英雄の箱庭生活   作:英雄好きの馬鹿

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「月の兎が来たぞぉぉぉおおおおお!!」

「噂は本当だったんだ! ラピュタは本当にあったんだ!」

「ふ、ふつくしぃでごさるぅ~」

「はぁ、はぁ、可愛いよ黒ウサギたん! ぶしゅるぅ。部屋に飾りたい、料理つくってもらいたい、一緒に寝てもらいたい! あぁ可愛いよ黒ウサギたん!」

「おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい!」


光一「こいつらは月の兎のファンの癖に黒ウサギの耳のよさ知らないのか?」

レティシア「黒ウサギは可愛いから多少は仕方ないだろう。それに黒ウサギはあまりゲームに出ていないからな」

光一「お前も十分可愛いんだけどな」

レティシア「急に誉めるな。照れるだろう」

光一「というかうちのコミュニティは可愛いやつしかいないけどな!」

レティシア「……誉めるなら最後まで誉めてくれ」



アンダーウッドの迷宮

~エミヤ視点~

 

『それでは入場していただきましょう! 第一ゲームのプレイヤー・“ノーネーム”の春日部 耀と、“ウィル・オ・ウィスプ”のアーシャ=イグニファトゥスです!』

 

 黒ウサギが大声で紹介している。

 

 普段の姿からはあまり想像出来ないが、なかなかの盛り上げ上手のようだな。

 

「……エミヤまで参加することなかったのに」

 

 春日部嬢が頬を膨らませながら言う。

 

 このゲームに参加してから毎回言われているから、私の返す言葉も同じ言葉で返す、

 

「このゲームには補助が一名許されているし、春日部嬢が強いとしてもそれだけで勝てるのならゲームなど成り立たないだろう?」

 

 まったく同じ答えにさらに不機嫌になりながらそっぽを向く。

 

「……ピンチになるまで手を出さないでね?」

 

「了解した」

 

 もとより、ピンチになるまでは手を出すつもりはないが、その答えに満足したようで入場口に行く。

 

 入場ゲートをくぐり抜け、これまでとは桁の違うほどの観客の人数に圧倒される。

 

 会場では黒ウサギがこちらに向かって歓迎のポーズを取っている。

 

 ――そして一瞬目が険しくなった。

 

 黒ウサギの視線は背後に向かい、後ろからは音が聞こえる。

 

「……ずいぶんと礼の欠いた登場だね。」

 

 迫ってくる火の玉と春日部嬢の間に立って火の粉を払って春日部嬢が言う。

 

「あたしたちは普通に入場しただけだぜ? もっともあんたらがのろかったから追い越しはしたけどな!」

 

 火の玉の上の少女は挑発的な態度だが、アレもまたゲームメイクの一つだろうな。

 

 入場から既に戦いは始まっているというやつか。

 

「その火の玉ってもしかして……」

 

「はあ? 何言ってんのオマエ。アーシャ様の作品を火の玉なんかと一緒に寸なし。コイツは我らが“ウィル・オ・ウィスプ”の名物幽鬼! ジャック・オー・ランタンさ!」

 

「YAッFUUUUUUUuuuuuuuuu!」

 

 アーシャと呼ばれた少女が火の玉に合図を送る。

 

 すると火の玉の中から、馬鹿でかいかぼちゃ頭とランタンが特徴的なお化け。ジャック・オー・ランタンが現れた。

 

 生と死の狭間の幽鬼を作り出すとは恐れ入ったな。

 

 聖人ペテロに烙印を押された悪魔が敵か。

 

 これはなかなか骨が折れそうだな。

 

『せ、正位置に戻りなさいアーシャ=イグニファトゥス! あと、』コール前の挑発は控えるように!』

 

「はいはーい」

 

 まったく反省をしていない姿を見せ付けることによって、さらに煽っているのか。

 

 だがしかし、春日部嬢もさる者で、その挑発を無視して観客に手を振っている。

 

 今度はアーシャが顔を曇らせた。

 

『参加者は両名とも落ち着くがよい。その鬱憤はゲームで晴らせ』

 

 白夜叉からの静止が入り、流石に両名ともおとなしくなる。

 

『では、招待状に書かれている番号が三三四五番の者はおるかの?』

 

「こ、ここにあります! “アンダーウッド”のコミュニティ三三四五番の招待状を持っています!」

 

 観客席のほうから少年の声が聞こえる。

 

『ふふ。おめでとう。“アンダーウッド”のコミュニティには後に記念品を送らせてもらおうかの。よろしければおぬしの旗印を見せてもらってもよろしいかな?』

 

 少年が緊張した様子でコミュニティの旗を掲げる。

 

 それを見た白夜叉が満足そうに頷く。

 

『今しがた、決勝の舞台が決定した。それでは皆の者。お手を拝借』

 

 白夜叉が手を前に出し一呼吸おいた。

 

 その間に観客も手を前に出す。

 

 そして白夜叉の動きに合わせて手を鳴らした。

 

 パン!

 

 会場から鳴らされる音と共に世界が一変した。

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

 

 『ギフトゲーム名“アンダーウッドの迷路”

 ・勝利条件 一、プレイヤーが大樹の根の迷路より野外に出る。

       二、対戦プレイヤーのギフトを破壊。

       三、対戦プレイヤーが勝利条件を満たせなくなった場合(降参含む)

 

 ・敗北条件 一、対戦プレイヤーが勝利条件を一つ満たした場合。

       二、上記の勝利条件を満たせなくなった場合。    』

 

「___“審判権限”の名において。以上が両者不可侵で有ることを、御旗の下に契ります。御二人とも、どうか誇りある戦いを。此処に、ゲームの開始を宣言します」

 

 大樹の中のようなステージに世界はいっぺんし、黒ウサギの宣誓が終わる。

 

 それが合図だった。

 

 春日部嬢はアーシャに向けてグリフォンの力で風を飛ばす。

 

 それに負けじとアーシャもジャックに指示を出して炎を噴出させる。

 

 両者の中間地点でぶつかる風と炎は、徐々に炎をそらして消える。

 

 本来なら風では炎に飲まれるだけだと思うのだがな。

 

 つまりそこに種がある。

 

 春日部嬢もそれに気づいたようでもはや敵ではないとばかりに背を向けて走り出す。

 

 おそらく強化された五感で臭い、空気の流れなどから出口を見つけてあり、そちらに向かっているのだろう。

 

「くそ! 今度は囲んでやる!」

 

 風で流せる炎ということは、おそらくはアーシャは可燃物を放出し、ジャックの炎で起爆させている。

 

 つまりガスを充満させてから火をつけなければいけない。

 

 ならば風を操れる春日部嬢に負けはない。

 

 案の定、春日部嬢はガスを一箇所に集めて炎を誘導する。

 

「……くそったれ。悔しいが後はアンタに任せるよ本気でやっちゃて、ジャックさん」

 

わかりました(・・・・・・)

 

「え……!?」

 

 春日部嬢が驚きの声を上げる。

 

 無理もない。

 

 背後に存在していたはずのジャック・オー・ランタンが正面に存在していたのだ。

 

「さ、早く行きなさいアーシャ。このお嬢さんは私が足止めします」

 

「悪いねジャックさん。本当は私の力で優勝したかったけど……」

 

「それは貴女の怠慢と油断が原因です。猛省し、このお嬢さんのゲームメイクを少しは見習いなさい」

 

「う~……了解しました」

 

 そういってアーシャは先に駆け出す。

 

 ジャックに阻まれ、アーシャを追いかけられない春日部嬢は悔しげにジャックに聞く。

 

「……貴方は、」

 

「はい。貴女の御想像はきっと正しい。私はアーシャ=イグニファトゥス作のジャック・オー・ランタンではありません。貴女が警戒していた存在――生と死の境界に顕現せし大悪魔! ウィラ=ザ=イグニファトゥス製作の大傑作! それが私、世界最古のカボチャお化け……ジャック・オー・ランタンでございます♪」

 

 ヤホホ~♪と笑うジャックだが、カボチャの奥の瞳には先ほどまでとは違う炎が灯っている。明確な意思と魂。そして威圧感。ふざけたその口調と仕草はしかし、一分の隙もない。

 

 

 

 だが(・・)それは私が(・・・・・)この場にいなければ(・・・・・・・・・)の話だ(・・・)

 

 

 

 

 私は空中から鎖を射出させ、ジャックに絡ませる。

 

「……部外者はがさんかしてはいけないのではないのですか?」

 

 ギチギチと鎖の音を鳴らしながら私のほうをむくジャックだが、鎖は解ける気配はない。

 

「いやいや。私はずっとついてきていたのだがなぁ。まったく影が薄いのも考え物だな」

 

 私が大げさなポーズをとりながらそういうと、何かに気づいたような声をあげていった。

 

「……まさか! ゲーム開始前からずっと姿を消していたんですか!? われわれに一切気づかれずに!」

 

「ああ、最近手に入れた兜は優秀でね。ちょっと複製してみたのだがなかなか使い勝手がいい。君のようなものにも姿を捉えられないのだから」

 

「ヤホホ! これは完敗ですね。ですが、われわれはまだ負けたわけでは」

 

「ああ、春日部嬢ならもう走り出している。彼女の身体能力なら追いつくかどうかは五分五分と言った所かね。もっとも、君の仲間が道を完全に把握できていればだが」

 

 まあ、ここから先は春日部嬢のがんばり次第といったところか。

 

 まあ、流石に私もジャックを抑えておくだけで精一杯だろうからな。

 

 

 

 

 

 

 ※※※

 

 

 

 

「くそっ。まさかジャックさんがやられたのか?」

 

 アーシャは叫びながら疾走を続けている。

 

 大地の精霊としての力で出口を目ざしているが、後ろから聞こえてくる足音は出口まで逃げ切れるか不安にさせてくる。

 

 いくつかの、ガスを使った罠などを仕掛けているがどうにも足止めにすらなっていない。

 

 もはや距離は二十メーターも離れてはいまい。

 

 出口まではあと二十メートル。五秒もあればたどり着けるだろうが、それまでに追いつかれるのなら意味がない。

 

 だから策を一つ。

 

 

 急ブレーキをかけておってくる“ノーネーム”の少女に向けて走りながら溜め込み続けてきたガスを曲がり角に配置する。

 

 そこを曲がれば勝利だが、手の届く距離にいられる以上勝ち目はない。

 

 悔しいが本当に速さでは勝負にもならない。

 

 アーシャはそれが分かっているからこそ立ち止まった。

 

 すぐさま追い抜かそうとしてくる耀に対して、とった行動は。

 

「さぁ! 食らえ! 最後の攻撃だ!」

 

 そういって溜めに溜めたガスに向かって火種を落とす。

 

 その結果など分かりきっている。

 

 耀自身もガスを操る精霊が火種を持てば何が起こるかなど考えるまでもない。

 

 故に、全身に風をまとい、獣の如き速さで走り抜ける。

 

 だがタイミングに関してはアーシャに分があった。

 

 ガスのたまり場のちょうど中心。

 

 風で威力を殺しようもない場所で爆発が起きる。

 

「っ!」

 

 耀は出口間際で倒れこむがゴールではなく、直撃ではなくとも間近で爆発を食らったアーシャは地上に向けて開いた風穴の外に吹き飛ばされていた。

 

『勝者・アーシャ=イグニファトゥス!』

 

 静まっていた会場に黒ウサギの声が響き、ステージであった大樹の迷宮は姿を消した。

 

 

 

~エミヤ視点終了~




光一「ちなみにエミヤはハデスの兜の複製を使ってた影響で、ジャックに一撃与えるまでは春日部と審判意外誰も知らなかったりする」

エミヤ「そういう作戦だからな。まあ、あそこまで強いギフトが手に入ったのはうれしいな」

光一「でもオマエの場合、兜かぶってなくても何も行動起こしてないことに気づかれなさそうだけどな」

エミヤ「いや、春日部嬢とは話していたのだが」

光一「それすらも春日部の耳のよさと読唇術での会話じゃねえか」

エミヤ「会話が通じてるんだからいいだろう?」

光一「ちなみにだが、プレイヤーの中にジャックとエミヤがいなかったのはジャックは製作されたギフトだと思われてたからで、エミヤは黒ウサギが忘れてたからだ。だからエミヤが出てきた瞬間黒ウサギがちょっとあせってた」

エミヤ「……忘れられていたのか」
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