英雄の箱庭生活   作:英雄好きの馬鹿

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志貴さんをちゃんと書けてるか不安ですが、カーニバルファンタズムと新月譚のイメージで書いています!


理想

~エミヤ視点続き~

 

 あの後、十六夜にはギフトゲーム参加のために先に行ってもらい、光一と志貴さんと一緒に近くの喫茶店で話をしているところだ。

 

 志貴さんと一緒に居た真祖の姫君は“サウザンドアイズ”に用事があるようで私たちとは別行動をしている。

 

「それにしてもこんなところで会うとは奇遇だね。士郎君はどうやってこんなところまで? 君は処刑されたはずだろう?」

 

「ああ、私は死後英霊の座に招かれて抑止の守護者になっていた。その後光一に助けてもらったがな」

 

「……へえ。ずいぶんハードな死後だったんだね。君が死ぬまでもハードだとは思ったがそれは自業自得だったしね。まあ、お疲れ様と言っておくよ」

 

 志貴さんが私にねぎらいの言葉を賭けてくる。

 

 しかし棘が多分に含まれているのは気のせいでは無いだろう。

 

 もともとの出会いからして殺し合いだったのだからな。

 

 昔私が正義の味方を目指して世界を巡っていた時に人が帰ってこない城として有名だったとある城に向かった時に、殺し合い、相打ちになり、そして互いに理想を語って自分たちから関わらないことを決めた人間。

 

 なぜならその理想は互いに正義と思えるだけの何かをはらみながら、それでいて決して相容れないモノ。

 

 どれだけ大事な一だろうと九を生かすために殺せる欠陥品(エミヤシロウ)

 

 どれだけ沢山の九だろうと一を生かすために殺せる殺人貴(トオノシキ)

 

 私も曲がりなりにも、あの愚か者が言っていたように何かを守るために戦っていたし、志貴さんも自分にとって切り捨てる事の出来ない一のために戦った。

 

 互いに決して譲ることのできないすれ違った正義。

 

 滑稽なくらいに噛み合わない理想は、戦いを止めることによって互いの理想を存続させた。

 

 それが志貴さんとの戦いの顛末だ。

 

 あのまま続けていたら間違いなくどちらかが、または双方が致命傷を負ってどちらの理想も叶うことはなかっただろう。

 

 少し前までの私なら――過去の改変を諦めてもう一度正義の味方を目指すと誓うまでの私なら志貴さんの言葉には少し違ったのかもしれない。

 

 それでも現に私の理想はすり減っていても確かに取り戻した。

 

 だから志貴さんの言葉はいまだに棘が含まれているのだろう。

 

 今私は互いの理想にとって大きな意味を持つ、本題を話すことにしたい。

 

「その前に一つ聞いておきたいのだが、光一。お前私の記憶に何かしただろう?」

 

「ナ、ナンノコトカナ?」

 

 私は光一の頭を思いっきりわしづかみにする。

 

 明らかにおかしいことが起きているし、そんな奇跡を起こせる可能性がある人間なんて一人しか思い当たらない。

 

 というか本来エミヤシロウは記憶など等にすり減っていて、私が箱庭に来る前に行った聖杯戦争では生前の事なんてほんの少ししか覚えていなかったのだぞ?

 

 いかに記憶に残るような戦いだからと言って志貴さんの事を覚えていることなど出来ているはずがあるか。

 

「さあ、言ってみろ光一。私の記憶に何をした?」

 

「いや、アルカナの手紙に記憶が摩耗しているとか書いてあったから俺の異能を改造して人生を追体験させて記憶を完全に取り戻させただけだ! 何も悪いことはしていない!」

 

「そんな意味のわからない高等技術は何なんだ!? というか一言くらい私に相談してからやれ! 何故そんな重要なことを私に黙ってやっている!」

 

「き、記憶がなかったら困るだろうと思ってだなあ。お、俺が一肌脱いでやったんだ!」

 

 私は光一の体をがくがくと揺さぶる。

 

 何故こいつはそんな高等技術をポンポン使っているのだろう。

 

「ま、まあ。おろしてあげなよ。君のことを思ってやったんだし」

 

 光一の哀れな姿を見て志貴さんが止めに入る。

 

 私は光一を椅子の上に落とすともう一度頭を握る。

 

「次。私に確認を取らずに変なことをしたら握りつぶすからな?」

 

「い、痛い! わ、分ったから離せ! いや、離して下さい!」

 

 私は一応その言葉を聞いて頭から手を離す。

 

「ははは。士郎君はずいぶんと感情豊かになったじゃないか。俺と戦ったときとは大違いだな」

 

 志貴さんが私が光一を叱りつけているところを見て言う。

 

 確かに志貴さんと戦ったころには封印指定間際のことだったからな。私は余裕がなかったのだろう。

 

「ところでだが、志貴さんは何故箱庭に来たんだ?」

 

「ああ、アルクェイドの吸血衝動を無くすのにどうしたらいいかを先生に相談したら、この世界に移る手はずを整えてくれたんだ。それで今はここにね」

 

 少し驚いたかのような曖昧な笑みで志貴さんは答える。

 

「もしかしてあの宝石翁の仕業なのか?」

 

 私も何度も巻き込まれた。……遠坂のせいで。

 

「ああ、その通りだよ。まさか自分で魔法を食らうと思わなかった」

 

 志貴さんは嘆息して言う。

 

 そしてコーヒーで喉を潤した後私のほうを向く。

 

「俺からも質問を一つ。なんでわざわざ光一……君を連れてきたんだい?」

 

 志貴さんは光一の名前に自信なさそうにしていたが、間違えずに質問をしてくる。

 

「ふむ。そのことだが、このバ――いや光一の事が私の本題だ。私達の昔話した理想についての話だ」

 

「お前今自然に俺の事バカって言おうとしてたよな?」

 

 少し声が聞こえた気もするが気のせいだろう。

 

 私は志貴さんとの話を進める。

 

「へえ、なんでまた? 士郎くんとは意見が間逆だって事で落ち着いたんじゃなかったっけ?」

 

「ああ、昔話したときは確かに意見は割れて戦いになったのだがな。もう一つ聞いてもらいたい意見が出来た」

 

「――へえ。君の言う一を切り捨てるって言う考え方と、俺の自分の守りたいものを守るって言う意見以外のものが?」

 

「ああ、こいつはバカだがそれをちゃんと完遂させてきているからな。ぞんざいに扱う事もできない」

 

「ほう。貴様らはそういう理由でギスギスしていたのか。ならばこの俺は神のようなものだろう」

 

 光一が格好付けて言う。

 

 その言いぐさに普段温厚な志貴さんでさえ少しイラッとしたのがわかった。

 

「なら、君の考えを聞かせてもらおうか?」

 

 志貴さんは生半可な答えでは許さないという意思を瞳に込めて光一を睨む。

 

「あ、ああ。お、俺の答えはだなあ」

 

 その視線に射すくめられて光一がしどろもどろになる。

 

 せめてそこくらい格好つけろ。

 

 志貴さんの威圧に怯えていた光一は少し考えたあと、いきなり肩の力が抜けて、フッっと笑みを浮かべた。

 

 その笑みはいつもの格好つけた上っ面の笑みではなく、自然にわき出てきた笑みだった。

 

「俺の理想は結局一つだけだ。――ただ約束を破らない男になるって言う理想。世界を救ったのだってアルルを――お前らの言う大切な一を救ったのだって約束したからだよ。アルルと約束したからアルルを救ったし、アルカナとか薫とか沢山のやつと約束したから救った。俺は約束を守る男だからな」

 

 そう言った光一は、先程志貴さんに怯えていた姿も、いつもの中二病全開のバカでもなく、大切な一を諦めずに五十六億の世界を救った英雄のように見えた。

 

「……そうか。士郎くんがつれてきた意味がわかった。君は守ろうと思ったもののためなら何であろうと敵対して、守ってきたんだな。俺と似ているけれど違うなそれは。――俺は一以外は切り捨ててきたから。心配してくれた人も、笑いあった友達も置き去りにしてアルクェイドを守ってたからなあ」

 

「それでも後悔はしていないだろう? お互いにだが」

 

 私は志貴さんの言葉に同意するように言う。

 

 私も切り捨ててきたものなどとうに数えきれない。

 

 救いきれないと感じたものならば出来るだけ被害が拡大しないように速やかに切り捨てた。

 

 切り捨ててきた中には大事な人も含まれていた。

 

 それでも切り捨てて何倍もの人を救った。

 

 殺して殺して殺して殺して殺して。

 

 救って、救って、救って、救って、救って、救って、救って、救って、救って、救って。

 

 結果的に救った人に裏切られても後悔はしていない。

 

 後悔しているのは助けられなかった人がいる事だけ。

 

 自分が歩んできた道にはもう後悔はない。

 

「――一つお願いがある」

 

 志貴さんが光一に向かって話しかける。

 

「ああ、ドンと来い。俺が大抵のことは叶えてやるよ!」

 

 光一が志貴さんに向かって胸を張る。

 

 その光景を見た志貴さんは眼鏡を――魔眼殺しを外して強く光一を見て言う。

 

「俺と戦って欲しい」

 

 それは奇しくも私と光一が出会ったときと同じような行動だった。

 

 

~エミヤ視点終了~




光一「どうしてお前らは戦うのが好きなんだよ!」

エミヤ「それに関しては仕方がないとは思うがね」

光一「なんでわざわざ戦闘力で図ろうとしてるんだよ! そんなんだからお前らは一を切り捨てるとか言い出すんだ!」

エミヤ「……それは本編で言うようなセリフだろう。なんでこんなところで言っているんだ」

光一「殺す力だって治療に使えるんだろう!? そっちの方面で鍛えれば救えたものはあるんじゃないのかよ!」

エミヤ「どこからそんな知識を手に入れた!? お前電波を受信していないか!?」

光一「それにエミヤも剣なんか作ってないで医者とか目指せよ! それも立派な正義の味方だろうが!」

エミヤ「そ、それでは救われないものが……」

光一「確かにそうだがやり方を考えろ! なんで一人でやろうとしてんだ! 少しくらい仲間を頼れ!」

エミヤ「私はだれも巻き込みたくな」

光一「黙らっしゃい! それで救えない人がいるんだったら本末転倒だろうが!」

エミヤ「あ、ああ。それはそうなのだが……」

光一「グッ! ごくごくごくごくごくごくごく……ぷはあ!」

エミヤ「いつの間に酒を飲んでいた!?」

光一「俺はお前らみたいな人外どもと違ってそこまで強くないんだよ! 俺を巻き込むな! フゴッ!」

エミヤ「……とりあえず光一には眠っていてもらおう。私の精神的に厳しい。このセリフを本編で言える日が来るといいのだがな」
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