英雄の箱庭生活   作:英雄好きの馬鹿

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 あけましておめでとうございます!

 今年も不定期更新になると思いますがよろしくお願いします!

 ということで新年開幕投稿です!


ノーネーム

~エミヤ視点~

 

 まさかあんな激流から身を守るような盾を光一が用意できるとも思わなかったし、さらに言うと泡の盾が削られていったときに明らかに防げないとも思った。

 

 それがどうだ。

 

 攻撃が始まってから止むまでの三秒間きっちり守りきったのだ。

 

 それはなかなかの衝撃だった。

 

 そしてそれ以上に衝撃を受けたのはさっき十六夜と呼ばれた少年の事だ。

 

 数百トンの水を持ち上げるほどの嵐を片腕をなぎ払うだけで防いだのだ。真租の吸血鬼でも出来るか怪しい。

 

 さらには仮にとはいえ錬鉄の英霊とまで言われた私に迫るか、または越すほどの速さで走っていた黒ウサギと呼ばれた少女もいる。

 

 この世界にはそんな埒外の猛者がごろごろいるのかと思うと辟易する。

 

「おい、どうした? ボーっとしてると胸とか脚とか揉むぞ?」

 

 そういいながら十六夜と呼ばれた少年は黒ウサギと呼ばれた少女へ近づき手を伸ばす。

 

「な、ば、おば、貴方は馬鹿です!? 二百年守ってきた黒ウサギの貞操に傷をつけるつもりですか!?」

 

「二百年守ってきた貞操? うわ、超傷つけたい」

 

「お馬鹿!? いいえ、お馬鹿!!!」

 

 黒ウサギと呼ばれた少女は最初は疑問形で言っていたのを確定形に直して言っている。

 

 それにしてもこの黒ウサギと呼ばれた少女は二百年も生きているのか。

 

 体は出るところは出ているし腰まで伸びた藍に近い黒髪。肌に張りはあるし、しわの一つも見えない。

 

 まったく二百年も生きているように見えない。

 

「で、そこの観客二人は誰だ? 黒ウサギのコミュニティの仲間か?」

 

 十六夜と呼ばれた少年は黒ウサギと呼ばれた少女に質問をする。

 

「いいえ、この人たちは黒ウサギの入っているコミュニティの仲間ではありません。さっき道でぶつかってしまったので十六夜さんを探すのを手伝ってもらってたんですよ」

 

「へえ。俺は逆廻(さかまき) 十六夜(いざよい)だ。お前らは?」

 

「私はエミヤシロウ。エミヤでもシロウでもかまわない。そこの痛い中二病の奴は佐藤 光一だ」

 

「俺は別に痛くない! このかっこよさが分らないのか!」

 

「「ああ、わからん」」

 

 光一の反論に十六夜と被りながら答える。

 

 黒ウサギと呼ばれた少女は光一から目をそらしている。

 

「私のことは黒ウサギと呼んでください。どこのコミュニティに所属しているんですか?」

 

「コミュニティ? 何だそれは? 俺もエミヤもここに来たばかりなんだ。全く分らん」

 

 

「来たばかりで何も知らないとなるとコミュニティを説明前に、まずこの世界から説明しなきゃいけません」

 

 説明してくれるとは。幸運値がEのわりにいい人と最初に出会えたのは幸運だな。

 

「この世界は『ギフトゲーム』と呼ばれる神魔の遊戯をするための場所です! そしてこの世界にいる者はみんな特異な力を持っています! その特異な力は修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその“恩恵”を用いて競い合う為のゲーム。ここではギフトというと修羅神仏等から与えられた恩恵の事を指します。そしてこの世界――箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できるために作られたステージなのでございますよ!」

 

「おい、黒ウサギ。さっき俺たちに説明したのとほとんど同じ内容じゃねえか」

 

「それは呼ぶ前に練習しましたから。だからここでも使えるかと思ったんデスヨ」

 

 ふむ、つまりここは特別な力を持ったものが集まった遊び場で私達はそこに呼ばれた客という事か。

 

 さらに十六夜は先ほどこの世界に黒ウサギに呼ばれたのか。

 

 しかし最初の問題は分らない。

 

「それでコミュニティとは何だ? 箱庭とやらに呼ばれたという事は分ったが最初のコミュニティというのは分らなかったのだが」

 

「コミュニティというのはこの箱庭で生活するにあたって入らなければいけないでもので、ともにギフトゲームに挑む仲間達です!」

 

「つまりこの世界はギフトゲームと呼ばれるゲームをする場所で、コミュニティとやらはゲームをやる仲間か。そして俺たちはプレイヤーという事か」

 

「YES! もっともこの世界では自分がギフトゲームの主催者(ホスト)になる事も可能です! この機会にお二人とも黒ウサギのいるコミュニティに入りますか?」

 

 なかなかいい提案だな。人柄は悪くはなさそうだし面倒見も良いのであればずぶの素人の私たちにとって都合がいい。

 

「いや、ちょっと待ったほうがいいと思うぜ? 黒ウサギ、オマエ、何か決定的なこと隠しているよな?」

 

 一気に場が剣呑としたものに変わる。

 

 さっきまで軽薄そうに笑っていた十六夜の顔から表情が消えている。

 

 それを見てか黒ウサギの表情は固まっている。

 

「…………なんのことです? 箱庭の話ならお答えすると約束しましたし、ゲームの事も」

 

「違うな。俺が聞いているのはオマエ達の事――――いや、核心的な聞き方するぜ。黒ウサギ達はどうして俺たちを呼び出す必要があったんだ?」

 

 置いてけぼり感は否めないがそれは光一もだろう。

 

 しかし黒ウサギも今の質問は意図的に隠していたのか動揺を必死に隠している様子がうかがえる。

 

「それは…………言ったとおりです。十六夜さんたちにオモシロオカシク過ごしてもらおうと」

 

 他にもすでに数人別の世界から呼んでいるらしい。

 

 そして黒ウサギは隠しておくべく事があったと。そういうことらしい。

 

「ああ、そうだな。俺も初めは純粋な好意か、もしくはあずかり知れぬ誰かの遊び心で呼び出されたんだと思っていた。俺は大絶賛“暇”の大安売りをしていたわけだし、他の二人も異論が上がらなかったってことは、この箱庭にくるだけの理由があったんだろうよ。だからオマエの事情なんて気にかからなかったんだが――――なんだかな。俺には、黒ウサギが必死に見える」

 

 このとき黒ウサギの動揺はついに表情に出てしまう。

 

 ちなみに私と光一は何が起こっているかすら分らない。

 

「これは俺の感だが。黒ウサギのコミュニティは弱小のチームか、もしくは訳あって衰退しているチームか何かじゃねえのか? だから俺たちはコミュニティを強化するために呼び出された。そう考えるといろいろな事に納得がいく。――――どうよ? 一〇〇点満点だろ?」

 

「えーっと、つまりそこの黒ウサギの所属しているコミュニティとやらは今ぼろぼろの状態なのか。そして今の状態を隠して呼び出した三人を自分のコミュニティに入れようとしていたと。そういうことか?」

 

 ここで光一が口を挟む。ここで口を挟めるだけの勇気は私にはなかったのだが五十六億も世界を救った英雄様は関係ないようだ。

 

「んで、この事実を隠してたって事はだ。俺たちや、さっきこの世界に来たばっかのそこの二人は別のコミュニティに入る事が出来ると判断できるんだが、その辺どうよ?」

 

 黒ウサギは何も答えない。判断に困っているようだ。

 

「沈黙は是也、だぜ? この状況で黙り込んでも状況は悪化するだけだぞ。それとも他のコミュニティに行っていいのか?」

 

「…………話せば協力してくれますか?」

 

 黒ウサギが沈んだ声で言う。

 

「俺は内容によるが協力してもいい。どうせ右も左も分らないしな。エミヤはどうする?」

 

「私も同じだな。だが現在の状態は聞いておきたい」

 

 私は光一に賛同する。

 

 困ってる人を見捨てては置けないしな。

 

「俺は楽しそうであれば協力してやる。さっさと話せ」

 

 十六夜が言うと同時に全員の目線が黒ウサギに集まる。

 

 そこで語られたのはこういうことだ。

 

 まず、黒ウサギの所属しているコミュニティにはまず名前、そしてコミュニティを表す旗印、戦力、金。

 

 その全てがないそうだ。

 

 今はその他大勢――“ノーネーム”という蔑称で呼ばれているそうだ。

 

 昔は相当大きいコミュニティだったそうだが、魔王と呼ばれる存在によって全てを失ったらしい。

 

 現在戦える戦力は二名。

 

 現在十一歳のコミュニティのリーダージン=ラッセル。ギフトもあまり強くないらしい。

 

 そして黒ウサギ。しかしいろいろな制限があるらしい。これは後述する。

 

 なのでリーダーの座はジンに譲っているらしい。

 

 そして魔王とは、主催者権限と呼ばれる権利をもつものが誰かに挑んだ場合必ず戦わなければいけなくなる権利を持ち、その権限を用いて自分のために力を振るう者達のことを指すらしい。

 

 黒ウサギのコミュニティに残されたのは魔王に奪われた仲間達の残した子供達百二十二人と黒ウサギ。

 

 そして莫大な広さを持つ居住区。そしていくつかの武具類だけらしい。

 

 しかし黒ウサギは仲間達の帰ってくる場所を守りたい一身で今の状態を保っているらしい。

 

 その後ひと悶着あって十六夜も「魔王? 何その全力で倒しても誰にも攻められなさそうな素敵ネーミングの奴がいんの? 倒したい!」といった事で十六夜もこのコミュニティに入るようだ。

 

 元気を取り戻した黒ウサギは十六夜に言う。

 

「ではそこの蛇神様にギフトを貰いましょう。十六夜さんは勝者です。文句はないでしょう!」

 

「そうだな。ほれ、あの蛇起こしてさっさとギフト貰って来い。その後は川の終端にある滝と“世界の果て”見に行くぞ」

 

「は、はい!」

 

「なに!? 世界の果てだと! 俺も見に行きたいぞ!」

 

「どうせ遠いのだろう。ほら担いでやる」

 

「え、ちょっ! せめて安全運転で頼む!」

 

 肩に光一を担ぐと文句の声が上がる。

 

 そんなに怖がられるとさっき以上に筋トレに励みたくなるものだな。

 

 こうして私達はノーネームというコミュニティに所属する事になった。

 

 ~エミヤ視点終了~

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