次はせめて一月以内に投下できるようにします。
~エミヤ視点~
「さて。説明してもらおうか」
「「外道がいたからケンカを売った」」
私は今久遠嬢と春日部嬢を正座させて今日起こったことについて問いただしているところだ。
二人は今日、ガルドという敵のコミュニティの子供たちをさらっては不正なゲームを仕掛け、自分のコミュニティを拡大させているという魔王の配下とゲームをすることになったというのだ。
そのことを知った私と光一はすぐに”ノーネーム”の本拠地に戻り久遠嬢と春日部嬢に問いただしているところだ
「確かに動機は認めよう。だが、仮にも魔王の配下に殺されるという心配はしていないのか?」
そう。理由としては悪いことなどない。
だが、いかにも小物そうだといえ、ただ才能があるだけの子供二人に魔王の配下の相手は厳しいと思う。
よくて怪我。最悪は死だ。
「あんな小物に負けるはずがないわ」
久遠嬢は当たり前のように言う。
「ほう。大した自身だな。――ならば君たちの首にあるものは何だね?」
私は久遠嬢が言ったと同時に干将と獏耶を投影して二人の首下に突きつける。
久遠嬢はピクリとも動くことができず、春日部嬢は反応しようとして後ろに下がろうとしていたが、間に合わずに少し動いただけだった。
「これでもまだ自分が強いといえるのかね?」
「いんじゃねえか? 本人がやりたいっていってんだし。――それに、こいつらが買った喧嘩だ。お前がでしゃばることじゃない」
「十六夜。お前のような例外の様な力の持ち主などそうはいない。春日部の身体能力は確かに強いだろう。だが、私如きの剣に反応できないようでは前衛としてもまだまだ。久遠嬢も今のを見ることもできていないのでは命令などできない。いくら後衛向きの力だとて遅すぎる」
「確かにな。だが、今回に限っては心配要らないんじゃないか? ガルドは今まで女子供を人質にとって無理やり勝っていただけだからそうは強くないだろうし、今、風呂に侵入してきたやつらの証言だと虎が人になるギフトを手に入れただけの奴で、虎の身体能力持ってる上にいろいろ使い分けられる春日部なら対処できる。そこにお嬢様のギフトは効いたんだろ? ならそう負けることはない」
確かに十六夜の言うことももっともだ。
しかし一つ気になることがある。
「――風呂のやつらとは誰だ?」
「ああ、さっきジン坊っちゃんと風呂入ってるときに子供拐いにきた奴ら」
俺は一切悪くないとでも言いたげに十六夜は言う。
「……なぜそんな重要なことを言わなかった?」
「聞かれなかったから?」
ヤハハと笑いながらさも楽しそうに言う。
「それにお前は過保護過ぎる。お嬢様も春日部も安定した日常捨ててまでこの箱庭に来たんだ。危険を少し位求めたっていいだろう?」
「……ふざけるな。正真正銘の殺し合だぞ。勝てるとしても殺すことになる」
「ええ、もちろん。あの外道を生かしておく意味はないわ」
なるほど……こいつらは私が欲しかったものを退屈と言う理由で捨ててきたのか。
そして正義感で殺しを選ぶか。
「……良く分かった。黒ウサギには悪いが、私にこのコミュニティは合わない。抜けさせてもらおう」
少しだけ全員が目を見開く。
「……エミヤ、本気か?」
先ほどから黒ウサギと共に私の怒る姿を見ていた光一は、心配そうな顔私に聞いてくる。
しかし、もう私には無理だ。
自分勝手で子供じみた我が儘だと言うことはじぶんでもわかる。
しかし私の答えはもう決まっている。
「ああ、命を無駄にする人間と共に戦うことはできない」
「そ、それは困ります! どうか考え直していただけませんか?」
黒ウサギはあわてて私を引き留める。
「すまない黒ウサギ。私は殺すのも殺されるのもごめんだ」
「なら、こういうのはどうだ?」
十六夜が軽薄そうな笑みを崩さないまま言ってくる。
「明日のゲーム、お嬢様と春日部は誰一人として殺さない。そして傷一つでも負ったら二度と戦いに出れない。今回の相手ならそれくらいで妥当だろう」
つまり今回の敵は実験台と言うわけか。
――まあ、しかしこれで二人が誰も殺さないようになるのなら悪くはない。
それに黒ウサギにしか使えないらしいが回復系のギフトもあるらしい。
「エミヤ。悪くない案だと思う。もしもこの条件で戦わないようなら俺が三人とも戦えないようにする」
光一は真剣な眼差しで言う。
こいつは少なくとも約束だけは守るだろう。
更に言うと光一は間違いなく
直死ですら消し去ったあの異能を。
それに、私にも奥の手はある。
二人が死にそうになったときには確率は低いとしても助けられる。
「……分かった。その条件を飲もう。負けたら戦闘系のゲームには三人とも出れないようにするからな」
私はそう言って部屋を去った。
※※※
私が去ったことによって部屋に集まっていた人は全員各々の場所に戻り始めているようだ。
しかし、私の背後に着いてくる奴が一人。
まあ、言うまでもなく光一なのだが。
光一は何を話すでもなく私の後ろに着いてくる。
そして“ノーネーム”の本拠地の入り口に来たときに私は光一に話しかけた。
「……はあ、お前はどこまで着いてくるつもりだ?」
「ああ、お前の最終目的地と一緒だよ。お前も頭を冷やすついでに来たんだろ?」
ついでに。が何のついでかは聞かなくてもわかる。
もはや私の思考も読まれているようだ。……少し不愉快だがな。
「なに、イレギュラーな事態が起こらないか見に行くだけだ。相手が実は強かったなんて笑い話にもならん」
光一は「まあな」と呟いてまた会話が途切れる。
そして完全に“ノーネーム”の敷地を出た時光一がもう一度口を開く。
「なあ、お前はもう相手の強さ位分かっているんだろう?」
……はあ。そんな素振りは見せた覚えがないのだがね。
「まあ、俺も喫茶店まで一緒に行った訳だし、武器の過去まで複製するお前なら、相手の虎が久遠の呪縛に耐えようとしてひび割れた机の跡に残っていた爪かなんかである程度の強さは分かるはずだ」
「それがどうかしたのか?」
「ああ、お前は久遠と春日部の心配はしていない。心配しているのはガルドの命。またはガルドを殺すことによって起こる殺人に対するショック反応だ」
「……あんな子供たちに人の死の重みなど耐え切れるものではないからな」
私は歩く速度を早める。
「ん?」
「何だエミヤ? 変なものでも――」
驚いて声も出なくなる光一。
私立ちの目の前にあったのはまがまがしく変貌した森だった。
~エミヤ視点終了~
光一「お前過保護なお父さんみたいだな」
エミヤ「知るか。それに私に子供などいない」
光一「もし子供ができてたら『パパうるさい』とかいわれるタイプの」
エミヤ「……危険だったら止めるだろう仲間なんだしな」
光一「クサッ!」
エミヤ「(ぐさ)! 私はもう眠る。……朝まで起こさないでくれ」