~光一視点~
うぷっ!
吐きそう。
というか吐く!
俺が世界の果てを見に来て一番の感想は“気持ち悪い”だった。
景色はもちろん綺麗だったがここに来るまでの道のりでエミヤがジグザグ走りや大跳躍、挙句の果てには十六夜がエミヤに「空中で十回転くらいしたらそこの中二病の奴面白い反応するんじゃね?」の一言で俺は空中に放り投げられた。
そこらのジェットコースターなんてぬるいどころか一週回って冷たいくらいの激しさだったぜ……
「どうです? 横幅の全長は2800mもあるトリトニスの大滝でございます。こんな滝は皆さんの故郷にもないのでは?」
黒ウサギが嬉しそうに解説をする。
俺もそのときになってようやく周りを見渡す事ができるようになったが――――
あまりの壮大な景色に一瞬思考が追いつかない。
風流だとか水の勢いがすごいとか言うちゃっちいもんじゃない。
あたり一面を覆い隠すほどの水。
莫大な量の水が滝となって流れ落ち、跳ね返った水が数多の虹を作っている。
横幅が広すぎて滝の河口が楕円形に見えるほどの滝。
そこから落ちた水の終着駅は遥か彼方まで続いていて、そして最後には“世界の果て”の境界を越えて空中に投げ出されている。
これが神様達が遊んですごすような場所の果ての場所か。
周りを見渡してみるとエミヤも十六夜も目をまん丸に開いて滝を見ている。
唯一余裕がありそうに楽しげな笑顔で見渡しているのは黒ウサギだ。
「本当にすげえな。それにしてもこの“世界の果て”の下はどんな感じになってるんだ? やっぱり大亀が世界を支えているのか?」
十六夜が独り言のようにつぶやく。
ん? 亀? 何だそれは?
「ふむ。地動説か。あれの内の一つに亀が世界を支えているという奴があったな。この世界は球状じゃなく平面のようだから亀が支えている可能性もあるのか」
地動説って確かガリレオ・ガリレイが否定した奴だっけ?
確かにこの世界は“世界の果て”が存在しているから球じゃないって事だし、神様達の遊び場だそうから亀が世界を支えててもなんら不思議はないのか。
「すみません。その質問は残念ながらNOですね。この世界を支えているのは“世界軸”と呼ばれる柱でございます。何本あるのかは定かではありませんが、一本は箱庭を貫通しているあの巨大な主軸です。この箱庭が球状ではなく平面という不完全な形をしているのはどこかの誰かが“世界軸”を一本引き抜いて持ち帰ったから、という伝説もあるくらいです!」
「はは、それはすげえな。ならその大馬鹿野郎に感謝しねえと」
「いや、世界を支えるような主軸をもって帰れるような人間がいるのかとか言う事を突っ込めよッ!」
十六夜がさも当たり前のようにスルーしているが大変な事だろう。
「それにしてもここは綺麗だな。私も世界各地を回っていたがこんな景色は見たことがない。もっとも私がいたのは主に戦場だがね」
「そういえばエミヤさんはヘラクレスと戦った事があるとおっしゃっていましたし、戦場にも居たって事はがどこかの英雄なんですか?」
「ああ、英雄と言っていいのかは分らんが、一応“錬鉄の英霊”と呼ばれた事はある。まあ英霊といってもやってた事はただの掃除屋だったがな」
「錬鉄の英霊? 聞いた事がありませんねヘラクレスの出てくる神話でそんな人はいなかったはずなのですが……」
「ああ、私が戦ったのはとある魔術儀式のときだからな。とある理由があって三回ほど出会ったが戦ったのは一回だ。……最も殺せた回数なんてたったの六回だがな」
「あの大英雄を呼び出す魔術儀式にヘラクレスを六回殺すってどんだけですか!? それにそんな働きをしたら神話になっててもおかしくないレベルの働きですよ!」
理解の範疇を超えたのか黒ウサギは頭を抱えている。
「こちらからも聞きたいんだが、この世界の人間達は皆あの大蛇を簡単に打ち払えるほど強いのか?」
「もしそうだったらこの箱庭はもう終わってますよ。十六夜さんが規格外なだけです!」
俺も、もし十六夜みたいなのばっかだったら裸足で逃げ出すぞ。
しばらくトリトニスの大滝の景色を見続けていると日がだんだん落ち始めてきた。
そしてもうそろそろ黒ウサギのコミュニティに行こうかという空気になったときに十六夜が口を開く。
「ま、こんなデタラメで面白い世界に呼び出してくれたんだ。その分の働きはしてやる。けど他の二人の説得には協力しないからな。騙すもたぶらかすも構わないが、後腐れないように頼むぜ。同じチームでやっていくなら尚更な」
「…………はい」
十六夜は黒ウサギが騙して自分のコミュニティに入れようとしていたときの事を言っているのだろう。
このことに関しては黒ウサギは反論する事は出来ない。
十六夜に対する後ろめたさからか目を合わせないようにしたまま答えていた。深く反省しているようだ。
「よし、これ以上残っていてもしようがあるまい。黒ウサギのコミュニティに行ってしまおう」
エミヤが号令をかけて出発し始める。
そして当たり前のようにエミヤの肩に担がれていく俺。
情けない事この上ない。
そして俺はそのままドナドナされていった。
~光一視点終了~