英雄の箱庭生活   作:英雄好きの馬鹿

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無限の剣製

~エミヤ視点~

 

「なっ! 何でお前がここにいるんだ!」

 

 件の盾が置いてある場所に向かうと、そこには、光一とルイオスと後の一人は銀色の騎士だった。

 

「いや、お前こそなぜここにいる」

 

「俺は、ベディヴィエールがアーサー王を探す手伝いをする為に、ペルセウスのゲームに参加することになってな」

 

「ほう。ならばちょうどいい。ゲームを降りろ」

 

「何?」

 

「アーサー王はここにいる」

 

「呼びましたか? アーチャー。っ!」

 

「我が……王?」

 

「久しぶりですね、ベディヴィエール卿」

 

 アルトリアがそう呼びかけると、ベディヴィエールは片膝を着き、頭を垂れた。

 

「……長らく、お待たせしました」

 

「何を言っている、ベディヴィエール卿。貴方が私を待たせることなど有っただろうか?」

 

「千三百年もの間、私は貴方の命を果たせなかった。貴方の信頼を裏切り、聖剣を返すことが出来なかったのですから」

 

「何を言っているのだ。聖剣はそなたが泉に返してくれたではないか」

 

 どうにも噛み合わない会話を続ける主従に、私だけが状況を理解していた。

 

「ベディヴィエール卿。そこにいるアーサー王は君の王ではない」

 

「どういうことですか?」

 

 顔を上げて即座に聞き返す。

 

「ああ、ここにいるアーサー王は平行世界のアーサー王だ。君が聖剣を返せなかったことで死にきる事が出来なかったアーサー王ではない」

 

「つまり、私はまだ旅を続けるしかないのですね……」

 

 ベディヴィエールは目に見えて落胆する。

 

「しかも、ここで二人に抜けられたら、僕の都合はどうなる。君たちに負けたおかげで、こっちはいろいろ大変なんだ」

 

「お前のは自業自得だろう」

 

「余計な茶々を入れるなルイオス、光一」

 

「はっ、この箱庭について随分と素人のようだから教えてあげようとしている僕に、随分と辛辣だね」

 

「なんだと? 君にそんな知識があるとは思えないのだが」

 

「どれだけ馬鹿にしているんだ! ……まあいい。アーサー王は聖剣を湖に返した後の世界から召還され、ベディヴィエールは聖剣を返すことが出来ずに終えた世界なのだろう。それなのに、君はいつまでも別の王に頭を垂れ続けるのかい?」

 

「それは……」

 

「随分な挑発ではないか、ペルセウス。流石、私の鞘を盗んだ神に使えているだけある」

 

「へえ、聖剣も鞘も他の武器も何一つ持たない王に何を言われても怖くは無いな」

 

「やめろルイオス。それにアーサー王も。落ち着け」

 

 今にもここで戦いに発展しそうな場を、光一がとっさに止めに入る。

 

「とりあえず、そっちの目的は何だ? こっちは、ベディヴィエールの探してるほうのアーサー王にコイツを合わせるために、ペルセウスからサウザンドアイズに頼んでもらおうと思ってな。その代わりにこのギフトゲームに協力している」

 

「なるほど。こっちはヘパイストスに奪われた聖剣の鞘を、このゲームに買ったら返してもらえるらしいのでな。アーサー王に協力している」

 

「譲る気は?」

 

「無い」

 

「そうか」

 

 そう言って私と光一は同時に踵を返して、仲間の元に向かう。

 

 そして、私はアルトリアに、光一はルイオスとベディヴィエールに話しかける。

 

「かつての仲間と、元は同じ存在だがやってくれるか?」

 

「ええ。こちらからお願いしたことですから。貴方のほうこそ、彼は仲間なのでしょう?」

 

「このゲームでは命まではかけまい。せいぜい動けなくでもしてやるさ」

 

 そう言ってから光一のほうを見る。

 

 すると、向こうも作戦でも組んだのか、全員臨戦態勢だ。

 

「では、全霊でお相手しよう」

 

「ああ、かかって来い。俺は約束を守る男だから、俺達はお前に負けない」

 

「ほざけ!」

 

 私の掛け声と共に私は弓を投影し、三連射する。

 

 狙うのは光一の眉間、心臓、右手だ。

 

 それを弾いたのはルイオス。

 

 取り出していた炎の弓でこちらと同じく三連射することで打ち落とす。

 

「ほう、随分と錬度を上げたではないか」

 

「僕も、この前みたいな醜態は晒すわけには行かなくてね!」

 

 そう言いながら更に八連射。

 

 ルイオスがとっさに反応して五連射し、見事に矢を弾くが、三つは光一の下へ走る。

 

「頼んだ、ベディヴィエール!」

 

「分かりました」

 

 早い。

 

 私の矢に神速の体捌きで持って踏み込み、矢を弾く。

 

 しかし私も一人ではない。

 

 私の矢に追従する形で飛び出していたアルトリアが、矢を弾くことで無防備になっていたベディヴィエールにむけ剣を振りかぶる。

 

「甘い! 天空隆起!」

 

 パチン!

 

 光一が指を弾くと同時にアルトリアがいる地面が消失する。

 

「こんなもので私を止められるか!」

 

 アルトリアは剣から、膨大な魔力を放出することにより、足場が無い状態でなお踏み込む。

 

 しかし、速度ではベディヴィエールのほうが上だ。

 

 アルトリアの攻撃に対して一歩下がることにより、剣戟をやり過ごす。

 

 更にその隙に私はベディヴィエールの死角から矢を放っている。

 

 直感によりアルトリアは、ベディヴィエールの前から体を逸らして回避、残されたベディヴィエールは突如として現れた矢に反応することが出来ない。

 

「僕のことをもう忘れたのかい?」

 

 すると、どこからか声が聞こえ、飛翔していた矢が全て叩き落とされる。

 

 ハデスの兜のオリジナルか。

 

 厄介な。

 

 サーヴァントとして召還されたのならば、その兜だけでアサシンのクラスに適正を得られるのだろう。

 

 しかし、アルトリアの前では意味をなさない。

 

 並外れた直感を持って、不可視のルイオスに対して突撃し剣を振るう。

 

「残念、外れだ。それは僕じゃない!」

 

 声は既に上空から聞こえる。

 

 その声に反応して上空を見ると、既に空は炎の矢で埋め尽くされている。

 

裏腹海月(トランスペアレント)身代わり(ドッペルゲンガー)だ。さらに全方位射撃(アハトアハト)!」

 

 光一は、BB弾ほどの玉が現れてアルトリアに向かって放つ。

 

「君たちは分かっていないな。アーサー王はそんな程度では止まらない」

 

 大量の炎の矢も、光一のBB弾もアルトリアの対魔力を突き破ることは出来ずに霧散した。

 

「ええ、知っています!」

 

 しかしそれを理解しているのが一人。

 

 ベディヴィエールがアルトリアに剣を振るい打ち合う。

 

「後ろががら空きだ!」

 

「攻撃する前に声をかける馬鹿がどこにいる」

 

 私の後ろから切りかかって来ていたであろうルイオスには、あらかじめ空に放っていた矢が降り注いだことにより撃退する。

 

(シュトロム)!」

 

 パチン!

 

 光一が指を弾くと同時に、風が吹き荒れて空に放っていた矢の起動が変わり、アルトリアとベディヴィエールが打ち合っている空間に逸れる。

 

 それを見たベディヴィエールとアルトリアが弾かれるようにして距離をとり、矢をかわす。

 

 そして、ルイオスが光一のそばで姿を現して、全員が始まった時の位置に戻った。

 

 全員無傷だ。

 

 しかし、消耗が激しいのは向こうだ。

 

 ルイオスは今の打ち合いで相当縦横無尽に動き回り、ベディヴィエールは格上の相手に、僅かに勝る速度で以て食らいついている状況だ。

 

 対してこちらは私が魔力を少しだけ消耗し、アルトリアなどは竜の心臓によって魔力は完全回復し、体力に底など見えない。

 

 ふむ。

 

 戦力的にはこちらが優勢。

 

 アルトリアを十とすると、私が八で、ベディヴィエールが七、ルイオスが六、光一が三だろう。

 

 しかし光一が上手くサポートに回ることで厄介さが増すことにより殆ど互角の状況まで持って来ている。

 

「アルトリア。やはり光一から倒そう」

 

「銀髪の少年ですね。分かりました」

 

「ああ、最も光一は君より遥かに長生きだがな」

 

「随分と可笑しな人みたいですね」

 

「ああ、全くだ」

 

 軽口を叩きながら作戦を組み立てる。

 

 恐らく向こうは光一が要だ。

 

 光一がいなければ順当にこちらが勝つ。

 

 作戦が思いつく。

 

「アルトリア、私が世界を展開する。その後は手はず通りだ」

 

「分かりました。私が時間を稼ぎましょう」

 

「ああ。――体は剣で出来ている(I am the bone of my sword. )

 

 私は世界に埋没する。

 

 私が詠唱を始めたのを聞いて、ルイオスがまた姿を消し、ベディヴィエールがアルトリアに向かい疾走し、光一が指を弾く。

 

 まずベディヴィエールが魔力放出により、膂力の上がった剣に弾き飛ばされる。

 

血潮は鉄で、心は硝子(Steel is my body, and fire is my blood. )

 

 姿を消したルイオスだがアルトリアの直感によって振るわれた剣で以て地面に叩きつけられる音が聞こえる。

 

幾たびの戦場を越えて不敗(I have created over a thousand blades. )

 

 劣化異能の連打を私に放っていた光一が、出来損ないもろとも弾き飛ばされる。

 

ただの一度も敗走はなく(Unknown to Death. )

 

 その間に吹き飛ばされていたベディヴィエールとルイオスが同時にアルトリアへ突撃したのが聞こえる。

 

ただの一度も理解されない(Nor known to Life. )

 

 威力に負けて何度も体を流されているようだが、今度は二人で協力することにより隙を消している。

 

彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う(Have withstood pain to create many weapons. )

 

 しかし、拮抗では私を止められない。

 

 二人が時間を稼いでいる隙に光一が指を弾く。

 

 それを、アルトリアが足元の小石を蹴り飛ばすことで弾く。

 

故に、その生涯に意味はなく(Yet, those hands will never hold anything. )

 

 異能が弾かれたのを見て、光一は褐色の錆びた液体を手から滴らせながらアルトリアに突っ込む。

 

 それを察して騎士二人が全力で剣を振るい、アルトリアの剣を弾く。

 

 アルトリアは追撃がこないように一歩後退するが、何かのギフトを使ったのだろうか、光一のほうが早く、その剣に触れる。

 

「腐り落ちろ! 腐食神話(ナイタール)!」

 

 光一の発動した能力が、元々壊れかけていたアルトリアの剣を破壊する。

 

 無機物を腐らせ破壊する能力と言ったところか。

 

 武器を失ったアルトリアの横をすり抜けて来ていたベディヴィエールに対してアルトリアが体ごと突撃して吹き飛ばし、その硬直にルイオスが攻撃を加えたのだろう。

 

 アルトリアの小手が高い金属音を立てる。

 

「間、に、合えぇぇぇぇっーーーー!」

 

 光一が私の上に跳躍して指を弾k、そこからビームのようなものが放たれる。

 

 ――しかしこちらが先だ。

 

 

 

 

 

その体は、きっと剣で出来ていた(So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS. )

 

 

 

 

 

 走る炎。

 

 そこは既に異界。

 

 私の世界。

 

「さあ、投降するのなら今のうちだぞ?」

 

 そう言って私は、彼女とパスを繋いだ事により投影できるようになった、聖剣の型落ち品をアルトリアに渡す。

 

「究極の一を振るう彼女に、無限の剣の世界があるのだ。もはやお前たちに勝ち目など無い」

 

~エミヤ視点終了~

 

 




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