炎のヒーローアカデミア   作:りっぽーたい

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第2話

 

 実技試験から1週間後、そろそろ合格通知が届く頃合い。筆記は自己採点でそこそこ余裕を持って合格ラインを超えていたし、実技試験も68点。流石に合格してるはずだが流石に緊張してきた。

 そんなことを考えながらジョギングをしていると思ったよりも早く住んでいるアパートに着く。タイムを見てもいつもより少し早めだ。考えることがあるとついついペースが上がるなぁ。

 そしてポストの中を見ると新聞と広告に隠れて雄英高校からのお手紙が1枚。

 

「来たァァァァ!」

 

 興奮を抑えきれずに口角が上がり、声が出る。朝早くのため声の音量を限りなくゼロにしているのは何度か怒られた故染み付いた癖だ。

 足音を消しながら急ぎ足で階段を上って家に帰る。

 

「ただいま!」

 

 一人暮らしのため返事はないが、そんなことは今はいい。

 靴を揃える余裕もなく脱ぎ捨てて部屋の机につく。一息ついてからゆっくりと開けると紙とよく分からないスピーカーのような、バッジのような何かが入っていた。

 よく分からないのでとりあえず机の上に置いて紙を広げようとすると、バッジから画面が空中に映し出される。

 

『私が投影された! 実は今年から雄英に勤めることになってね、私がいるという訳だ! さて、気になっていると思うし、早速合格発表いっちゃおうか! 筆記も実技も敵Pのみでも十分。文句なしの合格だ! 更に! 実は実技試験では審査制の救助活動Pというものもあってね! 君は5Pゲットしてたぜ! かなりの高得点だぜ! それじゃあ、一緒に入っている書類の通りに手続きを済ませて、雄英で会おうぜ!』

 

 いつもの画風が違う笑みを浮かべながら、何度も撮影したからか少し疲れた雰囲気を纏ったオールマイトが合格を通知してくれた。

 

「はぁぁぁぁ、一安心って感じだ。あんな事務的なオールマイト初めて見た気がするけど、疲れてたんだろうなぁ」

 

 そう呟きながら書類を見ると、書類は入学金やら学費、制服の採寸日や体操服の購入などの一般的なものから、コスチューム案や個性届といったものまで入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして入学式。新品の少し大きめの制服に身を包み、不安を期待と興奮で誤魔化しながら学校に着いた。

 

 1-Aが俺のクラスだ。だだっ広い廊下を歩いていると、後ろから走る足音が聞こえてくる。

 ちらりと後ろを見てみると、そこには見覚えのある縮れ毛の子がいた。

 

「あ、おはよう。良かった。顔見知りがいた。何組? 俺はA組なんだけど」

 

「え……あ、おはよう! 僕もA組だよ! あ……っと僕緑谷。よろしく! ええっと……」

 

「あぁごめんごめん。俺は操る炎って書いてみさお えん。よろしく。いやホント知り合い1人もいねぇからどうなるかと思ったんだけど、緑谷が居るなら安心だわ」

 

「い、いや……こちらこそ操くんと一緒で良かったよ!」

 

 そこから幾らか話をしながら進むと、1-Aと扉に書かれた教室に着いた。ドアもデカいし、そこに書かれてる文字もデカい。

 

「でっかいなぁ……」

 

「そうだね。異形型もいるだろうし、バリアフリーだね……」

 

 先程よりも少し堅くなった声色で緑谷が返す。

 

「あれ、ちょっと緊張してる?」

 

「う、うん……あの受験者数から選ばれた人たちだし、怖い人たちがいないかなって……」

 

 それを聞いて入試会場のメガネくんが思い浮かんだが、それはそれで失礼かと思い直して頭からかき消す。

 

「じゃあ俺から行くから。一緒に行こうぜ」

 

「そ、そう! ありがとう……!」

 

 そう言ってドアを開けると、凄まじい速度でドアが開いて教室中に大きな音が響いた。

 

「あ、やっべ」

 

 クラス全員がこっち見てるし、緑谷も顔を青くしてあわわわわ言ってる。口喧嘩してたような金髪トゲトゲヘアーとメガネくんも固まってこっちを見てる。メガネくんも同じクラスなのか。これは嬉しい。

 言い訳になるけども、中学校時代の固くなったドアのつもりで開けたら、ね。

 

「あー、申し訳ない。中学校のドアと同じ感覚で開けちった」

 

「む、それならば仕方がない。だが、次からは気をつけるんだぞ! それはさておき、俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」

 

「おう、気をつけるわ。俺は操る炎でみさお えん。よろしくな」

 

「あ……僕、緑谷出久。よろしく飯田くん!」

 

「緑谷くん……君はあの実技試験の構造に気づいていたのだな。俺は気づけなかった……! 君を見誤っていたよ! 悔しいが君の方が上手だったようだ!」

 

 苦虫を噛み締めたような、心底悔しそうな表情なメガネ……いや、飯田。てか、気づいてたんだ。

 

「ほー……それは凄いな。俺はなんも考えずにロボット潰してたわ」

 

「い、いや……!? 気づいてなかったよ!?」

 

 と話していると後ろからまた別の声。

 

「あ! そのモサモサ頭は! 地味めの!」

 

「おはよう! ボ……俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」

 

「あ! おはよう! 麗日お茶子です! よろしくね〜」

 

「俺は操る炎でみさおえん。よろしく」

 

「ぼ、僕は緑谷……出久って、言います! あのっ……本っ当あなたの直談判のおかげで……その……」

 

 そんな話をしながら席順を見て自分の席に荷物を置いて話を続ける。するとチャイムが鳴り、そのまま少し話していると、不審者が現れた。

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け。ここは……ヒーロー科だぞ」

 

 その不審者は寝袋に包まれた状態でinゼリーを一気飲みする。寝袋からヌーっと出てきてもボサボサの毛と手入れをしていない髭によって、不審者の印象が抜けない。

 クラスも少しザワついた。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね。担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

 多分クラスの人全員が、この人先生なのか!? か、この人が担任!? と思ったことだろう。

 すると相澤先生が寝袋に手を突っ込んで何かを取り出した。

 

「早速だが体操服着てグラウンドに出ろ」

 

 体操服だった。廊下を見ると名札が着いてある袋が並べられていた。おそらくクラス全員分あるのだろう。それにしても……

 

「なんか生温かそうで嫌だよな。あの体操服」

 

 と近くにいた男子生徒に小さい声で呟く。

 するとその男子生徒も少し驚いたようだったがこちらを見てニヤリと笑い、アレを着ろって言われなくてよかったよな、と返した。

 相澤先生にジロリと睨まれたような気がするが、多分気の所為だろう。多分……

 更衣室への案内を受ける最中にクラスで自己紹介をして、更衣室に着いたら少し急ぎ足で着替えてグラウンドに向かった。

 

 

 

「「「「個性把握……テストォ!?」」」」

 

 なんと相澤先生、自由な校風ということで入学式やガイダンスを個性把握テストにした。内容としては中学の頃からやってる個性禁止の体力テストを個性アリで行うものだった。

 

「爆豪、個性使ってソフトボール投げをやってみろ。円から出なきゃ何してもいい。早よ。思いっきりな」

 

 金髪トゲトゲヘアーの爆豪はボールを受け取って軽いストレッチをして、投球フォームに入る。

 

「んじゃまぁ……死ねぇ!!!!!」

 

((((…………死ね?))))

 

「ヒーローとしてそれはアリなのか……?」

 

「あ゛あ゛!? なんだとてめぇ!?」

 

「あ、いや悪い。つい口に出た」

 

「なっ……「まず、自分の『最大限』を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」……チッ」

 

 相澤先生が爆豪を遮ってくれて助かった。相澤先生にありがとうという念を送りつつ、爆豪に悪いとジェスチャーをすると、不機嫌そうな顔をしつつも睨むのをやめてくれた。多分許してくれたんだろう。

 

「なんだこれ! すげー面白そう! 個性思いっきり使えるんだ!」

 

 クラスの誰かがそう発言すると相澤先生の目付きが変わった。なんというか、迫力のある怖い雰囲気だ。

 

「……面白そう、か。ヒーローになる為の三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい? ……よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」

 

 相澤先生がそう言うと俺も含めてクラス全員が少し唖然とし、すぐに絶叫が響いた。

 その後クラスの多くがそれに対して反対意見を言ったがそれが聞き入れられることはなく、そのままテストが始まった。

 

 

 第一種目、50m走

 

 飯田はふくらはぎについたエンジンで凄まじい速さで走り抜け、放出系や異形型はその個性を活かして走っていた。面白い発想だと思ったのは、青山のへそビームを推進力に進んだことだ。ビームを推進力にすること自体は普通のように聞こえるが、ゴールに背を向けて少しジャンプしてビームを放つ。途中で墜落してもう一度放つ。なんともシュールな絵面で面白かった。数人は走りに活かせない個性なのか、そのまま走っていた。

 

 そして俺の番だが、取り敢えず靴と靴下を脱いで裸足になり、足の裾を捲って袖を捲る。

 

「峰田……だよな。よろしく」

 

「お、おう操……! よろしく頼むぜ!」

 

 除籍宣言を聞いてから緊張が取れないのか少し顔が青いが、グッと親指をたててスタート地点に向かう。

 

「よーい」

 

 腕と足を炎で包む。

 

「おおっ! あいつ炎の個性か!」

 

 クラスの誰かの声が聞こえる。

 

「START!」

 

 その合図と共に先ず自力で走り出す。そして足と手の回転を炎の操作で加速させつつ、足裏の先端付近から炎を噴射することで地面を蹴る力を増幅させる。

 スタート直後はいつもの光景だったが徐々に加速していき、ゴール付近では足の回転速度がかなりのものになっていた。

 

「4秒25!」

 

「お、結構いい感じだ」

 

 

 第2種目、握力

 

 異形型の障子が540kgwを出し、八百万が万力を作り、峰田がタコのエロさについて語ったこと以外は特筆することは無かった。俺も炎で手を包んで握ったため124kgwになったが、それ以上は手が痛くかったためやめておいた。

 

 

 第3種目、立ち幅跳び

 

 これは発射系の個性が本領発揮した。爆豪や青山などが記録を大きく伸ばした。そしてこれは俺も得意分野だ。

 

「相澤先生、体操服燃やすの嫌なので上脱いでもいいですか?」

 

「ん? ……まぁいいだろう」

 

 許可を得て体操服の上を脱ぎ、靴と靴下も脱ぎ、ズボンの裾を捲った。そしてスタート地点に立つ。隣を見ると峰田も足元に頭のプヨプヨした謎の球体を貼り付けていた。

 

「じゃあ準備出来たら跳んでいけ」

 

 相澤先生も記録の準備が出来たようで、合図が来る。

 そして体と腕、足に炎を纏わせ、頭を支えるために少しだけ頭に炎をつけて飛んだ。

 全身に纏わせるのが一番飛びやすいのだが、体操服は耐火性も無いため一瞬で素っ裸になる。

 少し安定しないが念の為ゆっくりと飛行していると、相澤先生から声がかかる。

 

「おおお! アイツ飛べんのか!」

 

「操、お前何分飛べる?」

 

「飛ぶだけなら30分くらいです。スピード出したり他に何かするならもっと短いです」

 

「そうか。なら30秒で行ける所まで行ってみろ」

 

「了解です!」

 

 そう言って体を横に倒し、地面に対して30度くらいまで傾けて体と足を姿勢制御と浮遊の操作にまわし、足裏と手から炎を噴射させることで前に進む。姿勢はアイ○ンマンみたいな感じだ。

 防火性のある服さえあれば……! 

 

 そして記録は254m。初めてのクラストップだ。

 

 ちなみに峰田はプヨプヨでトランポリンのように高さを稼いだあと、斜めに跳ぶことで9mと少し跳んでいた。着地に失敗して砂場でのたうち回っていたが。

 

 

 第4種目、反復横跳び

 

 可も不可もなくといった感じだった。体に纏わせ、炎を噴射するいつものやり方で多少記録が伸びたが、操作による方向転換が自分で思ってるよりも苦手で逆に集中出来なかった。

 峰田はプヨプヨを使って残像が見えるレベルで動いていた。圧倒的1位だ。

 プヨプヨに触っていいか聞いてみたところ、峰田自身は触ると超跳ねるが、峰田以外だと超くっつくらしい。

 

 

 第5種目、ボール投げ

 

 麗日が∞とかいう聞いたことの無い数字を出した。やべぇ。

 そして次は緑谷の番だ。これまで緑谷は記録を出せてないようだが、どんな個性なんだろうか? 

 すると一度目は個性を使おうとしたが消されたらしい。イレイザーヘッド……知らない名前だ。クラスのみんなも知ってる人はあまりいない様子。

 そして緑谷は相澤先生から何かを指導され、二回目に望んだ。

 飯田や麗日は知ってそうだが、ハッキリとは言わない。まぁマナーか。

 そしてブツブツと何かを呟きながら、緑谷は二発目を投げた。凄まじい勢いで飛んでいき、記録は705.3m。相澤先生も唸るほどだ。しかし、個性を使ったと思われる指が腫れ上がってるのはどういう訳か。そして爆豪が緑谷に掴みかかろうとして相澤先生に止められた。どうやら同じ中学出身のようだ。

 

 そして俺の番が来た。今度は単純。裸足になって右腕だけを捲る。ソフトボールに炎を纏わせて浮かび上がらせ、足に炎を纏わせておく。そして腰と背中を大きく捻って右の拳に炎を集中させる。操作出来るギリギリまで火力と圧縮率を上げ、全力で殴るような姿勢で少し止まった後、浮かび上がらせていたソフトボールを全力で殴る。インパクトの瞬間拳の炎の押さえつける力をソフトボール方向だけ解除し、足を固定することでソフトボールを押し出した。

 そして相澤先生の方を向くと、画面にlostと表示されていた。

 

「……え?」

 

「火力を上げすぎだ。ボールが燃え尽きた」

 

「「「えええええ!?」」」

 

「ほれ、もう1回。今度は火力抑えろよ」

 

「……あ、ウス」

 

 そういえば投げてんのソフトボールだった。そりゃ燃やされれば消えるか。

 てかこれ以外だと投げるの補助くらいしかないけど……まぁいいか。

 そして50m走のときのように動きのアシストをして、ソフトボールに少しだけ炎をつけて距離を伸ばしたが、119.5mと個性を使った割にはパッとしない記録になった。

 

 

 第6種目、持久走

 

 これは八百万が原付を作り、飯田が走った、これに尽きる。俺は炎で多少補助したが、それでも原付とエンジン付きの飯田には到底及ばなかった。

 

 

 第7種目、上体起こし

 

 峰田が凄い速さで跳ね返っていた。終わっても少しの間止まらず、クラクラしていた。

 俺は炎の補助を使おうとしていたが、ペアの峰田に炎が当たりそうになるため最小限に抑え、個性を使わないよりは多少いい位の結果になった。

 

 

 第8種目、長座体前屈

 

 これは俺の個性ではなんともならず、平均的なスコアとなった。そして常闇が個性で押すことで長座体前屈2m越えという字面だけみたら恐ろしい結果を出した。八百万は手から棒を作り続けて3m弱の結果を出していたが。

 

 

 そして全ての種目が終了した。除籍の心配は俺にはなかったが、指を痛めている緑谷はソフトボール投げ以降は痛みからか、あまり振るわなかったようだ。このままだと彼になってしまうが……

 

「んじゃパパっと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括開示する」

 

 クラス全員が真剣な表情で見る。

 

「ちなみに除籍はウソな」

 

「「「…………!?」」」

 

「君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」

 

「「「「は────ー!!!???」」」」

 

「あんなのウソに決まってるじゃない……ちょっと考えればわかりますわ……」

 

 いやいや八百万よ、それはお前が成績的に余裕があったからだろうさ!? いやホント良かった。顔がマジだったから、やる時はやる人か思った。

 

「これにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類あるから目ェ通しとけ」

 

 そう言って緑谷に保健室の利用書を渡して去っていった。そしてその後ヘロヘロになった緑谷と麗日、飯田と共に帰った。

 初日にしてはあまりにハードな1日だったが、これからはもっと厳しくなると考えてより気持ちが引き締まった。

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