黒の剣士と紺の浮浪児   作:gobrin

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圏内PKの話です。

カイの過去にちょっと触れるかも。
あと、今回カイがちょっとばかし荒れます。
ついでに推理力も冴え渡ります。




第八話 圏内PK

 

 

今、俺達は空を見ている。

 

 

別に立って見上げているわけじゃない。

寝転んで空を見上げているんだ。

 

 

今日はキリト曰く「最高の気象設定」らしい。

確かに言われてみるとそんな気もするんだが……。

自分で気づくってすごくね?

 

まぁ、そんな経緯でキリトにひなたぼっこするのを勧められてやってみてるってわけだ。

――これがすげぇ気持ちいい。最高の気象設定というのも納得だ。

 

 

シリカを誘おうと思ったんだが、今日はクエをやるらしい。

一人でやってみたいです!って満面の笑みで言われたら引き下がるしかねぇ。

なにかあったら無理せず離脱して、連絡しますって言ってたから大丈夫だろう。

 

最近シリカも戦い方がかなり上手くなってきたからな。

俺と組んでやる戦闘と一人でやる戦闘はもう大丈夫ってレベルまで上達した。

あとはパーティーでの戦闘だが………ま、何とかなるだろ。

 

 

 

――考え事してたらちょっと眠くなってきたな。キリトに相談して交互に寝るってのもありか。

よし、それならキリトに相だ――

 

 

「ちょっと、あなたたち。攻略組の皆が必死に迷宮区に挑んでる時に何のんびり昼寝してるのよ」

 

 

俺達の横の芝生が踏まれる音とともに、聞いたことのあるようなキツい声が上から降ってきた。

――うん。完全にアイツだな。

 

応対はキリトに任せよう。

 

 

「今日の気象設定は一年の中で最高だ。こんな日に暗い迷宮に潜ってたらもったいないだろ」

 

「天気なんて毎日一緒でしょ」

 

「アスナも寝転んでみればわかるよ」

 

 

俺達に声をかけてきたのはKoBの副団長であるアスナだった。

言うだけ言って、そのままキリトは寝返りを打ってしまう。

こいつ別に挑発してるわけじゃないんだよな?不安になってくるんだが。

 

ま、アスナが俺達と一緒に昼寝なんてするわけが―――――え?

 

 

「…………え?」

 

 

キリトは驚きを声に出してる。

 

俺は何とか堪えたが……。

……でも、え?何してんのこの人?突如寝転んだんだけど。まさか、マジで寝るつもりか?

 

キリトはキリトで知らない、というように目を閉じやがった。おいコラこの野郎。

 

…………え?ホントにどうすればいいの、この状況?

 

 

 

 

 

 

 

数分後。

 

キリトはうたた寝を、アスナは熟睡を敢行なさった。

 

 

…………はぁ。俺はボディガードじゃねぇんだぞっての。やるけどよ。

 

 

《圏内》でも寝ている相手の指を勝手に動かして、デュエルを無理矢理受けさせたり、トレードを了承させることが可能なのがこのゲームだ。

 

 

《圏内》――正確には《アンチクリミナルコード有効圏内》。この中では他のプレイヤーにダメージを与えることは基本的にできない。

どんなにプレイヤーにソードスキルを叩き込もうとしても紫の壁に阻まれて終わる。

 

だが、デュエルをすればその限りではない。デュエル中はダメージが通る。

それを利用して寝ている相手の指を動かして、《完全決着モード》のデュエルを受けさせ、殺す。

ということが実際に起こった。あの性根の腐った殺人者(レッド)の連中は嬉々として人を殺しやがる。

 

―――今度見つけたら絶対に殺す。

 

―――――過去の記憶が呼び起こされ、俺の心にものすごい憎悪が宿った。

 

 

 

 

ま、そんなこと今は置いといて。

 

てなわけで、デスゲームとなったこの世界では《圏内》でも場所を選ばずに寝ることは十分に危険なことなのだ。

もし今日の俺達みたいにしたいんだったら、《索敵》スキルの接近警報を使うとかの策はあるが。

 

ちなみにさっきも警報がなったから近づいてくるやつがいるのは気づいてたぞ。

それ以前に俺達熟睡はしてねぇし。

 

 

ま、この二人は俺の大事な仲間だからな。守るのは全然いいんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに二十分ほど後。

 

 

「ふわぁぁぁ〜〜。ん、ああ、カイ。ガードさんきゅーな」

 

「気にすんな。当然だ」

 

 

キリトが起きた。

 

 

「つーか、さっきからふざけてる奴らがいてよ。

記録結晶で撮ってくる奴らだ。いい迷惑だぜ」

 

「あー、ここ転移門広場に近いもんな。しかもアスナ。無理もないんじゃない?」

 

 

そう、いまキリトが言ったようにここ、中央広場は転移門広場のすぐ側だ。

今は昼前で行き交うプレイヤーが多いのも仕方がないんだが……。

 

 

「許可なくやってるってのが気にいらねぇ」

 

「だろうな。で?カイはそのままにしてたのか?」

 

「まさか。きちんとO☆HA☆NA☆SIして譲ってもらったよ」

 

「そうか。ならよかった」

 

 

そう、O☆HA☆NA☆SIだよ、O☆HA☆NA☆SI。大事なのは言葉(こぶし)だよな!

 

 

「じゃ、俺はこれからはそういう方面やるから、キリトは直接ガードしてやってくれ」

 

「おう、わかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――八時間後。

 

アスナは小さなくしゃみとともに目を覚ました。

寝すぎだろ。俺達昼飯抜きなんだぞ。

 

 

「……うにゅ………」

 

 

………寝ぼけているんだろう。謎言語を発したアスナはキリトを見上げ、顔色を立て続けに変えた。

赤→青→赤だ。多分羞恥→苦慮→激怒だと思われる。

恐らくアスナは何故キリトが自分の傍らであぐらをかいているのか瞬時に理解したんだろう。

 

そんなアスナにキリトは全力の笑顔で告げる。

 

 

「おはよう。よく眠れた?」

 

 

アスナの右手がピクリと震えたが、アスナはそこで自分の感情を抑えきったようだった。

あいつ、さては剣を抜きたくなったのを堪えたな?

キリトに静かに提案する。

 

 

「ゴハン一回何でも幾らでも奢る。それでチャラでどう」

 

 

でも、俺に気づいてねぇみてぇだな。

声かけるか。

 

 

「アスナ、俺は?」

 

 

その瞬間、アスナの動きが完全に止まった。

声で誰が声をかけたか理解したはずだが、確認のためかゆっくり俺のほうに顔を向ける。時間にして五秒。

そして、俺がいることを視覚でも確認して、その場でうなだれた。

 

 

 

 

 

 

 

気を持ち直したアスナが俺にも提案してきた。

 

 

「………カイも、ゴハン一回で、どう」

 

「んー、それよりも一回だけアスナの可能な範囲で俺の意見を後押しさせる権利がいいな」

 

「………そんなのでいいの?可能な範囲って言ったわよね?」

 

「ああ。アスナに、アスナの可能な範囲で俺の意見を、俺が望んだ時に一度だけ後押しさせることができる権利がいい。貸し一つってことでな」

 

「…………何を企んでるの?」

 

 

すげぇ言われよう。信用ねーのな。

 

 

「そんなんじゃねーよ。保険だ」

 

「保険……?」

 

「ああ。貸しはそれでよさそうだな。

っと、そうだ。ほいこれ。道行く奴らが記録結晶で撮ってったのをO☆HA☆NA☆SIで譲ってもらったやつ。

処分するなり何なり好きにしてくれ。

じゃあ俺は適当に食べ歩きでもしてるよ。

キリト、食べ終わったらメッセ飛ばしてくれ」

 

「ああ、わかった」

 

 

俺はキリト達と別れて、転移門のほうへ足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さーて、次は何を食べようかなっと」

 

 

転移門を使って五十七層に移動した俺は三つ目の屋台で軽めのものを買って食べた後、四つ目の屋台を探していた。

こういう食べ歩きは昔から好きだ。

………あの人達が好きだったからかな。

 

そんな感慨に浸っていると―――

 

 

「………きゃあああああ!!」

 

 

という悲鳴が聞こえた。

 

 

―――どこだ!?

 

――こっちか!!

 

 

声が聞こえた方向に全力で走り出す。

 

再度悲鳴が聞こえてきた。

その悲鳴を頼りに位置を把握する。

 

 

そこの広場!!!

 

 

通路から広場に飛び出す。

そこで展開されていた光景に俺は――

 

 

 

 

―――違和感と既視感を覚えた。

 

 

 

 

 

何だ?何が引っかかっている?

――いや、今はそんなことはどうでもいい。状況をすぐに把握!

 

 

広場の北側に教会らしき建物がある。

その窓からロープが出ている。

そのロープの先には、男がぶら下がっている。

その男が装備しているフルプレート・アーマーごと胸を貫き、短槍(ショートスピア)が刺さっている。

そしてその胸の傷口からは赤いエフェクト光が漏れ続ける。

 

あれは《貫通継続ダメージ》が発生している証拠だ。

 

 

キリトとアスナの姿が見られた。

 

 

「キリト!状況は!?」

 

「カイか!わからない!お前の投剣スキルでロープを狙えるか!?」

 

「了解、やってみる!」

 

「君は下で受けとめて!」

 

「わかった!」

 

 

アスナが建物の中にもの凄いスピードで飛び込んでいく。

 

 

俺はできる限り近い距離でピックを打ち出すために、敏捷ステータスの限りを使ってのジャンプを目論む。

建物の壁を使って高さを稼ごう。助走が必要だ。

……よし、行くぞ!

────走り始めてから俺はさっき感じたものの正体に気づいた。

 

 

 

――――――これで違ったら不謹慎極まりないな。

 

 

 

俺は一番高い地点に到達した瞬間、フルプレ男と視線を合わせる。

 

――そして、ニヤリ、とフルプレ男に笑いかけてみた。

 

…………フルプレ男の表情が失望――ではなく単純な驚きに染まった。

怒りの色がないその驚きは、死が迫るこの状況で浮かべるには適さない。

 

――となると、そうか。だが、目的はなんだ?

 

 

俺は落下に入りながら、ピックを取り出し、投剣ソードスキル《シングルシュート》を使う。

ピックは俺の狙いと寸分違わず、()()()()()()()()

 

俺の落下の途中で、音声エフェクトとともに、男の姿はポリゴン片を残して消えた。

 

男を貫いていた短槍が広場の床に突き刺さる。

 

 

たくさんのプレイヤーの悲鳴が重なる中、俺はある物を探していた。

キリトも探しているのが見える。

 

 

――《デュエル勝利者宣言メッセージ》だ。

これが出てしまうと俺の考えが全く違うということになり、俺がただの薄情なクズ野郎になる。

しかもさっきの男が本当に死んでしまったということと同義でもあるし。

 

それはどちらもごめん被りたい。

 

 

キリトが周囲の喧騒に負けないように声を張り上げる。

 

 

「みんな!デュエルのウィナー表示を探してくれ!」

 

 

デュエルの表示は三十秒で消えてしまう。

もう男が消えてから十秒くらい経つ。

デュエルのウィナー表示がどこに出るかは知らないがそんなに離れることはないだろう。

 

中に出てるのか。

それだと最悪だがアスナが見つけているはずだ。

 

アスナが窓から身を乗り出した。

 

 

「アスナ!ウィナー表示あったか!?」

 

「無いわ!システム窓もないし、中には誰もいない!!」

 

 

キリトの問いかけにアスナが叫び返す。

 

 

「ダメだ……。三十秒経った……」

 

 

誰かの呟きが聞こえた。

誰も表示を見つけられなかったようだ。

 

皆の心情を考えると不謹慎極まりないが、俺の考えの第一段階は突破した。

 

 

 

 

 

 

俺が念のため外で建物の入り口を見張っていると、中を調べていたキリトとアスナが出てきた。

 

 

「お疲れ。中に誰かいたか?」

 

「いや、いなかった。誰も出てきてないよな?」

 

「俺達の索敵スキルで看破(リビール)できないアイテムはまだドロップしてないよな?なら、誰も出てきてねぇよ。

動きながら俺の索敵をごまかすのは《隠蔽(ハイディング)》スキルを完全習得(コンプリート)してても多分無理だしな」

 

「それは確かな情報なの?」

 

「アルゴに協力してもらって調べたことがある。

あいつの隠蔽スキルでは無理だった」

 

「アルゴで無理なら恐らく誰にもできないだろうな……。

すまない、さっきの一件を最初から見てた人、いたら話を聞かせてほしい!」

 

 

詳しいステータスは買ってないからわからないが、アルゴのことだ。

どうせ隠蔽スキルや聞き耳スキルといった補助スキルが特に高いに違いない。

 

キリトが手をあげて野次馬に呼びかける。

すると、一人の女性プレイヤーが出てきた。

 

ビクビクしている女の子に、アスナが優しく話しかける。

 

 

「ごめんね、怖い思いしたばっかりなのに。あなた、お名前は?」

 

「あ……あの、私、《ヨルコ》っていいます」

 

 

この声……悲鳴を上げた本人か。

 

 

「もしかして、さっきの……最初の悲鳴も、君が?」

 

 

キリトも気づいたようで、確認をとっている。

 

 

「は……はい」

 

 

ヨルコは頷いた。

そして、瞳に涙を浮かべながらポツポツ話し始める。

 

 

「私………さっき、殺された人と……友達だったんです。

今日は、一緒にご飯食べにきて……でもここではぐれちゃって……そしたら………」

 

 

それ以上は言葉にならなかったのか、両手で口を覆った。

 

アスナがヨルコを教会の中へ導いて長椅子に座らせ、自身も隣に腰を下ろし、ヨルコの背中をさする。

俺とキリトは少し離れたところに立って、ヨルコが落ち着くのを待っていた。

 

少しは落ち着いたのか、ヨルコがアスナに礼を言って、再び話し始めた。

 

 

「あの人、名前は《カインズ》っていいます。昔、同じギルドにいたことがあって……。

今でも結構仲がよくて、今日も晩ご飯を一緒に食べるはずだったんですけど、見失っちゃって……。

それで、辺りを見渡してたら、ここの窓からカインズが落ちてきて、宙吊りに……。

しかも、胸に槍が刺さって………」

 

「そのとき、誰かを見なかった?」

 

 

アスナの質問に、ヨルコは一瞬黙り込む。

そして、躊躇うように頷いた。

 

 

「はい、後ろに誰か……いたような気が、しました……」

 

「その人影に、見覚えはあった?」

 

 

再度のアスナの問いに、しかしヨルコはわからないというように首を横に振った。

そこに、キリトが問いかける。

 

ちなみに俺は、さっきから自分の考えをまとめるのに必死だ。

話は聞いてるが、質問する気はない。

 

 

「その、嫌なことを聞くようだけど……心当たりはあるかな……?

カインズさんが、誰かに狙われる理由に……」

 

 

確かに嫌なことだが、聞かないわけにもいかないだろう。

だが、この問いにもヨルコは首を横に振った。

 

 

「そうか、ごめん」

 

 

キリトが端的に謝った。

 

 

 

 

 

 

一人で下層に戻るのが怖い、というヨルコを宿屋まで送り届けた俺達は、ひとまず現場に戻った。

 

そこには攻略組を主なメンツとした、二十人弱が残っていた。

 

キリトとアスナが、死んだプレイヤーの名前がカインズであること、殺害の手口が不明であることを伝えた。

未知の《圏内PK》の手段があるかもしれない、ということも。

 

キリトの、当面は街中でも気をつけたほうがいい、という警告を広めてくれ、という依頼を大手ギルドのプレイヤーが受諾し、解散した。

 

 

「さて…………次はどうする」

 

 

キリトの問いかけに答えず、自分の用件を告げる。

 

 

「キリト、悪い、俺はあんま協力できねぇ。

…………お前ならわかると思うが」

 

「ああ、わかってる。俺とアスナで調べるよ。

ただ、なんかあったら呼ぶかもしれないから、その時は協力してくれ」

 

「ああ、わかった。………すまねぇな」

 

「気にするな」

 

「……本当に、すまねぇ」

 

 

――――俺はこの事件の真相に気づいちまった。

動機まではわからねぇけど。

 

でも、相棒を騙すことに変わりはねえ。

だから、すまねぇ。

 

 

「ちょっと待って、それはどういう――」

 

「アスナ、いいんだ」

 

 

アスナが俺を問いただそうとするのをキリトが遮る。

俺はもう一度キリトに「悪ぃな」と告げて、転移門に足を向けた。

 

後ろでアスナがキリトに詰問していたが、キリトは答えなかった。

――本当、いいダチを持ったな、俺は。

 

俺は、転移門を使って、始まりの街に転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

始まりの街には、《生命の碑》というものがある。

 

そこにはアインクラッドにいる全プレイヤーの名前が記されており、死亡したプレイヤーの名前には横線が引かれる。

日時と、死因もだ。

 

さっきヨルコは、《カインズ》の綴りは《Kains》だと言っていた。

つまり―――()()()()()()()()()()()()()()()

そして、《Kains》のほうのカインズ氏は、すでに死んでいるのだろう。

――違う綴りのカインズ氏が消えたのと同時刻。しかし去年の同時刻に。

 

………考えられる綴りは《C》で始まる綴りか?

《K》で始まると、確認された時にバレやすくなるだろうし。まあかなり偶然が重なった結果だろうけど……。

 

よし、《C》のところを探そう。

 

 

 

 

 

 

 

十数分後、俺はヨルコが泊まっているはずの宿屋に来ていた。

 

今日の出来事に恐怖している、ということになっているから、さすがに部屋にいるだろう。

 

 

ヨルコの部屋の前に着き、扉をノックする。

 

 

「夜分遅くに失礼するぜ。事件のとき、キリトやアスナと一緒にいたもんだ。

ニューカイっていう。ちょっと話がしてぇ。部屋に入れてくれると嬉しいんだが」

 

「……な、何の話でしょうか……?」

 

「カインズについてもう少し話を聞いておきたくてな」

 

「…………どうぞ」

 

 

扉が開き、中に通される。

椅子を勧められたから、それに座る。

ヨルコがベットに座ったのを見て、話を切り出した。

 

 

「《カインズ》―――《Caynz》。これが今日消えたほうのカインズ氏の本当の綴りだ」

 

 

俺の言葉に、ヨルコの肩が震えた。

 

そして、数十秒後、観念したように声を出した。

 

 

「―――――どうして、わかったんですか?」

 

「最初に感じたのは、既視感だ」

 

「既視感?」

 

「ああ。あの貫通継続ダメージのエフェクト。あれに既視感があった」

 

「それは………当然なんじゃないですか?

あなたは、攻略組なんでしょ?」

 

「そういう意味じゃない。圏内で発生しているあのエフェクトに見覚えがあった。

俺は、とある事情で実験したことがある。

圏外で発生した貫通継続ダメージはどうなるんだろうってな。

圏内でダメージを発生させる方法を探していたんだが、そんなことはどうでもいい。

そのときは、違和感はあったが圏内でダメージは受けなかった。ダメージエフェクトはそのままなのにな。

そして、俺はこう思った。――装備品の耐久値はどうなるんだ?と」

 

 

そこで俺は一息つく。

ヨルコは黙って俺の話を聞いていた。

 

 

「実験の結果、耐久値は減ることがわかった。

防具に刺さったままだと、いずれ耐久値が全損する。

耐久値が全損したとき、どんなことが起こるのかは知っての通りだ。

――防具のサイズに合わせた爆散エフェクトが発生する。

あのときの光は、カインズ氏の爆散エフェクトじゃない。

フルプレート・アーマーのものだ。

それと、同時に発動された転移結晶の光だな」

 

 

ヨルコに目線で尋ねる。

 

――あっているか、と。

 

ヨルコはため息とともに答えた。

 

 

「正解です」

 

「それと同時に感じたのは違和感だ。

なにかのPK手段があって、デュエルじゃなかったとしても、あそこまで完璧に短槍が刺さるとは思えない。

しかも、わざわざフルプレ纏ってあんな教会の二階に行く必要ねぇだろ。

なら、その辺で刺して回廊結晶で飛ばした?

いや、そんな目立つことしたら確実に誰かに気づかれる。

それに、本当にダメージを与える方法があったんだとしたら、あんなことしたらすぐさま死ぬぞ。

ロープにくくりつける時間も必要だしな」

 

 

再び一息つく。

ヨルコはただじっと俺を見つめていた。

 

 

「さらに、アンタの話を聞いて違和感が増した。

なんで飯を食いにきたのにフルプレを着込む必要がある?

明らかに不自然だ」

 

そして、結論を述べる。

 

「つーわけで、カインズ氏は生きてると踏んで、確認しに行ったわけだ。

ここまで派手にやったんだ。名前の間違いからバレるようなヘマはしてないはずだ、ってな。

だから、お前に教えられたほうの《Kains》じゃないほうの《カインズ》を探して来たのさ」

 

「………はぁ。

それで、どうしますか?

このことを、周りに知らせます?」

 

 

ため息とともに、ヨルコは完全に諦めたような声色で話す。

 

 

「いや、それは動機を聞いてみねぇと何とも言えねぇな。

あれは見せしめって感じがしたし。

というわけで、俺に動機を教えてくれねぇか?」

 

「……え、ええ。わかったわ」

 

 

ヨルコは目を丸くしながらも、了承してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ヨルコの話をまとめると、こうだった。

 

 

《黄金林檎》というヨルコやカインズが所属していたギルドがあった。

そのギルドは毎日の宿代と食事代を稼ぐために狩りをする、といったタイプのギルドだった。

だがある日、中層のダンジョンでレアアイテムをドロップした。

それをパーティーメンバーの誰かが装備して使うか、売却するかで意見が割れた。

多数決の結果、五対三で売却になった。

反対派は、カインズ、ヨルコ、それと、《聖竜連合》リーダーのシュミットだったそうだ。

それを受け、ギルドのリーダーが前線の競売屋に委託して、オークションで売ることになった。

―――だが、そこで悲劇は起こった。

そのリーダーが、殺害されたというのだ。

《睡眠PK》。寝ている相手にデュエルを受けさせ殺すやつだ。

だが、ヨルコとカインズは納得がいかなかった。

なぜそんなにもあっさりとリーダーが殺されてしまったのか。その理由は何なのか。

その後、シュミットが急激に力をつけたため、あいつに何かあると睨んでいたらしい。

そして、《Kains》さんが死亡しているのに気づいた二人は、今回の作戦を思いついた。

――――すなわち、いもしない復讐者を作り上げ、恐怖にかられた犯人をあぶり出す作戦を――。

 

 

「――それで、ギルドの副リーダーで、リーダーの《旦那さん》でもあった《グリムロック》さんにお願いして、あの短槍を作ってもらったの」

 

「―――待て、旦那だと?」

 

「ええ、といっても、このSAO内の、だけど。

知らない?結婚システム」

 

「いや、知ってる。幾つか質問があるんだけど、いいか?」

 

 

俺はとあるプレイヤーに送るメッセージを作成しながら質問する。

 

 

「ええ、いいわよ」

 

「まず一つ。シュミット以外に、いきなり金銭的に充実した奴はいるか?」

 

「いいえ、いないわ」

 

「じゃあ二つ目。アンタらはその《グリムロック》って奴に作戦を全部教えたのか?」

 

 

メッセージの作成終了。送信。

 

 

「ええ、話したわ。それが礼儀だと思ったし」

 

「なら最後だ。その作戦の終着点は、どこだ?」

 

「シュミットに、あの日何があったか言わせること。

私達は事件の真相がわかればいい。

多分、シュミットは第十九層にあるリーダーのお墓に懺悔しにくると思う。

そこでの供述を全部録音して、真意を問いただして、終わり、かな?」

 

 

返信。え、早すぎね?どんだけ暇なんだアイツ……。

その内容を見て、確信する。

 

聞きたいことを聞き終えて、俺は、この作戦の()()()()()()()()()()()()()()

 

…………だが、これをヨルコ達に伝えるのは得策じゃねぇな。

 

 

「…………わかった。

んで、この作戦のことだが、自主的には口外しない。

キリト達が真実に辿り着いたら、話すけどな」

 

「本当!?」

 

「ああ。だが、一つ条件がある」

 

「……なにかしら?」

 

 

ヨルコが訝しげに尋ねてくる。

 

 

「作戦の最後の懺悔のとき、俺も一緒に居させてくれ」

 

「………え?」

 

 

ヨルコが何を言ってるんだろうこの人は?的な目で見てくる。

 

 

「頼む。そこで聞いたことは他言しないし、懺悔中に出ていくこともしない。ただ居させてくれればいい」

 

「……ええ、わかったわ……?」

 

「助かる」

 

 

ヨルコに了承をとって、フレンド登録した。

これで、いつでも連絡が取れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

ヨルコと別れ、俺は先ほど考え至ったことを夜道で呟く。

 

 

「…………俺の考えが合っていれば、最後の場面、殺人者(レッド)の奴らが出てくる」

 

 

………………上等だ。出てきた奴ら全員――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()

 

 

 




一話で終わらせると結構長くなりそうだったので、分けることにしました。

次回、圏内PK騒動が終わります。

カイの過去がちゃんと明かされる予定です。
あくまでも予定です。
予定は未定です。
善処します。


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