英雄の箱庭生活   作:英雄好きの馬鹿

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さあ――魔王を倒そう。

~ジン視点~

 

「ふう。これで全てのステンドグラスは集まったわけですね?」

 

「ああ、間違いない。 この街に運び込まれた全てのステンドグラスが集まっている」

 

「ありがとうございます。――では、始めましょう」

 

「はたして本当に意味があるのかは分からんがな」

 

「それは僕もわかりません。ただ、偽りの伝承でもって存在しているのなら、このステンドグラスは幾ばくかの霊格があるのでしょう」

 

 僕はステンドグラスを前にそういう。

 

 マンドラさんは半信半疑だがやるだけなら損はない。

 

 せいぜい持ち運びが大変なことではあるが、力自慢の火龍が何人も在籍しているサラマンドラなら難しくはない。

 

 敵勢力は全て僕の同志が足止めしているのだから。

 

 いや、魔王以外は倒しているかもしれないけれど。

 

「――では始めます」

 

 契約している微精霊達に心の中で呼びかける。

 

 みんな用意できているみたいだ。

 

 五行の力を最大にまで高める。

 

 一人一人は小さな力でも、集まれば別だ。

 

 水行起動。

 

 ――完了。

 

 火行起動。

 

 ――完了。

 

 木行起動。

 

 ――完了。

 

 金行起動。

 

 ――完了。

 

 土行起動。

 

 ――完了。

 

 相生開始。

 

 水生木。木生火。火生土。土生金。金生水。

 

 よし。相生の循環は良好。このまま陣を安定させる。

 

 水剋火。火剋金。金剋木。木剋土。土剋水。

 

 制御できない力は全て相剋により消していく。 

 

 陣の構成。

 

 ――完了。

 

「五行転輪、太極に至れ。 

 

 其は一。其は全。其は世界。

 

 一つの世界をここに表せ、顕現せよ!」

 

 膨大な力としか言えないものを陰と陽の二つだけにまとめ上げる。

 

 僕にはもう制御できるものではないが制御が必要なものではない。

 

 唯、存在し。唯消えゆく力の塊だ。

 

 三百六十度どこから見てもなぜか同じ図形にしか見えない太極図。

 

 全てを内包しているけれど、今のままでは何にもなることはない。

 

 だから方向が必要だ。

 

 全てを自らの糧として動き、一つの伝承とするものが。

 

 さあ、始めよう。

 

 

 

「伝承顕現――笛吹き道化と幼子達の死(ハーメルン)

 

  

 

 瞬間。

 

 集められたステンドグラスに膨大な力が注ぎ込まれる。

 

 そして一つの形に収束した。

 

 ステンドグラスがあった場所にあったのは一つの笛。

 

 ソレに触れた瞬間に理解した。

 

 偽物の伝承全てをごちゃまぜにした物語を。

 

 その偽物に向けられていた信仰全てを。

 

 そして、全てを理解しているものなど当事者しかいない。

 

「ほう。成功するとは思わなかった」

 

「ええ、僕もそう思います。ただ、これはあまり長く持たない」

 

「それはそうだ。疑似的なギフトの創造など、人の身には余るものだからな。正直事前に聞いてなかったら随分と驚いていただろうな」

 

 そんなことを平然と言うマンドラさんだが、確信を持って言えます。

 

「あなたは絶対驚かないですよ」

 

「……そんなことはないと思うのだがな。まあいい。では決めてくるがいい。”ノーネーム“の党首殿」

 

 それだけ言ってマンドラさんは火龍を率いて、唯一残った本物のステンドグラスを持って去っていった。

 

「本当に……マンドラさんはぶれない人ですね」

 

 そう呟いてからエミヤさん達の下へ向かうために走る。

 

 吹き飛んでいくように景色が流れて行き、十秒も走ったころには元居た地点は見えなくなっている。

 

 これが神格を――一つの物語を我が物にした力ですか。

 

 今までの自分がどれだけ劣っていたか分かるくらいですが、余りいい気分ではないですね。

 

 自分が自分の物ではない奇妙な感覚に、町一つ分の大気を体内に無理やり押し込めたような酷い圧迫感。

 

 これが無理やりに神格を得た代償なのでしょう。

 

 神格に自らのみで至るなど、凡人に許可された領分ではないのですから。

 

 精霊たちもしばらくは休憩をさせてあげないと駄目でしょうし、僕もそう何度も使いたくはないですね。

 

 さて、戦闘音は今まで最大三箇所響いていたが、今ではもう一箇所しかない。

 

 つまり十六夜さんと久遠さんはやってくれたみたいですね。

 

 黒ウサギ達は既に所定の場所で待機してくれている。

 

 

 

 

 

 

 

 これで全て揃った。

 

 さあ――魔王を倒そう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ジン視点終了~

 

 

 

 




光一「ん? あれ? もうかよ!」

エミヤ「本当に久しぶりに二日連続だな。夏風邪でも引いたのかも知れんな」

光一「さすがに一夏で三回も風引く馬鹿はいないだろう。二週連続で風引いてただけでも馬鹿なのに」

エミヤ「全くだ。普段の生活から見直すことをお勧めしよう」

光一「まあ、正直ここで書くことがないんだが、どうする?」

エミヤ「知るか、と言いたいところだが、一つだけある」

光一「? なんだ?」

エミヤ「私の力を体内に降ろしているらしい少女が、カルデアにやってきたようなのだがね」

光一「そうだな。うん。なんとなく分かった」

エミヤ「私の知り合いが平行世界から形を変えてやってくるのは良いとしよう。正直言いたいことは山ほどあるが。――だが、なぜ私の力を利用しているはずなのに、私よりも多彩な攻撃が出来るのかが不思議でならないんだ」

光一「まあ、それはいつか来るとして、俺からも一つ言いたいこと思い出した」

エミヤ「なにかね?」

光一「いくら知り合いに似ているからといって、小学生をストーカーするのはやめておけよロリコン」

エミヤ「私はしてなどいな――」

光一「白い少女から、視線を感じることがあって振り向くと紅い外套が見えるって報告があるんだが、お前だろう?」

エミヤ「キリツグも紅い外套を着てるはずだが?」

光一「言い訳は見苦しいぞ。ロリコン」

エミヤ「認めるからとりあえずロリコンと呼ぶのだけは勘弁してくれないか……?」

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