~エミヤ視点~
「ベディヴィエール卿。貴方はいつまで逃げ回るつもりですか?」
ルイオスを撃破して、残るはベディヴィエールだけとなった時に、セイバーが口を開いた。
正直な話、私もセイバーもこのゲームの勝利条件は既に満たしているのだ。
故に、本来ならば出てこないと言うのならそれまでなのだ。
それでもセイバーがベディヴィエールに呼びかけたのは、平行世界の存在とはいえども、最後まで共に戦場を駆け抜けたか部下でもあるのもあるだろうし、そもそもこんな戦いで彼女は彼らに勝利したく無かったからだろう。
光一のことだ、このゲームの謎にすら既に気づいた上でこの戦いを仕組んだことも間違いない。
つまるところ、この戦いにおいて主役は私ではないし、ルイオスでも光一でもない。
唯二人だけの主役の為に、鍛冶の神が作り上げたゲームを利用しているのだ。
そのはずが、主役の一人はこの戦いにおいて一度たりともセイバーを本気で攻撃していない。
余り強力な逸話の無いベディヴィエールという騎士が、どれだけ全力を振り絞ろうと、アーサー王が自らの剣すら持っていなかろうとも、アーサー王に勝利することは出来ないにも関わらずだ。
「余り嘗めないでいただこう、ベディヴィエール卿。貴方がその剣を持っていると言うことは、貴方の世界の私はまだ死んでいないのでしょう? 自惚れかも知れませんが、貴方はそれをどうにかしたいのでしょう? ならば何故姿形が似ているだけの他人に遠慮しているのですか! 私の世界の貴方ならばそんな不忠などしない!」
「王よ、気づいておられたのですね。私の罪を」
そう言いながら、ベディヴィエール卿が姿を見せる。その背中には倒れていた光一が背負われている。
「その腕をみれば分かります。いえ、正確にはその剣をですが」
「ならば王よ、気づいておられるはずだ。私は最後の最後で私は貴方を裏切ったのだと。――貴方の最後の命を果たさなかったことを!」
ベディヴィエールが、その端整な顔に後悔を滲ませながら言う。
伝承の彼は間違いなく忠臣だった。
古参の騎士でありながら、一度として王を裏切ることなく使え続けた騎士。
その命に背いたのは二度、王が死に際に剣を湖に投げ入れよと言った時のみ。つまり、王が自ら死を選んだ時だけなのだ。
そして目の前にいる彼は、それでも王に死んでほしくなかったのだろう。
彼の後悔は恐らくそれだ。
全く。光一の気持ちも分かるという物だ。
だから初見殺しの能力に近い自分を私にぶつけ、ルイオスの持ち味である、ハデスの兜を碌に生かさないゲームメイクを行ったのだろう。
ならば私から言えることは一つだけだ。
「ベディヴィエール。君は忠臣だと聞いていたが、とんだ浮気者のようだな。それでは君が後悔を振り切る日などこないだろうな。――ああ、拍子抜けだ」
「貴方になにが――」
「口を慎め、アーチャー!」
ベディヴィエールが口を開いた瞬間、それを遮ったのはセイバーだった。
「貴方が彼の何をわかるというのですか! 確かに彼は並行世界の私の命を果たせなかったのでしょう! ですが、貴方にそれを言われる覚えはない! そのそも彼ほどの忠義は誉れ高き円卓の中でもそうはいない! 私の部下を愚弄するなッ!」
紛れもない殺気を私に向けながら、 セイバーは私に剣を向ける。
「それは君の世界の彼のことだろう。私の目の前にいる騎士は、命も中も果たせなかったボンクラだ。それに、私は間違ったことを言っていないはずだぞ、セイバー。彼はどれだけ姿形が似通っていようと、君をいまだに王と呼んでいる。ならば二君に仕える不忠物だろう?」
「よく言った。ならば私達の同盟は破棄だ。まずは貴方を切る」
「よく言っただと? それは私の台詞だ。君の持っている剣も私の作り出したものだと忘れたか? 剣も鞘もを持たぬ君など脅威でも何でもない」
そう言うとともに、私は剣群を背後に待機させる。
「では、私の一人勝ちということでこのゲームを終わらせよう。さらばだ」
剣群を射出すると同時に、聖剣の型落ち品の内部をいじり、暴走させる。
それをセイバーは剣群に向けて投げ捨てることで剣群と爆発を同時に対処する。
しかし、私が持つのは無限の剣、剣劇の極致。その程度では全てを対処することなどできない。
先ほどの更に倍の剣群を射出。今度はこの世界に刺さっている宝具すらも混ぜて、途切れさせることなく射出。
セイバーは魔力放出を使うことで吹き飛ばせる限り吹き飛ばし、それ以外は小手の甲冑で防ぐ。
ジグザグにこちらに向かってくるセイバーに対して私は、直剣を一本引き抜いて迎え撃つ。
流石はサーヴァントの型に嵌められていないアーサー王だ。
その魔力量、身体能力。どれも並みのサーヴァントでは対処できないだろう。
剣を使わずとも、魔力で出来た鎧を魔力放出で補強するだけでよく防ぐ。
私は距離ができた瞬間に直剣を投擲して新しくシャムシールを引き抜く。
先程とリズムを変えて切りかかるが、それも不発。
剣群を射出、そのうちの一本を掴みとり切りかかる。
それを小手の甲冑に受け流され、そのまま踏み込まれる。
「ハッ!」
「甘い!」
私は瞬時に投影したデュランダルで打撃をガードし、そのまま吹き飛ばされることで距離をとる。
それと同時に剣群を射出することによって足止めする。
「ではさらばだ。
ドドドドドドドドドドドッ!
盛大に爆発する。
これで、さすがの彼女も耐えられるはずがない。
「さて、腰抜けを探すとしようか」
「エミヤさん。腰抜けはもうここにはいない!」
晴れた煙の向こうには、いまだ健在のセイバーを抱えたベディビエールがそこにいた。
「ほう。高々一撃から守っただけで大きな口を叩いたな」
「ええ、確かに、貴女にそう言われても否定できません。今目の前にいる王も私の王ではない。それでも私はアーサー・ペンドラゴンの騎士だ」
後悔に足を引っ張られ、うじうじしていた青年はそこにはもう居ない。
そこにいたのは騎士たちの憧れ、円卓の騎士が一人。ベディビエール卿だった。
「ならば私を打倒してみろ!」
「倒すのは私ではありません。私と、王だ」
そう言って、ベディヴィエール卿はセイバーの前に跪く。
「王よ、聖剣をお取り下さい」
「ええ、貴方の世界の聖剣を借り受けましょう」
セイバーが聖剣を上段に構えながら、容易く可視化できるほどの魔力を放出する。
「
「
あれを防げる可能性のある盾など一つしか思いつかない。
故に私は魔力を集中させる。
そして、セイバーが――アルトリア・ペンドラゴンが聖剣を振るう。
「――
「――
ゴウッ!
衝撃。
パリン、パリン、パリン。
アイアスが砕ける音が連続して聞こえる。
世界の展開を止めれば外界に影響が出かねない。
故に策を弄する。
しかし魔力を割く余裕などありはしない。
パリン、パリン、パリン。
さらに三枚。
残された花弁は既に一枚のみ。
しかし、まだ破られてはいない。
だから――
「投げろ、光一!」
「了解だ!」
気絶していたはずの光一が起き上がって、件の盾を投げて究極の斬撃に割り込ませる。
ピシ。
ピシ。
私の世界に浸食されかけた上に、究極の斬撃を食らった盾が悲鳴を上げる。
その光景を見てセイバーとベディヴィエールが、察したのか更に魔力を強める。
アイアスにかかる負担が増える。
全く、こっちのことも少しは考えてほしいのだがね。
ピシ。
ピシシ。
件の盾とアイアスが同時に悲鳴をあげる。
まずいな、これは持たないか。
「
そこに飛び込んで来たのは光一だ。
能力を発動したのか右手の手首から上だけ、駄菓子の付録でついて来そうな小手をつけている。
聖剣の余波に当たらないギリギリの場所からその小手で触れる。
「「「うをおおおおおおっ!」」」
ピシ。
ピシシ。
パリン!
盾が割れた音を聞き届けたのちに、魔力を使い果たして世界が閉じた。
全く。
聖剣の余波で私の世界もめちゃくちゃだ。
やれやれ。
そんな役割りだ。
まあ、慣れているがね。
~エミヤ視点終了~
光一「久しぶりにここで話す気がするなあ」
エミヤ「前にこのコーナーをやったのが四月だからな。五か月も空いていれば忘れ去られているのではないのかね?」
光一「そもそも、八月中に更新ないってどういうことだよなあ」
エミヤ「全くだ。毎月更新とは何だったのか」
光一「でもまあ、その分今月中にもう一話更新予定だとさ」
エミヤ「ああ。まったく。高校時代の友人は小説家件エロゲのシナリオライター目指してひと月で二冊分も書いたというのに」
光一「ああ、小説家になろうのほうで毎日何話か更新してるから是非見てやってくれ」
エミヤ「習作だが、私は面白いと思う。タイトルが『プラヴィータ!―魔術と魔法の飛行船―』という研工亭 スバルというやつが書いた奴だな。
http://ncode.syosetu.com/n9402ef/
このリンクから行けると思う」
光一「じゃあ、また次回もよろしく!」