英雄の箱庭生活   作:英雄好きの馬鹿

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勝つための作戦

 ~エミヤ視点~

 

 光一から聞かされた作戦は別に特別なものではなかった。

 

 大体の人が捕まえると聞いたら想像できる事だろう。

 

 しかしそれを実行できるだけの作戦のつめ方が出来る奴はそう居ない。

 

 敵は数多くの本に出てきている幻獣。

 

 それも二百匹以上だ。

 

 更に言うとルール上右手を使えば一人は捕まえる事が出来るが、こちらの人数は三人。

 

 到底足りない数だ。

 

 つまり右手で相手に触れる事をせずに、空からやってくるグリフォンを飛ぶ事の出来ない私達が倒さなければならない。

 

 それを光一は、作戦を思い付いてからみんなに伝えるまでにかかった時間十秒。作戦をつめるのに要した時間五秒。

 

 たったこれだけの時間で思いつけるのは感心する。

 

 こいつがサーヴァントになったら心眼でも持っている事だろう。

 

 私も持っているがこいつの場合は、私の固有結界よりも遥かに使い勝手が悪い力、いやここではギフトか。使い勝手の悪いギフトだが応用の幅はいくらでもある。

 

 その分奇をてらう事が私よりも容易であろう。

 

 そして奇をてらうという事は予想し得ない別の勝利の可能性を生み出すことでもある。

 

 それが光一の強さなのだろう。

 

 

 

 

 

「よし。準備が出来たぞ!」

 

 そういって光一は立ち上がる。準備が出来たようだ。

 

「ねえ、本当にこれで出来るのかしら?」

 

 久遠嬢が不安そうに言う。

 

 まあ、それもしょうがない。光一がやっていた準備とは――――

 

「うむ! なかなか上手く描けた」

 

 ――――お絵描きだ。それも特大の。大きさは五百メートル四方くらい。

 

 紙を作ったのは私で、書いたのは光一だ。これを書くのに要した時間は二十秒。

 

 出来るだけ急いだがこれでも頑張ったほうだろう。

 

 しかし作戦を立てる時間のほうが短い位だな。

 

 このグリフォンが今の速度のままだと十秒後には私達が攻撃できる範囲くらいまで到着するだろう。

 

 はあ、私も初めて見た時にはものの見事にはまったからな。

 

 そこそこ良いの力なんだろうが、準備が必要な分すぐに使う事は難しいだろう。

 

「じゃあ久遠。俺が合図したらギフトを使ってくれ」

 

「命令されるのは尺だけど我慢してあげるわ。でも、失敗したら何をしてもらいましょうかね?」

 

「ああ、なんでも一つ言うことを聞いてやるよ。――――良し! 今だっ!」

 

「グリフォン達! 近くの物を捕らえて牢屋に入れなさい!!」

 

 久遠はグリフォンに命令(・・)する。

 

 その言葉はグリフォンに届くと同時に、何十体かのグリフォンは久遠嬢が命令したとおりのことをやり始める。

 

 すごいギフトだ。

 

 昨日聞いた時も凄いとは思ったが、まさか命令するだけで一度に複数体の幻獣を支配下に置くとはな。

 

 久遠嬢のギフトは聞いたところによると、何かを操るものらしい。

 

 彼女は生まれつきこの力を持っていて、命令すれば何でも言うとおりになってしまう世界で生きてきたらしい。

 

 そしてそんなときに黒ウサギからの箱庭への招待状が届いてこの箱庭にやって来たと言っていた。

 

 その結果はたった一言でグリフォンの群れを一網打尽にする。

 

 久遠嬢の命令を聞いたグリフォン達は命令の通りに久遠嬢が操りきれなかった者たちを捕まえる。

 

 そしてその様子を見た光一は右手を無駄に掲げて格好つけながら指を弾く。

 

「――ようこそ『無能箱庭(アルカトラズ)』へ」

 

 瞬間。

 

 さっきまで書いていた絵は見事に具現化する。絵といっても唯四角いだけの枠なのだが。

 

 それに従って具現化するのは五十メートル四方くらいの絵を描いた十分の一ほどのサイズの壁。

 

 久遠嬢の命令でグリフォン達は味方を捕まえて光一が作った檻の中へと連れて行く。

 

 それでも久遠嬢が操りきれなかった分のグリフォンはまだ五十は居るだろう。

 

 その残ったグリフォン達を殲滅するのが私の役目だ。

 

 朝から少しずつ貯めていた魔力を使って弓と矢を作り上げる。

 

 私が矢を出せるということは光一と出会ったときにフルンティング使った事で分っていたらしい。

 

 更に朝みんなでご飯を食べるために机を作った時に日用品も作れるのでは?

 

 といった疑問から紙を作れるだろうという事で私に墨の滲みやすい障子と墨汁のセットを作る事を依頼してきた。

 

 しかもその形状は何重にも折りたたまれている状態で投影しろとまで注文してくる。

 

 光一が墨で書くと網目状の模様ができる。これは一つ一つにグリフォンを容れる事が出来るのだろう。

 

 着実にやってきていたグリフォン達の中でも久遠嬢が打ち漏らしたのを矢で射り、壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)で矢を爆発させれば一撃で落とす事も可能だろう。

 

 更に言うと光一に言われて確信が持てたがグリフォンは翼を使って飛んでいるのではなく風を踏みしめるようにして飛んでいる。

 

 だから足を狙えば落とす事も可能そうだ。

 

 簡単な役割を決めるだけのような作戦だが必要なものは全て揃っている。

 

 捕まえるための檻。

 

 大多数を減らせる力。

 

 打ち漏らしをカバーできる技術。

 

 そしてクリア条件の捕まえた後にグリフォンに乗って湖畔を一周できる人。

 

 全てが揃っているのならグリフォンだろうと最後の一匹になるのに時間はかからなかった。

 

 

 

 

 

 しかし予想外の事がおきる。

 

 最後の一匹だけは他のグリフォンの数倍は速く動いているのだ。

 

 あまつさえ風を踏みしめているときに使っているギフトなのか風を使って反撃までしてきている。

 

 それにまず久遠嬢がやられる。

 

 久遠嬢のギフトは体は強化されないので風に当たって吹き飛んだ後気を失ってしまった。

 

 春日部嬢は私が庇っていたので問題は無いが矢を射ったせいで魔力が空っぽだ。

 

 そして春日部嬢はやられるわけに行かず、私はもう魔力切れでここで春日部嬢を守っている事くらいしか出来ないだろう。

 

「光一。行けるか?」

 

「ああ、任せておけ。そっちも春日部を頼んだ」

 

 なので光一に全て投げる。

 

 大分記憶は擦れてはいるが、彼女の事は思い出せる。

 

 その記憶の中で遠坂に言われた事がある。

 

 “もっと自分を大事にしなさい!”

 

 とか

 

 “もっと仲間を頼りなさい!”

 

 とかだ。

 

 という事で光一にまるな……いや、光一を頼ろう。

 

 だから文句を言われても遠坂のせいだからな?

 

 ~エミヤ視点終了~




光一「第三回舞台裏コーナーだ! 質問とかあったらどんどん送ってくれ!」

エミヤ「ところでだが、私がドラ○もんのような扱いを受けているような気がするのだが気のせいか? 当たり前のように作戦の中で紙を出せとは……」

光一「べ、便利なんだから仕方がないだろう! ……それに俺がコピーした『投影』だと二百匹以上もいるグリフォンを覆えるサイズのさらに十倍なんて紙出せないしな」

エミヤ「それはそうだが、最近まともに出したものがただの矢だけだぞ? 少し前のイスと机は自分の判断だが、椅子に机に墨に……。私は雑貨屋か!」

光一「自分で突っ込むな! というかおまえは元からドラ○もんみたいな扱いだから心配するな! 他の二次創作でも魔術消すために『破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)』。出したりしてるだろ。というか本家本元より使ってるんじゃないのか?」

エミヤ「……確かにな。原作でも最初にやったのは家を直すことだったな」

光一「つまりお前の待遇はほとんど変わっていないということだ!」

エミヤ「…………いっそエミえもんにでも改名するか」

光一「……炊事洗濯から日曜大工、しかも雑貨まで出せるし、不思議な宝具も出せるし戦闘力は言うまでもない万能ロボットだな」

エミヤ「私は機械ではないがな」

光一「でもお前って体は剣で出来てるんだから無機ぶっ!」

エミヤ「おやおや。余計なことに気付きそうになった愚か者は疲れているらしいな。では今回はこれで閉めとさせてもらおう」
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