英雄の箱庭生活   作:英雄好きの馬鹿

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アルトリア・ペンドラゴン

~エミヤ視点~

 

 忘れたことのないほどに、今でもはっきりと記憶に残っている女性。

 

 未熟な私と共に戦い続けてくれた元相棒がそこにいた。

 

「さて、もう一度問いましょう。貴方はなぜ私から逃げようとしていたのですか?」

 

「コミュニティの参謀に客人が来ていたのだ。どこの馬の骨とも知れない者がいたら邪魔だろう?」

 

「では、そういうことにしておきましょう」

 

 セイバーは取り乱すことすらなく答える。

 

 ……まいったな。やはり彼女の直感は脅威だな。

 

「それに、客人というのは問題ありません。私は貴方に用があって呼び出してもらったのですから」

 

「それは私個人への依頼ということでいいのか?」

 

「ええ。貴方にしか頼めないことだ。エクスカリバーすら複製する貴方にしか」

 

 瞬間。

 

 度し難いほどの苛立ちに襲われる。

 

 彼女の願い――選定のやり直し。

 

 約束された勝利の剣(エクスカリバー)――彼女にしか抜けぬ聖剣。

 

 ならば、彼女の依頼とは、

 

「君はまだ下らない願いを叶えようとしているのか?」

 

「下らないとはほざいたな、アーチャー」

 

「事実だろう、セイバー。選定のやり直しなどという、全てを救おうとして、全てを蔑ろにしている願いか下らなくてなんだという」

 

 その言葉に対してセイバーは予想外の反応を見せる。

 

 ふっと、怒気を緩めて微笑んだのだ。

 

「貴方は勘違いをしているようだ。聖杯戦争の時の貴方であればその様な勘違いはしなかっただろうに」

 

「何?」

 

「貴方は随分と環境に恵まれているようだ。それでは英霊エミヤと言うより、シロウに近い」

 

「……今の環境に恵まれていることには同意しよう。だが、あの小僧に近いとは心外だな」

 

「事実、貴方は私の現状に気づけなかったでしょう? その戦術眼が曇っている貴方ならば、私は苦もなく打倒出来たはずだ」

 

「…………」

 

 確かにそれを言われると言い返すことはできないな。

 

「考えてみるといい。私は選定をやり直すために世界と契約したと言うことは、聖杯を手に入れる可能性の有る戦いにしか呼ばれない」

 

「ーーつまり願いを捨て去りアヴァロンに到達することでしか今の状態はあり得なと言うことか」

 

 間抜けかオレは。正しく彼女の言う通り。

 

 彼女は願いを叶えなければ世界との契約のもと、永遠に聖杯を巡る戦いに駆り出される。

 

 しかし、それならばおかしいはずだ。

 

「君は何故聖剣を持っている?」

 

 彼女がアヴァロンに至ったのであれば、その最後にベディヴィエール卿によって聖剣エクスカリバーは湖の乙女に返還されていなければならない。

 

「これはいたずら好きの老人が、武器も持たずに来るのは危ないとのことで、そこら辺の聖剣に幻術をかけているだけです」

 

「成る程。花の魔術師による幻覚か。しかし、そこら辺の聖剣とは、随分と恐ろしい話だな」

 

「それをあなたが言いますか」

 

 じとー、とアルトリアが見てくる。

 

 確かに私は聖剣だろうが魔剣だろうが作り出して見せるが……。

 

「いや、その前に一つ問おう」

 

「何故、わざわざ聖剣を模した剣なぞ持ってくる? 自衛手段程度ならば聖剣を模す必要など無いだろう」

 

 私は未だに聖剣にかけられた幻術を見破れないでいるが、それでも彼女の腕ならば並の剣ではあるまい。

 

 そもそも並の剣でもそんじょそこらの者に敗北はあるまい。

 

「ええ。疑問に答えましょう」

 

 一つ頷いてアルトリアは剣の幻術を解いた。

 

 しかしそこに入っていたのは、なんともちぐはぐな剣だった。

 

 柄は拵えたてかのように綺麗だ。これでは百も振るってはいまい。

 

 しかし、刀身は致命的だ。

 

 刃こぼれしすぎてノコギリのようになった刀身に、大きなヒビが走っている。

 

 これでは持っても一撃。

 

「これはとある聖人が所持していた剣なのですが、ここに来てから二週間と経たないうちにここまでやられてしまいました」

 

「随分と強敵だったのだな」

 

「……いえ、私の腕が落ちたのでしょう。強力な聖剣にかまけて腕を磨かなかったツケのようなものです」

 

 彼女は嘆息しながら言う。

 

それに、ここにくるまでに千三百年ほどアヴァロンで過ごしていたので、戦うのも久しぶりだったのですから。もしも私が全盛期ならば一刀の下に切り捨てていた」

 

「まったく。負けず嫌いなところは相変わらずか。だが、聖剣などなおさら必要あるまい。君のことだ、もう既に敵などいないだろう?」

 

「情けない話ですが、今の私とこの剣では太刀打ちできませんでした」

 

 負けず嫌いの彼女が太刀打ちできない者。

 

「ならば期待には答えられんな。確かに聖剣を複製することは出来るだろう。それを君が使いこなすことも出来るだろうし、並大抵の者ならば型落ちした剣でも薙ぎ払えるだろう」

 

 だが、期待には答えられない。

 

「以下に全力を尽くしたところで私は聖剣を複製する負荷に耐えられない。耐えられるほどに格を落とせば今度は君の力に耐えることなど出来まいよ」

 

「ならばその負荷さえ軽減できれば良いのですね?」

 

「そんなことは不可能だ。星の鍛えた聖剣など身に余る。君の鞘を埋め込まれていたのであれば、君の魔力で直す事は出来るだろう。しかし、君はそれをしてしまえばアヴァロンに戻ることは出来まい?」

 

「ええ、そもそも私は鞘を手にしていませんから。ですがこの世界は正しく人外魔境だ。鍛冶の神から恩恵を受ければいい」

 

「ほう。確かにそれならば可能だろう。だが、鍛冶の神に合うなど並大抵のことではあるまい?」

 

「それならば問題ない。私は今、ヘパイストスの代理とゲームをしている。それも、互いにヘパイストスから恩恵が与えられると言うゲームです」

 

「どういうことだ? 神からの恩恵が約束されたゲームだと?」

 

 ギリシャ神話の武具をいくつも作り上げた神の代理人とだと?

 

 有り得ない。

 

 ならば何かを作成するゲームではないのだろうか?

 

「私が参加しているゲームは、彼の神が創り出した盾の破壊です。敵対している相手は壊せる武具の作成を、私は壊せるだけの力を持って叩くというゲームです」

 

「なるほどな。確かに君の聖剣ならば大抵のものは破壊できる。しかし、盾を壊せる武具が壊した後に手に入ったのでは意味が無いだろう?」

 

「なので貴方の力が必要なのです。破壊する盾は妖精卿の壁のレプリカ。盾に固有の世界を内包し、世界ごと引き裂く力でもないと破壊できない盾です」

 

「なるほどな。――私なら可能だ。仮初の世界を展開する宝具なのならば塗りつぶしてし合えばいい。更に、その本体たる盾があったとて、君の力なら容易に破壊できるだろう」

 

「ええ。なので協力をお願いします」

 

「お断りだ」

 

 私は断言する。

 

「君の戦いは君のものだ。いくら部外者に手を借りるのが前提のゲームとはいえ、私がいなければ成り立たぬ戦いに参加するほうが悪い」

 

 空を翔るゲームで空を飛べなくて悪いのは参加者だ。

 

 ならばクリアできないことを嘆くのは筋違いだろう。

 

 

 

「戦いが私のものだと言うことは分かっています。ですが引けないのです。私はヘパイストスから鞘を取り返さなければならないのですから」

 

 

 

 思考が塗りつぶされる。

 

「私がこの世界に来た当日にゲームを申し込まれて、奪われました。|主催者権限を使われてしまえばゲームから逃げる事も出来ませんから」

 

 鞘も無く、生前手に入れた数多の武具は無く、最強の聖剣も無い。

 

 そんな状態で神と戦うことのなんと恐ろしいことか。

 

 私のように自らの心が武器ではなく、自らの研鑽が武器ではなく、あくまでも強力な武具を極めたが故の弊害。

 

 もしも極めたものを奪われてしまえばその戦闘力は見る影も無くなってしまう。

 

 究極の一を極めたが故の欠落だ。

 

「では問おう。君はなぜこの世界にやってきた? アヴァロンにいるのならば、自らの意思や世界からの干渉でもなければ来れないはずだ」

 

「ええ、それは正しい。ですが、かつての部下がこの世界に迷い込んだと聞きました。ならばこなければならないでしょう?」

 

 それは、かつての誰かが言った言葉を真っ向から否定する言葉だったのだろう。

 

 ――王は人の心が分からない。

 

 それがどれだけ的外れだったのか。

 

 彼女はこんなにも人間らしいのに。

 

「ゲームの協力の件、了解しよう。報酬も一つだけというのならば君の鞘を取り返せばいい。だが、ゲームをクリアしたそのあかつきには私と契約を結んでもらおう」

 

「契約とは?」

 

「私とパスを繋いで貰おう」

 

 瞬間。

 

 アルトリアの顔が朱色に染まる。

 

「あ、あのですね、待ってください。パスを繋ぐと言うことは、そういうこと(・・・・・・)でしょう? そ、それでは不貞関係のようなものに……。いや、元は同一人物なので不貞ではない……?」

 

「契約を繋ぐ方法はそれだけではないぞ、たわけ!」

 

 真っ赤になっているむっつり騎士王(アルトリア)をしかりつける。

 

 やれやれ。一つ確実に分かったのは、アルトリアが開放された戦いにおいて、彼女は衛宮士郎と恋仲になり、特殊な魔力供給を行ったということだった。

 

~エミヤ視点終了~

 




光一「ここしばらく更新できず申し訳ない。最近どうにもやる気が出なくてな」

エミヤ「ああ、バカは世界を救えるかなど何年前だと言う話だ」

光一「お前なんか2004年だろう! 十年以上前の奴に言われたくねえよ!」

エミヤ「私は何度もアニメや漫画で再登場しているからな。最近ではスマホのゲームでも大活躍だ」

光一「確かにそうだから言い返せねえ!」

エミヤ「だが、もうそろそろ限界なのだろうな。一つの作品は完璧に終わっているし、もう一つは何度も復活しているとはいえ終わっている作品。最後の一つは二部に移ってから急に刊行が遅くなった作品だ筆が進まなくなったのも分からなくは無い」

光一「……ああ。思えば長く走り続けたような気がするな。気づけば五年。そろそろ足を止めてもいいころなのかもな」

エミヤ「ああ。また書く気力が戻ってきたときに帰ってくればいいさ」

光一「不定期更新なのか、これで終わりなのかは分からないが、本編だけはいつでも続きを始められるようになっているけれど、前と同じにはならないだろうな」

エミヤ「ああ。では、続きはまた出会えた時にしようか。生きているかどうかはFGOでフレンドになった人は分かるだろうからな」

光一「ああ。この作品のことは覚えていなくてもいい。だけど、こんなのもあったと思い出してくれれば幸いだ」

エミヤ「では、また幕が上がる日に会おう!」







































































光一「ちなみに今日は何月何日でしょうか? まだまだ続くぜ!」
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