英雄の箱庭生活   作:英雄好きの馬鹿

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二次ファンのときより文章増えました!


反撃の狼煙

 ~光一視点~

 

 エミヤはいまだにただ手をだらんと下げているだけで動こうとしていない。

 

 カウンターでも狙っているのか?

 

「何だ。まだこないのか? まあもっとも容易に突っ込んでこないところは評価できるがね」

 

 挙句の果てに挑発までしてくるのだ。おそらくカウンター狙いで間違いない。

 

「そっちこそ来ないのか? 見たところ武器もないようだしな」

 

「それはお互い様だ。しかしこのままにらみ合ってもらちが明かんのは確かだ。私から行くとしよう」

 

「っ!」

 

 いきなり踏み込んでくるエミヤ。その手にはどこからか取り出したか分らないが白と黒の二振りの剣が握られている。

 

 武器を手にしたエミヤは反応すら難しいほどの速さで踏み込み、一閃。

 

 それを無様に転ぶようにして何とか避ける。それをみるとエミヤは侮蔑や落胆を含んだ視線と声で言う。

 

「期待はずれだな。そんな無様な様子では一撃も当てることすら出来ない」

 

「無様で悪いか!」

 

 その前に俺に無様じゃなかった時がなかったような気がしてきた。

 

 今から使おうと知っている『蒼き煉獄(ゲヘナ)』の能力者と戦った時は自分は敵を弱らせることくらいしか出来なかったしな。

 

 いや、そんなことはどうでも良い。

 

 あのときの炎の強さを思い浮かべろ。イメージも出来なければ湯たんぽファイアーが出て終わりだぞ! (※注 湯たんぽファイアーとは、数千度の熱を持つ『蒼き煉獄(ゲヘナ)』をコピーして劣化した結果、湯たんぽのようなぬくもりを持つ百円ライターほどの火力を持って出てきたものです)

 

 もう一度距離をつめてきたエミヤを、全力で後ろに下がって服一枚でかわす。

 

 そしてエミヤが攻撃する態勢を整える前に腕を前に出す。

 

 あの時味わった暑さを出来るだけ鮮明に思い出して指を弾く。

 

 ぱちん!

 

 俺が指を鳴らした瞬間に赤い炎が当たり一面を埋め尽くす。

 

 半径十五メートルほどを一気に焼き尽くすほどの勢いだ。

 

 エミヤはいきなり現れた炎に一瞬気をとられるも大きく後ろに跳躍する事によってかわす。

 

 その隙に攻撃の届かないところまで逃げ出して次の能力を込める。

 

 ちゃんと能力が使えたということは他の能力も使えるということか! なかなか嬉しい誤算だな!

 

「ふむ。今のは幻術というところか。一瞬であれだけの火力を出すものだから驚いたがね」

 

 もうすでに余裕たっぷりに立ち直っていやがる。

 

 コレは同じ手はくらいそうにない。

 

 いや、だからこそ意味はある。

 

「はっ! 十秒後に同じセリフが言えるかな?」

 

 ぱちん!

 

 もう一度同じように指を弾いて『蒼き煉獄(ゲヘナ)』を使う。

 

 またさっきと同じように一面を同じように炎が包む。

 

 今度は幻術と思われているのでエミヤは交わすことはせずに突っ込んでくる。

 

 しかし炎の壁は正確に言うと幻術ではなく実際に炎が出ている。ただ、『付け焼刃(イカロスブレイブ)』の特性上一つしか性能を伸ばす事はできないから、温度を犠牲にしているだけだ。

 

 なので幻術等の能力のように見破ったからといって消えるわけでもなく、唯そこに炎の壁があるだけだ。

 

 しかし炎の壁はゆらゆらと燃え盛る人の背丈の二倍ほどもあり、エミヤの視界を上手く防ぐ。

 

 そして炎の壁を維持してエミヤの視界をふさぎながら次の能力を使う。

 

 ぱちん!

 

 手元から一本の細い針が生まれてエミヤのほうに飛んでいく。

 

 視界をふさがれているエミヤは気づくことも出来ないと思ったが指を鳴らしたときの方向だけで攻撃の方向を理解して手に持っている剣で防いだらしい。

 

 針が空中に飛んでいく。

 

「ふむ。確かに驚いたな。幻術の使い方を良く分っているし、針の使い方もいい。期待はずれというのは取り消そう」

 

 エミヤは皮肉な笑みを浮かべながらそんな事を言うがまだ俺の攻撃は終わっていない。

 

「『誘雷針(タケミカヅチ)』ッ!」

 

 ばちばちばち!

 

「っ!」

 

 エミヤは俺の能力を叫んだ声かバチバチとなる音かでとっさに防御体制をとる。

 

 『誘雷針(タケミカヅチ)』とは雷を生み出す針をたくさん生み出す能力だ。

 

 だが、俺の場合は雷の威力を上げるために数を犠牲にして放った。なので針からほとばしる雷の量はオリジナルの能力に近い。

 

 エミヤが弾き飛ばした針から雷が放電される。

 

 そして電気の性質で周辺も最も電気の流れやすい物体に――つまり剣を避雷針に見立てて雷は飛んでいく。

 

 しかし名前から雷を生み出すと予想したのだろうか両手の剣を投げつけるだけで無効化する。

 

 しかし武器が無くなったのは良い。このまま畳み掛けるしかない!

 

「もう一丁だ!」

 

 ぱちん!

 

 指を弾くともう一度『誘雷針(タケミカヅチ)』を射出する。

 

「――――『投影開始(トレースオン)』」

 

 しかし今度はどこからか現れた全く同じ剣で空中にある時点で分断される。

 

 弾き飛ばすわけでもなく、破壊されてしまってはさすがに雷を生み出す事はできない。

 

 空中にあるものを切るなんてどんな剣の腕だよ!

 

「確かに驚いたな。しかし同じ手を二度も使われるとはなめられたものだな」

 

 そうは言うものの全く驚いた様子を見せず余裕ありげにたっている。

 

「へっ! 十秒たったかしらねえけどちゃんと訂正させてやったぜ?」

 

「それはそうだが自分の周囲は気をつけたほうがいいぞ?」

 

 周りを見渡してみるとさっき投げた剣が両方から迫ってきている。

 

 バックステップでよけると二つともぶつかりあって消えてしまった。

 

 引かれあうという性質を持った双剣に、それをいくつも存在させるということは……

 

「互いに引かれある性質の剣を生み出す能力か!」

 

「ふむ。たったコレだけでそこまで見破るとは。見てくれほど頭は悪くないようだな」

 

「見てくれは馬鹿って事か! この俺のかっこいいファッションがわからないとはじじ臭いな!」

 

「私はじじ臭くなんかない! それにさっきの説明だと三十点だ」

 

「じゃあどんな能力なんだ?」

 

「教えるわけがないだろう…………と言いたいところだが興が乗ったのでね。一つヒントをやろう。今生み出したのは干将と莫耶だ。聞いたことくらいあるだろう?」

 

「干将と莫耶? …………それって昔有名な刀鍛冶が作ったといわれる伝説の?」

 

「ああそうだ。ではもうそろそろ反撃して良いかね? いい加減手加減に飽きた」

 

「断らなきゃ攻撃も出来ないのか?」

 

「ふむ。それもそうだな。では行くとしよう!」

 

 エミヤは両手に持った剣を捨ててどこからか弓を取り出す。

 

 そしてまたもやどこからか真っ黒で細長い芯に、螺旋状の刃が巻きついたようないびつな形の矢を取り出す。

 

 そしてその歪な形の矢は赤く煙のような物を出しながら弓に番えられる。

 

 ここまでの動作が恐ろしいまでの完成度――戦っているというのにその動作に見入ってしまうほど綺麗な動作で矢が番えられる。

 

 剣の腕だけじゃなく弓も達人かよ! しかも剣がいくらでも生み出せるという事は、中距離もできる。

 

 遠距離、中距離、近距離全てが対応できるオールレンジの能力。そしてその全てを達人急に扱いきる技術。

 

 これが英雄として世界にすら認められた奴の力か!

 

 それにしてもこいつはどれだけ能力を持っているんだ?

 

 剣の次は弓まで生み出している。

 

 能力を二つ持っているのか?

 

「赤原を行け、緋の猟犬! 『赤原猟犬(フルンディング)』!」

 

 エミヤがおそらくあの矢の名前を言うと同時に矢を渦巻いていた赤い煙が勢いを爆発的に早め始める。

 

 あれはやばい! 何とかして避けなければ!

 

 ただ見ただけで分かるほどの脅威がその矢には込められている。

 

 そんな矢が一寸の狂いも無く俺に向けられている。

 

 唯それだけで心臓が止まってしまいそうだ。

 

「一つ言っておくがかわせると思うなよ? この矢は私が狙い続ける限り追撃し続ける」

 

「この野郎いくつ能力持ってるんだよ!」

 

「それはお互い様ではないのかね? 炎の幻覚に雷を放出する針。他にもまだあるのだろう?」

 

 すでに何か見破られていそうだな。

 

 おそらくあの矢は食らったら矢が刺さるどころか体ごと吹き飛ばされかねない。それだけの脅威が矢には込められている。

 

 そんな馬鹿みたいな威力に追尾され続けるというエミヤの発言。

 

 あんなものを食らったら生き残れる気がしない。

 

 未練は無いがアルカナの依頼が達成できない。

 

 山を張れ。俺が得意なことなんてそれくらいだぞ!

 

 かわせない矢に、互いに引きあう双剣。いくらでも作り出している剣。あれだけの威力を持っていそうなやをどこからか出し、使い捨てようとしている。アルカナの手紙からすると異能のシステム自体違うはずなのに俺のコピーを見破っていそうな態度。

 

 ここから導き出されるのは二つ。

 

 能力を二つ持っていてそれがあの二つだということ。コレだったら二つとも対処すれば良い。

 

 だがもし、もう一つだった場合は最悪だ。しかもこっちのが確率が高い。

 

「なあ。お前の能力もコピー能力か? それもおそらく武器限定のだ」

 

「なぜそう思ったのかね? 聞かせてもらおうか」

 

 よし! 食いついてきた!当たらずとも遠からずというわけか!

 

「まず一つ目にそんな威力を持った能力を二つも所持しているはずがないし、同じ剣が同時に存在していることから、その剣はいくらでも生み出せる能力という珍しいもののはずだ。さらに、さっき言った剣の名前が中国の昔の本に出てくる有名な剣の名前だ。一本だけなら呼び出す能力だともいえるが二対ある時点でおかしい。そして矢のほうも絶対にまともな威力じゃないだろう? そんなことが出来るのは他人の能力をコピーした場合だけだ」

 

 エミヤは少しの間俺をにらむ。

 

 そして数秒後皮肉が込められた笑みと共に肯定する。

 

「ああ確かにそうだが? 私の魔術は刀剣類に限り複製することが出来るものだ。なあコピー能力者?」

 

「やっぱりな。貴様は俺が二つ目の能力を使った時点で見破っていただろう? 普通はコピー能力なんてたどり着けない。そんなもん漫画の中以外では珍しいからな」

 

「ああ、私も自分以外の複製者なんていなかったな」

 

「だから俺たちコピー能力者は他の能力者よりも互いの能力に気づきやすい」

 

「ふむ。すばらしい推理だな。だがそれでは七十点だな。私の能力はどんな異能持っていようが剣なら複製できるというものだ。まあもっとも他のものも複製は出来るがな」

 

「近頃のテストじゃ七十点取ってれば合格だぜ?」

 

「だがテストで点を取っても実技が駄目なら無駄だろう?」

 

 エミヤが喋っている間に俺はあの矢を交わし、そして勝利まで収める策を思いついた。後は実行するだけだ。

 

「行くぞ!」

 

「では実技の試験の開始だな佐藤光一! 行け! 『赤原猟犬(フルンディング)』!』

 

 エミヤが『赤原猟犬(フルンディング)』と叫ぶと同時に俺も能力を使う。

 

 さあ俺の反撃の時間だ。

 

 

~光一視点終了~

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