八回目の真名開放を行ったとき、有り得ない程の霊格の膨張を感知した。
私が振るい続けていた
まるで、唯の人間が唐突に神霊に成ったかのような現象など起こせるはずがない。
しかし、私は
――良くやった。
ほんの数ヶ月前まで唯の少年だったと思っていたが、随分と化けたものだ。
「何よ
ペストは驚きを隠すことすら出来ずに狼狽する。
当たり前だ。同じ信仰対象が二柱いれば向けられる信仰は二等分になるだろう。
ジン君は自らが偽の神となることで、もう一人の偽の神の力を削ぎ落とした。
つまりは神の分割。日本神話のカグツチの伝承と同じ、大きすぎる力は分割してしまえばいいのだ。
「さて、随分と驚いているようなのだが、まだ終わりではないぞ?」
「何を――」
ペストが反応するよりも前に、胸に風穴が開く。
それに反応してペストは後ろに向けて拳を放つ。
金属を打つような音が響くと同時に、私の良く知る少女が虚空から姿を現す。
「……いてて。ちょっと油断しすぎたかな?」
「攻撃をしたのなら、反撃を予想しておいたほうがいい。もしも死を与えるギフトがまだ使えていたら危なかったのだぞ?」
「……次は当たらないよ。それに、風だったら私と相性いいし」
「……この戦いが終わったら、少しキツメの特訓メニューを用意しておくぞ、春日部嬢」
虚空から風を纏って現れたのは薄い剣を持っている春日部嬢だ。
先程までは、ハデスの兜の劣化品を被って隠れてもらっていた。
空中に浮いているペストは、今は特に何もなさそうな様子で、二人に増えた敵を見ている。
「お嬢ちゃんが何をしたかは分からないけれど、もうゲームは終わり」
ペストが残された霊格を開放する。
「葬送曲・『ハーメルンの笛吹き』!」
黒い風が瞬く間にハーメルンの町並みを覆い尽くし、美しかった町並みは人の住むことの出来ない魔都となる。
黒死病の風が私達を犯したのなら助かる度折などない。
更に、この風は恐らく発症と同時に急速に病状を悪化させる類の呪いだろう。
「無駄だよ。黒死病の時代は、特効薬の開発によって終わったんだから」
その一言と同時に黒い霧は晴れ、影が差していた町並みは元の美しさを取り戻す。
「まさか、さっき胸に挿した剣には!」
手に持っている剣には透明な液体が滴っており、それがペストの血でないことは明白だ。
「うん。私が作った特攻薬を塗っておいた。だからもう、貴女の力は恐ろしくない」
黒死病の力を操る魔王。
それが黒死病を克服されてしまっては、もはや霊格は保てない。
ペストの霊格はもはや、最初に現れたときの数十分の一だろう。
「……私達には与えられなかったのに! なのになんでこんなときに!」
ペストの慟哭が空に広がる。
「その言葉は君が唯の被害者の少女なのなら良かったな。君はもう既に魔王なのだ」
「……そうね。私は魔王なのだもの。勇者に倒されるそのときまで太陽に復讐し続けましょう」
「だが、申し訳ないことに私は勇者ではないんだ」
「ええ、知ってるわ。貴方とてもそんな風に見えないもの」
「随分と手厳しいな」
「さあ、いつでもやりなさい。“サラマンドラ”の党首サマ」
「気づいていたのですね」
「私を誰だと思っているの? 道化の悪魔を従えて、太陽神すら封じ込めた魔王よ? 当たり前じゃない」
「そうですね。では貴方に応えるために、私の最強の技で応えます!」
神格を削られ、霊格の殆どが消滅し、仲間も失った魔王。
それでも彼女は命乞いはしない。
『私は魔王だ』と、毅然とした態度で死を迎えようとしている。
「四代精霊にして、火を司るものよ! 我が内に顕現せよ! 邪を滅せよ! 『精霊龍の聖炎』」
サンドラの手から美しい炎が立ち上り、近くにいたペストを飲み込む。
「……ああ、次は必ず太陽を落としましょう。ラッテン、ヴェーザー」
こうしてペストは魔王として幕を下ろした。
~エミヤ視点終了~
光一「お前、異常な今日か貰ったからって調子乗りすぎだろ。完全にこっちが悪役みたいになってるぞ」
エミヤ「フッ。今は何をいわれてもいいぐらいだ。後一月も経たないうちに、モーションまで変更が来るのだぞ?」
光一「……大のおっさんがこんなにテンション上がっていると逆にこっちはテンション下がるな」
エミヤ「私はお前ほど生きていない。私がおっさんならお前は爺さんだろう」
光一「俺を爺さんと呼ぶんじゃねえ!」
エミヤ「まあ、守護者としての年月を含めたら、私も人の事はいえないのだがね」