数回のスイッチをしながら、ソードスキルのレベルを抑えながらも危なげなく戦っていた。

俺の方は暇だった。時折敵が来るものの、俺からしてみれば雑魚ばかり。

後ろを一瞬確認したが、全員が最初の戦闘に集中していたので、躊躇いなくソードスキルをぶっ放つことが出来た。全部一撃だった。

まあ、見られててもソードスキル使ってたけどな。そんな高レベルのソードスキルを使う必要がないレベルで弱い。

 

 

 

モンスター群を倒したとき、五人パーティーは『迷宮区でそんなに大声出して大丈夫か?』ってぐらいの声で喜びを分かち合っていた。

紅一点のサチは、目尻に水滴を浮かべていた。

キリトも握手を求められていた。

驚いたのは、俺にも握手を求めてきたことだ。大したことはしてないんだが。

 

俺達みたいな前線で戦う攻略組のプレイヤーは、いちいち助け合いで礼を言ったりしない。

そんなことよりもレベル上げの方が重要だし、いつ助ける側から助けられる側に回るかわからないからだ。

 

だから、そのパーティー――月夜の黒猫団の、一つの戦闘に対する真剣さというか……。

……なんと言ったらいいかわからないが、その輝きが俺達には眩しく見えた。

 

 

 

「俺達もこれから帰るんだ。もしよかったら、一緒に出口までいかないか?」

 

「いや、そこまでお世話になるわけには……」

 

「気にすんな。どうせ行き先は一緒なんだしな」

 

「―――心配してくれて、どうもありがとう」

 

「おう」

 

 

リーダー格の棍使いからそう礼を言われ、俺達は照れ臭くなってそっけない返事を返した。

 

 

 

迷宮区から主街区に戻った俺達は、酒場で一杯やりましょうというケイタ――リーダー格の棍使いだ――の誘いに乗った。

彼らにとっては簡単には手が出ないであろうワインで祝杯をあげて自己紹介も終わったとき、ケイタが聞きにくそうにしながらも俺達のレベルを聞いてきた。

 

それに答える前に、俺は一つの質問をした。

 

 

「その前に一つ――あんたら《ビーター》って言葉、聞いたことあるか?」

 

 

《ビーター》。それはベータテスターのベーターとズルをするチーターを掛け合わせたSAO独自の蔑称だ。

俺はキリトにそういった負の感情が向かないように、多少やりすぎた感もあったが、サボテンとナイトをノリノリで責め立てたわけだが……。

 

それがちょっといけなかったらしい。

俺にももちろん馬鹿にした様な蔑称がついたが、キリトもカタナスキルのことを知っていたことから俺と似た様な扱いになってしまった。

 

俺?俺も中々だぞ?《クソ浮浪児》とか《クソ遊び人》とかだ。

なんでも、武器をコロコロ替えるのが気に食わないんだと。

つっても、周りに知られているのは短剣と片手剣、曲刀を使うってことまでだけどな。

最近は面倒になったのか、『クソ』が取れたりもする。

 

ちなみに、ディアベルは追求を躱しきって、ギルドを作った。素直にすごいと思う。

奴は未だに俺達、いや、俺と目が合いそうになると目をそらす。どうでもいいか。

 

 

 

「ああ、知ってるよ。あまりいい噂は聞かないけど」

 

 

俺が敬語は止めてタメ口にしてくれと言ったから、タメ口で接してくれてる。

 

 

「じゃあ、《浮浪児》は?《遊び人》でもいい」

 

「それは知らないな」

 

「あ、俺知ってる。性格と口がすげえ悪いらしいぜ」

 

 

ケイタは俺のことは知らなかったようだが、サチじゃないほうの槍使い――ササマルが知っていたようだ。

―――それなら十分だ。

 

 

「俺達がその《ビーター》と、《浮浪児》だ」

 

 

会話が途絶えた。

沈黙が場を支配する。

 

――――ダメか。

この空気を受けて、俺は本気でそう思った。そして、当然だろうとも。

だが――――――。

 

 

「へー、そうなんだ。噂って当てにならないね」

 

 

という、サチの言葉で静寂が破られた。

 

それを皮切りに、他の全員も次々に口を開く。

 

 

「ああ、そうだな。俺達を助けてくれたし」

 

「本来なら助ける必要もなかったのにな」

 

「ついでだったとしても、迷宮区の出口まで一緒に行ってくれたし」

 

「他のモンスター群に襲われないようにカバーしてくれたしな」

 

 

そのリアクションに、俺達が驚いた。

まさか、そんな返しがくるとは。

 

こいつらがいい奴なのは迷宮区の帰り道だけで十分わかったが、今までたくさんの奴らに向けられてきた態度から、意地の悪い質問をしてしまった。

 

 

「そんな簡単に信じちまっていいのか?いい噂皆無だろ?」

 

「真偽のわからない噂よりも目で見て感じたことだろ」

 

 

ケイタに断言される。

 

 

「――そうか。さんきゅな」

 

「それで、レベルは聞いてもいいのか?」

 

「ああ、俺はいいが――キリトは?」

 

「俺もいいよ」

 

 

そして、俺達はレベルを伝えた。その高さにケイタ達は驚愕していたようだった。

――俺達はレベリングしまくってるから攻略組でも高い方だ――ということを伝えると、彼らは少し安心したようだった。

 

 

そして、ケイタは俺達にサチを槍から盾持ちの片手剣に転向させようと思っていることを伝え、キリトに指導してくれないか、と頼んだ。

キリトはそれを承諾し、ついでに俺も他の奴らに武器の扱い方と、使い勝手のいいソードスキルについて指導することになった。

 

一時的にキリトとパーティーを解消し、黒猫団にキリトが加入して実戦の中でコーチすることになった。

キリトは基本的に防御のみで、スイッチのタイミングやソードスキルのタイミングなどを指示していた。

 

俺は黒猫団に着いていき、彼らが休憩している間に実際に武器を使ってみせたり、どのスキルが使い勝手がいいのかを理由を含めて説明したりした。

皆、俺の扱える武器スキルの多さに驚いていた。他言無用はお願いしておいた。

こいつらなら大丈夫だろう。……不用意に信じすぎているかもしれないが、まあ、そうなったら俺の見る目がなかったってだけだ。

 

経験値ボーナスはほとんどが黒猫団に回ったので、彼らは順調にレベルが上がっていった。

メイン狩り場が一階層上がったある日、ケイタは俺達に夢を語ってくれた。

 

 

それは――自分たちも攻略組に加わりたい、気持ちが負けていなければ今は守られる側でもいずれ追いつける、という素晴らしいものだった。

――――俺達は、本気でそうなればいいと願った。

 

 

「ああ、今の調子でいけば大丈夫だろ。応援してるぜ」

 

「ありがとう、カイ。がんばるよ」

 

「おう。だが、無理はするなよ。レベルが上がったからって浮ついた気持ちでいると足下すくわれるぞ」

 

 

 

 

そのままいい調子でレベルも上がり、探索階層も前線に五階層というところまで迫り、ギルドホームの購入も視野に入り始めた。

 

他のメンバーは順調に戦い方が上手くなっていったのだが、サチの転向だけが上手くいってない様子だった。

それはキリトにしか任せるしかない、と思っていた矢先に、サチが宿屋から姿を消した。

黒猫団の他のメンバーは慌てたが、俺とキリトが索敵スキルの派生スキルの《追跡》を持っていることを伝えると落ち着いた。

 

 

「キリト。お前がサチのところに行け」

 

 

この中でサチと一番仲がいいのは誰だ、と訊かれたら、それはキリトではないだろう。

だが、今サチに必要なのは仲のいい友人よりも強い力だと感じた。それに、俺達くらいの距離の方がいいとも。

 

 

「ああ。わかった」

 

「あと、サチを説得するのはお前の役目だぞ。俺には出来ないし、他の黒猫団の奴らにも出来ない。プレッシャーをかけるつもりはないけどよ、俺はこいつらとボス攻略が出来たらいいなと思ってる。俺の我が儘かもしんねぇが、頼むわ。相談ぐらいなら乗れると思うからな」

 

「………ああ」

 

 

そう言って、キリトはサチを迎えに行った。

俺は皆の方へ向き直る。

 

 

「お前らにも不安があると思う。だけど、サチを信じて待ってやってほしい。俺達のことなら気にするな。息抜きついでっていう理由もあったんだ。それに、乗りかかった船だ。最後まで付き合うぜ」

 

 

黒猫団を代表し、ケイタが答える。

 

 

「……うん。わかった。サチを信じて待つよ」

 

「ああでも、期待をかけすぎるなよ?過度な期待はプレッシャーにしかならない」

 

「そうだね」

 

 

 

それからというもの、夜、サチがキリトのところじゃないと寝れないということで、キリトと行っていた深夜の経験値稼ぎが出来なくなった。

が、説得はキリトに任せるしかなかった。サチが一番心を許していたのはキリトだと感じたからだが、正しいのかはわからない。

 

それから少しして、ギルドホームを買うだけの金が貯まった。

ケイタが不動産に行っている間、迷宮区で金を稼いで家具も揃えてしまおうということになり、前線から三階層下という初の階層に挑んでいた。

チラリとサチの目を見ると、芯を持っている者の目をしていた。

 

 

『ここはトラップが多いから注意しろ』と言ったのにもかかわらず、攻略を終えてそろそろ帰ろうかというときになって、シーフ――ダッカーが宝箱を発見した。

それだけならよかったのだが――――。

俺とキリトは全力で止めたが、あいつは『俺達もレベル上がったから大丈夫だろ』と言って宝箱を開けてしまった。

 

そして、アラームがけたたましく鳴り響き、三つの扉からモンスターが怒濤のように流れ込んできた。

 

 

 

 

「馬鹿野郎!だから開けんなっつっただろうが!全員、転移結晶で脱出しろ!」

 

 

怒鳴りながら指示を飛ばす。

俺は短剣を構えて、臨戦態勢に入る。

半ば予想していたことだったが、その空間は結晶無効化エリアに設定されていた。

 

 

キリトが少し、黒猫団の全員がかなり、動揺していた。

 

 

そんな彼らに向かって一喝する。

 

 

「俺が一方向、キリトが一方向、黒猫団の四人で一方向を受け持って背中合わせに戦うぞ!!それしか生き残る道はねぇ!早くしろ!」

 

 

 

 

 

――正直に言うと、このとき俺は反応できるのはキリトだけだと思っていた。だが、もう一人―――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サチが、反応して、盾と剣を構え、敵の前に立ちふさがったのだ。

 

 

 

俺は、それを見てキリトがやってくれたことを確信し、また、サチの成長にとても嬉しくなった。

が、そんな悠長なことを言っている暇はない。

 

俺の前にいるモンスターの集団を短剣ソードスキル、高命中範囲攻撃《ラウンド・アクセル》でぶっ飛ばしてから激を飛ばす。

 

 

「おいこらお前ら!サチが動いてんのに男が動かねぇたぁどういう了見だ!?テツオとサチでスイッチしながらちゃんと回復してりゃこのレベルなら突破できる!ぼーっとしてんじゃねぇぞ!!」

 

 

その声で、やっとテツオ達が動いた。

テツオはサチといつでもスイッチできるように所定の位置に陣取り、ササマルは前線を後ろから援護する。

ダッカーは機敏に動き回り、少なくないダメージをモンスターに与えていった。

 

安定したようだが、気を抜かずに声をかけ続ける。

 

 

「こいつらはトラップで出てくるだけあって、少しだが強い!念のためHPが七割切ったら回復しろ!万が一ポーションがなくなったら俺達に言え!そして気を抜くな!そうすりゃ勝てる!」

 

 

さっき吹っ飛ばした敵は通常攻撃でしとめてある。

冷却時間が終わって、もう一発《ラウンド・アクセル》を放つ。

 

キリトの方を一瞥する。危なげなく敵を屠っているようだ。

片手剣ソードスキル範囲攻撃《ホリゾンタル》で俺と同様にまとめて敵を攻撃している。

 

 

俺が《ラウンド・アクセル》で攻撃した敵はすでに通常攻撃でポリゴン片と化していた。

一瞬で周りの状況を把握し、問題ないことを確認する。

ちなみにアラームトラップはすでに破壊している。これ以上Mobが湧き続けるなんてことはない。

 

 

俺の前方にいる敵は残り七体。

ここから連続攻撃でケリをつける!

 

《ラウンド・アクセル》の一撃で倒せていた敵に狙いを定めて、《アーマーピアス》を打ち込みポリゴン片にする。

残りは六体。どいつも一撃では殺れなかった。連撃で沈める!

 

短剣ソードスキル、五連撃重攻撃技《インフィニット》で三体をまとめて倒す。

 

残り三!

 

 

だが、ここで焦らずに周囲に視線を走らせ、状況を把握する。

キリトの方はあと六体か。黒猫団は十体以上いるな。

でもHPバーは心配なさそうだ。

スイッチを上手く使って受けるダメージを最小限に抑えている。いい戦い方だ。

 

 

敵に意識を集中する。

 

 

 

最近習得したこの技で――決める!!

 

 

 

短剣ソードスキル、高命中五連撃技《シャドウ・ステッチ》を発動させる。

 

流れるような五本の軌跡が、三体のモンスターの上を通過した。

 

 

「ドラァァアアア!!!」

 

 

俺の目の前で三体のモンスターが爆散エフェクトとともに消え去った。

 

 

 

 

 

 

硬直が解けた俺はすぐさま振り返る。

キリトは残りの敵を倒すために、最後にソードスキルを発動しようとしていた。

 

 

黒猫団の方も、モンスターを九体に減らしていた。

HPバーを見ても、全員八割以上残っている。これなら大丈夫だろう。

 

だが、相当なプレッシャーがかかっているはずだ。

凡ミスをしないとも限らないので、援護する。

 

 

「こっちは終わった!援護する!後少しだ!しっかり持ちこたえろよ!」

 

 

黒猫団の面々に激を飛ばし、モンスターの集団に突っ込む。

 

そして再び《ラウンド・アクセル》を使って、黒猫団がダメージを与えていた残り全てのモンスターをポリゴン片に変えて、戦闘は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モンスターを全滅させ、全員の無事を確かめた後、すぐに転移結晶で街に戻る。

 

ケイタが待っている宿屋に辿り着く。

 

扉を開けるとケイタが新しいギルドホームの鍵を机に乗せて俺達を――いや、違うな。

月夜の黒猫団の仲間達を、待っていた。

 

「みんな、お帰り。迷宮区に行ってたの?」

 

「そうなんだが……。悪ぃケイタ。すぐにでもホームに行きてぇと思う。でも、ちょっと俺に時間をくれないか?」

 

「……?うん。いいよ」

 

 

ケイタは首を傾げながらも、快く了承してくれた。

 

 

「さんきゅな。…………さて、と。時間ももらったことだし、早速説教タイムと行こうか………!!!」

 

 

ダッカーはガクブル状態になっていたが構わずたっぷりと説教をしてやった。一時間くらい。

ケイタには本当に悪いことをしたと思ってる。

 

謝ったら、普通に許してくれた。それだけでなく、一緒に説教もしてくれた。

まぁ、仲間が俺達が止めるのも聞かずに暴走したんだし、当然っちゃあ当然なんだが。

当たり前のことをしっかりと出来る奴は貴重だ。

 

さて、説教はこれくらいにするか。

 

 

「まぁ、動き始めた後はよかったぞ。しっかりと機動力を活かして戦っていたしな。テツオも、いいローテだった。お前も、後ろからいいアシストしてたぜ」

 

 

俺に褒められたのが意外だったのか、三人が目を丸くする。

 

 

「なんだよ。褒めちゃダメなのか。まさかお前らMか?貶されて嬉しくなるタイプか?」

 

「いやいやそうじゃなくって!あの戦いの中俺達を見る余裕まであったなんてすごいなーって」

 

「うんうん。俺目の前の敵で一杯一杯だったもん」

 

「カイを普通の人間と思っちゃいけない。コイツは化け物なんだ。比較してると自信なくすぞ」

 

「おいキリト。そりゃ言いすぎ――でもないかもしんねぇけどよ。もちっとオブラートに包んでくれや」

 

「それは悪かったな。次からは気をつけるよ」

 

 

キリトが不敵な笑みを浮かべながらそんなことを言う。

コンニャロ。今度初撃決着モードでデュエルさせよう。ボコボコにしてやる。

 

そして最後に――黒猫団の紅一点に話しかける。

 

 

「んで、サチ。俺はお前がどんくらい悩んでたかは知らねぇ。知ってても出来ることはなかっただろうしな。だからお前が吹っ切れたみたいで嬉しいぜ。今日はお前のおかげで誰も死なずに済んだ。ありがとな」

 

「ううん。お礼を言うのはこっちの方。あのときカイが怒鳴ってくれなかったら私は動けてなかったと思う。それにこんなに長い期間私たちと行動を共にしてもらって――戦い方とかも教えてもらえたし、何より気持ちを整理できた。それに今日は命まで助けてもらって―――カイ。それにキリト。本当にありがとう」

 

 

 

サチはその瞳に一粒の雫を浮かべ、綺麗に微笑んだ。

 

 

 

「アハハ……。僕が言おうと思ってたこと全部サチにとられちゃったな」

 

「あ、ごめん。二人にはちゃんとお礼を言いたくて」

 

「いいよ。僕たちも同じ気持ちだから。じゃあ、改めて。二人とも、僕たちに親身になって色々手伝ってくれて、本当にありがとう」

 

「そんなの気にすんなよ。持ちつ持たれつだ。なにせ――――お前らは攻略組に仲間入りするんだろ?」

 

 

ニヤリと笑いながらケイタに問いかける。

ケイタは一瞬キョトンとしたが、すぐににこやかな笑顔に戻った。

 

 

「はは、そうだね。うん。それが僕たちのひとまずの目標だ。カイ達のおかげで叶えられそうだよ」

 

「俺達はただ手伝っただけさ。皆ががんばったから、皆の夢が叶いそうなんだよ。なあ、カイ?」

 

「その通りだな。お前らの努力の結果だ。ま、俺達は最前線で待ってる。焦らずに、確実に実力をつけてこいよ」

 

「ああ、わかった。二人はもう行くのかい?」

 

「そうだな。もうお前らに教えることは特にないし、懸念もない。そこのおっちょこちょいがやらかすこと以外にはな」

 

 

その場が笑いに包まれる。ダッカーも、そりゃないぜ〜、と言いながら頬を緩めていた。

穏やかな雰囲気が場を包む。

 

 

「なら、ギルドホーム購入祝いと、二人への感謝を込めて、今日はホームでパーティーをしよう!二人ともそれでいい?」

 

「お、いいね!やろうぜ!」

 

「せっかくだから豪華にしたいよな。俺達も金を出すよ」

 

「え、いいよそんなの!悪いって!」

 

「気にすんなって。じゃ、行こーぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜、黒猫団のギルドホームで楽しい時を過ごして、俺達は次の日に彼らに見送られながら前線に戻った。

 

 




うーん。
途中、会話が少なくてあまり面白くなかったかもしれません。
すみません。

後半はなんとかカイらしくできたのかな、と思っておりますが。

それと、サチが前向きになった理由は作者の頭では思いつきませんでした……orz
でも、どうしても黒猫団は助けたかったんです。
キリトががんばった、ということにしておいてください。



次はいよいよあの娘が登場です!
カイがとてもカイらしい話になってくれると思います。


感想、質問その他、ダメ出しなどじゃんじゃん来てください。
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