~光一視点~
あいつらは問題を起こすとは思っていたが、まさかコミュニティを辞めるなんてことを言いだすとは思わなかった。
つまりあいつらは、冗談だったとしてもお前らなんか仲間じゃねえと言ったような物だ。
黒ウサギへの信頼の証と言えばそれまでなのだろうが、少しやりすぎている。
しかし俺がここで激怒するのは筋違いだ。
ここで怒る資格があるのはジンと黒ウサギと子供たちだ。
所詮俺もエミヤも最近やってきただけの新参者でこのコミュニティに対する思い入れというものでは遥かに負ける。
だから俺があいつらを追い詰める手伝いをするのは遺憾なく全力を出すが、あいつ等を叱るのは黒ウサギたちの役目だ。
ということだが、問題が一つある。
「なあ、エミヤ。俺たちが転移門を使うだけの金ってあるのか?」
「知らん。黒ウサギ……は無理だろうから最近帳簿をつけているジン君に聞こう」
「了解だ」
俺とエミヤの話が終わり、本とにらめっこし続けていたジンに話しかけようとしていたのだが、さっきまでの場所にジンはいなかった。
「あれ? さっきまでそこに居なかったか?」
「私も居たような気がしていたが……」
「ここにいますよ?」
「「!?」」
気が付くとジンは俺とエミヤの話しているすぐ傍で、いたずらが成功したかのような笑みを浮かべて立っていた。
「良かった。二人とも気を抜いてたし、ギフトも使ってなかったけど、騙すことができたんだ。やっぱり知識って大事だったね」
ジンは、さも当然のようにギフトで姿を隠していたようなのだが……。
って、え?
え?
エミヤにすら気づかれないってどんだけだよ!
「……今のは光の微精霊と風の微精霊と土の微精霊の合わせ技なのか? いや、ハデスの兜並の効果を出すとは……。これは驚いた」
「いえ、五行思想も取り入れた上に、熱源の操作と光の屈折の補助にも微精霊を使っているので五属性は全て使っています。ただ、未だに展開するまでの時間がかかるのと、僕がしている動きを別のところに映し出すことしかできないので悪戯にしか使えないですけれどね」
「そ、そうか。でも十分使えるだろう……?」
ジン君のあまりの成長具合に俺はそう返すことしかできなかった」
※※※
「では、光一さん、エミヤさん。黒ウサギは箱庭の貴族として、別の道があります。なのでそちらから北に向かうと思います」
ジン君は旅支度を続けながらそう言っている。
その間にエミヤと俺は本拠地の罠を起動させる。
主力が全員この場所からいなくなる以上、危険度のレベルを上げなきゃいけないからな。
「それでですね。今回耀さんと飛鳥さんが北側の祭を知った原因の手紙はサウザンドアイズから届いたものでした」
「ほう。ということは白夜叉に頼るということか?」
エミヤはジン君に質問する。
「はい。ただ、今まで祭りがあったとしても誘いの手紙とかは来なかったんです。それが今回来たと言おうことになると、僕達に用事がある可能性が高いです」
「ほう。ということは、『打倒魔王』を掲げるコミュニティとしての依頼か。それならなんで先に十六夜たちに伝えなかったんだ?」
もしもちゃんと依頼があるのなら白夜叉から交通費は払われるだろうし、報酬も出るのだろう。
それなのに十六夜たち三人の主力にそれを伝えないのはおかしいと思う。
だがその答えはジンがすぐに答えてくれた。
「子供たちがここで暮らしていく上の生活費などの計算がまだでしたし、最悪の場合だれか残って貰わなければいけませんでした。なので色々考えなければいけないことが多かったのですよ」
「そうだったのか。了解だ。――ところでジン君」
「はい。何でしょうか?」
「今鞄に詰めているものは対魔王用の武器だよな?」
「…………」
「……殺すなよ?」
「もちろんですよ。別に、今回のことで帳簿をつけるのが大変だったりとか、食費とかの計算をやり直さなきゃいけなくなったこととか、一切怒ってないですからね」
なにはともあれ俺たちノーネームは北側の祭に参加することが決まったのだ。
~光一視点終了~
エミヤ「ジン君は……三か月分の成長具合なのかわからなくなってしまったんだが」
光一「音は風で目は光と水と火で、足音は土の精霊で消すのか……。そんだけの力のあるギフトだったのかよ」
エミヤ「いや、五行思想とつぶやいていたからな。おそらく陰陽道の技術を使って精霊を強化していたのだろうな」
光一「……俺はすぐにジン君に抜かされる気がしたぜ」
エミヤ「……私もだ」
光一「……少し鍛えなおそう」