英雄の箱庭生活   作:英雄好きの馬鹿

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布石

~光一視点~

 

 音やら人だかりやらで黒ウサギと十六夜を見つけることは出来た。

 

 正直ここまでで壊したのは予想外だったけどな……。

 

 塔が丸々一つ吹き飛んでるじゃねえか。

 

「というか十六夜。お前どうやってこんなに壊したんだ?」

 

「黒ウサギがいきなり暴走して壊した」

 

「ち、違います! あ、いや、黒ウサギが壊したんですけど……!」

 

 黒ウサギが壊したのかよ……。

 

 十六夜が使っているギフトは韋駄天のギフトのレプリカだ。

 

 十秒間の間に三百メートル動くことができ、一秒の間に三百メートル動いてもいいし、十秒かけて三百メートル動いてもいいという使い勝手のいいギフトだ。

 

 しかし、『正体不明(コードアンノウン)』には程遠い。

 

 今の十六夜はレティシアよりも弱い。

 

 それでも黒ウサギを誘導する事によってゲーム自体に勝利することが出来るまでに知能を磨いているようだ。

 

 もともと高かった知能がさらに磨かれ、その上勝利への執念が今までの何十倍にもなった。

 

 ……しかしなぁ。

 

「建物を壊したら駄目だろう」

 

「ヤハハ、それはそうだな。エミヤにも迷惑をかける」

 

 俺がそう言うと、十六夜はまるで悪びれずに言った。

 

「お前少しは」

 

「だが――」

 

 俺が話そうとした所で十六夜の声が重なった。

 

「これで魔王対策への布石が打てるぜ?」

 

「「はい?」」

 

 俺と黒ウサギが同時に驚く。

 

 コイツまさか、何か考えがあってこの行動に出たのか?

 

「この後魔王が来て、それを倒す契約結んだのは白夜叉から聞いただろう?」

 

「ああ、そうだな」

 

「黒ウサギはのお耳には入ってませんでしたが!?」

 

 隣で黒ウサギが喚いている。

 

 塔を壊した張本人だろうという意味を込めて視線を送ると静かになった。

 

「だから俺は魔王討伐メンバーに”ノーネーム”がはいっても問題ないように手を打ったのさ」

 

 十六夜はにやりと笑いながら言った。

 

「白夜叉からの依頼なんだから心配しなくてもいいだろう?」

 

「体面上はな。だが、これは敗北すれば全てを奪われるゲームに参加する上で、無能な味方に足を引張られるのは誰だって嫌だろう?」

 

 つまり十六夜は自分たち“ノーネーム”が戦いに参加しても足を引張らないという証明のためにこんなパフォーマンスをしたのか。

 

「ああ、それは理解した」

 

「それだけじゃない。この騒ぎの結果、黒ウサギは明日からのギフトゲームの審判に選ばれるように誰かしらが手を打つだろう。それは白夜叉かエミヤか俺だろう。むしろ黒ウサギが審判をやれるように動く」

 

「ギフトゲーム中に魔王がきても対応出来るようにだろう?」

 

「それだと五十点だな」

 

 俺が言ったこと意外に黒ウサギを審判にする利点があるのか?

 

「明日の箱庭の貴族として黒ウサギが司会をやれば、俺と黒ウサギの戦いを見た誰かが勝手に俺の強さを広めてくれる」

 

「同じコミュニティ何だから八百長を疑う人間が出てくるんじゃないか?」

 

「それも心配ない。これを見ろ」

 

 十六夜が差し出してきたのは一枚の契約書類(ギアスロール)だ。

 

『ギフトゲーム名 “月のウサギと十六夜の月”

 

・ルール説明

      ・ゲーム開始の合図はコイントス。

      ・参加者がもう一人の参加者を“手の平”で捕まえたら決着。

      ・敗者は勝者の命令を一度だけ強制される。

      ・全身全霊でもって戦うこと。

宣誓 上記を尊重し、“黒ウサギ”“十六夜”両名はギフトゲームを行います。』

 

 つまり十六夜と黒ウサギが全力で戦った上で十六夜が勝利したと。

 

「そしてこの契約書類(ギアスロール)は戦闘開始地点に置いておいた。だからそれなりの人数の目に入ってるはずだ」

 

「だからお前は派手なゲームメイクにした上で勝利したと」

 

「正直オマエ並のこすい技だけどな」

 

「俺の戦い方をこすいと言うな!」

 

「事実だろうが」

 

「確かに決まり手は光一さんが十六夜さんに貸与している身代わり(ドッペルゲンガー)でした……」

 

 さらに余計なことを言った黒ウサギに大して俺は崩れた塔を見るという行為で返事をする。

 

 ちなみに黒ウサギは怒りに囚われた結果、何も考えずに疑似神格・金剛杵(ヴァジュラ・レプリカ)を使ったらしい。

 

「十六夜さんのゲームメイクのせいというわけにわ……」

 

「行くわけがないだろう」

 

「ヤハハ! 動かされたお前が悪い」

 

「むしろ黒ウサギは止める側でしょう」

 

「……そうですよねー」

 

 俺と十六夜とジンくんからの口撃であえなく黒ウサギは撃沈する。

 

「では、十六夜さん。今の言い訳を含めた上で、“ノーネーム”のリーダーであり金庫番である僕に言うことはありますか?」

 

 ジン君はニッコリと笑いながら言っているが目は笑っていない。

 

 それに対して十六夜も少しまじめな顔になって言った。

 

「魔王を倒せたらそれで手打ちにはならないか?」

 

「では十六夜さんにもペナルティを用意しておきますね」

 

 ……ジン君が少し怖くなったようだ。

 

 

~光一視点終了~

 




光一「ジン君は怒らせないようにしよう」

エミヤ「同感だ。まあ、十六夜がやり過ぎというのもあるがな」

光一「確かに三人ともやりすぎだ」

エミヤ「ああ、ジン君が三人にペナルティをつけるのも無理はない」

光一「今のところ、春日部は塔の修理手伝いとゲーム参加。十六夜は塔の修理手伝いは当たり前として後何をやるんだろうな」

エミヤ「知らん。……だが、今のところはギフトゲーム中お留守番か、シュールストレミング・デスソースの案が出ているな。正直な話シュールストレミングもデスソースも耐え切りそうだ」

光一「確かに。お留守番がやっぱりつらそうだ」

エミヤ「久遠嬢に関しては虫風呂(マキリ)とかもあるが……」

光一「さすがにアレはちょっと……な」

エミヤ「まあ、後はジン君に任せよう」

光一「だな」
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