~光一視点続き~
ぱちん!
「『
イメージを固めて指を弾く。そして能力が発動する。
発動した能力によって俺の前に……いや俺の手のひらの上に現われたのは小さな球状の弾だった。
盾として使う事も出来ないような小さな球。
強度も身体能力が一般人の俺が全力で殴れば破れる程度。
膜の枚数も一枚きりの物だ。
では何の性能を上げたか――――
「そんな小さい玉では何も防げないと思うが?」
「まあ見てろって」
そういって俺はその小さな弾を前に出す。
すると弾は二つに増える。
そして次の瞬間には弾は四つに。
そしてまた次の瞬間には八つに。
ものの数秒もしないうちに弾の数は数え切れなくなって俺たちの前に広がる。
「ほう。泡状の盾か。それなら威力は分散しやすいし一つの盾を作るよりも長持ちしやすい。一枚だと壊されて終わりだからな。まさに今しか使えないようなものだな」
「そりゃそうだろ。今この使い道にしたんだからな。元々は尖ってないたまねぎみたいな膜だったんだ。それで生産速度を上げてこういう感じにした」
「思ったよりも使いどころが良ければ使えるようだな。使いようによってはな」
「ふ、もっとほめてもいいんだぞ?」
「ま、まるで皮肉が通じていませんね…………あ、こっちに十六夜さんが来そうです!」
今ちょうど俺たちの前に十六夜(仮)が水流を巻き上げてくる攻撃をかわしながらこっちにくる。
「しかし本当に大丈夫なのか? こんな泡みたいな盾など一瞬で流されそうなのだが? いくら威力が分散するといっても限度はあるぞ?」
エミヤが固目を閉じながら聞いてくる。
「思惑がうまくいくかは分らんが上手くいけば十中八九防げる!」
「上手くいくといいのだがな」
最後に皮肉のようなものを言って口を出すのをやめる。
一応信じてくれたのであろう。
そしてついに十六夜(仮)は俺たちの前に来て水流を避ける。
そして水流は勢いを緩めることなくこっちに向かってくる。
木など簡単にねじ切るであろう水流が、絶対防御と呼ばれていた『
瞬く間に泡は吹き飛ばされるよううに減って行く。
例えるならタンポポの種に息を吹きかけるようなものだ。
俺が作った盾を構成する泡が一秒すら持ちこたえる事も出来ずに飛んでいく。
しかし攻撃をくらい始めてから三秒間。
俺の後ろに水滴の一つも通っていない。きっちり守りきれていた。
「おい…………ひどくないか? 少しは人のこと信用しろよ」
しかしエミヤと黒ウサギ(仮)は被害を受けないようなところまで逃げている。
俺の『
必死こいて守ったのが馬鹿みたいだ。
「えーと……。壁がものすごい勢いで削られていたのでムリかなと思ったんですが……」
「右に同じだ。しかし最悪お前を守るだけの手段は取れるようにしておいた。見捨てたわけじゃないから安心しろ」
黒ウサギ(仮)はさっきから目をあわせようとしない。自分でも罪悪感があるのだろう。
エミヤのほうも今までより対応がやわらかい事から黒ウサギ(仮)と同じで罪悪感があるのだろう。ほんの少しだが。
「しかしどうやってあんなもので防いだんだ? 普通なら一瞬で押し切られて終わりだろう?」
「そうですよ! 黒ウサギもなんであんな盾で防げたのか全く分らないんですが?」
取り繕うように言ってくる黒ウサギ(仮)。
「別に気なんて使わなくてもいいんだぜ? こんな対応慣れてるしな……」
「本当になれてる奴の反応だな……」
エミヤが可愛そうなものを見るように言ってくる。
まあ、本当にこんな感じの反応ばっかだったしな……。
「まあ、今やった事の仕掛けもたいした事じゃなくてただ数で押しきっただけだよ」
「数で? お前にそんな便利な能力なんて使えたのか?」
「貴様は俺をなめすぎだろう……? まあ実際そんな便利に使うことなんてできないけどな。それでも五秒あれば木をねじ切るくらいの威力なんて防げるぞ」
「五秒ってとっさの盾として使えないじゃないですか…………」
「ああ、だから今ぐらいにしか使えないが今使えたのなら問題ない」
黒ウサギ(仮)はあきれたように言っている。
見ればエミヤもあきれているようだ。
「あ、でもなんで五秒なんですか? 黒ウサギとしてはそこが不思議なんですが」
「ああ、単純にあの蛇の攻撃を防ぐのにそんくらい必要かなと思ったんだ。そのために生産速度の性能を上げたんだしな」
「強度を上げていないのか。てっきりもともと泡でも作り出す能力で強度を上げたのだと思ったのだが」
「ああ、オリジナルは二十枚くらいの膜で出来た盾を作る能力だ。俺の能力で劣化した奴をただ増やすようにしただけだ」
「そういうことだったのか。全く意味が分らん。本当に強いのか弱いのか分らない能力だな」
「俺は貴様の魔術みたいに使いやすくないだけだ!」
「それはまあいいが、向こうではヘッドフォンの少年が逃げるのをやめたみたいだぞ?」
『なかなかやるな人間。今までの攻撃をかわせた褒美に、この一撃を凌げば貴様の勝ちを認めてやる』
「寝言は寝て言え。決闘は勝者が決まって終わるんじゃない。敗者を決めて終わるんだよ」
大蛇が十六夜(仮)に偉そうに言うが、言われたほうは大胆不敵に言い返す。
『ふん――その戯言が貴様の最後だ!』
大蛇は叫ぶように言うとさっきまでとは比べ物にならないほどの水の量を操る。
いや、水だけじゃなく水を巻き上げている風もだ。
風によって巻き上げられた水は数百トンにのぼり、高さも周りの木の高さをゆうに超えている。
周りの木が低いのではなく巻き上げられた高さが高いのだ。すでに十五メートル以上まで上っている。
その様子はすでに嵐も同然で、大蛇はたった一匹で自然災害を作り上げたのだ。
「――ハッ――しゃらくせえ!!」
十六夜(仮)が襲いかかる嵐に対してとった行動はシンプルだ。
自分に向かってくる数百トンの水とそれを巻き上げるだけの風に対してただ腕を振り抜いた。
それだけで大蛇が起こした嵐を超えるほどの暴力の渦になり嵐をなぎ払った。
「嘘!?」
『馬鹿な!?』
「なんという力だ。真租の吸血鬼かなんかなのか!?」
三者三様の驚き方をする。俺は驚きすぎて声が出ない。
だってあんな嵐をなぎ払うっておかしいだろッ!
大蛇のほうは混乱から抜け出せず放心している。
「ま、中々だったぜオマエ」
しかし十六夜は大地をふみ砕くような爆音を響かせながら大蛇の胴体まで飛び込む。
胸元に飛び込んだ十六夜(仮)は大蛇を蹴りぬく。
蹴られた大蛇は空高く吹き飛ばされている。
十六夜のほうは難なく着地するが、大蛇のほうは吹き飛ばされた後そのまま重力に従って川に落ちる。
その衝撃で川が氾濫して十六夜(仮)を巻き込みびしょ濡れにする。
「くそ、今日は良く濡れる日だ。クリーニング代ぐらいは出るんだろうな黒ウサギ?」
決着は誰の目にも明らかだった。
~光一視点終了~